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退職代行は違法ではない

最終更新 2026-08-24
この記事の結論
  • 使う本人が違法になることはありません。退職は労働者の自由です(民法627条)
  • 違法になりうるのは、資格のない業者が交渉までやったときだけです
  • 労働組合の交渉は団体交渉権があるので違法になりません

「退職代行って違法なんじゃないの」と会社の誰かに言われた、あるいは自分でもそう検索してここに来た人向けの記事です。結論を先に言います。退職代行を使うこと自体は違法ではありません。違法になり得るのは、資格のない業者が「交渉」に踏み込んだときだけです。 この記事では、その境界線がどこにあるかを説明します。

結論:違法なのは「使う側」ではなく「一部の業者のやり方」

誰の話か 違法になるか
退職代行を使う本人(労働者) ならない。退職は労働者の自由(民法627条)
退職の意思を「伝えるだけ」の業者 ならない。使者としての連絡は誰でもできる
資格のない業者が「未払い残業代を払え」等を交渉する 違法(非弁行為) の可能性が高い
労働組合が団体交渉権にもとづき退職日・有給を交渉する ならない
弁護士・弁護士法人が交渉・請求・訴訟まで行う ならない

つまり「退職代行」という仕組みそのものに違法性はなく、一部の業者が法律の資格がないのに交渉行為までやってしまう場合に限って違法になる、というのが正確な理解です。

なぜ「違法では」という不安が生まれるのか

理由は主に3つあります。

  1. 報道で摘発事例が出た — 2026年2月3日、退職代行最大手「モームリ」の運営会社「アルバトロス」の谷本慎二社長(37)と妻の志織執行役員(31)が、弁護士法違反(非弁提携)の疑いで警視庁に逮捕されました。2月24日には東京地検が両容疑者と法人としての同社、提携先の弁護士法人2社を起訴しています。容疑の中身は、未払い残業代など法的トラブルを抱えた退職希望者を報酬目的で提携弁護士に紹介し、1件あたり約1万6,500円の紹介料を受け取っていたというもので、モームリ自身が会社側と直接交渉していた疑いではなく「弁護士への有償あっせん」が問われた点に注意が必要です(時事通信2026年2月3日・2月24日配信)。大手が摘発されたことで「退職代行=グレー」という印象が広がりました
  2. 会社側が引き止めの材料として使う — 「そんなの違法な業者だ」「効力がない」と、辞めさせたくない会社が不安を煽ってくることがあります
  3. 仕組み自体を誤解している — 「代行」という言葉から、資格が必要な代理行為だと思い込んでいる人が多いですが、実際は「意思を伝える使者」の範囲であれば資格は不要です

不安の出どころは分けて考える必要があります。摘発されたのは「業者が交渉に踏み込んだこと」であって、「退職代行という仕組み」ではありません。

弁護士法72条を読む(条文の要点)

非弁行為を禁じているのは弁護士法72条です。要約すると次のようになります。

弁護士でない者は、報酬を得る目的で、訴訟事件・非訟事件・審査請求などの法律事件に関して、鑑定・代理・仲裁・和解その他の法律事務を取り扱ってはならない

退職代行にあてはめると、次のような行為が「法律事務」にあたり、資格のない業者がやると違法になります。

  • 「未払い残業代◯万円を支払え」という金額の主張・交渉
  • 「損害賠償はしない」という会社側の主張への反論・交渉
  • 退職日をめぐって会社と条件闘争をする(単なる希望日の伝達を超える場合)

逆に、「本人は◯月◯日付で退職の意思があります」と会社に伝えるだけであれば、これは法律事務ではなく単なる連絡(使者)なので、資格がなくても違法にはなりません。多くの民間の退職代行が「意思を伝えるだけ」という建て付けにしているのは、ここで違法を避けるためです。

労働組合が交渉できるのはなぜ違法にならないのか

労働組合系の退職代行は、退職日の調整や有給消化の交渉まで行いますが、これは弁護士法違反にはなりません。根拠は別の法律にあります。

退職代行の運営元3種類(民間の業者・労働組合・弁護士)で、退職を伝える/有給と退職日の交渉/未払い賃金の請求/訴訟の代理のどこまでできるかを比べた表
運営元によってできる範囲が違います。民間の業者は「伝える」まで、労働組合は「交渉」まで、弁護士は「請求と訴訟」までです。

憲法28条と労働組合法によって、労働組合には団体交渉権が保障されています。これは弁護士法72条とは別枠の権利で、労働組合が使用者(会社)と労働条件について交渉することを法律上認めたものです。つまり同じ「交渉」でも、

  • 労働組合が行う → 労働組合法が根拠。退職日・有給の調整までは合法
  • 弁護士が行う → 弁護士法が根拠。金銭請求・損害賠償・訴訟まで合法
  • 民間企業が行う → 根拠となる資格・権利がない。伝達を超えると違法

という3階建てになっています。この違いを理解していれば、「うちは労働組合なので交渉もできます」という業者が本当に労働組合として法律上の要件を満たしているか(規約・組合員資格の有無など)を確認する視点も持てます【要確認:労働組合としての実体の有無を利用者が事前に見分ける具体的な方法は別記事で扱う】。

自分は法的な責任を問われるのか

ここが一番の不安ポイントだと思うので、はっきり書きます。退職代行を利用したことを理由に、労働者本人が法的な責任を問われることはありません。 退職は民法627条で保障された労働者の権利であり、それを誰に伝えてもらうか(自分で言うか、業者に頼むか)は本人の自由です。

摘発や責任の対象になるのは、非弁行為を行った業者の側です。利用者が「違法な業者を使ってしまった」場合でも、退職の意思表示自体の効力が失われるわけではない、というのが弁護士による一般的な見解です(処罰の対象は非弁行為を行った業者側に限られ、退職の意思を伝える行為自体は非弁行為にあたらないため)。ただし、この点を実際に争った裁判例が存在するかどうかは確認できていません【要確認:個別のケースで退職の効力が争われた判例の有無】。不安であれば、申し込み前に「労働組合」「弁護士法人」のどちらかを明記している業者を選ぶことで、そもそもこの論点を避けられます。

会社から「その業者は違法だ」と言われたときの対応

引き止めの場面で、会社の上司や人事から次のように言われることがあります。

  • 「退職代行なんて法的効力がない」
  • 「そんな業者を使うこと自体、こちらは認めない」
  • 「直接来て話さない限り退職は受理しない」

これらはいずれも法律的には誤りです。退職の意思表示は、業者を通じて伝えられたものであっても本人の意思である限り有効です。民法627条により、期間の定めのない雇用契約は退職の意思表示から2週間で終了します(会社の承諾は不要)。「業者経由だから無効」という主張には根拠がありません。

対応としては、次のように切り分けてください。

  1. 「退職の効力」への反論 → 無視して構いません。法律上、業者経由でも有効です
  2. 「その業者は違法だ」という個別の指摘 → もし本当にその業者が非弁行為をしている疑いがあるなら、それは業者選びの問題として次回以降に活かす情報です。今回の退職の効力とは別の話です
  3. 執拗な引き止めが続く場合 → 弁護士系・労働組合系の業者であれば、そのまま交渉窓口として対応を任せられます

業者を選ぶときに違法リスクを避ける3つの確認点

不安を避ける一番確実な方法は、そもそも非弁行為に踏み込む可能性が低い業者を選ぶことです。

  1. 運営元が「労働組合」か「弁護士法人」と明記されているか — 民間企業単独の場合、交渉範囲は「伝達のみ」に限られることを理解した上で申し込む
  2. 「未払い残業代も交渉します」等をうたっていないか(民間企業なのに) — うたっている場合、非弁行為に踏み込んでいる可能性が高い業者です
  3. 料金相場から極端に外れていないか — 運営元によって相場は異なり、目安は民間企業運営が2〜3万円、労働組合運営が2万5,000〜3万円、弁護士運営が5〜10万円です(※2026年8月時点の複数メディア調査に基づく目安。詳細は別記事「退職代行の料金相場」参照)。1万円を切るような極端な安さは、実体のない運営や違法な運営の兆候である可能性があるとの指摘があります

労働組合系・弁護士系のどちらを選ぶべきかは、未払いの有無やもめる可能性の程度によって変わります。この判断軸は別記事「労働組合の退職代行と弁護士の退職代行、どちらを選ぶか」で詳しく説明しています。

実体験について、正直に書きます

私自身は2026年に会社を辞めた際、退職代行を使わず自分で退職の意思を伝えました。そのため、退職代行の利用時に業者から違法性について説明を受けた経験はありません。この記事の内容は、弁護士法72条・民法627条などの条文と公開されている摘発事例を調べた範囲での説明です。個別の状況で「この業者は大丈夫か」を判断する際は、申し込み前の無料相談で運営元(労働組合か弁護士法人か)を直接確認することをおすすめします。

次にやること

申し込む前に、その退職代行の運営元が「労働組合」か「弁護士法人」と明記されているかを公式サイトで確認してください。それだけで、非弁行為に巻き込まれるリスクのほとんどを避けられます。

退職代行Jobs ニコイチ ネルサポ


※本記事は2026年8月時点の調査に基づく一般的な情報です。個別の状況における法的判断は、弁護士など専門家にご確認ください。料金・サービス内容は各社公式サイトで最新情報をご確認ください。

いちのせ

退職届を受け取る側に長くいて、そのあと自分が出す側になりました

人を採用し、辞めていく人を見送る立場に長くいました。退職代行から電話を受けたこともあります。そして自分が辞める番になり、失業保険の申請・ハローワークでの手続き・健康保険の切り替え・住民税の直接納付・保育園の継続手続きまで、すべて自分で通りました。両側を見た人間が書いています。「代行を使ったら会社はどう思うのか」に答えられるのは、受け取ったことがあるからです。

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