労働組合の退職代行と弁護士の退職代行、どちらを選ぶか
退職代行を使うと決めたあと、次に迷うのが「労働組合系と弁護士系、どちらにするか」です。この記事は、退職の意思は固まっていて、あとは業者選びだけという人向けに、両者の違いと選び方を説明します。結論を先に言うと、分かれ目は「会社と金銭のことでもめる可能性があるかどうか」です。
結論:できることの範囲が法律で違う
| 比較項目 | 労働組合系 | 弁護士系 |
|---|---|---|
| 退職の意思を伝える | ○ | ○ |
| 退職日・有給消化の交渉 | ○ | ○ |
| 未払い給与・残業代の請求交渉 | ✕ | ○ |
| 損害賠償請求への対応 | ✕ | ○ |
| 訴訟の代理 | ✕ | ○ |
| 料金の目安 | 【要確認:別記事「退職代行の料金相場」参照。おおむね2万円台】 | 【要確認:同上。おおむね5万円台以上】 |
| 向いている人 | 会社と特にもめていない人 | 未払いがある・脅されている・もめそうな人 |
この違いは業者ごとのサービス方針ではなく、それぞれが根拠にしている法律が違うために生まれています。
なぜ弁護士でないと交渉できない領域があるのか
弁護士法72条は、弁護士資格を持たない者が報酬を得て他人の法律事件の代理・交渉を業として行うことを禁じています(いわゆる非弁行為)。会社との間で「退職日をいつにするか」を超えて「未払い残業代をいくら払え」「損害賠償はしない」といった金銭の主張をぶつけ合う行為は、この法律事件の交渉にあたります。だから民間の退職代行会社が単独でここに踏み込むと違法になります。
一方、労働組合には憲法28条・労働組合法で団体交渉権が保障されています。使用者(会社)に対して労働条件について団体交渉を申し入れることは、労働組合の正当な活動として法律上認められています。退職代行の労働組合系サービスは、この団体交渉権を根拠に、退職日の調整や有給消化の交渉を行っています。
つまり同じ「交渉」という言葉でも、
- 労働組合が行う交渉 → 労働組合法が根拠。退職日・有給の調整までは可能
- 弁護士が行う交渉 → 弁護士法が根拠。金銭請求・損害賠償・訴訟まで可能
という別の法律の上に立っています。「うちは全部交渉できます」とうたう民間企業(労働組合でも弁護士法人でもない)の退職代行は、この時点で法律の範囲を超えている可能性があるため注意してください。
自分はどちらを選ぶべきか、4つのチェック
次のどれか1つでも当てはまれば、弁護士系を選んでください。
- 残業代・給料の未払いがある — 金額の交渉・請求は弁護士にしかできません
- 会社から「損害賠償を請求する」と言われた(言われそうな) — 対応できるのは弁護士だけです
- パワハラ・セクハラの慰謝料も一緒に考えたい — 損害賠償請求の一種のため、弁護士の領域です
- 懲戒解雇をちらつかされている、退職を拒否されている — 法的な主張のぶつけ合いになるため弁護士が必要です
どれにも当てはまらず、「有給を使い切って辞めたい」「退職日だけ調整してほしい」という場合は、労働組合系で足ります。料金も抑えられます。
労働組合系の限界を具体的に知っておく
労働組合系でよくある誤解は「有給の交渉ができるなら、何でも交渉できるはず」というものです。実際にはできません。
- 未払い残業代が10万円あっても、労働組合はその金額を「払え」と法的に主張する交渉はできません
- 会社側が「損害賠償を検討している」と言い出した場合、労働組合の担当者ではそれ以上の対応ができません
- 訴訟になった場合、代理人にはなれません
申し込む前に未払いの有無が分からない場合は、無料相談の時点で伝えてください。 多くの労働組合系サービスは、話を聞いた上で「これは弁護士の領域なので提携先を紹介します」と案内してくれます【要確認:全業者の対応方針を一次情報で確認できていません。個別業者は無料相談で直接確認してください】。ここで曖昧に進めてしまう業者は避けたほうがよいです。
弁護士系を選ぶと、料金以外に何が変わるか
弁護士系は料金が上がる分、次の安心感があります。
- 会社側が高圧的な対応をしてきても、法的な主張として跳ね返せる
- 未払いが発覚した場合、そのまま同じ窓口で請求交渉に移行できる(労働組合系だと途中で弁護士に切り替える必要が出てくる)
- 万一こじれても、訴訟の代理までワンストップで頼める
逆に言えば、もめる予定が最初からないなら、弁護士系の料金差はそのまま「使わない機能」への支払いになります。ここは見栄や念のためで決めず、上のチェック4つに正直に当てはめて判断してください。
労働組合系で申し込んだあとに、弁護士に切り替えられるか
無料相談の時点では未払いがないと思っていたのに、退職の連絡後に会社から「損害賠償を検討する」と言われるケースはあります。この場合、多くの労働組合系サービスは提携する弁護士事務所への切り替え導線を用意しています【要確認:全業者共通の仕組みではなく、業者ごとの提携有無・条件を無料相談で確認する必要があります】。ただし次の点は事前に確認してください。
- 切り替え時に、労働組合系サービスの料金は返金されるのか、二重にかかるのか【要確認:業者ごとに規定が異なるため無料相談で個別確認】
- 切り替え先の弁護士は提携先固定か、自分で選べるのか
- 切り替えにかかる日数(この間、会社への対応が止まらないか)
「もめる可能性はゼロではないが、今のところは軽微」という迷う状況であれば、申し込み前の相談時に「もし話がこじれたら弁護士に切り替えられますか」と一言聞いておくと、あとで慌てません。
実体験について、正直に書きます
私自身は2026年に会社を辞めた際、退職代行を使わず自分で退職の意思を会社に伝えました。そのため、労働組合系・弁護士系のどちらの退職代行も実際に利用した経験はありません。この記事の内容は、各社の公式情報と法律の条文を調べた範囲での説明であることを先に断っておきます。実際に代行を使った場合の対応の速さや担当者とのやり取りの実感については、無料相談を利用した際の体感を確認することをおすすめします。
次にやること
上の4つのチェック(未払い・損害賠償の予告・ハラスメントの慰謝料・懲戒解雇の気配)に1つでも当てはまるなら弁護士系、当てはまらないなら労働組合系の無料相談から始めてください。相談は契約前なら無料・匿名でできます【要確認:多くの業者で無料・匿名相談をうたっていますが、全業者共通の条件かは個別に確認できていません】。「うちの場合、労働組合と弁護士のどちらが向いていますか」とそのまま聞いてしまうのが一番早い判断方法です。
退職代行Jobs ニコイチ ネルサポ
※本記事は2026年8月時点の調査に基づく一般的な情報です。個別の状況における法的判断は、弁護士など専門家にご確認ください。料金・サービス内容は各社公式サイトで最新情報をご確認ください。