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退職代行の電話を受けた側は、怒っていなかった

最終更新 2026-08-24
この記事の結論
  • 受け取った側の最初の感情は、怒りではなく困惑でした
  • 会社はそのまま受け入れ、こちらから本人に連絡は取りませんでした
  • ただしこれは「揉めない会社」の話です。揉める会社なら、民間の業者では止まります

退職代行を調べている人が、料金の次に必ず調べることがあります。

「会社に迷惑がかかるんじゃないか」 「恨まれるんじゃないか」 「あとで揉めるんじゃないか」

この不安に答えている記事は、ほとんどありません。理由は単純で、書いている人が受け取った側にいないからです。使った人の体験談か、調べて書いたライターの記事しかない。

私は、退職届を受け取る側に長くいました。人を採用し、辞めていく人を見送る立場です。その中で、退職代行から電話を受けたことがあります。

そのとき何を思ったかを、そのまま書きます。あなたが心配していることの答えになるはずです。

最初に思ったのは「え、何これ」でした

怒りではありませんでした。悲しみでもありません。

困惑です。

知らない会社から電話が来て、うちの社員の話を始める。何が起きているのか、数秒わからない。「え、何これ」というのが、最初に頭に浮かんだ言葉でした。

怒りが湧かなかった理由は、あとから考えると単純です。

怒る相手が、そこにいなかったからです。

電話の向こうにいるのは、事情を知らない業者の人です。淡々と用件を伝えてくる。その人に腹を立てても意味がない。そして肝心の本人は、電話に出てこない。

つまり、感情をぶつける先が最初から存在しない。だから怒りにならず、困惑で止まりました。

これは私が特別に穏やかだったわけではないと思います。構造の問題です。代行を挟むと、感情が向かう先が消えます。

そのまま受け入れました

電話のあと、会社としてどうしたか。

そのまま受け入れました。

本人と直接話そうとはしませんでした。断りもしませんでした。淡々と手続きを進めただけです。

そしてこちらから本人に連絡を取ろうとはしませんでした。

追いかけなかった、というより、追いかける理由がなかった。代行を立てるということは「もう話したくない」という意思表示です。それを受け取った以上、こちらから連絡するのは筋が違う。そう判断しました。

あなたが心配していること、3つへの答え

「迷惑がかかるのでは」

かかりません。正確には、通常の退職と手間が変わりません。

会社側でやることは、離職票を作る、保険を抜く、貸与物を回収する。この一式です。本人が直接言ってきても、代行から連絡が来ても、この作業は同じです。増えるのは「代行から電話が来た」という一回きりの驚きだけです。

「恨まれるのでは」

恨む対象が現れません。

上に書いたとおり、感情をぶつける先がなくなります。目の前にいるのは業者で、本人はいない。恨みは、相手が目の前にいて初めて形になります。 それが消えるのが、代行という仕組みの効果です。

「引き止められるのでは・家に来るのでは」

少なくとも私は、こちらから連絡を取ろうとしませんでした。

代行を立てた時点で、「本人が直接のやり取りを望んでいない」ことは伝わっています。それを無視して連絡するのは、会社側にとってもリスクです。

ただし、正直に書いておきます

ここまで読んで安心してほしくない部分があります。

これは「揉めなかった会社」の話です。

私が受けた電話は、民間の業者からでした。有給や退職日の交渉はしてきませんでした。それでも通ったのは、こちらが受け入れる会社だったからです。

もし会社が「本人と話さないと受け付けない」と言い張ったら、民間の業者にはそれ以上できることがありません。会社と条件のやり取りをすることは、弁護士でない人が報酬をもらってやると弁護士法72条が禁じる非弁行為にあたる可能性があるからです。民間の業者は、法律上「伝える」ことしかできません。

つまり、こういう構造です。

あなたの会社 民間の業者で足りるか
素直に受け入れる会社 足ります。実際に通ります
揉める会社・引き止めが強い会社 足りません。そこで止まります

多くの会社は前者です。だから「民間でも普通に辞められた」という体験談がたくさんあります。それは嘘ではありません。

問題は、自分の会社がどちらかを、申し込む前には知りようがないことです。

自分の会社が揉めるかどうかを、先に見分ける

問題提起だけで終わらせても意味がないので、判断の手がかりを書きます。

退職代行の選び方の分岐図。有給を使い切りたい・退職日を指定したい・前に辞めた人が引き止められた、のどれにも当てはまらないなら民間の業者。当てはまり、お金の請求がなければ労働組合、あれば弁護士
2つの質問で決まります。上から順に答えて、最初に止まったところがあなたの選択肢です。

以下に1つでも当てはまるなら、労働組合が運営する代行を選んでください。 労働組合には団体交渉権があるので、会社と条件のやり取りができます。料金差は数千円です。

  1. これまでに辞めた人が引き止められていた 前例は繰り返されます。あなたのときだけ違う、ということはまずありません。

  2. 有給が残っていて、それを使い切って辞めたい 有給の消化は「交渉」になります。民間の業者では踏み込めない領域です。

  3. 退職日を自分の希望どおりにしたい 次の入社日が決まっている場合など。日程調整も交渉です。

  4. 未払いの残業代や、支払われていないものがある ここは労働組合でも足りません。金銭の請求は弁護士の領域です。

逆に、「連絡さえしてもらえればいい。あとは会社の言うとおりでいい」という状態なら、民間の業者で足ります。私が受けた電話は、まさにそれでした。

各社の料金と運営形態は、公式ページを直接見て作った比較表にまとめています。

次にやること

いま調べている段階なら、やることは1つです。

自分の会社が上の4つに当てはまるかどうかを、先に決めてください。

当てはまらないなら、料金の安いところで構いません。 1つでも当てはまるなら、運営元を見て選んでください。ここを間違えると、申し込んだあとで「それはできません」と言われます。

そして、これだけは伝えておきます。

受け取った側は、あなたが思っているほど怒っていません。 少なくとも私は、怒りませんでした。「え、何これ」と思って、そのまま手続きをしただけです。

いちのせ

退職届を受け取る側に長くいて、そのあと自分が出す側になりました

人を採用し、辞めていく人を見送る立場に長くいました。退職代行から電話を受けたこともあります。そして自分が辞める番になり、失業保険の申請・ハローワークでの手続き・健康保険の切り替え・住民税の直接納付・保育園の継続手続きまで、すべて自分で通りました。両側を見た人間が書いています。「代行を使ったら会社はどう思うのか」に答えられるのは、受け取ったことがあるからです。

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