退職代行の電話を受けた側は、怒っていなかった
- 受け取った側の最初の感情は、怒りではなく困惑でした
- 会社はそのまま受け入れ、こちらから本人に連絡は取りませんでした
- ただしこれは「揉めない会社」の話です。揉める会社なら、民間の業者では止まります
退職代行を調べている人が、料金の次に必ず調べることがあります。
「会社に迷惑がかかるんじゃないか」 「恨まれるんじゃないか」 「あとで揉めるんじゃないか」
この不安に答えている記事は、ほとんどありません。理由は単純で、書いている人が受け取った側にいないからです。使った人の体験談か、調べて書いたライターの記事しかない。
私は、退職届を受け取る側に長くいました。人を採用し、辞めていく人を見送る立場です。その中で、退職代行から電話を受けたことがあります。
そのとき何を思ったかを、そのまま書きます。あなたが心配していることの答えになるはずです。
最初に思ったのは「え、何これ」でした
怒りではありませんでした。悲しみでもありません。
困惑です。
知らない会社から電話が来て、うちの社員の話を始める。何が起きているのか、数秒わからない。「え、何これ」というのが、最初に頭に浮かんだ言葉でした。
怒りが湧かなかった理由は、あとから考えると単純です。
怒る相手が、そこにいなかったからです。
電話の向こうにいるのは、事情を知らない業者の人です。淡々と用件を伝えてくる。その人に腹を立てても意味がない。そして肝心の本人は、電話に出てこない。
つまり、感情をぶつける先が最初から存在しない。だから怒りにならず、困惑で止まりました。
これは私が特別に穏やかだったわけではないと思います。構造の問題です。代行を挟むと、感情が向かう先が消えます。
そのまま受け入れました
電話のあと、会社としてどうしたか。
そのまま受け入れました。
本人と直接話そうとはしませんでした。断りもしませんでした。淡々と手続きを進めただけです。
そしてこちらから本人に連絡を取ろうとはしませんでした。
追いかけなかった、というより、追いかける理由がなかった。代行を立てるということは「もう話したくない」という意思表示です。それを受け取った以上、こちらから連絡するのは筋が違う。そう判断しました。
あなたが心配していること、3つへの答え
「迷惑がかかるのでは」
かかりません。正確には、通常の退職と手間が変わりません。
会社側でやることは、離職票を作る、保険を抜く、貸与物を回収する。この一式です。本人が直接言ってきても、代行から連絡が来ても、この作業は同じです。増えるのは「代行から電話が来た」という一回きりの驚きだけです。
「恨まれるのでは」
恨む対象が現れません。
上に書いたとおり、感情をぶつける先がなくなります。目の前にいるのは業者で、本人はいない。恨みは、相手が目の前にいて初めて形になります。 それが消えるのが、代行という仕組みの効果です。
「引き止められるのでは・家に来るのでは」
少なくとも私は、こちらから連絡を取ろうとしませんでした。
代行を立てた時点で、「本人が直接のやり取りを望んでいない」ことは伝わっています。それを無視して連絡するのは、会社側にとってもリスクです。
ただし、正直に書いておきます
ここまで読んで安心してほしくない部分があります。
これは「揉めなかった会社」の話です。
私が受けた電話は、民間の業者からでした。有給や退職日の交渉はしてきませんでした。それでも通ったのは、こちらが受け入れる会社だったからです。
もし会社が「本人と話さないと受け付けない」と言い張ったら、民間の業者にはそれ以上できることがありません。会社と条件のやり取りをすることは、弁護士でない人が報酬をもらってやると弁護士法72条が禁じる非弁行為にあたる可能性があるからです。民間の業者は、法律上「伝える」ことしかできません。
つまり、こういう構造です。
| あなたの会社 | 民間の業者で足りるか |
|---|---|
| 素直に受け入れる会社 | 足ります。実際に通ります |
| 揉める会社・引き止めが強い会社 | 足りません。そこで止まります |
多くの会社は前者です。だから「民間でも普通に辞められた」という体験談がたくさんあります。それは嘘ではありません。
問題は、自分の会社がどちらかを、申し込む前には知りようがないことです。
自分の会社が揉めるかどうかを、先に見分ける
問題提起だけで終わらせても意味がないので、判断の手がかりを書きます。
以下に1つでも当てはまるなら、労働組合が運営する代行を選んでください。 労働組合には団体交渉権があるので、会社と条件のやり取りができます。料金差は数千円です。
これまでに辞めた人が引き止められていた 前例は繰り返されます。あなたのときだけ違う、ということはまずありません。
有給が残っていて、それを使い切って辞めたい 有給の消化は「交渉」になります。民間の業者では踏み込めない領域です。
退職日を自分の希望どおりにしたい 次の入社日が決まっている場合など。日程調整も交渉です。
未払いの残業代や、支払われていないものがある ここは労働組合でも足りません。金銭の請求は弁護士の領域です。
逆に、「連絡さえしてもらえればいい。あとは会社の言うとおりでいい」という状態なら、民間の業者で足ります。私が受けた電話は、まさにそれでした。
各社の料金と運営形態は、公式ページを直接見て作った比較表にまとめています。
次にやること
いま調べている段階なら、やることは1つです。
自分の会社が上の4つに当てはまるかどうかを、先に決めてください。
当てはまらないなら、料金の安いところで構いません。 1つでも当てはまるなら、運営元を見て選んでください。ここを間違えると、申し込んだあとで「それはできません」と言われます。
そして、これだけは伝えておきます。
受け取った側は、あなたが思っているほど怒っていません。 少なくとも私は、怒りませんでした。「え、何これ」と思って、そのまま手続きをしただけです。