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上司が退職の話を上げてくれないとき

ぜんたいの流れ
  1. 1退職を伝える
  2. 2上司が止める
  3. 3期限を区切る
  4. 4人事へ並行相談
  5. 5退職代行を検討
この記事の内容
  1. なぜ上司は退職の話を上に上げないのか
  2. 法律上、退職に上司の承認は必要か
  3. まず自分でできることチェックリスト
  4. 動かないときの文例:人事・上司の上司へ
  5. 計算例:いつ辞められるか逆算する
  6. それでも止められたら
  7. 次にやること
  8. 出典(2026年9月9日調査)

直属の上司に退職を伝えたのに、「考え直せ」「後任が決まるまで待って」と言われたまま人事に話が上がっている様子がない人向けの記事だ。結論から言うと、退職の意思を伝えた時点で、上司がそれを止めているかどうかに関係なく、退職の手続きは進められる。上司の「預かった」は、法律上の効力とは別の話だ。この記事では、なぜ握りつぶしが起きるのかと、止まっている状態から動かす具体的な手順を整理する。

なぜ上司は退職の話を上に上げないのか

理由は一つではない。よくあるパターンを分けて考えると、次の対処が見えやすくなる。

パターン 上司の状況 見分け方
抱え込み型 人事に報告すると自分の管理能力が問われる、評価に響くと感じている 「もう少し様子を見よう」「人事にはまだ言わないで」と口止めしてくる
先送り型 忙しさに紛れて単に後回しにしている、悪意はない 何度催促しても「今度話す」で具体的な期日を示さない
引き止め型 後任が決まらず、辞められると自分の仕事量が増える 待遇改善・部署異動など条件を持ち出して撤回を迫る
感情的拒否型 退職を裏切りのように受け取り、感情的に取り合わない 話を切り出すたびに不機嫌になる、まともに聞こうとしない

調査した範囲では、この4パターンのどれであっても、労働者側が取れる対処の骨格は変わらない。上司個人の説得を続けるのではなく、記録を残しながら会社という組織全体に意思を伝える経路に切り替えることが共通の対処になる。

法律上、退職に上司の承認は必要か

民法627条1項は、期間の定めのない雇用契約について「当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる」とし、解約の申入れの日から2週間を経過することで雇用契約は終了すると定めている。この条文の効果として、退職は労働者の一方的な意思表示で成立し、会社側の承諾(上司の同意を含む)は成立要件ではない、というのが一般的な解釈だ。

つまり、上司が「まだ受け取っていない」「上に伝えていない」と言っていても、退職の意思表示自体は、伝わった時点(または書面が会社に到達した時点)で効力の起算が始まるという考え方になる。上司が握りつぶしている状態は、会社側の事務手続きが滞っているだけであり、労働者側の退職の権利そのものを消すものではない。

ここが要点

就業規則に「退職は1ヶ月前までに申し出ること」といった規定がある会社も多い。この場合に民法と就業規則のどちらが優先するかについては、民法627条1項後段は労働者の退職の自由を守るための規定であり、就業規則で定めた予告期間がこれより長くても、その部分は無効で民法の2週間が優先する、という考え方が裁判例の基本的な方向性とされている。就業規則で1ヶ月〜6ヶ月の予告期間や退職への会社の許可を定めていた事案について、民法627条の2週間を超える部分を無効とした裁判例(東京地裁 昭和51年10月29日、高野メリヤス事件)がある(判決文の原文は確認できていない。複数の弁護士による解説記事で事件名・年月日・結論の向きが一致している)。ただし、上司個人が退職を認めない・受け取らないという対応自体は、この規定の有無にかかわらず問題がある対応だ。

まず自分でできることチェックリスト

上司との口頭でのやり取りだけで止まっている段階なら、次を確認してほしい。

  • □ 退職を伝えた日付・場所・その場でのやり取りをメモに残しているか
  • □ 退職の意思を「口頭のみ」で伝えていないか(書面・メール・チャットの記録が無いか)
  • □ 退職希望日を具体的に伝えているか(「そろそろ辞めたい」ではなく「◯月◯日付で退職したい」)
  • □ 上司から「待って」と言われてから、すでにどれくらい経過しているか数えているか
  • □ 人事部・総務部の窓口や連絡先を把握しているか

このうち、記録が口頭のみで残っていない場合は、まずここから直す。次に退職を伝える機会には、退職届やメールなど、日付が残る形式で伝える。

動かないときの文例:人事・上司の上司へ

上司に伝えてから一定期間(目安として1〜2週間)動きがない場合、直属の上司を通さずに人事部、または上司のさらに上の役職者へ並行して連絡する。角を立てずに事実を伝える文例。

件名:退職についてのご相談(〇〇部 〇〇)

〇〇部 人事ご担当者様

お世話になっております。〇〇部の〇〇です。

〇月〇日に、直属の上司である〇〇さんへ退職の意向をお伝えしましたが、
その後、正式な手続きについてのご案内をいただけておりません。

退職希望日は〇月〇日を予定しております。
つきましては、退職に関する正式な手続き・必要書類について、
人事部よりご案内いただけますでしょうか。

お手数をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。

〇〇(氏名・所属・社員番号)

このメールの目的は上司を非難することではなく、「いつ・誰に伝えたか」という記録を会社の別の窓口にも残すことだ。人事宛のメールを送ったこと自体が、退職の意思を会社に伝えた証拠として積み重なる。

計算例:いつ辞められるか逆算する

上司が握りつぶしていても、退職日そのものは民法627条の2週間を基準に逆算できる。仮に、9月8日(火)に上司へ退職を伝え、上司がその後1週間動かなかったケースで考える。

項目 日付・日数
上司へ退職を伝えた日 9月8日
民法上の起算日(意思表示が伝わった日) 9月8日
2週間後(民法上、退職の効力が発生しうる日) 9月22日
上司が人事に伝えていないことに気づいた日 9月15日(1週間経過)
人事へ並行して連絡する目安 9月15日時点で即実行

前提:この試算は「いつ伝えたか」の記録があることを前提にしている。民法97条1項は、意思表示はその通知が相手に到達した時から効力を生じると定めており、退職の意思表示もこの到達主義に従う。口頭のみで日付の記録が無い場合、いつ到達したかについて労働者側と会社側の認識が食い違い、起算日そのものが争いになる可能性がある。だからこそ、伝えた日付をメモやメールで残すことが、この逆算の土台になる。

それでも止められたら

人事への並行連絡でも動きが変わらない、あるいは上司から強い引き止め・威圧的な対応が続く場合、退職代行サービスを使う選択肢がある。退職代行は、本人に代わって「退職する」という意思表示を会社に伝えることを主な役割としており、上司が個人的に握りつぶしている状態を、会社の代表窓口(人事・経営層)へ一気に伝え直す手段として機能する。

  • 上司との直接のやり取りを避けたい、これ以上引き止めに応じたくない → 一般の退職代行で意思表示の代行を依頼できる
  • 有給消化や退職日の交渉で会社ともめる可能性がある → 弁護士対応の退職代行を検討する

※いずれも2026年8月時点の調査。料金・対応範囲は各社サイトで要確認。

次にやること

まず、これまで上司に退職を伝えたやり取りを日付付きでメモに書き出す。そのうえで、上記の文例を使って人事部または上司の上位者へ並行して連絡する。それでも1〜2週間動きがなければ、退職代行の利用を検討する段階に入る。

出典(2026年9月9日調査)

  • e-Gov法令検索 民法 第627条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 (第1項「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」を確認。本文の引用と一致)
  • e-Gov法令検索 民法 第97条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 (第1項「意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。」を確認。本文の引用と一致)
  • 富山労働局「民事判例2 労働契約と解雇/退職」 https://jsite.mhlw.go.jp/toyama-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/menu/min2.html (高野メリヤス事件〔東京地判昭51.10.29〕の事件名・裁判所名・判決日が、民法627条の参考裁判例として掲載されていることを確認。判決文原文はこのページにも掲載されておらず、確認できていない)

当サイト運営者

退職届を受け取る側に長くいて、そのあと自分が出す側になりました

人を採用し、辞めていく人を見送る立場に長くいました。退職代行から電話を受けたこともあります。そして自分が辞める番になり、失業保険の申請・ハローワークでの手続き・健康保険の切り替え・住民税の直接納付・保育園の継続手続きまで、すべて自分で通りました。両側を見た人間が書いています。「代行を使ったら会社はどう思うのか」に答えられるのは、受け取ったことがあるからです。

この記事の作り方: 下書きにAIを使い、法令の条文と官公庁の公式ページに照らして事実確認したうえで公開しています。確認の取れない記述が残る記事は公開せず、一次資料が見つからない箇所は本文にそう書いています。確認の手順を見る →

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