退職代行を使われた会社側の対応
- 1連絡が来る
- 2交渉不可
- 32週間で成立
- 4有給消化
- 5貸与品郵送
- 6離職票交付
この記事の内容
退職代行を使おうか迷っている人の中には、「会社にどれくらい迷惑をかけるか」「上司や人事はどう動くのか」「揉めて面倒なことにならないか」が引っかかっている人がいます。この記事はその不安に答えます。結論を先に言うと、会社側にできることは法律上かなり限られていて、実務としては淡々とした事務処理で終わることがほとんどです。法律の条文と、企業向けの実務解説をもとに、会社側で実際に起きることを順番に説明します。
結論:会社が「できること」は思ったより少ない
| 不安に思っていること | 実際に起きること |
|---|---|
| 会社が本人に直接連絡して説得してくる | 代行業者が「本人への直接連絡をしないでほしい」と伝えるため、通常は連絡が止まる |
| 有給消化を拒否される | 労働者の権利のため、時季変更権の範囲を超えた拒否は基本的にできない |
| 「損害賠償を請求する」と言われる | 言われることはあっても、実際に請求が成立するケースは限定的 |
| 会社が退職を認めない・受理しない | 無期雇用の正社員なら、退職の意思表示から2週間で退職は成立する(民法627条) |
| 職場に大きな混乱が起きる | 混乱するのは初日〜数日程度で、その後は引き継ぎと採用の実務に移る |
イメージ先行で不安になっている部分と、実際の手続きにはギャップがあります。順番に見ていきます。
会社にはどう連絡が来るのか
調査した範囲では、退職代行業者からまず電話、続いて書面(退職届・委任状のコピーなど)が会社に届くという流れが、人材業界・退職代行専門メディアの複数の解説で共通して説明されています(公的な統計による裏付けはありません)。連絡を受けるのは人事・総務、または本人の直属の上司であることが多いようです。内容はシンプルで、「本人の退職の意思」「最終出社日や有給消化の希望」「本人への直接連絡を控えてほしい旨」が中心です。
驚かれることはあっても、会社がやることは退職届が届いたときと大きくは変わりません。
退職代行業者は会社と「交渉」できるのか
ここは両方が誤解しやすいところです。
弁護士資格を持たない一般の退職代行業者は、「退職の意思を伝える」ことはできますが、有給消化日数の調整や未払い残業代の請求といった交渉は法律上できません。弁護士法72条は、弁護士または弁護士法人でない者が報酬を得る目的で法律事件に関する代理・和解などの法律事務を業として行うことを禁じており(e-Gov法令検索)、交渉はこの「法律事務」に当たるためです。会社側が「話し合いたい」と思っても、交渉ができるのは弁護士が対応する退職代行、または労働組合が運営する退職代行に限られます。会社としては、この違いによって「誰が相手なら交渉の余地があるのか」が変わってきます。
会社は退職を拒否できるか
拒否できません。
無期雇用の正社員であれば、退職の意思を伝えてから2週間が経過すれば、会社の承諾がなくても退職の効力が発生します(民法627条1項、e-Gov法令検索)。会社が「後任が決まるまで辞めさせない」「引き継ぎが終わっていないから無効」と主張しても、法律上の退職の効力そのものは止められません。
会社にできるのは、その2週間で業務をどう回すかを決めることだけです。
「訴える」と言われることがあるが、実際に会社ができることは何か
退職代行を使われた側の会社が感情的になり、「損害賠償を検討する」と口にすることはあります。退職代行を使ったこと自体、あるいは法律で認められた退職の権利を行使したこと自体を理由に賠償が認められることはありません。損害賠償が問題になりうるのは、労働者側に「債務不履行」または「不法行為」にあたる行為(無断で重要データを持ち出す、引き継ぎを一切せず大きな損害を発生させる、2週間以上の無断欠勤、機密情報の漏洩など)があった場合に限られ、こうしたケースで実際に賠償が認められる例は「ごく稀」とされています(トップコート国際法律事務所「退職代行で損害賠償請求される?訴えられる事例8選を弁護士が解説」弁護士監修、2026年8月確認)。
退職代行を使って辞めた、というだけでは請求は通りません。
有給消化と最終出社日は誰が決めるのか
有給休暇の取得時季について、会社には「事業の正常な運営を妨げる場合に時季を変更してもらう」権利(時季変更権、労働基準法39条5項、e-Gov法令検索)はありますが、有給の取得そのものを拒否する権利はありません。退職日が確定していて後がない場合、変更後の時季を与える余地がなくなるため、時季変更権を使う余地も実務上はほぼありません。
会社の側でやることは、残りの有給日数を確認して、最終出社日から逆算して引き継ぎの期限を決める、という事務作業です。
貸与品・私物はどうやり取りするのか
PC・社員証・制服・鍵などの貸与品は、郵送での返却でやり取りするケースが多いようです(人材派遣会社の公式コラムや退職代行専門メディアの複数の解説による。公的な統計による裏付けはありません)。会社側から返却物リストと送付先を代行業者経由で本人に伝え、本人が郵送で返す流れになります。私物がデスクに残っている場合も同様に、会社が箱にまとめて郵送するか、本人の希望する方法で受け渡します。直接の再会を避けたいという事情があっての退職代行利用なので、対面でのやり取りを前提にしない設計になっているのが実務上の特徴です。
離職票・源泉徴収票は届くのか(会社の義務)
退職代行を使われたことを理由に、会社がこれらの書類の発行を拒否することはできません。退職者から使用期間・業務の種類・地位・賃金・退職の事由についての証明書(退職証明書)を請求されれば、会社(使用者)は遅滞なく交付する義務があります(労働基準法22条1項、e-Gov法令検索)。離職票についても、退職者がハローワークでの失業給付の手続きに必要な書類のため、会社は雇用保険の資格喪失日の翌日から10日以内に、雇用保険被保険者資格喪失届と離職証明書をハローワークに提出する義務があります(雇用保険法施行規則7条。厚生労働省「雇用保険事務手続きの手引き」2025年8月版で確認)。
こじれた辞め方をしても、この義務は変わりません。
職場ではどう受け止められるのか
企業向けの人事・労務コラムを調査した範囲では、退職代行を使われた際にまず優先されるのは感情的な反応よりも「引き継ぎがどこまで済んでいるか」「誰が業務を引き継ぐか」「採用や配置転換をいつから動かすか」といった実務上の段取りだと説明されています(一次情報は確認できず)(現場の受け止め方についての公的な統計・調査は見つからなかった)。もちろん、上司個人の感情面での反応は人によって差があります。ここは会社の制度や法律ではなく、個人の受け止め方の問題です。
次にやること
会社側にできることが法律上限られている以上、「会社にどう思われるか」を理由に決断を先延ばしにする必要はありません。次にやることは1つ、退職代行の無料相談で、自分のケースで有給がどのくらい残っているか、貸与品は何があるかを整理してみることです。相談しただけでは契約になりません。
※本記事は2026年8月時点の情報に基づく一般的な解説です。個別のトラブル(損害賠償の可能性がある行為をしてしまった場合など)については、弁護士など専門家に個別に相談してください。心身の不調がある場合は、退職の判断とは別に医師・産業医に相談してください。
出典 - 民法627条1項(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 - 弁護士法72条(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000205 - 労働基準法22条1項・39条5項(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049 - 雇用保険法施行規則7条(資格喪失届の提出期限=資格喪失日の翌日から10日以内)厚生労働省「雇用保険事務手続きの手引き【第2編】被保険者資格の取得・喪失編(令和7年8月版)」https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001573350.pdf - 退職代行利用時の損害賠償請求の要件・事例:トップコート国際法律事務所「退職代行で損害賠償請求される?訴えられる事例8選を弁護士が解説」(弁護士監修、2026年8月確認)https://topcourt-law.com/roudou/057
※「職場ではどう受け止められるのか」の節は、複数の人事・労務向けコラムの記述をもとにした一般的な傾向の紹介であり、公的な統計・調査による裏付けは確認できていません(一次情報は確認できず)。「会社にはどう連絡が来るのか」「貸与品・私物はどうやり取りするのか」の各節も同様に、人材業界・退職代行専門メディアの複数の解説をもとにした一般的な傾向であり、公的な統計・調査による裏付けはありません。