退職を伝えたら有給を欠勤扱いにされた
- 1退職を伝える
- 2有給消化を申請
- 3会社が欠勤扱いにする
- 4証拠を残す
- 5労基署・弁護士へ相談
この記事の内容
退職を伝えたら、残っている有給休暇を「欠勤」として給与明細に記載された。そんな相談です。 結論から言うと、有給休暇は労働基準法第39条で定められた労働者の権利です。退職日が決まっていて、その日までに消化しきれる日数であれば、会社側が取得の時季をずらすことはできないと考えるのが一般的です(根拠は次の章)。まずは何が起きているかを確認し、そのうえで動き方を選びます。
有給を欠勤扱いにされる相談は、公的にどう数えられているか
厚生労働省の個別労働紛争解決制度の施行状況(令和5年度)では、民事上の相談は「いじめ・嫌がらせ」「自己都合退職」「解雇」などの項目で集計されていて、「年次有給休暇」という項目はありません。有給の欠勤扱いだけの件数を示す公的な統計は見当たりません(2026年9月確認)。
同じ資料の助言・指導の事例(別添3「令和5年度の助言・指導とあっせんの事例」)には、退職希望日までの有給消化が認められないルールだと言われた相談が載っています。労働局は事業主に民法第627条(手元の条文全文で確認)を説明し、有給の取得についても話し合うよう助言し、結果として退職前の最後の週の有給が認められた、という内容です。会社側が理由に挙げる例としては、次のようなものがあります。
- 引き継ぎが終わっていない
- 繁忙期で人手が足りない
- 「有給は使い切れない」と口頭で言われた
- そもそも取得申請の書式を渡されない
いずれも、退職日が確定している状況では、有給消化を止める理由として法的に弱いと考えられます。次の章で根拠を確認します。
有給休暇は法律でどう守られているか
有給休暇は労働基準法第39条で定められた労働者の権利です。同条第1項は、雇入れから6か月継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に、会社が有給休暇を与えなければならないと定めています(手元の条文全文で確認)。この条件を満たしていれば、会社が付与そのものを拒否することはできません。
会社側には「時季変更権」(労働基準法第39条第5項ただし書)があり、請求された時季に与えることが事業の正常な運営を妨げる場合には、他の時季に与えることができます。ただし、これは「別の時季に与える」ことができる場合の権利です。退職日が決まっていて、その後に働く日がない場合は、変更先の日がありません。愛知労働局の年次有給休暇のリーフレット(問5)は、退職が予定されている人から年休の請求があれば休暇を与えなければならず、時季の変更は「退職日や解雇日までの範囲内でしか行うことができず、それを超えての時季変更は行えない」と説明しています(2026年9月確認)。この考え方の元になった行政通達は、昭和49年1月11日基収5554号とされるものだと複数の弁護士・社労士の解説が紹介しています。ただし、この通達の原文は厚生労働省の公表資料では見つけられませんでした(2026年9月、厚労省サイトの検索と労働局のPDFで確認)。通達番号と日付は解説記事の記載であり、原文は読めていません。
つまり、退職日までの間に消化しきれる有給があるなら、会社が「欠勤」として扱う法的な根拠は基本的にありません。同条第9項は、有給休暇の期間について、就業規則などで定めた方法(平均賃金、通常の賃金、または労使協定を結んだ場合の標準報酬月額の30分の1相当額)による賃金を支払わなければならないと定めており、給与明細で欠勤控除がかかっている場合は、この賃金が払われていない可能性があります。また労働基準法附則第136条は、有給休暇を取った労働者に対し、賃金の減額その他の不利益な取り扱いをしないようにしなければならないと定めています(いずれも手元の条文全文で確認)。
欠勤扱いにされていないか確かめるチェックリスト
給与明細やメールのやり取りを、次の順番で確認してください。
- □ 有給休暇の残日数を、直近の給与明細か勤怠システムで確認した
- □ 有給取得を「いつ・何日」申請したか、日付入りの記録(メール・チャットのログ)が手元にある
- □ 給与明細に「欠勤」「欠勤控除」の記載があるか、金額とあわせて確認した
- □ 会社からの返信・拒否理由が口頭だけでなく、文字で残っているか確認した
- □ 退職日までに消化しきれる残日数か、カレンダーで日数を数えた
ここまでで「記録がない」項目があれば、まずは記録を作ることが次の一手になります。口頭でのやり取りは、後から証明しにくくなります。
会社に有給消化を求める文例
メールで送る場合の文例です。件名から結びまでそのまま使えます。
件名: 有給休暇取得についてのご確認
〇〇部 〇〇様
お世話になっております。〇〇です。
退職日である〇年〇月〇日までの間、下記のとおり年次有給休暇を取得したく、
改めてご連絡いたします。
・取得希望日: 〇年〇月〇日〜〇年〇月〇日(残日数〇日)
先日ご案内いただいた給与明細では、上記期間が欠勤として計上されておりました。
年次有給休暇は労働基準法第39条に基づく権利のため、
欠勤ではなく有給休暇としての処理をお願いできますでしょうか。
お手数をおかけいたしますが、〇月〇日までにご回答いただけますと幸いです。
〇〇
送った日時が残るよう、メールなど記録の残る手段で送ってください。口頭で伝えて終わりにしないことが重要です。
会社が応じない時の相談先はどこか
文書で伝えても状況が変わらない場合、相談先はいくつかあります。それぞれ得意な範囲が違います。
| 相談先 | できること | 向いている状況 |
|---|---|---|
| 労働基準監督署 | 労働基準法違反の疑いを伝え、会社への行政指導を求める | 証拠が揃っており、法律違反の確認を求めたい |
| 弁護士 | 会社との交渉・未払い分の請求・法的手続き | 金額が大きい、会社と直接やり取りしたくない |
| 労働組合(合同労組など) | 会社との団体交渉(労働組合法第6条。正当な理由なく団体交渉を拒むことは同法第7条第2号で不当労働行為とされる。e-Gov法令APIで確認) | 個人では言い出しにくい、仲間と一緒に動きたい |
| 退職代行サービス | 退職の意思表示・有給消化の意向伝達の代行 | もう会社と直接連絡を取りたくない |
労働基準監督署内の総合労働相談コーナーは、厚生労働省が「予約不要・無料」で、プライバシーの保護に配慮して対応すると案内しています(厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」、2026年9月確認)。また、労働基準法違反を監督署に申告したことを理由とする解雇その他の不利益な取り扱いは労働基準法第104条第2項(手元の条文全文で確認)で、労働局長への助言・指導の申出やあっせんの申請を理由とする不利益な取り扱いは個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条第3項・第5条第2項(e-Gov法令APIで確認)で、それぞれ禁止されています。ただし、労働基準監督署が行うのは法違反の是正を求める行政指導で、労働者に代わって会社と金額を交渉したり、損害賠償を請求したりする役目ではありません。金額が絡む交渉が必要な場合は弁護士が窓口になります。
それでも不安なときは退職代行という手もある
「もう会社に連絡したくない」「有給の話を切り出す気力がない」という状態であれば、退職代行サービスを使う選択肢もあります。弁護士が対応するサービスであれば、有給消化の交渉や未払い分の請求まで含めて任せられます。弁護士でない人や会社が、報酬を得る目的で他人の法律事件について代理や和解などの法律事務を業として行うことは、弁護士法第72条で禁止されています(e-Gov法令APIで確認)。
※ 各社の料金・対応範囲は2026年9月時点の調査に基づきます。依頼前に最新の料金ページを確認してください。
体調や気力がすでに削られている状態で、一人で会社と交渉を続ける必要はありません。無理をしていると感じたら、まず相談することが優先です。心身の不調がある場合は、医師や産業医への相談も並行してください。
次にやること
まずは給与明細と有給申請の記録を手元に揃えてください。記録が揃った時点で、会社に文書で確認を求めるか、労働基準監督署に相談するかを決められます。