辞めた会社から「戻ってこないか」と言われたら
- 1連絡が来る
- 2気持ちを整理する
- 3条件を確認する
- 4判断する
- 5返事をする
この記事の内容
会社を辞めたあと、元の上司や人事から「戻ってこないか」と連絡が来た人へ。この記事は、その誘いにどう向き合い、何を確認してから答えを出せばいいかだけに答える。断るべきか戻るべきかの結論は書かない。決めるのは自分だが、判断材料が整理されていないまま返事をすると、あとで後悔しやすいテーマだからだ。
辞めた直後は、連絡が来たこと自体に動揺しやすい。「やっぱり必要とされていたんだ」という安心と、「今さら何を」という戸惑いが同時に来ることも多い。まずは、その揺れ自体が自然な反応だと知っておくところから始める。
なぜ辞めた会社は「戻ってきて」と言ってくるのか
多くの場合、理由は本人の評価とは別のところにある。
| よくある理由 | 会社側の事情 |
|---|---|
| 後任が採用できていない | 求人を出しても応募が集まらない、採用に時間がかかっている |
| 引き継いだ人が回せていない | 業務が属人化していて、辞めた人にしか分からない部分が残っている |
| 繁忙期に人手が足りない | 一時的な穴埋めとして、勝手が分かる人を探している |
| 上司個人が困っている | チームの人数が減り、上司の負担が増えている |
「戻ってきてほしい」という言葉は、必ずしも「あなたが特別優秀だった」という評価だけを意味しない。会社の都合が先に立っているケースも多いことは、頭の片隅に置いておいた方がいい。もちろん本当に評価されての誘いもあるので、決めつける必要もない。
誘いを受けたとき、まず整理すること
返事を急ぐ前に、次の3つを自分の中で分けて考える。
- 辞めた理由は解消されているか: 人間関係・待遇・業務量など、辞めた原因になったことが変わらないなら、戻っても同じ理由で悩む可能性が高い
- 今の状況と比べてどうか: すでに次の仕事が決まっている、または決まりそうなら、その選択肢と並べて比べる
- 誰の都合で誘われているか: 会社の人手不足のためなのか、自分を必要としてのことなのかで、条件交渉の余地が変わる
この3つを紙に書き出すだけでも、感情と条件を分けて考えやすくなる。
戻る前に必ず確認すべき条件
「戻ってきて」の一言だけで話を進めず、次の項目は具体的に確認する。
| 確認項目 | 確認する理由 |
|---|---|
| 雇用形態・役職・給与 | 辞める前と同じ条件とは限らない。口約束ではなく書面(雇用契約書・労働条件通知書)で確認する。労働条件の明示は使用者の義務(労働基準法第15条) |
| 辞めた原因になった問題が変わったか | 人間関係が原因なら、その相手の異動有無。業務量が原因なら、体制の変化 |
| 入社日・引き継ぎの期限 | 今の仕事や次の予定と重なっていないか |
| 有給休暇・退職金の扱い | 下記の通り、一度退職すると多くの場合リセットされる |
| 失業保険への影響 | 受給中・受給前かで扱いが変わる(下記参照) |
条件が口頭だけで、書面が出てこない場合は注意が必要。戻る前提で話が進んでも、労働条件通知書か雇用契約書をもらうまでは正式な合意にしない方がよい。
一度辞めると、有給休暇や退職金はどうなるか
年次有給休暇は、労働基準法第39条により、同じ会社での継続勤務年数に応じて付与される。一度退職して再び雇用契約を結んだ場合、その間に労働関係が実質的に途切れていれば、法律上は新しい雇用契約として扱われ、勤続年数はゼロからのカウントになるのが原則(継続勤務にあたるかどうかは実質的な労働関係の断絶の有無で判断するという厚生労働省の通達=昭和63年3月14日基発150号)。ごく短期間で再雇用された場合や、就業規則に継続勤務とみなす特別な定めがある場合は例外もあるため、戻る前に人事に個別確認した方がいい。
退職金についても同様で、多くの会社では「在職期間」を基準に金額が決まる。ただし退職金は労働基準法上、支給が義務付けられた制度ではない。就業規則に退職手当の定めを置く場合は、対象範囲・計算方法・支払時期を明記する義務がある(労働基準法第89条)という位置づけなので、実際の基準は会社ごとの退職金規程によって大きく違う。戻る前に規程を確認する。
失業保険を受給中・受給前に誘われた場合
失業保険(雇用保険の基本手当)を受給している最中、または受給前の段階で元の会社から誘われた場合は、再就職手当との関係に注意が必要になる。再就職手当は、基本手当の支給日数を一定以上残して早期に再就職した場合に支給される制度だが、離職前の事業主(資本・資金・人事・取引などの面で密接な関係にある事業主を含む)に再び雇用された場合は、原則として対象外とされている(厚生労働省・ハローワークの再就職手当の案内。申請時にも離職前の会社と関連がないことを証明する書類の提出が求められる)。つまり「元の会社に戻る」という選択自体は自由だが、それによって再就職手当がもらえると期待していると、実際には対象外だったというケースがある。ハローワークに正直に相談し、事前に確認してから動くのが確実(再就職手当の詳しい条件は別記事「再就職手当とは」で扱っている)。
退職代行を使って辞めた場合、戻れるのか
退職代行を使って辞めた場合、会社側の心証としては気まずさが残ることが多い。ただし、退職代行を使ったこと自体は「もう戻れない」ことを意味しない。会社が改めて連絡をしてきた以上、人手が必要な事情は変わっていないことが多く、過去の辞め方を理由に一切話をしないという会社ばかりでもない。
一方で、退職代行を使わざるを得なかった理由(直接話せない関係性、パワハラ的な対応など)が解消されていないなら、戻ることで同じ状況に逆戻りするリスクは高い。退職代行を使った経緯そのものより、辞めた原因が変わったかどうかを判断材料にする方が現実的。
断る場合の伝え方
戻らないと決めた場合、連絡してきた相手への返信は簡潔でいい。
- 誘ってもらったことへの感謝を一言添える
- 理由を詳しく説明する義務はない。「現在の状況を踏まえ、戻ることは考えていません」で十分
- 今後も関わりが続く業界・地域であれば、角を立てない言い方を意識する
謝りすぎたり、長々と理由を説明したりする必要はない。断ることは失礼ではない。
戻る場合に忘れずやること
戻ると決めた場合は、次の2点を必ず先に済ませておく。
- 給与・役職・業務内容を明記した雇用契約書または労働条件通知書を受け取る
- 今の勤務先や、進んでいた選考がある場合はその状況を整理してから返事をする(二重に約束してしまわないため)
口約束のまま「じゃあ来週から」と進めてしまうと、条件面での認識違いがあとから表面化しやすい。
次にやること
連絡が来た時点で、まず「辞めた理由が今も残っているか」を自分の中で書き出す。それが変わっていないなら、条件がどれだけ良くても慎重に。変わっているなら、条件を書面で確認したうえで判断する。