育休中に退職できるか
- 育休中の退職自体は民法627条により労働者の自由で、会社の同意は不要
- 育児休業給付金は退職日まで支給され(令和7年4月1日以後に退職した場合。それ以前の退職は別の取扱い。厚生労働省Q&A)、それより前に受け取った分の返還は不要
- ただし受給資格の確認時点ですでに退職が決まっていた場合は、その期間分は支給対象外になる
- 給付率は休業開始から180日まで67%、181日目以降は50%(雇用保険法第61条の7第6項)
この記事の内容
この記事は、育児休業を取得中で、そのまま退職することを考えているが、「育休中に辞めていいのか」「育児休業給付金はどこまでもらえるのか」が分からず不安な人に向けて書いています。 結論から言うと、育休中の退職は法律上できます。育児休業給付金は、退職日まで支給され(令和7年4月1日以後に退職した場合)、それより前に受け取った分を返す必要はありません。ただし、育休を取る時点ですでに退職を決めていた場合は、給付そのものが対象外になることがあります。この記事では、その線引きを整理します。
- 育休中に退職を切り出したら、会社や周りにどう思われるか不安
- 育児休業給付金をもらいながら辞めたら、あとで返還を求められないか心配
- 復帰するかどうかまだ迷っていて、いつ・どう伝えればいいか分からない
結論:育休中の退職はできる。給付金は「退職日」まで
育休中であっても、退職の意思表示自体は労働者の自由です(民法627条1項、期間の定めのない雇用契約は申し入れから2週間で終了。2026年9月7日、条文原文で確認)。会社の許可がなければ辞められない、ということはありません。
育児休業給付金については、厚生労働省の「Q&A育児休業等給付」に次のように示されています。
・育児休業給付金の支給対象期間中に退職した場合、退職日までが支給対象になる(令和7年4月1日以後に退職した場合。それより前に退職した場合は、退職日を含む支給単位期間の一つ前の支給対象期間までが対象という別の取扱いだった) ・受給資格確認の時点で退職が予定されていた場合を除き、それまでに受け取った給付金を返還する必要はない (厚生労働省「Q&A育児休業等給付」Q50・Q51、2026年9月7日確認)
つまり、「育休の途中で退職を決めた」という一般的なケースであれば、退職日までの分はもらえて、それ以前の受給分の返還も不要、というのが原則です。ただし後述するとおり、育休を取る時点で退職が決まっていた場合は扱いが変わります。
そもそも育休中に退職してよいのか
育児・介護休業法は、育児休業の申出や取得を理由に会社が労働者を解雇したり不利益に扱ったりすることを禁じています(育児・介護休業法10条、2026年9月7日確認)。これは「会社側から一方的に不利益を受けない」ための規定であって、労働者本人が自分の意思で退職を選ぶこと自体を制限するものではありません。
期間の定めのない雇用契約(正社員など)であれば、民法627条1項により、退職の申し入れから2週間が経過すれば契約は終了します(2026年9月7日、条文原文で確認)。就業規則で「1か月前までに申し出る」といった定めがある会社も多いですが、法律上の最低ラインは2週間です。
一方、契約社員やパートなど期間の定めのある雇用契約の場合は、契約期間の途中での退職に制約が出ることがあります(やむを得ない事由が必要、など)。育休中かどうかにかかわらず、契約形態によって条件が変わる点は注意してください。
育児休業給付金の基本をおさらいする
退職時の扱いを理解する前提として、育児休業給付金の基本を確認しておきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 1歳未満(要件により最長2歳まで延長可)の子を養育するために育児休業を取得した雇用保険の被保険者 |
| 主な支給要件 | 休業開始前2年間に、賃金支払基礎日数11日以上(または就業時間80時間以上)ある月が12か月以上あること |
| 給付率 | 休業開始から180日目までは休業開始時賃金の67%、181日目以降は50% |
| 支給の単位 | 育児休業を開始した日から起算した1か月ごとの「支給単位期間」ごとに支給 |
| 就業日数の制限 | 1支給単位期間中の就業日数が10日(10日を超える場合は就業時間80時間)以下であること |
(厚生労働省「Q&A育児休業等給付」Q11・Q12、2026年9月7日確認。給付率67%/50%・180日の区分は雇用保険法第61条の7第6項、2026年9月7日、条文原文で確認)
つまり育児休業給付金は、1回でまとめて振り込まれるものではなく、1か月ごとの「支給単位期間」を単位にして、その都度ハローワークが支給を決定していく仕組みです。退職時の扱いも、この「支給単位期間」を軸に考える必要があります。
退職を決めたら、給付金はどこまでもらえるか
育休の途中で退職を決めた場合の考え方は、次の2つに分けて整理できます。
| ケース | 給付金の扱い |
|---|---|
| 育休を取り始めた時点では復帰するつもりで、その後に退職を決めた | 退職日まで支給対象(令和7年4月1日以後に退職した場合)。それより前に受け取った分の返還は不要 |
| 育休の受給資格を確認する時点で、すでに退職することが決まっていた | その期間は支給対象外(育児休業給付は職場復帰を前提とした給付のため) |
(厚生労働省「Q&A育児休業等給付」Q50・Q51の要旨、2026年9月7日確認)
一点補足します。この「退職日まで支給対象」という取扱いは、令和7年4月1日以後に退職した人から適用されるものです。それより前(令和7年3月31日以前)に退職した人は、退職日を含む支給単位期間の一つ前の支給対象期間まで、という別の(より不利な)取扱いでした。2026年に育休中の退職を検討している場合は、現行の「退職日まで」の取扱いが適用されます(厚生労働省「Q&A育児休業等給付」Q50、2026年9月7日確認)。
注意が必要なケース:育休の時点ですでに退職を決めていた場合
育児休業給付金は「育児休業終了後に職場復帰すること」を前提にした給付金です。そのため、育休を取得する段階で退職することがすでに決まっている場合(たとえば「育休を取りながら転職活動をして、復帰せず退職するつもりだった」など)は、そもそも受給資格の確認自体が通らない、または給付の対象外と判断されることがあります(厚生労働省「Q&A育児休業等給付」Q50、2026年9月7日確認)。
「育休中に気持ちが変わって退職を決めた」場合と、「最初から退職前提で育休を取った」場合とでは、給付金の扱いが変わります。どちらに当たるかの判断はハローワーク側が行うため、迷う場合は退職の意思を固める前に、一度ハローワークへ相談しておくと安心です。
会社への伝え方とハローワークへの確認事項
育休中に退職を決めたら、次の2か所への連絡が必要になります。
- 会社(人事・上長)への退職の申し出:就業規則に定められた期限(多くは1〜2か月前)を確認したうえで、書面またはメールなど記録に残る形で伝えるのが望ましいです。育休中は直接顔を合わせる機会が少ないため、口頭だけで済ませず、退職日を明記した連絡を残しておくと、後々の行き違いを防げます。
- ハローワークへの確認:育児休業給付金を受給中の場合、退職日が確定した時点で、会社を通じて(または本人から)ハローワークにその旨を伝える必要があります。退職に伴い、育児休業給付金から失業保険(基本手当)への切り替え手続きが必要になるため、離職票の受け取り方や次の手続きについても、この時点で確認しておくとスムーズです。
退職代行を使う場合でも、給付金の受給資格や退職日の記録に関わるやり取りは、最終的に本人かハローワークとの間で必要になります。退職の意思表示自体を代行してもらうことと、給付金の手続きを進めることは別だと考えておいてください。
実体験について、正直に書きます
私自身は2026年に会社都合で退職し、離職票を受け取ってハローワークで失業保険の手続きをした実体験はありますが、育休を取得した経験、および育休中に退職した経験はありません。そのため、この記事で書いた育児休業給付金の支給範囲についての整理は、自分の体験ではなく、厚生労働省が公開しているQ&Aを調査した範囲でのものです。特に「退職した場合、給付金はどこまで支給されるか」は、令和7年4月に取扱いが変わった経緯があり、古い情報のまま止まっているサイトも見られたため、厚生労働省の最新のQ&A本文にあたって確認しました。
次にやること
まず、退職の意思を固める前に、育休を取得している会社の担当部署に給付金の受給状況を確認し、それから管轄のハローワークへ「いつ退職すると、給付金はどこまでの支給になるか」を個別に聞いてください。制度の原則(退職日まで支給・それ以前の返還は不要)は分かっても、実際の支給額の計算は自分の育休開始日・賃金額によって変わるため、最終的な確認は自分のケースに沿って行うのが確実です。
退職の伝え方や手続きに不安がある場合は、退職代行の利用も選択肢の一つです。
※本記事は2026年9月時点で確認できた情報の整理です。育児休業給付金の支給要件・給付率・退職時の扱いは制度改正により変わる可能性があるため、実際の手続きにあたっては厚生労働省の公式サイトおよび最寄りのハローワークで最新の内容をご確認ください。
出典 - 厚生労働省「Q&A育児休業等給付」(令和8年8月版)Q11・Q12(支給要件・支給単位期間)、Q50・Q51(退職時の支給の扱い・返還の要否): https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158500.html (2026年9月7日確認。同ページからPDF本体にリンクあり) - 給付率67%(休業開始から180日目まで)・50%(181日目以降)の区分:雇用保険法第61条の7第6項(2026年9月7日、条文原文で確認) - 退職した場合の給付金の支給範囲(退職日まで支給対象):厚生労働省「Q&A育児休業等給付」Q50。この取扱いは令和7年4月1日以後に退職した人から適用され、それ以前の退職者は別の取扱いだった(同Q50、2026年9月7日確認) - 民法627条1項(期間の定めのない雇用契約の解約申入れ):2026年9月7日、条文原文で確認 - 育児・介護休業法10条(育児休業の申出・取得を理由とする不利益取扱いの禁止):2026年9月7日確認