教育訓練給付金とは
- 教育訓練給付金は1つの制度ではなく、給付率が違う3種類(一般20%・特定一般40%・専門実践50〜80%)が存在する
- どれに当てはまるかは「資格の種類」と「訓練の期間」でほぼ決まる
- 被保険者期間(在職・離職の通算)の要件は3種類とも似ているが、専門実践だけ初回2年以上という例外がある
- 離職者は資格喪失日(離職日の翌日)から受講開始日まで原則1年以内という期限があるため、退職後に検討するなら早めに講座を絞り込むのが安全
この記事の内容
この記事は、退職や転職を機に「教育訓練給付金」という言葉を調べ始めたが、種類が複数あることに気づいて混乱している人に向けて書いています。 結論から言うと、教育訓練給付金は1つの制度ではなく、給付率も対象講座もまったく違う「一般」「特定一般」「専門実践」の3種類が並んでいる制度です。どれが自分に使えるかは、受けたい講座がどの類型に指定されているかでほぼ決まります。この記事では3種類それぞれの給付率・対象講座・支給要件を、厚生労働省が公開している資料に基づいて整理します。
結論:給付率がまったく違う3種類がある
教育訓練給付金は、雇用保険法第六十条の2を根拠に、厚生労働大臣が指定した講座を受講・修了した人に、支払った費用の一部をハローワークが支給する制度です(条文本文を確認済み)。「教育訓練給付金」という名前は1つですが、具体的な給付率・上限額は雇用保険法施行規則第百一条の二の七・第百一条の二の八で次の3種類に分かれて定められています(条文本文を確認済み)。
| 種類 | 給付率(基本) | 上限額の目安 |
|---|---|---|
| 一般教育訓練給付金 | 20% | 10万円 |
| 特定一般教育訓練給付金 | 40%(+条件で最大50%) | 20万円(+条件で最大25万円) |
| 専門実践教育訓練給付金 | 50%(+条件で最大80%) | 年間40万円(+条件で最大64万円) |
つまり、同じ「教育訓練給付金」という言葉を使っていても、一般と専門実践では戻ってくる金額の考え方が根本的に違います。まず自分が受けたい講座がどの類型に指定されているかを確認しないと、給付率の話をしても意味がありません(講座ごとの指定状況は、厚生労働大臣指定教育訓練講座検索システム https://www.kyufu.mhlw.go.jp/kensaku/ で調べられます)。
一般教育訓練給付金とは|誰でも入りやすい20%
一般教育訓練給付金は、厚生労働大臣が「雇用の安定または就職の促進に資する」と指定した講座を修了した場合に、支払った教育訓練経費の20%(上限10万円)が支給される制度です(雇用保険法施行規則第百一条の二の七第一号・第百一条の二の八第一号、および厚生労働省公式サイト「教育訓練給付金」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html で2026年9月に確認)。3種類の中でもっとも講座数が多く、簿記・宅建・TOEICなど、キャリアアップを目的に受講する人が多い資格が中心です。
対象講座の例(厚生労働省資料より):
- 事務関係: 簿記検定、TOEIC、実用英語技能検定(英検)、TOEFL iBT、中国語検定
- 専門的サービス関係: 税理士、社会保険労務士、行政書士、中小企業診断士、司法書士
- 情報関係: Webクリエイター、CAD利用技術者試験、Oracle認定資格
- 営業・販売・サービス関係: 宅地建物取引士、調理師、インテリアコーディネーター
- 輸送・機械運転関係: 大型自動車免許、建設機械運転、無人航空機操縦士
支給の対象となる方(すべて満たす必要があります)
- 雇用保険の被保険者(在職者)または被保険者であった方(離職者)であること
- 離職者の場合、被保険者資格を喪失した日(離職日の翌日)以降、受講開始日までが1年以内であること(妊娠・出産・育児・疾病等の理由で延長された場合は最大20年以内)
- 受講開始日までの雇用保険の被保険者期間が3年以上(初めて教育訓練給付金を受ける場合は1年以上)あること
特定一般教育訓練給付金とは|再就職に直結する40%
特定一般教育訓練給付金は、「速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する」と指定された講座が対象で、支払った教育訓練経費の40%(上限20万円)が支給されます(雇用保険法施行規則第百一条の二の七第二号・第百一条の二の八第二号)。さらに、資格を取得したうえで訓練修了日の翌日から1年以内に雇用された場合(または訓練修了時点で既に雇用されている場合)は、10%(上限5万円)が追加支給され、合計で最大50%(上限25万円)になります(雇用保険法施行規則第百一条の二の七第三号・第百一条の二の八第三号。この追加支給は令和6年10月1日以降に受講を開始した方が対象であることを、厚生労働省公式サイト「教育訓練給付金」で2026年9月に確認)。
対象講座の例(厚生労働省資料より):
- 業務独占資格・名称独占資格・必置資格の養成施設課程: 介護職員初任者研修、介護支援専門員実務研修、大型自動車第一種免許 等
- ITSSレベル2の情報通信技術関係資格: 基本情報技術者試験 等
- 短時間の職業実践力育成プログラム(BP)・キャリア形成促進プログラム(CP): AI・セキュリティ人材育成プログラム、認定看護管理者教育課程 等
- 職業能力評価制度(技能検定・団体等検定)の合格を目標とする課程
支給の対象となる方は、被保険者期間の要件(3年以上、初回は1年以上)や離職者の受講開始期限(資格喪失日から1年以内)を含め、一般教育訓練給付金とほぼ同じです。
専門実践教育訓練給付金とは|長期の専門資格で最大80%
専門実践教育訓練給付金は、「中長期的なキャリア形成」を支援する制度で、看護師・介護福祉士などの業務独占資格の養成課程や、専門学校の職業実践専門課程、専門職大学院などが対象です(雇用保険法施行規則第百一条の二の七第四号)。3種類の中でもっとも給付率が高く、支給の仕組みも段階的になっています。
専門実践は「受講中6か月ごとの支給分」と「修了後に条件を満たすと加わる分」の合計で最大80%になる仕組みです。一括で80%が戻ってくるわけではありません。
| 段階 | 給付率 | 上限額の目安 | 条件 |
|---|---|---|---|
| ①基本(受講中〜修了) | 経費の50% | 年間40万円 | 6か月ごとに支給。経費の50%が4千円を超えない場合は支給されない |
| ②資格取得+就職 | +経費の20% | 年間16万円追加(2年で32万円、3年で48万円が上限) | 訓練修了日の翌日から原則1年以内に資格を取得し、雇用保険の被保険者として雇用された場合 |
| ③さらに賃金5%以上上昇 | +経費の10% | 年間8万円追加(2年で16万円、3年で24万円が上限) | ①②に加え、修了後の賃金が受講開始前より5%以上上昇した場合(2024年10月1日以降に受講を開始した方が対象) |
①②③をすべて満たすと合計80%になりますが、これは令和6年10月1日以降に受講を開始した場合の上限です。令和6年9月30日以前に受講を開始した場合は、③の対象外のため最大70%になります(雇用保険法施行規則第百一条の二の七第五号・第六号、および厚生労働省公式サイト「教育訓練給付金」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html で2026年9月に確認)。
支給の対象となる方は、一般・特定一般よりやや細かく分かれています。
- 在職中の被保険者: 受講開始日において、雇用保険の被保険者として雇用された期間(支給要件期間)が3年以上(当分の間の経過措置として、初めて受ける場合は2年以上。厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク発行「専門実践教育訓練の給付金のご案内」で2026年9月に確認)
- 離職者(被保険者であった方): 離職日の翌日から受講開始日までが1年以内(延長で最大20年以内。雇用保険法施行規則第百一条の二の五)、かつ支給要件期間が3年以上(当分の間、初めては2年以上)
また、専門実践教育訓練を昼間通学制で受講していて、かつ受講中に失業状態にある場合は、「教育訓練支援給付金」として雇用保険の基本手当日額の60%(令和7年3月31日以前に受講を開始した場合は80%)が別途支給される仕組みもあります(雇用保険法附則第十一条の2。支給対象は受講開始時に45歳未満の方で、受講開始日が令和9年3月31日以前の教育訓練に限る時限措置であることを、厚生労働省「Q&A専門実践教育訓練給付金」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000197058.html で2026年9月に確認)。この制度自体は教育訓練給付金とは別枠のため、詳細は別の機会に扱います。
3つの違いを一覧で比較する
| 一般 | 特定一般 | 専門実践 | |
|---|---|---|---|
| 給付率(基本) | 20% | 40% | 50% |
| 給付率(条件を満たした場合の最大) | 20% | 50% | 80%(※2024/10以降受講開始) |
| 上限額(基本) | 10万円 | 20万円 | 年間40万円 |
| 支給のタイミング | 修了後に一括 | 修了後に一括 | 受講中6か月ごと+修了後追加 |
| 被保険者期間の要件(初回) | 1年以上 | 1年以上 | 2年以上(当分の間) |
| 対象講座の傾向 | 汎用資格(簿記・宅建・TOEIC等) | 再就職直結の実務資格(介護・IT等) | 国家資格の養成課程(看護師・介護福祉士等) |
給付率だけ見ると専門実践が一番お得に見えますが、対象講座はどれも数か月〜数年単位の専門的な養成課程に限られます。短期間で資格を取りたいなら一般か特定一般、時間をかけて国家資格を取り直したいなら専門実践、という住み分けです。
退職者(離職者)が注意すること|受講開始の期限
3種類とも共通して、離職者が利用する場合は「被保険者資格を喪失した日(離職日の翌日)から受講開始日までが原則1年以内」という期限があります(妊娠・出産・育児・疾病等の理由があれば、ハローワークへの申し出により最大20年まで延長可能)。
退職してすぐは失業保険の手続きや次の仕事探しに気を取られがちですが、教育訓練給付金を使いたい講座がある場合は、この1年の期限を意識しておく必要があります。期限が近づいてから慌てて申し出るより、離職後早い段階で「延長が必要になりそうか」を考えておくほうが安全です。
自分がどれに当てはまるか調べる方法
受けたい講座がどの類型(一般・特定一般・専門実践)に指定されているか、そもそも指定を受けているかどうかは講座ごとに異なります。同じ「宅建の講座」でも、指定を受けている学校とそうでない学校があります。
- 厚生労働大臣指定教育訓練講座検索システム(https://www.kyufu.mhlw.go.jp/kensaku/)で講座名・学校名から指定状況を検索する
- 受講を検討している学校・スクールに、指定講座かどうか、指定されている場合はどの類型かを直接確認する
- 被保険者期間や離職からの経過期間など、支給要件を満たしているかは最終的にハローワークの教育訓練給付コーナーで確認する
実体験について、正直に書きます
私自身は、2026年に会社都合で退職した後、失業保険の受給とハローワークでの求職活動は経験しましたが、教育訓練給付金を利用したことはありません。ハローワークで案内窓口や求職者支援訓練のポスターを見かけた記憶はありますが、実際に制度を使って講座を受講してはいないため、この記事の内容は自分の体験ではなく、厚生労働省が公開している一般・特定一般・専門実践それぞれの公式パンフレットを調査した範囲で整理したものです。
次にやること
まずは厚生労働大臣指定教育訓練講座検索システム(https://www.kyufu.mhlw.go.jp/kensaku/)で、自分が受けたい講座がどの類型に指定されているかを検索してください。指定の有無と類型が分かれば、この記事の比較表に当てはめて給付率と上限額が見えてきます。
退職を検討している段階で、教育訓練給付金と合わせて退職の進め方自体に迷っている場合は、退職代行の利用も選択肢の一つです。
※本記事は2026年9月時点で厚生労働省が公開している資料(「一般教育訓練給付金のご案内」「特定一般教育訓練給付金のご案内」「専門実践教育訓練の『教育訓練給付金』のご案内」)に基づく一般的な情報です。給付率・上限額・対象講座・支給要件は今後の制度改正により変わる可能性があるため、実際の申請前には必ず最寄りのハローワークまたは厚生労働省の公式サイトで最新情報をご確認ください。