退職後の住民税はいつ・いくら来るか
- 1退職する
- 2天引きが止まる
- 3納付書が届く
- 4年額を確認する
- 5分割で払う
会社を辞めたあと、しばらくして住民税の納付書が届いて驚いた人向けの記事です。結論を先に言うと、住民税は「前の年の所得」に対する後払いの税金なので、退職して収入が減ったあとに、在職中の所得を基準にした請求が来ます。
「もう辞めたのに、なぜこんなに高い税金を払うのか」の答えは、ここにあります。
仕組みを知っていれば、いくら残しておけばいいかは事前に見積もれます。
結論:まず何をするか
| 状況 | やること | 出どころ |
|---|---|---|
| 退職時期が1〜4月 | 本人が希望しなくても、残りの住民税は最後の給与や退職金からまとめて天引きされる(一括徴収が義務)。手取りが想定より少なくなることを先に確認する | 地方税法321条の5第2項 |
| 退職時期が6〜12月 | 天引き(特別徴収)が止まり、自分で納付書を使って払う「普通徴収」に切り替わる。本人が申し出れば一括徴収を選ぶこともできる | 地方税法321条の5第1項ただし書 |
| 5月に退職 | 一括徴収ではなく、5月分までを通常どおりの特別徴収(天引き)で終える扱いになる | 東京都主税局「特別徴収にかかる手続きについて」(2026年8月確認) |
| 前年の所得がある(在職していた) | 退職して無職・減収になった年でも、前年分の住民税は満額で請求される。退職金とは別に、生活費から先に確保しておく | 地方税法32条・313条(所得割の課税標準は前年の所得) |
| 支払いが厳しい | 分割・減免・猶予の相談を居住市区町村の税務窓口にできる場合がある(天災や生活困窮などが対象例) | 地方税法323条(市町村の条例による減免) |
住民税は前の年の稼ぎにかかります。辞めて収入が無くなった年も、満額で請求が来ます。しかも辞める月によって、最後の給与からまとめて引かれるか、自分で払うかが変わります。
なぜ「辞めたあとに来る」のか
住民税は、その年の1月1日時点で住んでいる市区町村に対して、前の年1年間の所得をもとに計算される税金です(所得割の課税標準は「前年の所得について算定した総所得金額」と規定されており、地方税法32条(道府県民税)・313条(市町村民税)がその根拠です)。会社員のあいだは、この税額を会社が給与から毎月天引きして市区町村に納めています。これを「特別徴収」と呼びます。
在職中は「今の給料から今の税金が引かれている」ように見えますが、実際には去年の所得に対する税金を、今の給料から天引きしているという後払いの構造です。だから退職すると、次のことが起きます。
- 退職した年の途中までは、在職中の所得に対する住民税を払い続けている(天引きが止まるだけ)
- 退職した翌年は、退職した年(まだ働いていた分の所得がある年)の住民税を、収入が減った状態で払うことになる
つまり「辞めた年」と「辞めた翌年」の2段階で、収入が下がったタイミングと納税のタイミングがずれます。
「聞いてない請求」だと感じるのは、思い込みではありません。
退職時期で天引きの扱いが変わる
住民税の天引き(特別徴収)が止まったあとの扱いは、退職した月によって変わります。
| 退職月 | 天引きの扱い |
|---|---|
| 1月〜4月に退職 | 本人の申し出の有無にかかわらず、その年度の残りの住民税(月割額の全額)を、5月31日までに支払われる最後の給与または退職金からまとめて天引きされる(地方税法321条の5第2項) |
| 5月に退職 | 一括徴収は発生せず、5月分までを通常どおりの特別徴収(天引き)で終える(東京都主税局、2026年8月確認) |
| 6月〜12月に退職 | 天引きが止まり、残額は本人が納付書で払う「普通徴収」に切り替わる。本人からの申し出があれば、最後の給与や退職金から一括徴収してもらうことも選べる(地方税法321条の5第1項ただし書) |
1〜4月退職の場合は「最後の給与や退職金が思ったより少なかった」という形で先に負担が来ます。6〜12月退職の場合は、天引きが止まった時点では請求が見えず、しばらくしてから市区町村より納付書が届く形で負担が来ます。
どちらのタイプで辞めるかで、お金の見え方が違います。先に知っておけば慌てません。
いくら残しておくべきか
正確な税額は前年の所得と居住する市区町村の税率によって決まるため、この記事で一律の金額は出せません。ただし、次の手順で自分の場合の目安は計算できます。
- 前年の源泉徴収票を用意する — 「支払金額」や「給与所得控除後の金額」など、所得を確認できる書類です
- 市区町村から届く「住民税額決定通知書」を確認する — 在職中も毎年5〜6月ごろに会社経由で配られている書類です。ここに年間の住民税額が明記されています
- 月々の天引き額×残りの月数分を、退職後の生活費とは別に確保しておく — 天引きが止まった時点で「もう払い終わった」と考えず、その年度の残り分がまだあることを前提に残しておきます
住民税の税率は所得に応じてかかる「所得割」と、定額でかかる「均等割」の合計で決まります。地方税法が定める標準税率は、所得割が合計10%(市町村民税6%+道府県民税4%。政令指定都市在住の場合は市町村民税8%+道府県民税2%で合計は変わらず10%、地方税法314条の3・35条)、均等割が合計4,000円(市町村民税3,000円+道府県民税1,000円、地方税法310条・38条)です。これに加えて、2026年時点では国税の森林環境税(年1,000円、市町村が個人住民税とあわせて徴収)が上乗せされるため、均等割相当の実質負担は年5,000円程度になります。ただし自治体が条例で標準税率と異なる税率(超過課税)を定めている場合もあるため、正確な金額は住民税額決定通知書で確認してください。
給与所得者であれば、直近の住民税額決定通知書に記載された年額を12で割ってください。それが、天引きされていた月々のおおよその負担額にあたります。
支払いが厳しいときの相談先
退職直後は収入が不安定になりやすく、住民税の負担が重く感じられることがあります。滞納する前に、居住する市区町村の税務課(住民税担当窓口)に相談することが対処の基本です。地方税法323条は、天災その他特別の事情がある場合や、貧困により公私の扶助を受けている場合など「特別の事情がある者」に限り、市区町村が条例の定めるところにより住民税を減免できると定めています。ただし、具体的にどこまでが対象になるか(所得減少の基準・必要書類・分割納付の条件)は条文上「市区町村の条例で定める」とされているだけで、全国共通の基準は地方税法には存在しません(公式の一次情報を確認した上での「一次情報なし」。総務省・地方税法の条文いずれにも全国統一の基準は見当たりませんでした)。正確な条件は、居住する市区町村の税務課に直接確認してください。
放置すると延滞金が加算されたり、督促の対象になったりします。払えないと分かった時点で、早めに連絡してください。
実体験について
私は2026年6月末に会社都合で退職しています。天引き(特別徴収)が止まったあと、実際に届いた住民税の納付書は、1期分(3ヶ月分)ずつ、年4回に分けて払う「普通徴収」の形でした。上で説明した「6月〜12月退職は普通徴収に切り替わる」という仕組みどおりの流れです。金額はこの記事では公開していません(前年の所得が逆算できてしまうため)が、天引きが止まったからといって支払いが終わったわけではなく、年4回に分けて残りを払っていく、という感覚は実際に経験してわかったことです。
次にやること
まず、直近で会社から配られた「住民税額決定通知書」を探し、年間の住民税額を確認することです。そこに書かれた年額から、退職までの天引き済み分を差し引けば、残りいくら払う必要があるかのおおよその見当がつきます。見つからない場合は、居住する市区町村の税務課に電話すれば、現時点での課税状況を教えてもらえます。
※本記事は2026年8月時点の情報整理です。所得割・均等割の標準税率、退職月による一括徴収のルールは地方税法の条文および東京都主税局・札幌市の公式案内で確認済みです(2026年8月確認)。ただし超過課税の有無や減免制度の対象要件は自治体ごとに条例で定められているため、正確な金額・条件は必ず居住する市区町村の税務担当窓口に直接お問い合わせください。心身の不調がある場合は、手続きより先に医師・産業医にご相談ください。
出典 - 地方税法32条(道府県民税の所得割の課税標準)・313条(市町村民税の所得割の課税標準) — いずれも「前年の所得について算定した総所得金額」と規定(前年所得課税の根拠) e-Gov法令検索 - 地方税法321条の5(退職者等に係る特別徴収税額の一括徴収) e-Gov法令検索 - 地方税法314条の3・35条(所得割の標準税率)、310条・38条(均等割の標準税率)、320条(普通徴収の納期)、323条(個人住民税の減免) e-Gov法令検索 - 東京都主税局「特別徴収にかかる手続きについて」(2026年8月確認) - 札幌市「個人市・道民税(住民税)の給与からの特別徴収について」(2026年8月確認) - 総務省「森林環境税及び森林環境譲与税」(個人一人あたり年額1,000円、個人住民税均等割とあわせて市町村が徴収)(2026年8月確認) - 減免の対象要件・必要書類は地方税法323条上「市区町村の条例で定める」とされるのみで全国共通の基準は無く、公式の一次情報として存在しないことを確認済み(一次情報なし。詳細は本文「支払いが厳しいときの相談先」を参照)