入社1週間で辞めたい
- 入社1週間でも辞める権利は他の社員と同じ(勤続日数の条件はない)
- ただし「即日」は原則できない(民法627条で2週間)
- 有給休暇はまだ発生していない(労基法39条、入社6ヶ月未満)
- 失業保険は受給できない(被保険者期間が足りない)
- 社会保険の資格取得・喪失が同じ月に起きる「同月得喪」が起きうる
- 1辞めると決める
- 2上司に伝える
- 32週間分働くか代行
- 4資格喪失手続き
- 5離職票を受け取る
この記事の内容
入社してまだ数日、あるいは1週間。「もう辞めたい」と感じているなら、まず伝えたいことがあります。辞める権利に、勤続日数の条件はありません。入社1日目でも1週間でも1年でも、法律上の扱いは同じです。
ただし1週間という短さならではの現実的な論点がいくつかあります。この記事ではそれを整理します。
結論:辞める権利は同じ、ただし即日は原則できない
| 項目 | 入社1週間の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 辞める権利そのもの | 勤続日数と無関係。条件なし | 民法627条1項 |
| 即日で辞められるか | 原則不可。会社が同意すれば可(合意退職) | 会社側の同意が要る |
| 有給休暇での消化 | 発生していないため使えない | 労働基準法39条 |
| 失業保険 | 原則もらえない(加入期間が足りない) | 雇用保険法第13条 |
| 社会保険の手続き | 資格取得と喪失が同じ月になる「同月得喪」が起きうる | 会社・年金事務所に確認 |
「まだ1週間しか働いていないのに辞めるなんて」と、自分を責めたくなるかもしれません。ですが法律上、辞める権利に勤続日数の条件はありません。合わないと感じたら、その時点で辞めていい理由として十分です。
「1週間で辞めるのは非常識」ではない
まずここをはっきりさせておきます。法律上、退職に「最低これだけは働け」という期間の定めはありません。民法627条1項は、期間の定めのない雇用契約(いわゆる正社員)であれば、退職の意思を伝えてから2週間で契約が終了すると定めています。この条文に「入社何日目以降」という条件は付いていません。
「非常識」「根性がない」と感じるとしたら、それは法律の話ではなく、周囲の反応や自分自身の評価軸から来る気持ちです。実際に、聞いていた仕事内容と違った、職場の雰囲気に耐えられない、体調を崩しそうだ、といった事情で早期に退職する人は珍しくありません。続けることで心身を削るくらいなら、早く区切りをつける方が合理的な判断です。
ただし、伝え方には配慮の余地があります。感情的に「もう無理です」とだけ伝えるより、「一身上の都合により、○月○日をもって退職させていただきたく存じます」といった形式に沿って伝えた方が、その後のやり取りは落ち着きやすくなります。
有給休暇はまだ発生していない
試用期間中の退職と同じく、入社1週間では有給休暇はまだ発生していません。労働基準法39条により、有給休暇が付与されるのは雇入れの日から6ヶ月継続勤務し、かつ全労働日の8割以上出勤した場合です。入社1週間の時点ではこの条件を満たさないため、「有給消化してから辞める」という選択肢は取れません。
つまり退職を伝えてから2週間は、原則として実際に出社(または在宅勤務)する必要があります。体調面などで出社自体が難しい場合は、民法628条の「やむを得ない事由」にあたる可能性があるため、労働基準監督署や弁護士など専門家に相談することをおすすめします。
失業保険はもらえるか
結論から言うと、入社1週間で退職した場合、その勤務先での加入期間を理由に失業保険を受給することはできません。
雇用保険の基本手当(いわゆる失業保険)を受け取るには、離職前の一定期間に雇用保険の被保険者であった期間が必要です。一般的な自己都合退職の場合は離職前2年間に通算12ヶ月以上、会社都合退職や一部の自己都合退職(特定受給資格者・特定理由離職者)の場合でも離職前1年間に通算6ヶ月以上の被保険者期間が必要です(雇用保険法第13条)。入社1週間ではこの期間を満たすことはまず不可能です。
ただし、前の勤務先での被保険者期間が通算できる場合があります。基本手当の受給資格は「離職の日以前2年間(算定対象期間)に被保険者期間が通算して12ヶ月以上」で判定するため(雇用保険法第13条)、離職から次の就職までの空白期間が短ければ、前の勤務先での被保険者期間がこの2年間の中に収まり通算されることがあります。今回の勤務先1社だけで判断せず、直近の職歴全体をハローワークの窓口で確認してもらうことをおすすめします。
社会保険の手続きはどうなるか
入社時に健康保険・厚生年金の資格取得手続きが行われている場合、退職時にはその資格喪失手続きが必要になります。入社1週間で辞めると、資格取得と資格喪失が同じ月の中で発生する「同月得喪」という状態になることがあります。
同月得喪の場合、厚生年金保険料は資格を取得した月に喪失しても原則として1ヶ月分の納付が必要です(日本年金機構「月の途中で入社したときや、退職したときは、厚生年金保険の保険料はどのようになりますか。」)。ただし同じ月のうちに転職先などで厚生年金保険・国民年金の資格を新たに取得した場合は、先に喪失した分の納付が不要になり、年金事務所から会社へ還付される仕組みがあります。健康保険料も同様に、資格を取得した月に喪失すると1ヶ月分の保険料が発生します。健康保険法第156条3項は「前月から引き続き被保険者である者が資格を喪失した場合、その月分の保険料は算定しない」と定めており、同月得喪(前月から在籍していたわけではない)はこの例外にあたらないため、原則どおりその月分の保険料が発生する仕組みです。給与から控除されていた場合の扱いは、会社の担当者や年金事務所に確認するのが確実です。ここは自分で判断せず、会社の総務・人事担当、または管轄の年金事務所に直接確認してください。
会社が手続きを進めてくれない、連絡が取れないといった場合は、退職代行サービスを通じて会社に確認を促すか、年金事務所・ハローワークに直接相談する方法もあります。
入社1週間でも退職代行を使っていいか
使えます。入社してからの日数は、退職代行を利用できるかどうかの条件にはなりません。
ただし、入社1週間ならではの事情として次の点は知っておくとよいと思います。
- 有給休暇がまだ発生していないため、「有給消化中に退職代行に連絡して、そのまま出社しない」という進め方は取りにくい場合があります
- 短期間で辞めることへの引き止めや説得が強くなるケースがあります。直接のやり取りに強い不安がある場合、退職代行Jobs、弁護士法人ガイア、退職代行ネルサポート、円満退職ユニオン のような退職代行サービスを使えば、退職の意思表示そのものを代行してもらえます(※2026年8月時点の調査。各社のサービス内容・料金は公式サイトで最新情報を確認してください)
- 社会保険の資格喪失手続きなど、事務手続き面のやり取りが必要になる場合があるため、退職代行を使う場合でも、離職票や資格喪失連絡票などの書類がいつ届くかは自分でも把握しておくと安心です
次にやること
雇用契約書か労働条件通知書を確認し、自分の雇用が「期間の定めのない雇用(正社員)」かどうかを確かめてください。そのうえで、退職の意思を伝える日を決めることが最初の一歩になります。