試用期間中の退職
- 試用期間中でも退職する権利は入社日数と無関係(辞めるのに条件は要らない)
- ただし「即日」は原則できない。退職を伝えてから2週間かかる(民法627条)
- 会社が同意すれば即日も可能。有給が残っていれば2週間を有給消化に充てられる
- 契約社員など期間の定めがある雇用は扱いが変わる
- 1退職を伝える
- 2引き止めに応じない
- 3有給消化
- 42週間で契約終了
- 5離職票を受け取る
この記事の内容
入社してまだ数週間、あるいは1ヶ月も経っていないのに「もう辞めたい」と思っている——そう感じているなら、まず知ってほしいことがあります。試用期間中でも、辞める権利は本採用後の社員とまったく同じです。入社日数による条件はありません。
ただし「即日で辞められるか」は別の話です。この記事ではその2つを分けて説明します。
結論:辞める権利は入社日数と無関係、ただし即日は原則できない
| 項目 | 試用期間中の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 辞める権利そのもの | 入社1日目でも本採用後でも同じ。条件なし | 民法627条1項 |
| 退職が成立するまでの期間 | 無期雇用(正社員)なら、意思表示から原則2週間 | 民法627条1項 |
| 即日で辞められるか | 原則不可。会社が同意すれば可(合意退職) | 会社側の同意が要る |
| ハラスメント等やむを得ない事情がある場合 | 直ちに契約解除できる可能性がある | 民法628条 |
| 契約社員などの試用期間 | 扱いが変わる。原則は契約期間中は途中退職しにくい | 民法628条・労働基準法137条 |
「試用期間中だから会社の言いなりにならなきゃいけない」「まだ何も貢献していないのに辞めていいのか」——そう感じてしまうのは自然なことです。ですが法律上、辞める権利に勤続日数の条件はありません。合わない・体調を崩しそう、と感じた時点で、それは辞めていい理由として十分です。
そもそも試用期間中に辞める権利はあるか
あります。しかも本採用後の社員とまったく同じ条件です。
試用期間というと「まだ正式な社員ではない」「会社に評価される立場」というイメージを持ちがちですが、法律上はすでに労働契約が成立しています。最高裁判所大法廷は、試用期間中の労働契約を「解約権留保付の雇用契約」——会社側に一定の解約権(本採用を見送る権利)が留保されているだけで、契約自体はもう始まっている——と整理しています(三菱樹脂事件、最高裁大法廷判決 昭和48年12月12日)。
契約がすでに始まっているということは、労働者側から辞める場合のルールも、通常の労働契約と同じになります。つまり民法627条1項がそのまま当てはまり、無期雇用(正社員)であれば、退職の意思を伝えてから2週間で契約は終了します。「試用期間中だから2週間より長くかかる」「試用期間中だから辞める資格がない」という決まりはありません。
「即日」で辞められるかは別問題
ここが一番誤解されやすいところです。辞める権利があることと、即日で辞められることは別の話です。
原則:
- 無期雇用(正社員)は、民法627条1項により、退職を伝えてから2週間は雇用契約が続きます。試用期間中もこの原則は変わりません
- 「今日で辞めます」と伝えても、会社が同意しない限り、法的にはその日に契約が終わるわけではありません
例外的に即日に近い形にできるケース:
- 会社が同意すれば即日も可能(合意退職)。試用期間中は会社側も「無理に引き止めるより早く区切りたい」と考えて応じるケースがあります。ただし会社側の判断次第で、労働者の権利として即日を求められるわけではありません
- やむを得ない事由があるときは、直ちに契約を解除できます(民法628条)。この条文は本来、契約期間の定めがある雇用(有期雇用)についての規定ですが、生命・身体への危険など深刻な事情がある場合は、無期雇用(正社員)にもその趣旨が類推適用されると解されています。ハラスメント、契約時に聞いていた労働条件との著しい相違、心身に支障が出ているなど、続けることが著しく困難な事情がある場合が想定されます。ただし何が「やむを得ない事由」にあたるかは個別の事情によるため、判断に迷う場合は労働基準監督署や弁護士など専門家に確認してください
- 有給休暇が残っていれば、2週間分を有給消化に充てられます。この場合、契約上は2週間後まで籍が残りますが、実質的には申し出た日から出社しなくてよくなります。ただし試用期間中は入社直後であることが多く、有給休暇がまだ付与されていない(労働基準法39条の要件を満たしていない)ケースも少なくありません。自分の入社日から数えて有給が発生しているかは、先に確認しておく必要があります
つまり「即日で辞めたい」という希望自体は自然なものですが、法的な原則としては2週間かかる、というのが土台の認識です。そのうえで、会社との話し合いや有給消化で、実質的な出社日をどこまで前倒しできるかを考えることになります。
「14日」ルールは会社の解雇の話であって退職とは別
「試用期間中は14日以内なら即日クビにできる」という話を聞いたことがある人もいると思います。これは事実ですが、会社が労働者を解雇する場合の話であり、労働者が退職する場合とは別のルールです。混同すると不安になるので、ここで切り分けておきます。
労働基準法21条では、解雇予告(通常は30日前の予告か、予告に代わる手当の支払いが必要)の適用が除外される対象に「試用期間中の者」が含まれています。ただし、この除外には条件があり、試用期間中の者が14日を超えて引き続き使用されるに至った場合は、この除外は適用されなくなります。つまり14日を超えて働いた時点で、会社が解雇する際にも通常どおり解雇予告(または予告手当)が必要になる、という会社側の義務の話です。
この「14日」は、労働者が辞める際の期間(2週間=民法627条)とはまったく別の条文・別の話です。「試用期間中の14日ルール」という言葉だけが独り歩きして、自分の退職にも同じ日数が関係すると誤解しないよう注意してください。
契約社員・アルバイトなど有期雇用の場合はどうか
ここまでは、期間の定めのない雇用(いわゆる正社員)を前提にしています。試用期間であっても、契約自体が「契約期間○ヶ月」「契約期間1年」のように期間の定めがある(有期雇用)場合は、扱いが変わります。
有期雇用契約は、契約期間の途中で労働者側から一方的に辞めることが、原則としてやむを得ない事由がない限り認められていません(民法628条)。この例外として労働基準法137条があります。ただし適用されるのは「契約期間が1年を超える」有期労働契約に限られます(高度専門職・満60歳以上の労働者を除く)。この条件を満たす場合、契約期間の初日から1年を経過した日以後は、いつでも退職を申し出ることができます。裏を返すと、契約期間が1年以内(6ヶ月・1年更新など)の有期雇用は、そもそも労働基準法137条の対象外です。この場合、途中退職には民法628条の「やむを得ない事由」が必要になるか、契約期間の満了を待つことになります。
試用期間はほとんどの場合、入社直後の数ヶ月に設定されるため、契約社員として働き始めたばかりの人がこの「1年経過」の条件を満たすことは通常ありません。有期雇用の試用期間中に辞めたい場合は、この記事の2週間ルールをそのまま当てはめず、契約書に書かれた条件と合わせて個別に確認する必要があります。契約社員の退職については、別記事「契約社員は契約期間の途中で辞められるか」で詳しく扱っています。
試用期間中でも退職代行を使っていいか
使えます。試用期間中かどうかは、退職代行を利用できるかどうかの条件にはなりません。
ただし、試用期間中ならではの事情として次の点は先に知っておくとよいと思います。
- 有給休暇がまだ付与されていない可能性が高い(入社から6ヶ月未満の場合)。「有給消化してから辞める」交渉が成立しないケースがあります
- 会社への貢献実感が薄い分、「こんなに早く辞めて迷惑をかけて申し訳ない」という気持ちが強く出やすい時期です。ですが、退職の意思を伝えることは労働者の権利であり、迷惑をかけたかどうかで権利の有無が変わるわけではありません
- 会社との直接のやり取りに強い不安がある場合、退職代行Jobs、弁護士法人ガイア、退職代行ネルサポート、円満退職ユニオン のような退職代行サービスを使えば、退職の意思表示そのものを代行してもらえます(※2026年8月時点の調査。各社のサービス内容・料金は公式サイトで最新情報を確認してください)
次にやること
自分の雇用契約が「無期雇用(正社員)」か「有期雇用(契約社員など)」かを、雇用契約書か労働条件通知書で確認してください。そこが分かれば、この記事のどちらの扱いが自分に当てはまるかがはっきりします。