退職までの2週間、出勤したくない
- 有給休暇の取得は労働者の権利(労働基準法39条)で、退職前提の消化を会社が拒否できる場面は限られる
- 欠勤は多くの会社で無給になり、日数や理由によっては就業規則上のリスクになりうる
- まず「残り出勤が必要な日数」と「残っている有給日数」を数字で並べ、差分を欠勤より先に別の方法で埋められないか検討する
- 1残り出勤日を数える
- 2有給残日数を数える
- 3差分の埋め方を選ぶ
- 4会社に伝える
この記事の内容
退職を会社に伝えたあと、残り2週間前後の出勤がどうしても苦痛で「有給と欠勤を組み合わせて出社日数を減らせないか」と考えている人向けの記事です。 この記事では、有給休暇と欠勤の扱いの違い、無断欠勤のリスク、残りの出勤日数を有給でどこまで埋められるかの考え方を整理します。
退職前の「有給と公休の組み合わせ」は、有給を出勤日にだけ置き、間に入る公休はそのまま休みとして挟む形になります。 有給は出勤するはずだった日にしか使えず、公休(所定休日)を有給に置き換えることはできません(厚生労働省)。そのぶん、公休をまたいで有給を連続で置くと、有給の消費は出勤日ぶんだけで、休みの期間は公休の日数ぶん長くなります。たとえば有給8日で、土日をはさむ10日間を休めます。退職日から逆算して並べる手順と計算例は「退職前の有給と公休の組み合わせ手順と計算例」にまとめました。
結論: 埋める順番は「有給→交渉→欠勤」
出勤したくない気持ちを、まず欠勤で解決しようとしないでください。有給休暇には給与が出ますが、欠勤は多くの会社で無給になり、日数によっては就業規則上のリスクも出てきます。埋める順番を間違えると、同じ「休む」でも損をします。
- 有給休暇の取得は労働者の権利であり(労働基準法第39条)、残っている分は退職日までに消化を請求できる
- 欠勤は多くの会社で無給になり(ノーワーク・ノーペイの原則)、日数や理由によっては就業規則上の懲戒事由になりうる
- まず「残り出勤が必要な日数」と「残っている有給日数」を数字で並べ、差が出た分をどう埋めるかを欠勤より先に検討する
以下、有給と欠勤の違い、残り日数の計算方法、埋めきれない場合の選択肢の順に見ていきます。
有給休暇と欠勤、扱いは何が違うか
同じ「会社を休む」でも、有給と欠勤では法律上の位置づけがまったく異なります。
| 有給休暇 | 欠勤 | |
|---|---|---|
| 給与 | 出る(所定の賃金が支払われる) | 出ないことが多い(就業規則による) |
| 会社の承諾 | 労働者の請求により取得可能(労働基準法第39条)。会社には時季変更権があるが「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られる(同条5項) | 会社の承諾は前提にしていない。無断で休むこと自体を指す |
| 就業規則上のリスク | 原則として問題にならない(権利の行使) | 日数・理由によっては懲戒事由になりうる(会社の就業規則次第) |
| 退職前提での扱い | 退職日以降にずらす時季変更ができないため、会社が拒否できる場面は限られるとされる厚生労働省の年次有給休暇Q&Aページでは時季変更権の一般的な行使条件(事業の正常な運営を妨げる場合)は確認できたが、退職前提のケースに絞った記載は見当たらず、社労士・弁護士系の解説記事に共通する理解にとどまる | 退職が決まっていても、欠勤の扱いが自動的に軽くなるわけではない |
有給休暇は「請求すれば取得できる」制度であり、会社の許可を待つものではありません。一方、欠勤は制度ではなく「休むこと」そのものを指すため、会社の就業規則がどう扱うか次第でリスクの大きさが変わります。
残りの出勤日数を有給でどこまで埋められるか計算する
出勤したくない期間をどう乗り切るかは、感情ではなく数字で考えると判断しやすくなります。
- 退職日を確認する — 期間の定めのない雇用契約は、解約の申し入れから2週間の経過で終了します(民法第627条第1項)。就業規則に「1ヶ月前に申告」等の定めがある場合の扱いについては、大阪労働局の「よくある質問」で「会社の就業規則に退職について規定されている場合は、原則として就業規則の規定が適用される」「就業規則で極端に長い退職申入れ期間を定めている場合などは、労働者の退職の自由が極度に制限され、公序良俗の見地から無効とされる場合もある」と説明されており、1ヶ月程度の定めがどちらに当たるか、会社と揉めた場合の最終判断がどうなるかの基準までは示されていません大阪労働局の「よくある質問」(taisyoku.html)を確認したが、1ヶ月程度の定めが有効か無効かを判定する基準・会社と揉めた場合の判断基準までは記載がなかった
- 残りの出勤が必要な日数を数える — 退職日までの平日数から、すでに取得予定の有給・公休を引く
- 残っている有給日数を確認する — 給与明細、就業規則、または人事・総務への確認で分かる
- 2つの数字を比べる — 有給日数が出勤必要日数以上なら、理屈のうえでは全部を有給で埋められる
例として、退職日まで残り10営業日、有給が8日残っているケースを考えます。
| 項目 | 日数 |
|---|---|
| 退職日までの残り出勤必要日数 | 10日 |
| 残っている有給日数 | 8日 |
| 有給で埋められない日数 | 2日 |
この場合、2日分をどう埋めるかが検討事項になります。次の章で選択肢を整理します。
有給だけで埋めきれない場合の選択肢
有給日数が残り出勤日数に届かない場合、いきなり欠勤を選ぶ前に、次の選択肢を順に検討してください。
- 引き継ぎを最小限にして残り日数だけ出社する — 苦痛の原因が「人間関係」なのか「業務そのもの」なのかによって、最小限の出社でも負担はかなり変わります
- 会社に在宅対応や業務量の調整を相談する — 法的な義務ではなく会社の裁量ですが、退職が決まっている状態での相談は通りやすい場合があります
- 体調不良がある場合は医師の診断を受け、診断に基づいて休む — これは甘えではなく、事実に基づく手続きです。心身の不調(眠れない・食欲がない・涙が出るなど)がある場合は、この記事の内容より先に医師・産業医に相談してください
- 有給消化を含めた退職の交渉ごと、第三者(退職代行)に任せる — 会社と直接やり取りする負担そのものをなくす方法です
なお、有給休暇の買取はもともと原則として認められていません(昭和30年11月30日基収第4718号の行政通達により、買取の予約をして有給休暇の日数を減らす・請求された日数を与えないことは労働基準法第39条違反とされています)。ただし退職時に限っては例外で、退職後は年休の権利そのものを行使できなくなるため、消化しきれなかった分を会社が買い取っても差し支えないとされています(広島県「労働相談Q&A」による)。会社に買い取りの義務があるわけではなく、実施するかどうかは会社の判断です。
退職前の有給と公休の組み合わせ手順と計算例
有給と公休は、日によって扱いが違います。
| 日の種類 | 有給を使えるか | 有給の残日数 |
|---|---|---|
| 出勤日(所定労働日) | 使える | 1日減る |
| 公休(所定休日)・会社の休業日 | 使えない(労働義務のない日のため) | 減らない |
公休は、有給に置き換えるものではなく、有給と有給のあいだに挟まる「もともとの休み」です。公休がどの日かは、就業規則の休日の欄か会社のカレンダー、シフト制ならシフト表で確認できます。
組み合わせの手順
- 退職日を確認する。 会社と合意した日、または解約の申し入れから2週間後の日です(民法第627条第1項)
- 退職日までの日を、出勤日と公休に分ける。 就業規則・会社のカレンダー・シフト表を見て、カレンダーに書き出します
- 残っている有給日数を数える。 給与明細、勤怠システム、または総務・人事で分かります
- 退職日側の出勤日から順に、有給を置いていく。 有給を置ききれずに残った出勤日が「出社する日」になります
- 直属の上司(または就業規則で決められた窓口)に、次の3つを日付で伝える。 最終出社日、有給を使う期間、退職日です。申請の期限(何日前までか)は会社の就業規則に定めがあれば、それに従います。期限の有無や日数は会社ごとに違うため、ここでは数字を書きません
計算例(2026年10月、土日が公休の会社、有給の残りは8日)
退職日は10月30日(金)、残りの出勤日は10月19日(月)〜30日(金)の10日です。
| 日付 | 扱い | 有給の消費 |
|---|---|---|
| 10月19日(月)・20日(火) | 出社 | 0日 |
| 10月21日(水)〜23日(金) | 有給 | 3日 |
| 10月24日(土)・25日(日) | 公休 | 0日 |
| 10月26日(月)〜30日(金・退職日) | 有給 | 5日 |
| 合計 | 出社2日、有給8日 | 8日 |
最終出社日は10月20日です。10月21日から30日までの10日間、出社せずに済みます。前提は、土日以外に公休や祝日の休みがないこと、会社が有給の取得日に時季変更権を使わないことです。
逆に、最終出社日を先に決めたい場合は、その翌出勤日から有給日数ぶん出勤日を数えます。上の例なら、10月20日を最終出社日として8出勤日を数えると10月30日になり、これが退職日の候補です。ただし退職日は会社との合意が要るため、決め方は次のとおり分かれます。
| 先に決めるもの | 並べ方 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 退職日が先 | 退職日から出勤日をさかのぼって有給を置く。余った出勤日が出社日 | 会社と退職日をもう合意している |
| 最終出社日が先 | 最終出社日の翌出勤日から有給日数ぶん数えた日を退職日の候補にして、会社に相談する | 退職日をまだ動かせる |
申請の文例(日付・名前は自分の状況に置き換えてください)
件名: 有給休暇の取得と最終出社日のご相談(氏名)
○○部長
お疲れさまです。退職日を10月30日とすることについて、残っている有給休暇8日を、10月21日〜30日(10月24日・25日の公休を除く)に取得したく、申請いたします。
最終出社日は10月20日とし、引き継ぎは10月19日・20日で行います。
ご都合が悪い日がありましたら、ご相談させてください。
次に詰まりやすいこと: 退職日を月末にするか、その手前にするか
有給と公休を並べ終えると、退職日を月末の日にするか、その手前の日にするかで迷いやすくなります。厚生年金保険では、退職日の翌日が資格喪失日になり、保険料は資格喪失日の属する月の前月分まで納めます。月の末日に退職した場合は、翌月1日が資格喪失日になるため、退職した月の分まで納めることになります(日本年金機構)。
| 退職日 | 資格喪失日 | 厚生年金保険料 |
|---|---|---|
| 月の途中(上の例は10月30日) | 翌日(10月31日) | 9月分まで |
| 月の末日(10月31日) | 翌月1日(11月1日) | 10月分まで |
上の例では10月31日(土)は公休です。退職日を10月30日から31日にずらしても、有給の日数は増えも減りもしません(退職日は会社との合意が要ります)。どちらが自分に合うかは、次の勤め先の入社日や、国民健康保険・国民年金への切り替え時期で変わります。決める前に、日本年金機構の窓口か市区町村の窓口で、退職月の分をどの制度で納めることになるかを確認してください。
出典: 厚生労働省「確かめよう労働条件」年次有給休暇のQ&A(https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/qa/roudousya/yukyu/q1.html)、日本年金機構「月の途中で入社したときや、退職したときは、厚生年金保険の保険料はどのようになりますか。」(https://www.nenkin.go.jp/section/faq/kounen/hihokensha/20140902-01.html)。2026年9月確認
無断欠勤・大量欠勤にはリスクがある
「もう行きたくないから、有給を使い切ったら残りは無断で休む」という選択は、短期的には楽に見えても、次のようなリスクがあります。
- 就業規則によっては、無断欠勤が懲戒事由に定められている場合がある
- 退職金の規定によっては、欠勤日数に応じて減額される定めがある会社もある
- 離職票の記載や退職時のやり取りが、必要以上にこじれる可能性がある
これらはすべて「会社の就業規則・規定次第」であり、すべての会社に共通する話ではありません。ただし、無断欠勤を選ぶ前に、自社の就業規則(懲戒事由・退職金規定)を確認しておくことをおすすめします。出勤したくない気持ちそのものは自然なものですが、その気持ちの解消方法として無断欠勤を選ぶかどうかは、リスクを知ったうえで判断すべき事柄です。
実体験について、正直に書きます
私自身は2026年6月末に前職を退職しましたが、これは会社都合による退職で、退職の意思は自分で会社に直接伝えました。退職を決める際に、自分が実際に確認したことの一つが「有給がどれだけ残っているか」でした。ただし、この記事のテーマである「出勤したくない残り2週間を、有給と欠勤の組み合わせでどう乗り切るか」という状況そのものを経験したわけではないため、その部分については自分の体験としては書けません【本人の実体験の範囲外】。この記事の有給・欠勤の扱いに関する説明は、労働基準法・民法の条文と、社労士・弁護士系の解説記事を調査した範囲で整理したものです。
次にやること
今日、給与明細か就業規則で「残っている有給日数」を確認し、退職日までの「出勤が必要な残り日数」と並べて数字で比べてみてください。 その2つの数字が分かるだけで、「全部有給で埋められるのか」「差分をどう埋めるか」が感覚ではなく計算の話に変わり、無理に無断欠勤という選択肢に飛びつかずに済みます。会社とのやり取り自体が負担になっている場合は、有給消化の交渉ごと任せられる退職代行という方法もあります。
※本記事は2026年8月時点の一般的な情報整理と、筆者個人の体験に基づくものです。有給消化・欠勤の扱いは会社の就業規則によって異なるため、最終的な判断は自社の就業規則の確認、または弁護士・社会保険労務士など専門家にご相談ください。心身の不調がある場合は医師・産業医にご相談ください。