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退職日はいつがいいか

この記事の結論
  • ボーナスを取るなら支給日在籍要件を満たす日以降(就業規則・判例で有効とされる条件)
  • 社会保険料を減らすなら月末前日退職(ただし無保険期間の手続きが発生する)
  • 有給休暇を全部使うなら残日数から逆算した日
  • 退職金は勤続年数の端数処理が会社の規程次第で変わる
  • 4つの軸は同時に最大化できないことが多く、自分にとって金額が一番大きい軸から優先順位を決めるのが現実的
この記事の内容
  1. 結論:4つの軸で「得になる退職日」は違う
  2. ボーナスを優先するなら
  3. 社会保険料を優先するなら
  4. 有給休暇を優先するなら
  5. 退職金を優先するなら
  6. 全部は取れないときの決め方
  7. 実体験について
  8. 次にやること

この記事は、退職日を決めようとして「ボーナス」「社会保険料」「有給休暇」「退職金」のどれを優先すればいいのか分からず、結局何日にすればいいか決めきれずにいる人に向けて書いています。 結論から言うと、この4つを全部同時に最大化できる万能の1日は、多くの場合存在しません。それぞれ得になる方向がズレているからです。まずは軸ごとの「得になる退職日」を1枚の表で見ていきます。

こんな状態ではありませんか
  • 「月末に辞めるといい」「ボーナス後がいい」など、断片的な情報がバラバラに入ってきて整理できない
  • 自分の場合、どれを優先すれば一番損しないのか計算できない
  • 退職日を会社に伝える前に、自分の中で決めておきたい

その気持ちはもっともです。ネット上の情報は「社会保険料だけ」「ボーナスだけ」を扱った記事が多く、全部を並べて比較したものはあまりありません。ここでは4つの軸を並べたうえで、優先順位の決め方まで整理します。

結論:4つの軸で「得になる退職日」は違う

軸 得になりやすい退職日 理由 根拠
ボーナス(賞与) 支給日以降 「支給日在籍要件」がある会社では、支給日前に退職すると算定期間フルで働いていても受け取れないことがある 就業規則、大和銀行事件(最高裁昭和57年10月7日)(判決文原文未確認。一次情報は確認できず)
社会保険料(健康保険・厚生年金) 月末の前日 資格喪失日が退職月に入り、退職月分の保険料が発生しない 健康保険法36条1項2号・156条3項、厚生年金保険法14条2号・19条1項
有給休暇 残日数から逆算した日(消化を最優先するなら遅め) 退職日までに使い切らないと消滅する(原則買取り義務なし) 労働基準法39条
退職金 会社の規程次第(端数の繰り上げ・繰り下げ基準による) 勤続年数の端数処理が1ヶ月単位で区切られている会社では、数日〜数週間で支給率区分が変わることがある 就業規則(退職金規程)、労働基準法89条3号の2
ここが要点

表を見ると分かる通り、「社会保険料を減らしたいなら早め(月末前日)」「ボーナスを取りたいなら遅め(支給日後)」と、方向がそもそも逆になることがあります。全部を同時に満たそうとするより、自分にとって金額が一番大きい軸から順番を決める方が現実的です。

ボーナスを優先するなら

ボーナス(賞与)を受け取ってから辞めることは、法律上まったく問題ありません。辞める理由に善し悪しは問われず、民法627条1項によって退職の意思表示自体はいつでも自由にできます。

確認すべきなのは、就業規則に「支給日に在籍している者に支給する」という条件(支給日在籍要件)があるかどうかです。この条項がある会社では、賞与の算定対象期間(上半期・下半期など)にフルで働いていても、支給日の時点で退職済みだと受け取れません。この条項は最高裁判例(大和銀行事件、昭和57年10月7日)で、内容が合理的であれば有効だと判断されたとされています(判決文の原文は裁判所の判例検索データベースで確認できておらず、事件名・結論の向きは複数の専門家解説の一致による整理です)。

支給日在籍要件がある会社では、支給日から逆算して、退職を伝える日を決めるのが確実です。民法627条により退職の意思表示から2週間で契約が終了するため、支給日の2週間以上前に伝えれば、支給日をまたいで在籍したまま退職日を迎えられます。詳しい確認手順は別記事(ボーナスをもらってから辞めるのはずるいのか|支給日と退職日の関係)で扱っています。

社会保険料を優先するなら

会社の健康保険・厚生年金には「資格喪失日」があり、退職日の翌日がこれにあたります(健康保険法36条1項2号)。そして保険料は、資格喪失日が属する月の前月分までしかかかりません(健康保険法156条3項)。厚生年金保険料も同じ考え方です(厚生年金保険法14条2号・19条1項)。

月末(例:6/30)退職 月末前日(例:6/29)退職
資格喪失日 翌月1日 当月末日
退職月分の社会保険料 発生する 発生しない
月末1日の保険の空白 なし あり(国保・国民年金への切替か、転職先の保険への切替が必要)

一見、月末前日退職の方が得に見えますが、次の保険に切れ目なく入れる場合に限った話です。転職先が決まっておらず、月末の1日だけのために国民健康保険・国民年金への切替手続きが必要になると、月単位でかかるその制度の保険料が別途発生し、結局「浮いた分が別の場所でかかった」ということも起こり得ます。単純な損得ではなく、自分の次の保険がいつから始まるかとセットで考える必要があります。詳しい仕組みと注意点は別記事(月末退職と月末前日退職で社会保険料が変わる話)で扱っています。

有給休暇を優先するなら

有給休暇をいつ取るかは労働者が指定できる権利(時季指定権、労働基準法39条5項)で、会社にあるのは「事業の正常な運営を妨げる場合に日をずらしてもらう権利(時季変更権)」だけです。この変更先を退職日より後には置けないという解釈(裁判例による)があるため、退職前にまとめて有給休暇を申請した場合、会社が実務上それを止める手段はほぼありません。

残日数を退職日までに使い切れないと、原則として買取り義務は無いまま消滅します。有給消化を優先するなら、次の順で考えます。

  1. 給与明細・勤怠システムで正確な残日数を確認する
  2. 引継ぎに必要な最短日数を先に確保する
  3. 残った日数をすべて有給休暇にあて、そこから逆算して最終出社日と退職日を決める

有給消化中も雇用契約と社会保険の資格は続くため、社会保険料の計算は「有給消化の最終日」ではなく「退職日(在籍最終日)」が基準になります。有給休暇を優先すると退職日が後ろにずれやすく、その分だけ社会保険料が発生する月も増える可能性がある点は、前の章と合わせて考えてください。詳しくは別記事(有給休暇を使い切って辞める方法)で扱っています。

退職金を優先するなら

退職金は、労働基準法上どの会社にも支払い義務があるわけではありません。就業規則(退職金規程)に定めがある場合に限り、賃金として支払い義務が生じる仕組みです(労働基準法89条3号の2「退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項」、条文原文を確認済み)。

ここで注意したいのが、勤続年数の端数処理です。会社の退職金規程には「勤続◯年◯ヶ月」を単位ごとに区切り、支給率が段階的に上がる設計が多く、端数を切り上げるか切り捨てるかは会社の規程次第です。数日〜数週間、退職日をずらすだけで区分が変わり、支給額が数万円〜数十万円単位で変わることもあり得ます。

ここが要点

ここで混同しやすいのが、所得税法上の「退職所得控除」の計算です。こちらは税額計算の話で、国税庁の案内(タックスアンサーNo.1420)によれば、控除額の計算に使う勤続年数は1年未満の端数を常に1年に切り上げます(例:勤続20年3ヶ月は21年として計算)。しかし、これは税金の控除額の計算方法であって、会社が支払う退職金そのものの金額(支給率)が勤続年数の端数でどう変わるかは、会社の退職金規程によって別に決まります。この2つを一緒にしないよう注意してください。

退職金の支給率区分が「◯年◯ヶ月」で細かく分かれている会社に勤めている場合は、退職日を決める前に、退職金規程で自分の勤続年数がどの区分に入るかを確認しておくことをおすすめします。

全部は取れないときの決め方

ここまでの4つの軸を並べると、次のような対立が起きやすいことが分かります。

  • ボーナスを取るなら退職日は遅くしたい(支給日以降)
  • 社会保険料を減らすなら退職日は月末前日にしたい
  • 有給休暇を全部使うなら退職日は遅くなりやすい
  • 退職金の区分次第では、数日の差が支給額を左右する

すべてを同時に満たす1日を探すより、自分にとって金額のインパクトが一番大きい軸から優先順位をつける方が現実的です。目安として、ボーナスの支給額・退職金の区分差・有給休暇の残日数分の給与・社会保険料の1ヶ月分を、それぞれ概算の金額で並べてみると、どれを優先すべきかが具体的に見えてきます。

ここが要点

迷ったときは、退職日を仮決めしたうえで、就業規則の賞与規程・退職金規程を確認し、総務・給与担当に「この日で退職した場合、賞与と退職金と社会保険料はどうなるか」を1回聞いてみるのが一番早い方法です。憶測で決めて、後から「あと3日ずらせば良かった」と気づくのを避けられます。

実体験について

私の場合

私自身は2026年6月末、月末で会社都合退職をしています。月末退職だったため、社会保険の資格喪失日は7月1日となり、6月分の社会保険料は発生する形になりました。会社都合退職だったこともあり、ボーナスの支給日在籍要件や退職金の勤続年数区分を意識して退職日を調整した経験はなく、この2点については自分の実体験としては書けません。調査した範囲での制度説明にとどめます。

次にやること

まず、自分の会社の就業規則(賃金規程・退職金規程)に、賞与の支給日在籍要件と退職金の勤続年数区分があるかを確認してください。そのうえで、有給休暇の残日数と、退職月をずらした場合の社会保険料の変化を合わせて見れば、自分にとって一番損の少ない退職日が絞り込めます。会社に相談しづらい事情がある場合は、退職代行Jobs、退職代行ネルサポート、円満退職ユニオン のようなサービスに、退職日の希望を含めて相談する方法もあります。


※本記事は2026年8月時点の一般的な情報整理です。会社ごとに就業規則・退職金規程の内容が異なるため、正確な取り扱いは自分の勤務先の総務・人事担当に確認してください。心身の不調がある場合は、手続きより先に医師・産業医にご相談ください。

出典 - 民法627条1項(期間の定めのない雇用は解約申入れから2週間で終了) - 健康保険法36条1項2号(資格喪失の時期)・156条3項(保険料算定の特例):taishoku/laws/健康保険法.txt で条文原文を確認済み - 厚生年金保険法14条2号(資格喪失の時期「その事業所又は船舶に使用されなくなつたとき」)・19条1項(被保険者期間の計算「資格を取得した月からその資格を喪失した月の前月までをこれに算入する」):労働新聞社 条文データベース(rodo.co.jp/laws/123776/、rodo.co.jp/laws/123777/)、2026年8月31日確認 - 労働基準法39条5項(年次有給休暇・時季指定権・時季変更権):taishoku/laws/労働基準法.txt で条文原文を確認済み - 大和銀行事件(最高裁第一小法廷、昭和57年10月7日、昭和56年(オ)第661号):事件名・日付・結論の向きは複数の専門家解説で一致。判決文原文は裁判所の判例検索データベースで確認できず(一次情報は確認できず) - 労働基準法89条3号の2(退職手当は相対的必要記載事項):taishoku/laws/労働基準法.txt で条文原文を確認済み - 退職所得控除の勤続年数端数処理(1年未満切り上げ):国税庁タックスアンサー No.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」(nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/1420.htm)、2026年8月31日確認。退職金支給額そのものの端数処理(会社規程による)は別論点で、日本の人事部Q&A(jinjibu.jp)等の解説と一致

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退職届を受け取る側に長くいて、そのあと自分が出す側になりました

人を採用し、辞めていく人を見送る立場に長くいました。退職代行から電話を受けたこともあります。そして自分が辞める番になり、失業保険の申請・ハローワークでの手続き・健康保険の切り替え・住民税の直接納付・保育園の継続手続きまで、すべて自分で通りました。両側を見た人間が書いています。「代行を使ったら会社はどう思うのか」に答えられるのは、受け取ったことがあるからです。

この記事の作り方: 下書きにAIを使い、法令の条文と官公庁の公式ページに照らして事実確認したうえで公開しています。確認の取れない記述が残る記事は公開せず、一次資料が見つからない箇所は本文にそう書いています。確認の手順を見る →

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