退職後、家族の扶養に入るか失業保険をもらうか
- 扶養に入るには年間収入が130万円未満(60歳以上・障害者は180万円未満)である必要があり、失業保険の基本手当は日額3,612円以上受給していると年収換算で130万円を超えるため、多くの場合同時にはできない(全国健康保険協会・日本年金機構の被扶養者認定基準に基づく一般的な整理)
- 自己都合退職は待期7日+給付制限(原則1ヶ月。2025年4月1日以降の離職。5年間で3回以上の自己都合離職は3ヶ月)(雇用保険法21条・33条)、会社都合退職は給付制限なしで待期7日後すぐ受給が始まる
- 実務では「給付が始まるまでは扶養、受給開始で抜けて、受給終了後にまた扶養に戻る」という時期での使い分けが一般的だが、いつから扶養に入れるかの運用は健康保険組合ごとに差があるため加入予定の健保組合に確認するのが確実(個別運用は個別に確認)
- 1離職
- 2待期・給付制限は扶養
- 3受給開始で扶養を抜ける
- 4受給終了
- 5扶養に戻る
この記事の内容
退職後、配偶者や親の健康保険の扶養に入るべきか、それとも失業保険(基本手当)を受け取るべきか。結論から言うと、この2つは収入の見込み額によって線引きされていて、多くの場合は同時にはできません。この記事では、なぜ両立できないのか、実務でよく使われる「時期で使い分ける」考え方、会社都合・自己都合による違いを整理します。
結論:収入の見込みで線引きされ、同時にはできない
| 選択肢 | 保険料の負担 | 収入 | 手続き先 |
|---|---|---|---|
| 家族の扶養に入る | 自分では払わない(扶養者の保険に同乗) | 基本手当は受け取れない(収入とみなされ扶養から外れる) | 扶養者の勤務先(健康保険組合・年金事務所経由) |
| 失業保険をもらう | 国民健康保険・国民年金を自分で払う | 基本手当を受け取れる | ハローワーク |
扶養に入れるかどうかは「今後1年間の収入見込みが一定額を超えないか」で判定されます。失業保険の基本手当はこの「収入」に含まれるため、額によっては扶養の要件を外れます。つまり、どちらが得かという単純な二択ではなく、扶養に入れる収入の範囲かどうかで、選べる・選べないが先に決まるという構造です。
扶養に入るための収入の要件
家族の健康保険の被扶養者になるための年収要件は、全国健康保険協会(協会けんぽ)や日本年金機構の案内で次のように示されています。
| 条件 | 基準 |
|---|---|
| 年間収入 | 130万円未満(60歳以上、または障害厚生年金を受けられる程度の障害がある人は180万円未満) |
| 同居している場合 | 被保険者(扶養する側)の年収の半分未満であること |
| 別居している場合 | 被保険者からの仕送り額より少ないこと |
ここでいう「収入」には給与だけでなく、年金、失業保険の基本手当、傷病手当金なども含まれます(協会けんぽおよび複数の健康保険組合の公式案内で確認)。細かい認定運用は組合ごとに差があるため、正確な要件は加入予定の健康保険組合・協会けんぽの窓口で確認してください。
配偶者の扶養に入る場合は、健康保険の被扶養者と同時に国民年金の第3号被保険者(保険料を自分で納めなくてよい区分)にもなります。第3号被保険者は「第2号被保険者の配偶者であって、主としてその収入により生計を維持する人」と定義されており(国民年金法7条)、配偶者以外の親などの扶養に入る場合はこの区分に当てはまらないため、国民年金は第1号被保険者として自分で保険料を納める必要があります。
失業保険(基本手当)がもらえるまでの流れ
失業保険の基本手当は、退職してすぐに振り込まれるわけではありません。
| 離職理由 | 待期 | 給付制限 | 受給開始の目安 |
|---|---|---|---|
| 会社都合(特定受給資格者等) | 7日間 | なし | 待期7日後 |
| 自己都合(2025年4月1日以降に離職) | 7日間 | 原則1ヶ月(5年間で3回以上の自己都合離職は3ヶ月) | 待期7日+給付制限後 |
待期7日間は離職理由にかかわらず全員に課されるもので、ハローワークで求職の申込みをした日から通算7日間、失業状態にあるかを確認する期間です(雇用保険法21条)。自己都合退職の給付制限は、雇用保険法33条で「1ヶ月以上3ヶ月以内の間で公共職業安定所長が定める期間」とされており、2025年4月1日の法改正でその運用が従来の「原則2ヶ月」から「原則1ヶ月」に短縮されました(5年間で3回以上の自己都合離職の場合は3ヶ月のまま。厚生労働省「令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)について」)。
給付制限がある・ないは、離職票に記載される離職理由によってハローワークが判定します。「会社都合のはずなのに自己都合になっている」と感じた場合は、その場で異議を伝えられます。
なぜ「両方」ができないのか
扶養の年収要件(130万円未満)を、失業保険の基本手当の日額に置き換えると、おおむね日額3,612円が分かれ目としてよく紹介されています(130万円を360日で割った金額に近い数字)。この日額の基準そのものを定めた協会けんぽ・厚生労働省の一次資料は見つけられなかったが、複数の健康保険組合の公式案内(森永健康保険組合、武田薬品健康保険組合など)が実務上の目安としてこの金額を使っていることは確認できた。この金額以上の基本手当を受給していると、年収換算で扶養の基準を超えるとみなされ、被扶養者として認定されないケースが多くなります。
つまり、失業保険の基本手当をもらっている間は、多くの場合「収入がある人」として扱われ、家族の扶養からは外れます。逆に言えば、待期期間や給付制限期間のように、まだ実際に基本手当を受け取っていない期間は、収入が発生していないため扶養の対象になり得ます。
実務でよく使われる時期の使い分け
このため、実務では次のように期間で扶養と失業保険を使い分ける動き方がよく紹介されています。
- 退職直後(待期・給付制限の期間)は、家族の扶養に入って保険料の負担を抑える
- 基本手当の受給が始まったら、扶養から外れて国民健康保険・国民年金に自分で加入する
- 所定給付日数の受給が終わったら、再び家族の扶養に戻る手続きをする
この流れは複数の社会保険労務士事務所の解説サイトで共通して紹介されている型であるのに加え、「いつの時点で扶養から外れる扱いになるか」についても、森永健康保険組合・武田薬品健康保険組合の公式案内では「求職の申込み時点ではなく、基本手当の支給期間の初日(実際の受給開始日)から外れる」と明記されており、待期・給付制限中は扶養のままでよいとされています。ただし、この扱いを届け出るタイミングや必要書類は組合ごとに細かな差があるため、実際に手続きする際は加入予定の健康保険組合(または協会けんぽ)に、失業保険の受給予定を伝えたうえで確認しておくと、あとから「扶養を遡って外れることになった」というトラブルを避けやすくなります。
会社都合か自己都合かで、選び方の実益が変わる
給付制限の有無によって、この使い分けの効果は変わります。
- 会社都合退職: 給付制限がないため、待期7日を過ぎればすぐに基本手当の受給が始まります。「扶養に一時的に入る」期間がごく短いため、実益が小さく、最初から自分で国民健康保険・国民年金に加入したほうが手続きがシンプルになる場合があります。
- 自己都合退職: 給付制限の期間(原則1ヶ月、条件次第で3ヶ月)は基本手当を受け取っていないため、その間だけでも扶養に入る実益が相対的に大きくなります。
実体験について、正直に書きます
私自身は2026年6月30日付で会社都合退職をしており、離職票に会社都合の理由コードが記載されていたため、給付制限はありませんでした。待期7日を過ぎればすぐに受給対象になる状態だったため、家族の扶養に一時的に入るという選択はせず、最初から自分は国民健康保険に加入しました。会社都合退職には軽減措置があり、試算した金額では任意継続被保険者制度を使うより国民健康保険のほうが安く済みました。
ただし、子どもについては配偶者の健康保険の扶養に移しています。国民健康保険は世帯で扶養する人数が増えるほど保険料が上がる仕組みのため、子どもだけを配偶者側の扶養に入れたほうが世帯全体の負担を抑えられたためです。
私自身が扶養に入るかどうかを具体的に検討したかどうか、国民年金を第1号被保険者としてどう扱ったかについては、正直な記憶の記録が残っていないため、この記事では書いていません。
手続き先のまとめ
| やりたいこと | 手続き先 | 必要になりやすいもの |
|---|---|---|
| 家族の扶養に入る | 扶養する側(配偶者・親など)の勤務先の健康保険組合・年金事務所 | 退職証明書や離職票の写しなど、失業保険を受給していない(または受給見込みがない)ことが分かる書類 |
| 失業保険をもらう | 住所地を管轄するハローワーク | 離職票、本人確認書類、マイナンバー確認書類など |
どちらも「扶養する側」「ハローワーク」という別々の窓口が判定するため、片方に伝えた情報がもう片方に自動で共有されるわけではありません。扶養に入っている間に基本手当の受給が決まった場合は、自分から扶養する側の勤務先に届け出る必要があります。
次にやること
まず、自分の離職理由が会社都合か自己都合かを離職票で確認してください。会社都合であれば給付制限がなく扶養に一時的に入る実益は小さいため早めに失業保険の受給準備を、自己都合であれば給付制限の期間だけ家族の扶養に入れないか、加入予定の健康保険組合に確認するところから始めるのが現実的です。失業保険の受給の流れそのものは別記事(013)、離職票が届くまでの実体験は別記事(011)で扱っています。
※本記事は2026年8月時点の一般的な情報整理です。被扶養者認定の具体的な運用は健康保険組合ごとに異なる場合があります。個別の判断は、加入予定の健康保険組合・年金事務所・ハローワークに直接ご確認ください。
出典 - 全国健康保険協会(協会けんぽ)「被扶養者の認定における特例について」ほか公式案内の被扶養者認定基準(年間収入130万円未満、60歳以上・障害者は180万円未満、同居の場合は被保険者の年収の半分未満、別居の場合は仕送り額未満) - 雇用保険法21条(待期期間7日間) - 雇用保険法33条(給付制限は1ヶ月以上3ヶ月以内で公共職業安定所長が定める)、および厚生労働省「令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)について」(自己都合退職の給付制限、原則2ヶ月→1ヶ月への短縮、5年間で3回以上の自己都合離職は3ヶ月) - 国民年金法7条(第3号被保険者は「第2号被保険者の配偶者であって主としてその収入により生計を維持する者」と定義) - 森永健康保険組合・武田薬品健康保険組合の公式案内(失業給付の受給開始日=基本手当の支給期間の初日から被扶養者資格を外れる扱いであること、待期・給付制限中は扶養のままでよいとされていること)