退職後に始める積立投資
- 1退職
- 2生活費を見積もる
- 3積立額を決める
- 4認定日に申告
- 5再就職後に増額
この記事の内容
退職したあと、失業保険をもらいながら積立投資を始めたい人に向けた記事です。「投資をすると失業保険が止まるのでは」という不安に答えます。
結論から言うと、月々の積立投資そのものは、失業保険(雇用保険の基本手当)の受給条件に入っていません(調査した範囲。制度の根拠は本文に書きます)。ただし、投資のやり方によっては「働いている」とみなされる場合があり、そこだけは線引きを知っておく必要があります。
そして積立額は、失業保険の心配より先に「無収入の期間を何か月しのげるか」から決めるのが安全です。この記事の後半に、数字を入れて計算できる例を載せています。
積立投資をしても、失業保険はもらえるのか
積立投資(毎月決まった額で投資信託などを買うこと)をしただけで、基本手当が止まる仕組みは、調査した範囲では見当たりません。
理由は、失業保険が「失業の状態にあるか」を見る制度だからです。雇用保険法第4条第3項は、失業を「被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあること」と定めています(条文で確認)。
ここで見られているのは、貯金の多さではなく、働いているかどうかです。ハローワークの認定日に出す「失業認定申告書」(様式第14号)でも、記入項目1で聞かれるのは「アルバイトやパート、ボランティアや知人手伝いなどの仕事をしたかしていないか」で、資産の状況を書く欄はありません(ハローワークインターネットサービス公開の様式・記入案内で確認、2026年9月)。
貯金や投資信託を持っているかどうかで、基本手当の額や受給資格が変わるという記載は、失業認定申告書の様式にも、雇用保険法の失業の定義にも見当たりません(2026年9月確認)。
影響が出るのは「積立」ではなく「働いたとみなされる投資」
投資まわりで、失業保険に関わってくる可能性があるものを表にします。
| やっていること | 失業保険への影響 | 考え方 |
|---|---|---|
| 投資信託の月々の積立(新NISAなど) | 調査した範囲では、受給条件に入っていない | 貯金を別の形に移しているだけ |
| 保有している投資信託の値上がり | 影響は見当たらない | 働いた結果ではない |
| 株の配当・分配金 | 失業認定申告書には「仕事(就労・内職・手伝い)をしたか」を書く欄しかなく、資産運用による収入を書く欄はない | 労働による収入ではないため |
| 毎日長い時間、短期売買を続ける(デイトレード等) | 「仕事として働いている」と判断される可能性がある | 迷ったら認定日に窓口で相談 |
| 投資の情報発信・ブログで収入を得る | 収入があれば申告の対象 | 内職・手伝いの扱い |
表の下から2行が、注意が必要な線です。積立は「静かに続けるもの」で、毎日画面に張りつくものではありません。その点で、失業の状態と衝突しにくい方法だといえます。
一方で、短期売買を毎日長時間やると、「就職しようとする意思と、いつでも就職できる状態」から外れたと見られる可能性があります。ここは個別の事情で判断が変わるので、一般論以上は言えません。心配なときは、隠さずに窓口で聞くのが一番安全です。
不安になるのは当然。でも、隠す必要のある話ではない
退職したばかりの時期は、収入がなくなる不安が大きく、「投資で増やさないと」と焦りやすい時期です。逆に、失業保険が止まったらと考えると、何もできなくなる人もいます。
どちらの気持ちも、おかしくありません。仕事を辞めた直後に、お金の不安が強くなるのは普通のことです。
積立投資を「始めたい」と考えたこと自体は、悪いことではありません。ただ、無収入の間は、増やすことより「減らさないこと」「生活を止めないこと」を優先したほうが、気持ちも安定します。
認定日に、何をどう申告するか
失業保険は、原則4週間に1回の「認定日」に、ハローワークで失業の状態を確認されて支給されます(雇用保険法第15条第3項・第30条第1項で確認)。
認定日には、この期間に働いたかどうかを申告します。積立投資をしている場合、申告で迷いやすいのは次の3点です。
- 積立(購入)だけ:働いたことにはならない。失業認定申告書のカレンダーに○や×を付ける対象は「仕事をした日」なので、書く欄は通常ない(様式第14号・記入案内で確認)
- 売却して利益が出た:労働の対価ではないが、心配なら窓口で口頭で聞く
- 短期売買を日常的に行っている:働いているかもしれない。事前に窓口へ相談する
私自身は、2026年6月に会社都合で退職し、失業保険を受けています。離職票はマイナンバーと紐づけていたため退職から3日で届き、届いた次の平日にハローワークへ行くと、窓口の待ち時間は15分ほどでした。手続き自体は想像より早く進みましたが、投資の話に限らず、制度の判断で迷ったら、窓口で聞くのが一番早く、確実です。ただし、この記事の投資と失業保険の関係は、私が試した体験ではなく、調査した範囲での整理です。
積立を始めるタイミングと、始めないほうがいい人
タイミングの目安は、次の表のとおりです。
| 状況 | 目安 |
|---|---|
| 再就職先が決まっていない・生活費6か月分の貯金がない | 積立は始めない、または千円単位の少額にとどめる |
| 生活費6か月分の貯金があり、給付制限も終わっている | 余った分から始めてよい |
| 再就職が決まった | 収入が戻ってから金額を増やす |
「生活費6か月分」は、よく言われる目安のひとつで、法律の数字ではありません。
失業保険の給付制限(自己都合退職の場合に、待期期間のあと支給が始まらない期間)は、退職日が2025年(令和7年)4月1日以降であれば原則1か月、2025年3月31日以前であれば原則2か月です(厚生労働省・都道府県労働局・ハローワークの案内リーフレットで確認)。過去5年間に2回以上自己都合退職している場合や、重責解雇の場合は3か月になります。支給が始まるまでは、貯金だけで暮らす期間になります。
なお、私自身は会社都合退職だったため、この給付制限の対象にはなりませんでした。
計算例:貯金200万円の人は、いくら積み立てられるか
数字を入れて考えてみます。前提は次のとおりです。すべて仮の数字です。
| 項目 | 仮の数字 |
|---|---|
| 退職時の貯金 | 200万円 |
| 月の生活費(家賃・食費・国保・年金・住民税を含む) | 18万円 |
| 再就職までの想定 | 6か月 |
| 失業保険の日額 | 5,000円(仮の数字。実際は退職前6か月の賃金から計算する賃金日額をもとに決まる。雇用保険法第17条・第16条で確認) |
| 所定給付日数 | 90日(仮の数字。実際は勤続年数(算定基礎期間)・退職理由で変わる。雇用保険法第22条で確認) |
計算の順番はこうです。
- 6か月分の生活費:18万円 × 6か月 = 108万円
- 失業保険は、この計算では「ないもの」として扱う(安全側) (参考:5,000円 × 90日 = 45万円が、認定を受けた日数分、後から入る)
- 積立に回せる余力:200万円 − 108万円 = 92万円
- その92万円を、すべて積立に回すのではなく、半分を残す:92万円 ÷ 2 = 46万円
- 46万円を、再就職までの6か月で積み立てると:46万円 ÷ 6か月 ≒ 約7.6万円/月
つまり、この仮の人は、月7万円程度が上限で、実際は月2〜3万円ぐらいから始めるのが無理のない範囲になります。
新NISAには、つみたて投資枠が年120万円、成長投資枠が年240万円という上限があります(金融庁「NISAを知る」で確認、2026年9月)。月2〜3万円なら、年24〜36万円で、つみたて投資枠の120万円の範囲に十分収まります。
なお、この計算は個別の投資助言ではありません。あくまで、自分の数字を入れて考えるための型です。
退職後は、「引かれていたお金」を自分で払う
給料をもらっていたときは、社会保険料や住民税が、給与から天引きされていました。退職後は、これを自分で払います。
私も、退職後に住民税の納付書が自宅に届く経験をしました。1期分(3か月分)ずつ、年4回に分けて払う形で、金額を見て「天引きされていたから気づかなかっただけで、こんなに払っていたのか」と感じました。
積立投資の金額を決める前に、次の支払いを、先に生活費に入れておく必要があります。
| 支払い | 払い方 |
|---|---|
| 国民健康保険(または任意継続) | 自分で手続きして納付 |
| 国民年金 | 自分で手続きして納付 |
| 住民税 | 納付書(普通徴収)が届く |
金額は、住んでいる市区町村・前年の所得によって変わります。役所の窓口か、自治体の公式サイトで確認してください。
税金の話:失業保険は非課税、投資の利益は課税される
- 失業保険(基本手当)には、所得税・住民税などの租税その他の公課を課すことができません(雇用保険法第12条「公課の禁止」で確認)
- 投資信託を売って出た利益には、通常の口座では合計20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)の税金がかかります(国税庁「株式・配当・利子と税」で確認、2026年9月)
- 新NISAの口座内の利益は、非課税です(金融庁「NISAを知る」で確認、2026年9月)
税金は、退職後の時期や所得によって扱いが変わります。確定申告が必要かどうかは、税務署か税理士に確認してください。
チェックリスト:積立を始める前に確かめる7つのこと
- □ 生活費(国保・年金・住民税を含む)の、1か月分を計算した
- □ 貯金が、生活費の6か月分より多い
- □ 失業保険の給付制限が終わる時期と、最初の振込の時期を確認した
- □ 積立の金額は、「なくなってもすぐ困らない額」にした
- □ 毎日の短期売買は、始めていない
- □ 認定日に、投資について聞きたいことをメモした
- □ 再就職が決まったら、積立額を見直す予定にした
1つでも空いたら、積立は少額にするか、いったん待つ選択もあります。
次にやること
まず、自分の「月の生活費」に、国民健康保険・国民年金・住民税を足した金額を、紙に書き出してください。その金額の6か月分が貯金を下回っているなら、積立は始めず、次の認定日にハローワークで「積立投資をしていて、申告が必要なものはあるか」と1つだけ聞いてみてください。