失業保険の給付制限
- 1求職の申込み
- 2待期7日
- 3給付制限1〜3ヶ月
- 4認定日
- 5初回振込
この記事の内容
自己都合で会社を辞めて、「失業保険はすぐにはもらえないらしい」と聞いて、実際いつから振り込まれるのか分からず不安な人向けの記事です。結論を先に言うと、自己都合退職の場合、ハローワークで求職の申込みをした日から7日間の待期のあと、原則1ヶ月の「給付制限」という空白期間があり、この間は1円も振り込まれません。この記事では、給付制限とは何か、いつまで続くのか、給付制限がかからないケースがあるのかを1つずつ説明します。
結論:3つの質問への答えを先に
自己都合で辞めると、待期7日のあと原則1ヶ月は失業保険が出ません。2025年4月に2ヶ月から短くなりました。ただし5年以内に自己都合が3回以上あると、3ヶ月のままです。
| 質問 | 答え | 出どころ |
|---|---|---|
| 給付制限とは何? | 自己都合退職の場合に課される、基本手当が支給されない期間のこと。7日間の待期のあとに始まる | 雇用保険法第33条第1項(2026年8月26日確認) |
| どれくらいの期間? | 原則1ヶ月。ただし5年以内に自己都合退職が3回以上ある場合は3ヶ月 | 厚生労働省「令和6年雇用保険制度改正」(2025年4月1日施行) |
| 全員にかかるもの? | いいえ。会社都合退職や、体調不良・介護など「正当な理由」が認められた自己都合退職(特定理由離職者)には給付制限がかからない | 雇用保険法第33条第1項(給付制限の対象は「正当な理由がなく自己の都合によつて退職した場合」に限られる)。特定理由離職者の定義は雇用保険法第13条第3項(同法施行規則第19条の2に具体的な範囲を委任)。主な事由はハローワークインターネットサービスで確認済み(後述)。いずれも2026年8月26日確認 |
給付制限とは何か:自己都合退職に課される「空白期間」
失業保険(基本手当)は、退職すれば誰でもすぐにもらえるわけではありません。特に自分の意思で辞めた場合には、一定期間お金が出ない「給付制限」という仕組みがあります。
これは全員に一律でかかるものではなく、辞め方によって扱いが分かれます。
- 会社都合退職(倒産・解雇など。「特定受給資格者」)→ 給付制限なし
- 正当な理由のある自己都合退職(「特定理由離職者」)→ 給付制限なし
- それ以外の自己都合退職(転職・独立など、本人都合での退職)→ 給付制限あり
つまり「自己都合=必ず給付制限」ではなく、辞めた理由の中身がハローワークにどう認定されるかで結果が変わります。この認定は離職票に会社が記載する離職理由と、本人がハローワークの窓口で説明する内容の両方をもとに行われます。
いつからもらえるか:待期7日+給付制限のタイムライン
自己都合退職で給付制限の対象になった場合、振込までの流れは次のようになります。
- 離職票を受け取り、ハローワークで求職の申込みをする(すべての起点)
- 7日間の待期期間(会社都合・自己都合を問わず全員共通)
- 待期満了後、給付制限期間(原則1ヶ月。条件により3ヶ月)
- 給付制限満了後、雇用保険説明会・最初の失業認定日を経て、初回振込
会社都合退職であれば待期7日のあとすぐに認定・振込に進みますが、自己都合の場合はここに給付制限がまるごと上乗せされます。別記事(012)で説明した通り、求職の申込みから実際の初回振込までは、だいたい1ヶ月半〜2ヶ月かかると見ておくのが安全です。
給付制限が3ヶ月の場合は、これがさらに2ヶ月延びるため、申込みから初回振込までは3ヶ月半〜4ヶ月ほどを見込む必要があります(「1ヶ月半〜2ヶ月」に、給付制限が1ヶ月から3ヶ月に伸びる差=2ヶ月分を足した目安。給付制限3ヶ月のケース自体の実測データは確認できていません)。
給付制限は「1ヶ月」か「3ヶ月」か:何で決まるか
自己都合退職の給付制限の長さは、2025年(令和7年)4月1日の雇用保険法・雇用保険法施行規則改正で変わりました。
| 離職日 | 原則の給付制限 | 3ヶ月になる条件 |
|---|---|---|
| 2020年(令和2年)9月30日以前 | 3ヶ月 | (原則が3ヶ月) |
| 2020年10月1日〜2025年3月31日 | 2ヶ月 | その離職より前の5年間に、正当な理由のない自己都合退職で2回以上受給資格決定を受けている場合(=通算3回目以降の離職) |
| 2025年4月1日以降 | 1ヶ月 | 同上(その離職より前の5年間に2回以上ある場合=通算3回目以降) |
(出典:厚生労働省・群馬労働局「『給付制限期間』が短縮又は解除されます~令和7年4月1日から適用~」、厚生労働省・都道府県労働局「『給付制限期間』が2か月に短縮されます~令和2年10月1日から適用~」。いずれも2026年8月26日確認。自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇(重責解雇)は、どの時期でも給付制限3ヶ月です)
上の表の「5年間に2回以上」は、今回より前の離職を数えるという意味です。記事の冒頭で「5年以内に自己都合退職が3回以上ある場合は3ヶ月」と書いたのは、この「今回を含めて3回目以降」を指しています。自分が何回目に当たるかは自己判断せず、ハローワークの窓口で確認してください。
条文としての根拠は雇用保険法第33条第1項です。同項は「1箇月以上3箇月以内の間で公共職業安定所長の定める期間は、基本手当を支給しない」と、範囲だけを定めています。この範囲の中で実際に何ヶ月にするかを「原則1ヶ月(通算3回目以降は3ヶ月)」と具体的に定めているのが、上の表にある2025年4月1日施行の制度改正です(2026年8月26日確認)。
給付制限がかからない自己都合退職もある
「自己都合」という言葉だけを見て、全員に給付制限がかかると思い込まないでください。次のような事情がある場合、自己都合であっても「特定理由離職者」として給付制限なしで扱われることがあります。
「特定理由離職者」という言葉自体は雇用保険法第13条第3項に定義がありますが、同項は「やむを得ない理由により離職したものとして厚生労働省令で定める者」という書き方で、具体的な事由の中身は雇用保険法施行規則第19条の2に委任されています。同条は「雇止め」と「雇用保険法第33条第1項の正当な理由」の2類型を挙げるにとどまり、健康上の理由や妊娠・出産など個別の事由そのものは条文に書かれていません。これらの個別事由は、行政の運用(ハローワークインターネットサービスの案内)で示されています(いずれも2026年8月26日確認)。
- 健康上の理由(心身の障害、疾病、視力低下など)により就業の継続が困難だった
- 妊娠・出産・育児による離職
- 家族の介護・扶養が必要になった
- 結婚・配偶者の転勤・別居の解消などに伴う転居で、通勤が困難・不可能になった
- 希望退職の募集に応じた
- 有期雇用契約が、本人の希望に反して更新されなかった(雇止め)
(出典:ハローワークインターネットサービス「特定理由離職者及び特定受給資格者の範囲」2026年8月26日確認。上記は同ページに列挙された主な事由です。同ページには、それぞれに必要な証明書類(診断書・住民票など)についての記載はありません(一次情報は確認できず)。必要書類は事由ごとにハローワークが個別に案内する運用のため、自分の場合に何が要るかは離職票を受け取った時点で窓口に確認してください)
該当する可能性がある場合は、離職票を受け取った時点で自己判断せず、ハローワークの窓口で「特定理由離職者に当たるかどうか」を確認してください。自己都合として申請してしまうと、給付制限がかからずに済んだはずの期間まで待たされる可能性があります。
給付制限中にやっていいこと・ダメなこと
給付制限の期間中は基本手当が出ませんが、何もしてはいけない期間というわけではありません。
- 求職活動:給付制限中でも進めてよく、むしろ進めておくべきです。給付制限が明けたあとの認定に必要な活動実績にもつながります
- アルバイト・短期の就労:可能ですが、認定日ごとに提出する失業認定申告書で申告します。報酬をもらっていなくても申告が要ります(友人・知人の手伝いも同じ)。扱いは3つに分かれます。
- 就職とみなされる:原則として週20時間以上働いた場合。自営業を始めること(準備を含む)や役員に就くことも該当することがあります。この場合は受給そのものができなくなります
- 就労(申告書のカレンダーに○印):事業主に雇われて1日4時間以上働いた日。その日の基本手当は支給されません。ただし支給されなかった分は消えるのではなく、受給期間の満了日までは支給残日数として残ります
- 短時間就労・手伝い(×印):1日4時間未満の日(雇用保険に入る働き方の場合を除く)。4時間以上でも1日あたりの収入が賃金日額の最低額(令和8年8月1日以降は1日3,203円。毎年8月1日に改定されることがあります)未満なら、こちらの扱いになります (扱いの区分は厚生労働省・神奈川労働局「雇用保険受給者のみなさまへ〜失業期間中に就労等を行った場合のQ&A〜」(令和5年8月版)https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-hellowork/content/contents/001755534.pdf を2026年8月26日に原文で確認。賃金日額の最低額は厚生労働省「令和8年8月1日からの基本手当日額等の適用について」の別紙「基本手当日額の計算式及び金額」https://www.mhlw.go.jp/content/001726936.pdf を2026年9月6日に原文で確認)
- 教育訓練の受講:2025年4月1日以降、①教育訓練給付金の対象となる教育訓練、②公共職業訓練等、③短期訓練受講費の対象となる教育訓練、④これらに準ずるものとして職業安定局長が定める訓練、のいずれかを離職前1年以内または離職後に受講した場合、給付制限が解除されます。失業の認定または求職の申込みの際に、訓練の開始日・修了日を確認できる書類などを添えてハローワークに申し出る必要があります(出典:「雇用保険法施行規則等の一部を改正する省令案要綱」令和6年9月24日 労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会(第198回)資料1-1、2026年8月26日確認)
給付制限中の過ごし方で判断に迷う点があれば、次回の来所を待たず、電話や窓口でハローワークに相談することをおすすめします。
実体験について:会社都合退職だと、ここまでの説明はどう変わるか
私自身は2026年6月末に会社都合で退職しています(別記事013)。ここまで説明してきた「給付制限」は自己都合退職の話で、会社都合の場合はそもそも対象外です。給付制限がかからないと、待期7日間のあとすぐに認定・振込のプロセスに進みます。
参考までに、私の場合の実際の流れは次のとおりでした。
- ハローワークへの初回来所:離職票を受け取った次の平日(2026年7月6日)。待ち時間は15分ほど
- 雇用保険説明会:2026年7月15日
- 求職の申込みから初回振込まで:説明会から21日、退職日からは36日
給付制限がかかる自己都合退職の場合は、ここに1ヶ月(3回目以降なら3ヶ月)がそのまま上乗せされる計算になります。私は会社都合だったため給付制限を経験していません。自己都合で給付制限が明けてから実際に何日で初回振込に至るかは、経験していないので書きません。想像で日数を書くことはしません。
次にやること
離職票に会社が記載した離職理由を確認し、自分が「会社都合」「正当な理由のある自己都合(特定理由離職者)」「それ以外の自己都合」のどれに当たるか、ハローワークの求職申込みの際に窓口で確認することです。ここでの区分によって、給付制限の有無、そして振込開始までの期間が大きく変わります。金額の計算・受給期間の全体像は別記事(012)、認定日の詳しい流れは別記事(018)で扱っています。
※本記事は2026年8月時点の一般的な情報整理です。就労・短時間就労の区分(1日4時間、週20時間、1日あたり収入2,746円)は厚生労働省・神奈川労働局の公式資料で2026年8月26日に原文を確認しました。特定理由離職者の必要書類の詳細は、公式ページに記載がないことを確認した上で(一次情報は確認できず)としています。自分がどの区分に該当するかは、自分が行く予定のハローワークに直接お問い合わせください。心身の不調がある場合は、手続きより先に医師・産業医にご相談ください。
出典 - 雇用保険法第33条第1項(給付制限の根拠)、第13条第3項(特定理由離職者の定義)、同法施行規則第19条の2(特定理由離職者の該当類型)。手元に保存したe-Gov法令API全文で条文を直接確認(2026年8月26日確認、原典 https://laws.e-gov.go.jp/law/349AC0000000116 ) - 厚生労働省「令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)について」newpage_51380.html(原則の給付制限が2ヶ月→1ヶ月に短縮、教育訓練受講による給付制限解除、2026年8月26日確認) - 厚生労働省・群馬労働局「『給付制限期間』が短縮又は解除されます~令和7年4月1日から適用~」PDFの実在をページ上で確認(2026年8月26日確認) - 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク・鳥取労働局「『給付制限期間』が2か月に短縮されます~令和2年10月1日から適用~」 https://jsite.mhlw.go.jp/tottori-roudoukyoku/content/contents/tori_kyufukikan_tansyuku021001.pdf (2026年8月26日確認) - 「雇用保険法施行規則等の一部を改正する省令案要綱」令和6年9月24日 労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会(第198回)資料1-1(教育訓練による給付制限解除、2026年8月26日確認) - ハローワークインターネットサービス「特定理由離職者及び特定受給資格者の範囲」 insurance_range.html(具体的事由の一覧を確認。証明書類の記載はなし。2026年8月26日確認) - 就労・短時間就労・就職の区分(1日4時間/週20時間/1日あたり収入2,746円): 厚生労働省・神奈川労働局「雇用保険受給者のみなさまへ〜失業期間中に就労等を行った場合のQ&A〜」(令和5年8月)https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-hellowork/content/contents/001755534.pdf (2026年8月26日、原文を確認)