定年後の継続雇用を辞退したら失業保険はどうなるか
- 1継続雇用を辞退
- 2離職票が届く
- 3ハローワークで申込み
- 4待期7日
- 5認定日
- 6振込
この記事の内容
定年を迎えるにあたって、会社が用意している再雇用(継続雇用)を断ったら、失業保険(雇用保険の基本手当)はもらえるのか。給付制限はつくのか。そこが気になっている人に向けた記事です。 結論から言うと、定年で会社を離れるという形になるなら、自分から辞める「自己都合退職」とは分けて扱われます。厚生労働省のパンフレット「離職されたみなさまへ」は、定年による離職は待期(7日)だけ、自己都合は待期に加えて給付制限(1〜3か月)と分けています。継続雇用を断って定年で離れる場合も、会社が作る離職証明書の様式には「定年による離職」の欄に「継続雇用を希望していなかった」という選択肢があり、自己都合の区分とは別に扱われます(ハローワーク愛知の離職証明書記載例で確認)。決め手は離職票に書かれる離職理由で、最終的な判断はハローワークがします。 辞退できるのか、給付制限はあるのか、何日分・いくらになるのか、計算例、会社に出す文例、手続き前のチェックリストの順に書きます。
先に言っておく。再雇用を断るのは、わがままでも甘えでもない
定年まで働き続けたあとに、「まだ働けるはず」「会社も続けてほしいと言っている」と言われると、断ることに後ろめたさを感じる人は少なくありません。 再雇用になると、仕事の中身は同じなのに給料だけが大きく下がる、役職が外れて気持ちの置き場がなくなる、という話もあります。続けるか、区切りをつけるか。どちらを選んでも、間違いではありません。
大事なのは、断ったあとの生活費の見通しを立てておくことです。失業保険は、その大きな部分になります。
なお、筆者は2026年に退職し、失業保険の手続きをハローワークで実際に行いました。ただし、定年退職や再雇用を断った経験はありません。以下は、調査した範囲での一般的な整理です。個別のケースは、最終的にハローワークの窓口で判断されます。
体調が優れなくて辞めたい場合は、手続きより先に医師(会社に産業医がいれば産業医)に相談してください。休むべきかどうかの判断は、この記事ではしません。
結論:「定年による離職」なら給付制限はつかない。決め手は離職票の書かれ方
| 項目 | 継続雇用を辞退して定年で離れる場合 | 補足 |
|---|---|---|
| 離職理由 | 離職票の「定年による離職」の欄にある「継続雇用を希望していなかった」に当たる(離職証明書の様式で確認) | 離職票(離職票-2)の離職理由欄で決まる |
| 待期(7日間) | あり | 求職の申込み後、失業している7日間。誰でも共通(雇用保険法21条) |
| 給付制限(1か月) | 定年による離職は、給付制限の対象になる自己都合退職とは別の区分(厚生労働省「離職されたみなさまへ」) | 給付制限は「正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合」に課される(同法33条1項) |
| 給付日数 | 90日・120日・150日のいずれか | 雇用保険に入っていた期間で決まる(同法22条1項) |
| 受給できる期間 | 離職日の翌日から原則1年 | 休みたい人は延長の申出ができる(同法20条2項) |
つまり、離職理由が「定年による離職」になるなら、「自分の都合で辞めた」人にかかる給付制限は、原則としてかかりません。
継続雇用は、そもそも断れるのか
断れます。継続雇用は、会社が「用意しなければならない」制度であって、労働者が「受けなければならない」制度ではありません。
高年齢者雇用安定法9条1項は、定年を65歳未満に定めている会社に対し、65歳までの雇用を確保する措置(定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の廃止のどれか)を取るよう求めています。継続雇用制度は、同項2号で「現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度」と定められています。基準で対象を絞れた経過措置は、2025年(令和7年)3月31日までで期限が切れました(厚生労働省「高年齢者雇用安定法Q&A」の令和7年3月31日改訂で、経過措置の記載が削除されたことを確認)。2025年4月からは、希望者全員が対象です。
会社に義務があるのは「希望した人を雇うこと」までです。希望しない人に、再雇用を受けさせる決まりはありません。辞退の意思は、早めに、会社の決めた期限までに伝えます。
給付制限はつくのか。自己都合退職との違い
失業保険の給付制限は、自己都合で辞めた人に課される決まりです。 雇用保険法33条1項は、「正当な理由がなく自己の都合によつて退職した場合」に、待期が終わったあと1か月以上3か月以内の間、基本手当を支給しないと定めています。
実際の期間は、離職日が2025年(令和7年)4月1日以降なら原則1か月です(過去5年間に2回以上、自己都合で離職している場合などは3か月。出典:厚生労働省「『給付制限期間』が短縮又は解除されます」)。
就業規則などで決められた定年で離職した場合は、離職票の離職理由で「定年による離職」(「定年、労働契約期間満了等によるもの」の区分)とされ、この「自己の都合による退職」とは別に扱われます(厚生労働省「離職されたみなさまへ」、労働局の離職票の記載方法の案内)。継続雇用を断ったことが、そのまま自己都合になるとは、調査した範囲では確認できませんでした(公式に明記された文言は見当たらない。2026年9月確認)。
ここでの落とし穴は、離職票の離職理由です。会社が離職票を作るとき、離職理由の選び方を間違えると、本来かからない給付制限がかかることがあります。届いたら、離職理由の欄を最初に読んでください。自分の認識と違うときは、ハローワークに異議を申し出られます。
何日分・いくらもらえるのか
日数は、勤続期間で決まる
定年で辞める人の多くは、雇用保険に入っていた期間(算定基礎期間)が長くなります。雇用保険法22条1項では、期間ごとに次のように決まっています。
| 算定基礎期間 | 給付日数 |
|---|---|
| 10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
同じ会社で20年以上雇用保険に入っていた人は、150日の区分です。
金額は、辞める前の給料で決まる
1日あたりの金額(基本手当日額)は、辞める前6か月の賃金の合計を180で割った賃金日額に、一定の率をかけて決まります。60〜64歳の場合、この率は賃金日額に応じて45〜80%の範囲です(雇用保険法16条2項、厚生労働省「離職されたみなさまへ」)。給料が高いほど率は下がり、上限額もあります。賃金日額の計算は同法17条1項で確認しました。
辞めるときの年齢が65歳以上だと、仕組みが変わる
65歳以上の被保険者が失業した場合は、基本手当ではなく「高年齢求職者給付金」になります(雇用保険法37条の2第1項)。日数分ではなく一時金で、雇用保険に入っていた期間が1年以上なら50日分、1年未満なら30日分です(同法37条の4第1項)。定年が65歳の会社で、65歳に達したあとに辞める人は、こちらにあたります。
計算例:60歳で定年、再雇用を断った場合
前提は、次のように仮置きします。実際の日額は、賃金日額に応じてハローワークが決めます。
| 前提 | 内容 |
|---|---|
| 年齢 | 60歳で定年退職 |
| 雇用保険の加入期間 | 同じ会社で38年 |
| 辞める前6か月の月給 | 30万円(各月とも) |
| 基本手当日額 | 賃金日額の50%と仮置き(実際は45〜80%の範囲で、賃金日額に応じて決まる。雇用保険法16条2項) |
計算の流れです。
- 賃金日額 = 30万円 × 6か月 ÷ 180日 = 10,000円
- 基本手当日額 = 10,000円 × 50% = 5,000円(仮置き)
- 給付日数 = 加入期間が20年以上なので150日(雇用保険法22条1項)
- 総額の目安 = 5,000円 × 150日 = 75万円
- 認定日ごとの受取額 = 5,000円 × 28日 = 14万円(認定は原則4週間に1回、直前の28日分。雇用保険法15条3項)
150日分を受け切るまで、認定日で数えて約5か月かかります。この金額は仮置きです。ご自身の日額は、ハローワークの受給資格決定のときの説明で確かめてください。
初回の振込は、給付制限のない人でも、求職の申込みから約1か月後(初回認定日の約1週間後)です(ハローワークインターネットサービス「よくあるご質問(雇用保険について)」)。筆者は会社都合の退職で、給付制限はありませんでした。初回の振込は、退職から36日目、雇用保険説明会から21日目でした。自己都合の場合は、これに給付制限の期間が加わります。
すぐ探さない人は、受給期間の延長を申し出る
定年で辞めたあと、少し休んでから仕事を探したい人もいます。失業保険は、離職日の翌日から原則1年を過ぎると受け取れなくなります(雇用保険法20条1項)。
ただ、定年に達したことで辞めた人については、「しばらく求職の申込みをしない」と申し出れば、その期間分だけ受給期間を延ばせる仕組みがあります(同法20条2項)。延ばせるのは最長1年で、合わせて最長2年です。
省令で決まる細かい条件は、次のとおりです(雇用保険法施行規則31条の2・31条の3、厚生労働省・ハローワークのよくあるご質問で確認)。
- 対象:60歳以上の定年などで辞めた人
- 申出:離職日の翌日から2か月以内に、「受給期間延長申請書」に離職票を添えて、ハローワークへ
休むと決めたら、この2か月の期限を先に確かめてください。過ぎると延長できません。
継続雇用をいったん受けたあとで辞める場合は、別の話
この記事は、継続雇用を「受けずに」定年で辞める場合です。再雇用の契約を結び、働き始めてから辞める場合は、別の扱いになります。
- 再雇用後に、自分の都合で辞める:雇用保険法33条1項は、正当な理由なく自己の都合で退職した場合を給付制限の対象にしていて、定年後かどうかで区別していません。給付制限がつく可能性があります。正当な理由があるかどうかは、ハローワークが認定します(同条2項)
- 再雇用の契約に、あらかじめ「65歳まで」などの期限が決まっていて、その期限が来て離れる:「採用又は定年後の再雇用時等にあらかじめ定められた雇用期限到来による離職」という別の区分です(労働局の離職票の記載方法の案内)
「様子見で受けて、ダメなら辞める」という選び方は、給付の面で、最初から辞退するのと結果が違う可能性があります。迷っているなら、辞退する前にハローワークで扱いを確かめてください。
続ける場合の「高年齢雇用継続給付」も比べておく
再雇用で給料が下がったとき、一定の条件を満たすと、雇用保険から「高年齢雇用継続基本給付金」が出ます(雇用保険法61条)。60歳到達時の賃金と比べて75%未満に下がったときに出ます(同条1項。厚生労働省の案内も同じ)。雇用保険に入っていた期間が5年以上あることも条件です(同項1号)。額は、その月の賃金の最大10%です(同条5項)。2025年4月に、以前の最大15%から縮小されました(厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」)。
失業保険を受けるか、続けて働いて給付金を受けるか。どちらが得かは、給料の下がり幅と、次にやりたいことで変わります。数字だけで決めなくて大丈夫です。
退職後の健康保険と年金も、同じ時期に決める
失業保険と一緒に、次の2つも手続きが要ります。
- 健康保険:会社の健康保険を抜けたあとは、任意継続(最長2年)か、国民健康保険のどちらかを選びます。任意継続は、被保険者の資格を失った日から20日以内の申出が必要です(健康保険法37条1項)。期間は、なった日から2年までです(同法38条1号)
- 国民年金:国民年金の第1号被保険者は、20歳以上60歳未満です(国民年金法7条1項1号)。60歳で定年を迎えた人は、原則として国民年金への切り替えは要りません。60歳を過ぎて辞める場合も同じです。ただし、配偶者が60歳未満でご自身の扶養に入っていた場合は、配偶者の側で切り替えが要ることがあります(第3号被保険者は、厚生年金に入っている人の配偶者と決められているため。同項3号)
また、65歳未満で「特別支給の老齢厚生年金」などを受け取っている人は、失業給付(基本手当)と同時には受けられません。ハローワークで求職の申込みをした日の翌月から、受給期間が終わった月(または所定給付日数を受け終わった月)まで、年金が全額止まります(日本年金機構「年金と雇用保険の失業給付との調整」)。【各自確認:ご自身が特別支給の老齢厚生年金を受け取れるかどうか。ねんきんネットか年金事務所で確認】
文例:継続雇用を希望しないことを会社に伝える文面
辞退の意思は、文面で残しておくと、あとで行き違いになりません。会社の様式があれば、そちらを使ってください。
件名:継続雇用を希望しない旨のご連絡(氏名)
人事部 ご担当者様
お世話になっております。○○部の○○です。
このたびは、定年後の継続雇用制度についてご案内をいただき、ありがとうございました。
検討いたしました結果、継続雇用を希望せず、○年○月○日の定年をもって退職いたします。
これまでのご指導とお心遣いに、心より感謝しております。
つきましては、次の書類をご用意いただけますと幸いです。
・雇用保険被保険者離職票(1・2)
・源泉徴収票
何かございましたら、ご連絡ください。
氏名
離職票の請求を、この段階で入れておくと、あとから催促する手間が減ります。
チェックリスト:辞退を決める前・決めた後に確かめること
□ 会社の継続雇用の申込み期限を、就業規則か案内で確認した □ 自分の離職日が、2025年4月1日以降かどうかを確認した □ 雇用保険に入っていた期間を確認した(10年・20年の境目に近い人は、通算の有無を含めて) □ 辞退の意思を、文面で会社に伝えた □ 離職票(1・2)が届いたら、離職理由の欄を読み、違っていればハローワークで異議を申し出る □ 65歳以上で辞める場合は、基本手当ではなく高年齢求職者給付金になることを確認した □ すぐ求職しないなら、離職日の翌日から2か月以内に受給期間の延長を申し出る(雇用保険法施行規則31条の3) □ 健康保険(任意継続か国民健康保険か)を選んだ。任意継続は資格喪失日から20日以内 □ 特別支給の老齢厚生年金の対象になるか、年金事務所かハローワークで確かめた
次にやること
会社の継続雇用の申込み期限を、就業規則か案内で確かめてください。期限を過ぎると、選べなくなります。今日できるのは、その1つの確認です。
出典
- 雇用保険法15条(失業の認定)、16条(基本手当の日額)、17条(賃金日額)、20条(受給期間)、21条(待期)、22条(所定給付日数)、33条(給付制限)、37条の2・37条の4(高年齢求職者給付金)、61条(高年齢雇用継続基本給付金)、同法施行規則31条の2・31条の3(定年退職者等の受給期間延長)(e-Gov法令の全文で本文を確認)
- 健康保険法37条・38条(任意継続被保険者)、国民年金法7条(被保険者の資格)(同上)
- 高年齢者雇用安定法9条(高年齢者雇用確保措置。継続雇用制度の定義を含む)厚生労働省審議会配布資料で条文を確認 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000036255.pdf
- 対象者を絞れる経過措置が令和7年3月31日までだったこと:厚生労働省「高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者雇用確保措置関係)」(令和7年3月31日改訂で経過措置の記載を削除)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koureisha/topics/newpage_55003.html
- 継続雇用を希望しなかった場合も「定年による離職」の欄で扱われること:愛知労働局・ハローワーク「離職証明書の書き方(離職理由欄)」https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-hellowork/content/contents/000612244.pdf
- 厚生労働省「離職されたみなさまへ」(定年・契約期間満了は待期のみ、自己都合・懲戒解雇は待期+給付制限。基本手当日額は60〜64歳で45〜80%)https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000951119.pdf
- ハローワークインターネットサービス「よくあるご質問(雇用保険について)」(給付制限の期間、60歳以上の定年退職者の受給期間延長、初回振込の時期)https://www.hellowork.mhlw.go.jp/help/question05.html
- 厚生労働省「高年齢雇用継続給付」の案内(支給率15%から10%、賃金75%未満の要件)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_51380.html
- 日本年金機構「年金と雇用保険の失業給付との調整」https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/koyou-chosei/20140421-03.html
- 北海道労働局「離職票-2の離職理由欄等の記載方法について」(「定年による離職」「雇用期限到来による離職」の区分)https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-roudoukyoku/var/rev0/0133/4098/20161128155148.pdf
- 厚生労働省「『給付制限期間』が短縮又は解除されます」(離職日が2025年4月1日以降は原則1か月)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139508.html