懲戒解雇されたら失業保険はどうなるか
- 1離職票を受け取る
- 2離職理由を確認
- 3ハローワークで申込み
- 4待期7日
- 5給付制限3か月
- 6認定・振込
この記事の内容
この記事は、懲戒解雇を言い渡された、または言い渡されそうで、失業保険(雇用保険の基本手当)はもうもらえないのかと不安になっている人に向けて書いています。 答えを先に言うと、「もらえない」と決まったわけではありません。ただ、「重責解雇」と判定されると、申し込んでから支給が始まるまでの待ち期間が長くなります。この記事では、重責解雇とは何か、何がどう変わるか、無収入の期間はどれくらいになるかを、数字つきで整理します。
この記事は条文と公的な資料を読んでまとめたもので、体験談ではありません。個々の事情がどう判定されるかは、ハローワークが決めます。
結論:もらえる可能性はある。待つ期間が3か月に延びる
懲戒解雇と言われた直後は、頭が真っ白になると思います。生活費のこと、次の仕事のこと、家族への説明。一度に考えることが多すぎます。まず、失業保険については次の3点だけ押さえてください。
- 懲戒解雇されたことだけで、失業保険の資格がなくなるわけではありません
- 「重責解雇」と判定されると、支給されない期間(給付制限)が3か月つきます(厚生労働省の資料)
- 重責解雇に当たるかどうかを最終的に決めるのは、会社ではなくハローワークです
雇用保険法第33条第1項は、「被保険者が自己の責めに帰すべき重大な理由によつて解雇され、又は正当な理由がなく自己の都合によつて退職した場合」に、待期期間の満了後、一定の期間は基本手当を支給しない、と定めています。もらえなくなるとは書いておらず、一定の期間は支給しないと書いています。
懲戒解雇と重責解雇は、同じ言葉ではない
ふたつの言葉は、使われる場所が違います。
| 懲戒解雇 | 重責解雇 | |
|---|---|---|
| 何の言葉か | 会社が就業規則にもとづいて出す処分 | 雇用保険の側での離職理由の分類 |
| 誰が決めるか | 会社 | ハローワーク |
| 影響が出るもの | 会社との雇用関係、退職金など | 失業保険を待つ期間 |
雇用保険法第33条第1項の「自己の責めに帰すべき重大な理由によつて解雇され」が、いわゆる重責解雇です。会社が「懲戒解雇」と書いたからといって、その言葉がそのまま雇用保険の判定になるわけではありません。離職理由の最終的な判定はハローワークが行う、と離職証明書の記入例(神奈川労働局・ハローワーク)にも書かれています。
懲戒解雇と重責解雇を同じものとして扱う定めは、調査した範囲では見当たりませんでした(2026年9月確認)。実際にどちらの判定になるかは、個別の事情を見てハローワークが決めます。
どんなときに重責解雇になるのか
神奈川労働局・ハローワークの離職証明書の記入例には、重責解雇(労働者の責めに帰すべき重大な理由による解雇)について、次のように書かれています。
- 刑法の規定違反
- 故意または重過失による、設備や器具の破壊
- 事業所の信用失墜
- 重大な就業規則違反
これらの理由などで解雇された場合が、重責解雇に当たるとされています。
大事なのは、「重大」かどうかです。遅刻が続いた、ミスをした、成績が上がらなかった、というだけの理由で解雇されたなら、能力や勤務態度の問題で、上の例とは性質が違います。ただ、「これは重責解雇になる」「ならない」と外から言い切ることは、この記事にはできません。判定に必要な資料として、記入例には解雇予告通知書、退職証明書、就業規則などが挙げられています。手元にあるものを確認しておくと、話が早くなります。
重責解雇になると、何が変わるのか
比べる相手を3つ置きます。
| 重責解雇 | 自己都合の退職 | 会社都合の解雇(重責解雇でないもの) | |
|---|---|---|---|
| 給付制限 | 3か月 | 原則1か月(令和7年4月1日以降の離職) | 第33条第1項の対象外 |
| 所定給付日数 | 一般の離職者と同じ(90〜150日) | 同じ | 年齢と被保険者期間で90〜330日 |
| 受給資格に必要な被保険者期間 | 離職前2年間に通算12か月以上 | 同じ | 離職前1年間に通算6か月以上でも可 |
出どころは次のとおりです。
- 給付制限の3か月と1か月: 厚生労働省(岩手労働局・ハローワーク)のリーフレット。自己都合でも、退職日から5年間で2回以上正当な理由なく退職して受給資格決定を受けた場合は3か月になる、との注記もあります
- 第33条第1項が給付制限をかけるのは、重責解雇と、正当な理由のない自己都合退職の2つです。会社都合の解雇は、この条文の対象に入っていません
- 給付日数: 雇用保険法第22条第1項(算定基礎期間が10年未満で90日、10年以上20年未満で120日、20年以上で150日)、ハローワークインターネットサービスの「基本手当の所定給付日数」
- 特定受給資格者(会社都合の扱い)は、解雇のうち「自己の責めに帰すべき重大な理由によるものを除く」と定められています(第23条第2項第2号)。つまり重責解雇は、日数の多い側には入りません
- 必要な被保険者期間: 第13条第1項(2年間に12か月以上)。第13条第2項の「6か月」に下がるのは、特定理由離職者などです
重責解雇で変わるのは、主に「待つ期間」です。 もらえる日数の上限は、自己都合で辞めた人と同じです。
計算例:重責解雇と自己都合で、無収入の期間はどれだけ違うか
実際の日付に置くと、イメージしやすくなります。次の前提で計算します。
前提(すべて仮置き)
| 項目 | 仮置きの値 |
|---|---|
| 離職日 | 2026年10月31日 |
| 雇用保険の被保険者期間 | 8年 |
| ハローワークで求職の申込みをした日 | 2026年11月10日 |
| 毎月の生活費 | 15万円(1日あたり5,000円として計算) |
| 収入 | 失業保険が始まるまで、ほかの収入はなし |
日付の流れ
- 待期: 申込みの日から、失業している日が通算7日になるまでは支給されません(第21条)。11月10日〜16日の7日間が待期です
- 給付制限: 待期のあと、重責解雇なら3か月。11月17日〜2027年2月16日
- 2月17日から、基本手当の支給の対象になります(振込は失業の認定を受けたあとで、日付はハローワークが決めます)
- もらえる日数: 被保険者期間が8年(10年未満)なので、上限は90日(第22条第1項)
自己都合で辞めた場合との比較
| 重責解雇 | 自己都合(原則1か月) | |
|---|---|---|
| 給付制限の期間 | 11月17日〜2027年2月16日 | 11月17日〜12月16日 |
| 支給の対象になる日 | 2027年2月17日 | 2026年12月17日 |
| 申込みから支給対象の前日までの日数 | 99日 | 37日 |
| 生活費(1日5,000円として) | 495,000円 | 185,000円 |
差は62日、生活費にして310,000円です。基本手当の日額はハローワークが決めるので、ここには入れていません。この差は「3か月と1か月の差」そのものなので、月の生活費が違えば、その分だけ上下します。
つまり、重責解雇と判定されたときの負担は「もらえない」ではなく、「2か月ぶん長く、無収入で待つこと」です。その間の家賃や社会保険料の見通しは、先に立てておいてください。
チェックリスト:離職票が届いたら確かめる5つ
離職票(離職票-1・離職票-2)が届いたら、ハローワークへ行く前に次を見てください。読み方は離職票-1・2の見方にもまとめています。なかなか届かないときは離職票はいつ届くかを先に。
- □ 離職票-2の離職理由欄で、会社が「重責解雇」に○をつけていないか
- □ 会社が書いた解雇の理由(具体的な事情)が、実際にあったことと合っているか
- □ 離職票-2の「離職者本人の判断」欄に、異議「有り・無し」のどちらが記入されているか
- □ 解雇予告通知書、退職証明書、就業規則など、理由の裏づけになる紙が手元にあるか
- □ 離職日、被保険者期間、賃金の額に、明らかな間違いがないか
この欄が空欄のとき、すでに「無し」と書いてしまったときの扱いは、一次資料で確認できませんでした(2026年9月確認)。 迷ったら、書き足さずに、そのままハローワークの窓口で聞いてください。
離職理由に納得できないとき、どうするか
会社が書いた離職理由が、実際の経緯と違うと感じるときの動きは、次のとおりです。
- 離職票-2には、事業主が○をつけた離職理由に対して、本人が「異議 有り・無し」を選ぶ欄があります(離職証明書の記入例)
- 異議があるときは、自分が認識している事情を、離職者用の具体的事情記載欄に書きます
- 離職理由の最終的な判定はハローワークが行います。会社の言い分と本人の言い分の両方が窓口で聞かれるのが一般的ですが、進め方は窓口によって違う可能性があります(調査した範囲では、一次資料に手順の記載は見当たりませんでした)
- 手元の解雇予告通知書や就業規則、やりとりの記録は、持って行きます
判定結果が出るまでの日数や、異議が通った場合にそれが給付制限にどう反映されるかは、一次資料で確認できていません(2026年9月確認)。窓口で聞いてください。
なお、懲戒解雇そのものが有効かどうかは、失業保険とは別の問題です。解雇の理由に納得できないときは、弁護士や、各都道府県の労働局にある総合労働相談コーナーに相談する道があります。個別の判断は、この記事ではしません。
眠れない、食べられない、といった状態が続いているときは、書類より先に、医師に相談してください。
再就職手当は、重責解雇でも狙えるのか
給付制限がついた人が、早く仕事を決めたときにもらえる再就職手当という制度があります。厚生労働省のリーフレットには、次のことが書かれています。
- 再就職手当は、基本手当の所定給付日数の3分の1以上を残して、安定した職業に就き、支給要件をすべて満たした場合に支給される
- 離職理由による給付制限を受けた場合は、待期満了後1か月間は、ハローワークや許可・届出のある職業紹介事業者などの紹介で就職したものであること、が要件のひとつ
リーフレットの書き方は「離職理由による給付制限を受けた場合」となっていて、3か月の場合も含むように読めます。ただ、リーフレットが例に挙げているのは給付制限が1か月になった場合と、解除された場合で、重責解雇のときの扱いを名指しした記載は見当たりませんでした(2026年9月確認)。狙うときは、先にハローワークで確認してください。
次にやること
離職票-2の「離職理由」の欄を、スマホで写真に撮ってください。 会社が書いた理由、○のついた番号、本人の判断欄、この3か所が写るようにします。重責解雇に○がついていても、その時点で結論が出たわけではありません。写真があれば、ハローワークの窓口で「この欄について確認したい」と、そのまま見せられます。離職票がまだ届いていないなら、届いてからで大丈夫です。
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