失業保険の給付制限中に転職エージェントは使えるか
- 1求職申込み
- 2待期7日
- 3給付制限(約1か月)
- 4給付制限が明ける
- 5手当の支給対象
この記事の内容
自己都合で辞めて給付制限がかかっている人が、転職エージェントに登録して相談することは、問題なく使えます。 調べた範囲では、給付制限は「手当が出ない期間」であって、求職活動を止める期間ではありません。この記事では、使ってよい範囲、求職活動の実績になる行動とならない行動、そして再就職手当との関係を整理します。
- 給付制限の間は何もしてはいけないのか、それとも動いていいのか分からない
- エージェントに登録すると、失業保険に影響が出ないか不安
- 収入がない1か月に、転職活動を進めてしまっていいのか迷っている
結論:使える。給付制限は「手当が出ない期間」
順番から整理します。求職の申込みをすると、まず待期の7日間があります(雇用保険法第21条)。自己都合で正当な理由がない退職の場合、その後に給付制限がつき、基本手当は待期の満了後「一箇月以上三箇月以内の間で公共職業安定所長の定める期間」は支給されません(同法第33条第1項)。
給付制限の長さは、2025年(令和7年)4月1日以降の離職であれば原則1か月、3月31日以前なら原則2か月です。ただし、離職日からさかのぼって5年間のうちに2回以上、正当な理由なく自己都合で離職して受給資格の決定を受けた場合や、懲戒解雇された場合は3か月になります(厚生労働省パンフレット「離職されたみなさまへ」、2026年9月21日に原文を確認)。
ここで大事なのは、条文が止めているのは「基本手当を支給すること」だけという点です。雇用保険法の第32条・第33条の全文を読みましたが(2026年9月21日確認)、給付制限の間に求職活動をすることを禁じる定めは見当たりませんでした。むしろ失業の認定は、求人者に面接したことや、職業紹介事業者等から職業を紹介されたことなどの求職活動を確認して行う、と定められています(同法第15条第5項)。
つまり、手当を待つ間に動いても、ルール違反にはなりません。
給付制限中にできること・注意が要ること(早見表)
| やりたいこと | 給付制限中にできるか | 注意点 |
|---|---|---|
| 転職エージェントに登録・面談する | できる | 「登録しただけ」は求職活動実績にならない(次の章) |
| 求人に応募する・面接を受ける | できる | 応募や面接は実績になる。日付と応募先を記録しておく |
| 就職が決まる・内定が出る | できる | 就職日の前日までの失業の認定を受ける必要がある。詳しくは第4章 |
| 短期のアルバイトをする | 窓口に確認してから | 週20時間未満でも、働いた日と収入額の申告が必要。就職・就労の不申告は不正受給の例に挙がっている(厚生労働省パンフレット) |
| 起業・開業の準備をする | 窓口に確認してから | 自営を始める、または自営の準備に「専念」する人は対象外。求職活動中に創業の準備・検討をする程度なら、支給される場合もある(同パンフレット) |
副業やアルバイトの線引きは、始める前にハローワークで聞くのが安全です。
エージェントの利用は求職活動実績になるか
認定日ごとに出す失業認定申告書には、求職活動の実績を書きます。エージェントの利用が実績になるかどうかは、何をしたかで分かれます。東京ハローワーク「失業の認定における求職活動実績となるもの」、神奈川ハローワーク「雇用保険受給者のみなさまへ(R7.8)」、愛知ハローワーク「求職活動実績について」の各PDFを2026年9月21日に読み、次のように整理しました。
| エージェントでしたこと | 実績になるか | 根拠・補足 |
|---|---|---|
| 許可・届出のある紹介会社での職業相談・職業紹介(対面・電話・オンライン) | なる | 東京・神奈川の案内に明記。就職支援のためのセミナー受講も実績になる |
| 紹介された求人に応募した・面接を受けた | なる | 求人への応募(応募書類の送付・面接など)は実績。ただし1つの求人の書類選考・筆記・面接が一連の選考なら、東京の案内では1回の応募として数える。神奈川の案内は、応募後の二次選考も実績の例に挙げている |
| 求人サイトや求人情報を見ただけ・登録手続きだけ | ならない | 東京・神奈川・愛知の案内に共通して、「求人情報の閲覧のみ」は実績にならない |
| ネット上で登録しただけ | ならない | ただし東京の案内では、登録の際に希望条件を話し合った、具体的な求人の提示があって答えた、など事業者とやり取りがあれば実績になる |
注意したいのは、「許可・届出のある」事業者かどうかです。エージェントを名乗っていても、実績に数えられるのはそこが前提になります。神奈川の案内では、許可番号は紹介会社のホームページで確認するよう書かれています。使う予定のエージェントが実績として数えられるかは、ハローワークの窓口で聞いて確かめてください。
申告書には、面接やセミナーなどの日付と事業所名などを具体的に書きます。申告内容は、利用した機関への問い合わせで確認されることがあり、事実と違う申告は不正受給になります(東京の案内)。不正の場合、支給を受けた額の返還に加えて、その2倍以下の金額の納付を命じられることがあります(雇用保険法第10条の4、2026年9月21日確認)。やっていない相談を書かない、これだけは外せません。
給付制限が1か月の人が何回の実績を出すかは、神奈川の案内(2025年8月版)に「給付制限(1か月)後の最初の認定日は、給付制限の初日から次回認定日の前日までに2回以上」と書かれています。給付制限が3か月の場合は3回以上です。この回数は労働局・窓口の案内によって書き方が異なるため、自分の管轄のハローワークで、受け取った案内資料か窓口で確認してください。
給付制限中に内定が出たら:再就職手当と「紹介経由」の1か月
エージェントを使う大きな理由が、ここにあります。
早く再就職が決まった人には、再就職手当が出ることがあります。給付制限がかかった人には、その要件のひとつとして、待期の満了後1か月の間に就職した場合は、ハローワークまたは職業紹介事業者等の紹介で就職したものであることという決まりがあります(雇用保険法施行規則第82条第1項第3号。厚生労働省パンフレットにも同じ趣旨の記載あり)。
つまり、給付制限の最初の1か月に入社するなら、ハローワーク経由か、許可・届出のある職業紹介事業者(転職エージェントなど)経由でないと、再就職手当の対象から外れます。知人の紹介や、企業に直接応募して決まった場合は、この期間内だと要件を満たしません。
再就職手当には、このほかにも要件があります。就職日の前日までの失業の認定を受けたうえで、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あることです(雇用保険法第56条の3第1項第1号、厚生労働省パンフレット)。手当の対象になるかどうかの最終判断は、窓口で受けてください。
もう1点。厚生労働省パンフレットは、基本手当を受けられない人の例に「次の就職が決まっている方」を挙げています。内定が出たら、そのまま黙って進めず、早めにハローワークへ伝えて、就職日の前日までの失業の認定の受け方を確認してください。
日付で確かめる計算例
ここでは、日付を仮置きして、「紹介経由でなければならない期間」を数えてみます。
前提(仮置き) - 自己都合退職、給付制限は原則の1か月 - 求職の申込みを10月1日にした - 待期の7日間を、暦どおり10月1日から数える - 1か月は、待期満了の翌日から数える
| 項目 | 日付の目安 |
|---|---|
| 待期の7日間 | 10月1日〜10月7日 |
| 給付制限(約1か月) | 10月8日〜11月7日ごろ |
| 「紹介経由でなければならない」期間(待期満了後1か月) | 10月8日〜11月7日ごろ |
| 給付制限が明けたあと | 11月8日以降 |
この日程で、エージェントを使って動いた場合の入社日ごとの扱いは、次のようになります。
| 入社日(仮置き) | エージェント経由で決まった場合 | 直接応募・知人紹介で決まった場合 |
|---|---|---|
| 10月28日 | 紹介経由の要件を満たす | 紹介経由の要件を満たさない |
| 11月16日 | 期間外なので、この要件は関係しない | 期間外なので、この要件は関係しない |
日数の数え方(待期をどこから数えるか、1か月の終わりの日)は、ハローワークの扱いで数日ずれることがあります。上の日付は目安です。自分の日程は、受給資格者証と窓口の案内で確認してください。
焦って動きたい気持ちについて
手当が出ない期間は、心細いものです。貯金が減っていくのを見ながら、「今のうちに次を決めなければ」と急ぎたくなるのは自然だと思います。
ただ、動いてよいことと、急いで決めなければいけないことは別です。エージェントに会うのは、選択肢を知るためだけでも構いません。話を聞いた結果、今すぐ決めない、という結論も普通にあります。給付制限が明ければ、基本手当の対象になる日が始まります。
もし眠れない、食欲がないなど、心身の不調が続いているなら、転職活動より先に医師・産業医に相談してください。手続きは、体調が戻ってからでも間に合うことが多いです。期限が気になる手続きは、ハローワークに事情を伝えて確認できます。
実体験:給付制限は経験していません
私は2026年6月30日に会社都合で退職し、7月6日にハローワークで求職の申込みをしました(記事165)。会社都合だったため、給付制限はかかりませんでした。したがって、給付制限中に転職エージェントを使った経験は、私にはありません。この記事の整理は、法令と公的機関の案内を読んだ内容に基づくものです。
実績の数え方については、説明会に出席したこと自体が初回認定分の実績として数えられました(記事025)。エージェントの利用がどう数えられるかは、自分では試していないので、窓口で確認してください。
動く前のチェックリスト
- □ 離職票の離職理由と、自分の給付制限の有無・期間を、ハローワークの案内で確認した
- □ 登録するエージェントが、実績として数えられるかを窓口で聞いた(または聞く予定を決めた)
- □ 面談・応募・面接をした日と相手先を、その日のうちにメモしている
- □ 認定日と面接の日程が重なりそうなときは、事前にハローワークへ連絡すると決めた
- □ 内定が出たら、就職日の前日までにハローワークへ届け出ると決めた
- □ 給付制限の最初の1か月に入社しそうなら、エージェント経由かどうかを、再就職手当の面から窓口で確認した
次にやること
受給資格者証(または手続きの案内)で、自分の給付制限の期間を日付に直して手帳に書くこと。今日はこれだけで足ります。期間が分かれば、いつまでが「紹介経由」の1か月に当たるか、いつ動くかを、落ち着いて決められます。
※本記事は2026年9月19日時点で確認できた範囲の情報整理です。給付制限の長さ、実績として数えられる範囲、必要な回数は、離職日・離職理由・管轄のハローワークによって扱いが異なる場合があります。個別の判断は、管轄のハローワークの案内でご確認ください。心身の不調がある場合は、手続きより先に医師・産業医にご相談ください。
出典(2026年9月21日確認) - 雇用保険法 第10条の4(返還命令等)・第15条(失業の認定)・第21条(待期)・第32条・第33条(給付制限)・第56条の3(就業促進手当) - 雇用保険法施行規則 第82条第1項第3号(再就職手当の基準。待期満了後1か月の紹介経由要件) - 厚生労働省パンフレット「離職されたみなさまへ」(給付制限の期間、再就職手当、受給できない人の例、不正受給の例) https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000951119.pdf - 東京ハローワーク「失業の認定における求職活動実績となるもの」 https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-hellowork/content/contents/001895481.pdf - 神奈川ハローワーク「雇用保険受給者のみなさまへ(R7.8)」(給付制限後の認定日に必要な回数、実績になる・ならない活動) https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-hellowork/content/contents/002170678.pdf - 愛知ハローワーク「求職活動実績について」 https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-hellowork/content/contents/001247424.pdf - 本サイト記事025(求職活動実績の作り方)・記事165(雇用保険説明会では何をするか)