退職前に転職先を探すか、辞めてから探すか
- 在職中に探すか辞めてから探すかは、精神的な余裕と使える時間のトレードオフ
- 辞めてから探す場合は「給付制限1ヶ月+待期7日」を経てから受給が始まり、そこから所定給付日数(90〜150日)しか出ない
- 自分の給付制限・給付日数・受給期間を先に計算してから、転職活動のスケジュールに落とし込むと迷いが減る
- 1退職
- 2待期7日
- 3給付制限1ヶ月
- 4受給開始
- 5給付終了(90〜150日)
「今の会社を辞めてから転職活動をするか、働きながら探すか」で迷っている人向けの記事です。 この記事では、どちらが「正解」かではなく、辞めてから探す場合に失業保険(基本手当)がいつからいつまで出るのかを先に計算し、そこから逆算してスケジュールを組む考え方を紹介します。
結論: どちらが良いかより、逆算できるかが先
在職中に探すか、辞めてから探すかに、万人に共通する正解はありません。ただし、辞めてから探すことを選ぶなら、失業保険がいつからいつまで出るのかを先に計算しておくかどうかで、その後の焦り方がかなり変わります。
- 在職中に探す最大の利点は「収入が途切れない」こと、最大の欠点は「時間と気力が削られる」こと
- 辞めてから探す場合、自己都合退職だと「待期7日+給付制限1ヶ月」を経てから失業保険が出始め、そこから90〜150日分しか出ない(被保険者であった期間により変動。雇用保険法第21条・第22条・第33条)
- 「辞めてから探す」を選ぶなら、給付が始まる日と終わる日を先にカレンダーに書き込んでから動き出すと、判断のブレが減る
以下、それぞれの事情と、給付期間の具体的な計算方法を順に見ていきます。
在職中に探す/辞めてから探す、それぞれの事情
| 在職中に探す | 辞めてから探す | |
|---|---|---|
| 収入 | 途切れない | 失業保険が出るまで空白があり、出た後も給与より少ない |
| 使える時間 | 平日の面接調整が難しく、選考が長引きやすい | 平日昼間も動けるため、選考のペースを自分で作りやすい |
| 精神的な負荷 | 仕事と転職活動の二重負担が続く | 収入への不安が先に立ちやすい |
| 職務経歴の見え方 | 「在職中の応募」として見られる | 「離職期間」が発生し、面接で聞かれることが多い |
| 決断のタイミング | 良い条件が出るまで待てる | 期限(給付期間)が先に決まるため、選考を急ぎがちになる |
在職中に探す場合、収入が途切れないという安心感がある一方、面接の日程調整や体力の消耗が理由で活動が長引くこともあると言われています。辞めてから探す場合は、時間は確保しやすい反面、「いつまでに決めないといけないか」という期限の意識が強く働きます。
体調や気力がすでに限界に近い場合、この比較表よりも先に、心身の状態を優先して判断すべき場面もあります。眠れない・食欲がない・涙が出るといった変化がある場合は、転職活動の計画より先に医師・産業医に相談してください。
辞めてから探す場合、お金はいつからいつまで出るか
「辞めてから探す」を選ぶ場合、鍵になるのは失業保険(雇用保険の基本手当)がいつから出て、いつ終わるかです。自己都合退職を前提に整理します。
- 待期期間: 7日間 離職理由を問わず、ハローワークで求職の申込みをしてから、失業している日が通算して7日に満たない間は給付されません(雇用保険法第21条)
- 給付制限: 原則1ヶ月 自己都合退職の場合、待期7日の後にさらに給付制限がかかります。この給付制限は「1ヶ月以上3ヶ月以内の間で公共職業安定所長の定める期間」と定められており(雇用保険法第33条第1項)、2025年4月(令和7年4月1日施行)の行政手引改正で、運用上の原則が2ヶ月から1ヶ月に短縮されました。ただし退職日から遡って5年間のうちに2回以上、正当な理由のない自己都合退職で受給資格決定を受けている場合や、自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇(重責解雇)の場合は3ヶ月になります(厚生労働省・都道府県労働局の周知資料に基づく)
- 所定給付日数: 90〜150日 自己都合退職(一般受給資格者)の場合、被保険者であった期間に応じて90日・120日・150日のいずれかになります(雇用保険法第22条第1項)。被保険者期間が原則12ヶ月未満だと、そもそも受給資格自体が成立しません(離職日以前2年間に被保険者期間が通算12ヶ月以上必要。雇用保険法第13条第1項)
- 受給できる期限: 離職日の翌日から原則1年間 所定給付日数が残っていても、この1年を過ぎると受給できなくなります(雇用保険法第20条第1項)
会社都合退職(倒産・解雇など、特定受給資格者に該当する場合)は、給付制限がかからず、所定給付日数も90〜330日と自己都合より手厚くなる場合があります(雇用保険法第23条。具体的な日数はハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」で年齢・被保険者期間ごとに公表されており、最大の330日は45歳以上60歳未満・被保険者期間20年以上の場合)。自己都合と会社都合のどちらに該当するかで、逆算の起点が大きく変わる点は押さえておく必要があります。
筆者自身も会社都合退職(離職票に会社都合の離職理由コードが記載されたケース)でした。実際に給付制限はかからず、退職日から初回振込みまでは36日、雇用保険説明会からは21日でした。 自己都合退職の場合は、これに待期7日+給付制限1ヶ月がさらに上乗せされるため、初回振込みまでの期間はこれよりかなり長くなります。会社都合か自己都合かで、逆算の起点がどれだけ変わるかの一例として参考にしてください。
被保険者期間ごとの所定給付日数(自己都合・一般受給資格者)は次のとおりです(雇用保険法第22条第1項)。
| 被保険者であった期間 | 所定給付日数 |
|---|---|
| 10年未満(ただし12ヶ月未満は受給資格自体が原則不成立) | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
自己都合退職の所定給付日数には、会社都合(特定受給資格者)のような年齢区分や5年刻みの区分はなく、被保険者期間の3区分のみで決まります。実際の受給資格・給付日数・給付制限の有無は個人の状況(離職理由の認定、過去の受給歴など)によって変わるため、最終的な確認はハローワークで行ってください。
自分のケースで給付期間から逆算する
上の数字を組み合わせると、辞めてから探す場合の大まかなスケジュールが見えてきます。自己都合退職・被保険者期間5年のケースで例を示します。
| 時点 | 目安 |
|---|---|
| 離職 | 0日目 |
| ハローワークで求職申込み・待期開始 | 離職後、書類が揃い次第 |
| 待期満了 | 求職申込みから7日後 |
| 給付制限満了・受給開始 | 待期満了からさらに約1ヶ月後 |
| 給付終了の目安 | 受給開始から90日分(被保険者期間5年は「10年未満」の区分に入るため。雇用保険法第22条第1項) |
| 受給できる期限(打ち切り) | 離職日の翌日から1年 |
このケースでは、離職から実際にお金が振り込まれ始めるまでに、おおむね1ヶ月半前後の空白ができます。その後の給付も90日分で終わるため、「給付が出ている間に決める」つもりなら、逆算すると実質の活動期間は数ヶ月しかないことが分かります。
この逆算をやってみて、給付期間内に転職を決め切るのが難しそうだと感じるなら、それは「辞めてから探す」以外の選択肢(在職中に探す、退職時期をずらす、貯蓄で空白期間を延ばす)も検討材料に入れるべきだというサインです。逆に、給付期間内で十分に動けそうだと分かれば、期限が見えている分、迷いなく動きやすくなります。
厚生労働省・ハローワークの公表資料に、こうした「思ったより早く給付が終わった」という後悔の件数・割合の統計はありません(2026年8月確認)。ただし、給付制限や所定給付日数の計算を後回しにして先に退職し、後から給付終了の早さに気づいて焦るという失敗パターンは、複数のキャリアコンサルタント・社労士の解説記事で共通して指摘されています。逆算を退職前にやっておくかどうかが、退職後の焦りの大きさを左右します。
次にやること
今日は、ハローワークインターネットサービスか最寄りのハローワークで、自分の被保険者期間と離職理由の見込みを確認し、「給付開始日」と「給付終了日」を仮でカレンダーに書き込んでみてください。 その2つの日付が見えるだけで、「辞めてから探す」か「在職中に探す」かの判断は、感覚ではなく期限のある計算に変わります。
※本記事は2026年8月時点の調査に基づく一般的な情報整理です。給付の可否・金額・日数は個別の状況によって異なるため、ハローワークでご確認ください。個別の法的判断は弁護士など専門家に、心身の不調がある場合は医師・産業医にご相談ください。