休職中の転職活動はバレるか
- 休職中に転職活動をすること自体を禁じる法律は無い(憲法22条1項、職業選択の自由)
- ただし傷病手当金を受給中の場合は話が別で、支給要件である「労務に服することができない」状態(健康保険法99条1項)と転職活動が実務上矛盾すると判断されると、不正受給とみなされ給付の返還(同法58条)や支給停止(同法120条)の対象になりうる
- 傷病手当金を受給していない休職(有給消化型・無給休職)であれば、この経路のリスクは無い
- もう1つの経路は就業規則の兼業・誠実義務規定で、これは会社ごとに違うため一律の答えは無い
- バレる経路そのものについての公的統計・調査は無く、実務上よく言われる経路を整理するにとどめた
この記事の内容
休職しながら転職活動を進めていて、「これは会社にバレたらまずいのでは」と不安になっている人向けの記事です。 結論から言うと、休職中に転職活動をすること自体を禁じる法律はありません。ただし、傷病手当金を受給している場合は話が別で、支給の条件と転職活動が実務上ぶつかる可能性があります。この記事では、法律上の位置づけと、実際に問題になりうる2つの経路を整理します。
- 休職中だけど、このまま復職する気になれず転職活動を始めた
- 転職活動をしていることが会社にバレたら、何か処分されるのか不安
- 傷病手当金をもらいながら転職活動をしていいのか分からない
結論:法律違反ではないが、経路によってはリスクがある
| 論点 | 結論 |
|---|---|
| 休職中に転職活動をすること自体は違法か | 違法ではない。転職活動を直接禁じる法律は無い |
| 傷病手当金を受給していない場合のリスク | 法律上のリスクは無い。会社の就業規則違反になるかは会社次第 |
| 傷病手当金を受給している場合のリスク | 支給要件「労務に服することができない」状態との矛盾を指摘され、不正受給とみなされるおそれがある |
| バレたら必ず処分されるか | 断定できない。会社の就業規則の内容と、実際の状況次第 |
| 一番安全な進め方 | 傷病手当金の受給状況を先に確認し、必要なら保険者(協会けんぽ等)や社労士に事前に相談する |
リスクは「休職中に転職活動をすること」そのものではなく、傷病手当金を受給しているかどうかでほぼ決まります。まずここを切り分けて考えてください。
転職活動そのものを禁じる法律は無い
日本国憲法22条1項は「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と定めています。転職活動は職業選択の自由の一部であり、休職中だからといってこの権利が制限されるという規定はどこにもありません。求人への応募、書類選考、オンライン面接を受けること自体を禁じる法律は存在しません。
つまり、「休職中に転職活動をしてはいけない」という決まりは、少なくとも国の法律のレベルには無いということです。ここは安心してよい部分です。
問題になりうるのは、この先の2つの経路です。
リスクの1つ目:傷病手当金の不正受給とみなされる経路
傷病手当金を受給している(または申請中の)場合は、ここが一番注意すべき点です。
傷病手当金は、健康保険法99条1項により「療養のため労務に服することができないとき」に支給される給付です(条文原文で確認)。つまり支給の前提は、「働きたくても、病気やけがで働けない状態にある」ことです。
転職活動、特に面接に出向く、オンライン面接に受け答えする、選考書類を作成するといった活動は、外形的には「働くための行動ができる状態」に見えます。条文自体に「転職活動をしたら支給しない」という明文の規定はありませんが、保険者(協会けんぽや健康保険組合)がその人の状態を審査する際に、「労務に服することができない」という要件と矛盾すると判断すれば、支給の対象から外れるおそれがあります。
実際に不正受給と判断された場合、次の対応がありえます。
| 根拠条文 | 内容 |
|---|---|
| 健康保険法58条1項 | 偽りその他不正の行為によって保険給付を受けた者から、保険者はその給付の価額の全部または一部を徴収できる |
| 健康保険法120条1項 | 偽りその他不正の行為により保険給付を受け、または受けようとした者に対し、6か月以内の期間を定めて傷病手当金の全部または一部を支給しない決定ができる(不正行為から1年を経過した場合を除く) |
つまり、すでに受け取った分を返還させられる可能性(58条)と、これから先の分の支給が止められる可能性(120条)の両方があるということです。どちらも「偽りその他不正の行為」があった場合の規定であり、転職活動をしていた事実だけで自動的にこれに該当するとは条文からは断定できません。ただし、「働けないはずなのに転職活動をしていた」という状態は、保険者から見ればその不整合を問われる材料になりえます。
傷病手当金を受給していない休職(有給消化中や無給休職で、この給付自体を申請していない場合)であれば、この経路のリスクはそもそも発生しません。まず自分がこの給付を受けているかどうかを確認してください。
リスクの2つ目:就業規則の兼業・誠実義務規定
もう1つの経路は、法律ではなく会社の就業規則です。多くの会社は就業規則に、在職中の兼業・副業を制限する規定や、休職中の療養専念義務(「休職期間中は療養に専念すること」といった規定)を置いています。この内容は会社ごとに異なり、全国的な運用実態をまとめた公的な統計・調査は見当たりませんでした(2026年9月4日確認)。
転職活動そのものが「兼業」に当たるかは、会社の規定の書き方次第です。転職活動は他社で働くことではなく、内定を得るための準備行為なので、一般的な兼業規定にそのまま当てはまるとは限りません。一方で「療養に専念すること」という抽象的な規定を置いている会社では、転職活動をしている事実自体が、この規定と整合しないと判断される余地があります。
ここは会社の就業規則を確認しない限り、一般論では答えが出ません。休職に関する規定は、社内のイントラや総務・人事に確認すれば見られることがほとんどです。
転職活動はどうやってバレるのか
「バレる経路」そのものについて調べた範囲では、頻度や確率を示す公的な調査・統計は見当たりませんでした。実務でよく言われる経路を整理すると、次のようなものがあります。
- SNSへの投稿:転職活動の様子や、内定・退職の話をSNSに書き込み、それを同僚や上司が目にするケース
- 在籍確認・リファレンスチェック:応募先企業が現職に在籍確認の連絡をした際に、休職中であることが伝わるケース
- 傷病手当金の申請書類:申請書には会社側(事業主)の記入欄があるため、申請のやり取りの中で人事に状況が伝わることがある
- 面接のための外出:近所やよく行く場所で、同僚・取引先に偶然会うケース
- 内定後の退職手続き:内定が決まり、現職に退職の意思を伝える段階で、それまでの経緯が結果的に伝わるケース
これらはいずれも「よく言われている」経路であり、必ず起きるという話ではありません。心配しすぎる必要はありませんが、SNSと在籍確認の2つは、自分でコントロールしやすい部分でもあります。
内定が出たらどうなるか
休職中に転職活動を進め、内定が出た場合は、いずれにせよ現職を退職する手続きが必要になります。休職中でも退職の意思表示自体は通常どおりでき、期間の定めのない雇用契約であれば、意思表示から2週間で契約は終了します(民法627条1項)。休職中の退職の流れそのものは、別記事(休職中に退職できるか)で詳しく扱っています。
傷病手当金を受給していた場合、退職日の過ごし方によって退職後も受給を続けられるかが変わります(健康保険法104条)。この点は別記事(うつ・適応障害で働けないとき|退職の前に傷病手当金を知る)で扱っている内容と合わせて確認してください。
会社に連絡すること自体が負担な状態であれば、退職代行Jobs、弁護士法人ガイア、退職代行ネルサポート、円満退職ユニオン のような退職代行サービスを使い、直接のやり取りを避けて退職の意思だけを伝える方法もあります(※2026年9月時点の調査。各社のサービス内容・料金は公式サイトで最新情報を確認してください)。
実体験について
私自身は2026年6月末に前職を退職しましたが、休職を経験しての退職ではなく、在職中に転職活動を並行して進めた経験もありません。この記事の内容は、健康保険法・憲法の条文と、既存記事で調査済みの傷病手当金の仕組みをもとに整理したものです。
次にやること
まず、自分が傷病手当金を受給している(または申請中である)かどうかを確認してください。 受給している場合は、転職活動の進め方について、加入している健康保険の窓口(協会けんぽ・健康保険組合)や社会保険労務士に一度相談しておくと、あとで不整合を指摘されるリスクを減らせます。受給していない場合は、就業規則の兼業・療養専念に関する規定を確認したうえで進めてください。
※本記事は2026年9月時点の一般的な情報整理です。傷病手当金の受給状況ごとの取り扱い、就業規則の適用範囲は個人・会社ごとに異なります。判断に迷う場合は、加入している健康保険の窓口・社会保険労務士・弁護士にご確認ください。心身の不調がある場合は、転職活動の判断とは別に医師・産業医にご相談ください。
出典(2026年9月確認) - 日本国憲法22条1項(職業選択の自由):e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/321CONSTITUTION - 健康保険法99条1項(傷病手当金の支給要件「療養のため労務に服することができないとき」):e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC0000000070 - 健康保険法58条1項(不正利得の徴収):e-Gov法令検索(同上) - 健康保険法120条1項(不正受給時の支給停止):e-Gov法令検索(同上) - 健康保険法104条(資格喪失後の傷病手当金の継続給付):既存記事052・053で条文原文確認済み - 民法627条1項(期間の定めのない雇用の解約申入れ・2週間ルール):e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089