職務経歴書の退職理由の書き方
- 職務経歴書に「退職理由」欄を書く法的な義務は無い(履歴書と違い、法律で定められた様式そのものが存在しない)(様式指定の根拠は個別に確認)
- 書くとしても事実を短く、前向きな言葉に変換して書くのが一般的な作法
- 嘘をつく必要は無いが、全部を話す必要も無い。ネガティブな事情は「何が起きたか」ではなく「次にどうするか」で語る
- 退職代行を使って辞めた事実そのものは、職務経歴書にも面接にも書く・話す義務は無い
- 体調を理由に辞めた場合、詳細な病状を書く必要は無く、「一身上の都合」で足りる
- 1事実整理
- 2ネガ要素の仕分け
- 3前向き表現に圧縮
- 4職務経歴書に反映
- 5面接想定問答
この記事の内容
会社を辞めたあと、次の職を探す段階になって「退職理由をどう書けばいいか」で手が止まる人は多いです。パワハラ、体調不良、退職代行を使ったこと——事情がネガティブなほど、正直に書くべきか隠すべきか迷います。結論から言うと、全部を書く必要も、嘘をつく必要もありません。何を書き、何を書かなくていいかを整理します。
- 退職理由の欄に何を書けばいいか分からず、職務経歴書が止まっている
- パワハラや体調不良が本当の理由だが、そのまま書いていいのか不安
- 退職代行を使って辞めたことを、職務経歴書や面接で話すべきか分からない
結論:退職理由は「短く・前向きに」書けば足りる
| 論点 | 結論 |
|---|---|
| 職務経歴書に退職理由を書く義務はあるか | 無い。職務経歴書に法律で定められた様式は無く、厚生労働省が案内する「ジョブ・カード」の職務経歴シートも本人の意思による任意提出が前提とされている(厚生労働省ジョブ・カード制度、2026年8月確認) |
| 書くとしたら何を書けばいいか | 起きた事実の要約ではなく、次にどうしたいかを短く書く |
| ネガティブな事情を隠していいか | 隠す・伏せることは問題ない。ただし聞かれて嘘をつくのは避ける |
| 退職代行を使ったことは書くべきか | 書く必要は無い。退職の「手段」であって「理由」ではない |
| 体調不良は詳細に書くべきか | 詳細は不要。「一身上の都合」で足りる |
職務経歴書は自己PRの書類であって、退職の経緯を説明する書類ではありません。「なぜ辞めたか」より「これから何をしたいか」に紙面を使うのが基本の考え方です。
退職理由と転職理由は分けて考える
「退職理由」と「転職理由」は似ていますが、書類の上では役割が違います。
| 退職理由 | 転職理由 | |
|---|---|---|
| 意味 | 前の会社を辞めた理由(過去) | 次の会社を選ぶ理由(未来) |
| 職務経歴書での扱い | 書かなくてもよい。書くなら一言で | 志望動機として、こちらは具体的に書く |
| 面接での聞かれ方 | 「なぜ辞めたのですか」 | 「なぜ弊社なのですか」 |
多くの人が退職理由(過去の説明)に力を入れすぎて、転職理由(未来の話)が薄くなります。採用する側が本当に知りたいのは「うちに来て何をしてくれるか」なので、紙面と話す時間の配分は転職理由(未来)に厚くするのが基本です。
ネガティブな理由の書き換え方
事実を曲げずに、伝え方だけを変える例です。
| 実際の事情 | そのまま書くと | 書き換えの例 |
|---|---|---|
| 上司からのパワハラ | 「上司のパワハラが原因で退職」 | 「一身上の都合により退職」 |
| 長時間労働・体調不良 | 「激務で体調を崩し退職」 | 「一身上の都合により退職」 |
| 会社の業績悪化・リストラ | 「会社の経営状況により退職」 | 「会社都合により退職」(※これは事実として書いてよい。むしろ失業保険の給付日数に関わるため正確に書く) |
| 人間関係が合わなかった | 「職場の人間関係が原因で退職」 | 「一身上の都合により退職」 |
ポイントは、「一身上の都合」という言葉は嘘ではないということです。パワハラも体調不良も人間関係も、広い意味では本人の事情(一身上の都合)であり、詳細を書かないことは虚偽記載にはあたりません。
ただし例外が1つあります。会社都合退職(倒産・解雇・退職勧奨など)は、失業保険の給付日数・給付開始時期に直結するため、正確に書く必要があります。自己都合退職には基本手当の給付制限期間が設けられる一方(雇用保険法第33条)、会社都合退職にあたる「特定受給資格者」はこの給付制限を受けず、所定給付日数も優遇される場合があります(雇用保険法第22条・第23条)。会社都合か自己都合かは、事業主が作成する離職証明書の記載をもとにハローワークが認定し、離職票(雇用保険被保険者離職票)に記載されるものなので(雇用保険法施行規則第7条・第17条)、職務経歴書の記載を会社都合寄りに書き換えても給付には影響しません。逆に、実際は会社都合なのに自分から「一身上の都合により退職」と書いてしまうと、面接で話が食い違う原因になるため避けたほうが無難です。
「隠す」と「嘘をつく」は違います。聞かれていないことまで自分から言う必要は無い、というだけで、聞かれたときに事実と違うことを答えるのは避けたほうが、後のトラブルを防げます。
面接で聞かれたときの答え方
書類を通っても、面接で「なぜ辞めたのですか」と聞かれる場面は多くあります(公的な統計は無く、調査した範囲での一般的な傾向です)。基本の型は次の3つです。
- 事実を一言で述べる(詳細に踏み込まない)
- 感情的な表現を避ける(「もう限界だった」ではなく「働き方を見直したかった」)
- すぐに次(志望動機)に話をつなげる
例:「体調を崩し、一度立ち止まって働き方を見直す必要があると感じ退職しました。現在は回復しており、次は◯◯のような環境で長く働きたいと考えています」
面接官が知りたいのは「同じことがまた起きないか」です。原因を長々と説明するより、「今は問題ないこと」と「次にどうしたいか」を伝えるほうが伝わります。
パワハラなど会社側に明確な非があった場合でも、面接の場で会社名を挙げて批判することは避けたほうが、印象の面でも得策です。事実関係を争いたい場合は、面接とは別に、労働基準監督署や弁護士への相談という手段があります。
退職代行を使ったことは書く必要があるか
書く必要はありません。 退職代行はあくまで退職の意思表示を代わりに行う「手段」であり、退職の「理由」ではないためです。職業安定法第5条の4は、求人者・募集者が求職者の個人情報を収集できる範囲を「業務の目的の達成に必要な範囲内」に限っており(2026年8月確認)、労働者側に自己の退職理由や退職の経緯を自分から開示する義務を課す規定は見当たりません。職務経歴書にも面接にも、「退職代行を使って辞めた」という事実を自分から申告する義務は無いという理解です。
面接で「なぜ直接引き止められなかったのか」のように踏み込んで聞かれることはまず考えにくいですが、仮に退職の経緯を聞かれても、「一身上の都合により、円満に退職しました」で説明としては足ります。退職代行を使ったかどうかより、現在の状態と、次に何をしたいかのほうが評価の対象になります。
体調不良で辞めた場合の書き方
うつ病や適応障害など、体調を理由に退職した場合も、職務経歴書に病名や症状を書く必要はありません。「一身上の都合により退職」で十分です。
面接で聞かれた場合の答え方の目安:
- 現在の状態(通院の有無、就労可能な状態かどうか)を簡潔に伝える
- 「もう大丈夫です」と断定するより、「通院しながら回復し、現在は問題なく働ける状態です」のように、事実ベースで伝える
- 主治医の診断書の提出を求められた場合は、応じるかどうかも含めて自分で判断してよい。病歴は個人情報保護法上の「要配慮個人情報」にあたり、事業者が取得するには原則として本人の同意が必要なため(個人情報保護法第20条2項、2026年8月確認)、応募先から求められても常に応じなければならないものではありません
体調に関する話は、書き方より前に「今その話をすること自体がつらい」という段階の人もいます。無理に言葉を整えようとして苦しくなる場合は、一度手を止めて構いません。書類の完成度より、今の自分の状態を優先してください。動悸や不眠が続く、涙が止まらないといった状態が続く場合は、転職活動より先に医師や産業医に相談することを優先してください。
次にやること
まず、退職理由の欄に「一身上の都合により退職」と一行だけ書いてください。 それ以上の詳細は書かなくて構いません。空いた紙面は、次にどんな仕事をしたいか(転職理由)に使うと、書類全体の印象が整います。
※本記事は2026年8月時点の一般的な情報整理です。個別の応募先企業・選考状況によって適切な対応は異なります。判断に迷う場合は、転職エージェントやハローワークの窓口にご相談ください。心身の不調がある場合は、医師・産業医への相談を優先してください。