内定辞退のメール文例
- 内定は「始期付解約権留保付労働契約」として労働契約の一種と扱われる(最高裁大日本印刷事件・昭和54年7月20日判決)ので、内定辞退は労働契約の解約にあたり、期間の定めのない契約なら民法627条1項によりいつでも解約を申し入れられる
- 損害賠償を請求されるのは「著しく信義則に反する態様」で辞退した極めて限られたケースに限られる(東京地裁平成24年12月28日判決の判断枠組み)
- 一般的なマナーとしては電話で先に伝え、その後メールで正式に伝える二段構えが多い
- 状況別(他社に決めた・家庭の事情・複数内定を保留していた)のメール文例を用意した
- 1意思を固める
- 2電話で伝える
- 3メールで正式連絡
- 4貸与品等を返送
この記事の内容
内定をもらったものの辞退したいけれど、どう連絡すればいいか分からず悩んでいる人向けの記事です。 結論から言うと、内定辞退はメールだけでも法律上は成立しますが、実務では電話で先に伝え、そのあとメールで正式に伝える進め方が一般的です。この記事では、状況別のメール文例と、内定辞退で損害賠償を請求されることがあるのかという不安に、法律の枠組みから答えます。
- 内定をもらったが、他社に決めたので辞退したい。何から連絡すればいいか分からない
- 電話が苦手で、メールだけで済ませたいが失礼にならないか不安
- 内定辞退で「損害賠償」を請求されることがあると聞いて怖い
結論:電話+メールの二段構え、法律上は違法ではない
| 論点 | 結論 |
|---|---|
| 内定辞退は違法か | 違法ではない。内定は労働契約の一種とされ、期間の定めのない契約であればいつでも解約を申し入れられる |
| メールだけで辞退の連絡を済ませてよいか | 法律上は成立する。ただし実務のマナーとしては電話が先という進め方が多い |
| 損害賠償を請求されることはあるか | 通常はない。請求が認められうるのは「著しく信義則に反する態様」で辞退した極めて限られたケースに限られる |
| 連絡すべきタイミング | 辞退を決めたらできるだけ早く。入社直前や、決めてから数か月放置するのが最もリスクが高い |
| 誓約書を提出済みでも辞退できるか | できる。誓約書は入社を法的に強制する効力を持つものではない |
一番大事なのは「決めたらすぐ連絡すること」です。連絡の方法(電話かメールか)よりも、放置しないことのほうが、角を立てないうえでもリスクを避けるうえでも重要です。
内定辞退は法律上どう位置づけられるか
内定は、単なる「採用予定の通知」ではなく、法律上は労働契約の一種として扱われます。最高裁判所は大日本印刷事件の判決(最高裁第二小法廷・昭和54年7月20日判決、民集33巻5号582頁)で、内定通知は労働契約の申込みに対する承諾にあたり、誓約書の提出とあわせて「始期付解約権留保付労働契約」(入社日を始期とし、一定の事由があれば会社側が解約できる権利を留保した労働契約)が成立すると判断しました(裁判所の判例検索システムでは判決文原文を確認できなかったが、複数の弁護士・社労士事務所の解説記事で事件名・判決年月日・判旨は一致している)。
つまり、内定が出た時点ですでに労働契約は成立しているという扱いです。内定辞退は、この労働契約を労働者側から解約することにあたります。期間の定めのない労働契約であれば、民法627条1項により、解約の申入れから2週間が経過すれば契約は終了します。日本国憲法22条1項が保障する職業選択の自由に基づき、どの会社で働くかを選ぶ・変える自由は労働者側にあります。
つまり、内定辞退そのものを禁じる法律はなく、「内定を受けたら必ず入社しなければならない」という法的な縛りもありません。
内定辞退で損害賠償を請求されることはあるか
内定辞退の損害賠償責任について判断した裁判例(東京地裁平成24年12月28日判決・通称「X社事件」)があり、次のような判断枠組みが示されています(裁判所の判例検索システムでは判決文原文を確認できなかったが、複数の解説記事で事件名・判決年月日・判断枠組みは一致している)。
この判決では、労働者には原則としていつでも労働契約を解約できる地位が保障されており、内定辞退の申入れが著しく信義則に反する態様で行われた場合に限って損害賠償責任を負う、という考え方が示されました。実際のこの事案では、内定者研修での指導が厳しかった事情などを踏まえ、辞退した学生・辞退を求めた企業のどちらの損害賠償請求も認められませんでした(判決文原文は未確認のため、判旨のかぎ括弧引用ではなく結論の要約として記載しています)。
この枠組みを踏まえると、通常の内定辞退(決めたら早めに連絡する)であれば、損害賠償の対象にはなりません。実務解説で「信義則違反になりうる」として挙げられている例は、次のようなものです。
- 入社直前(例:1週間前)になって突然辞退する
- 辞退を決めたのに数か月間、会社に連絡せず放置する
- 虚偽の理由で辞退する
これらはいずれも「決めているのに連絡しない・伝え方が著しく不誠実」という態様の問題であり、辞退の理由そのもの(他社に決めた、家庭の事情など)が問題になるわけではありません。逆に言えば、決めたらできるだけ早く、誠実に伝えれば、損害賠償を心配する必要はほとんどない、ということです。
「内定辞退で訴えられた」という話がSNS等で語られることがありますが、実際に損害賠償が認められるのは、放置や虚偽といった著しく不誠実な対応があった極めて限られたケースです。決めたらすぐ連絡する、という基本を守れば過度に恐れる必要はありません。
連絡の順番:電話が先か、メールだけでいいか
法律上はメールだけでも解約の意思表示として成立します。ただし、実務のマナーとしては、まず電話で口頭で伝え、そのあとメールで正式な記録として伝える、という二段構えが一般的によく紹介されています(法律の規定ではなく、慣行・マナーの話です)。
電話を先にする理由は、採用担当者が急に来なくなる人が出ないよう調整している場合があり、直接の連絡のほうが早く確実に伝わるためです。とはいえ、電話が強い負担になる場合や、担当者の連絡先が分からない場合は、メールだけで伝えても違法ではありません。無理に電話をかける必要はありません。
メール文例(状況別)
件名は「内定辞退のご連絡(氏名)」のように、開いた瞬間に用件が分かる書き方にします。以下は状況別の本文例です。
他社の内定を承諾した場合
件名:内定辞退のご連絡(氏名)
〇〇株式会社
採用ご担当者様
お世話になっております。〇〇と申します。
このたびは内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございました。
大変恐縮ではございますが、他社より内定をいただき、
熟慮の結果そちらへの入社を決意いたしましたため、
今回の内定を辞退させていただきたく、ご連絡いたしました。
貴重なお時間を割いて選考いただいたにもかかわらず、
このようなご連絡となり誠に申し訳ございません。
末筆ながら、貴社のさらなるご発展をお祈り申し上げます。
〇〇(氏名)
家庭の事情・一身上の都合の場合
件名:内定辞退のご連絡(氏名)
〇〇株式会社
採用ご担当者様
お世話になっております。〇〇と申します。
このたびは内定をいただき誠にありがとうございました。
一身上の都合により、大変恐縮ではございますが
内定を辞退させていただきたく、ご連絡いたしました。
選考にお時間を割いていただいたにもかかわらず、
このような結果となり申し訳ございません。
貴社のますますのご発展をお祈り申し上げます。
〇〇(氏名)
複数内定を保留していて、判断に時間がかかった場合
件名:内定辞退のご連絡(氏名)
〇〇株式会社
採用ご担当者様
お世話になっております。〇〇と申します。
ご連絡が遅くなり大変申し訳ございません。
複数の企業様からいただいたご縁を慎重に検討しておりましたが、
熟慮の末、他社への入社を決めましたため、
今回の内定を辞退させていただきたく存じます。
ご連絡が遅れましたこと、重ねてお詫び申し上げます。
末筆ながら、貴社のご発展をお祈り申し上げます。
〇〇(氏名)
理由は「他社を選んだ」「一身上の都合」といった簡潔な書き方で十分です。具体的な会社名や、選考過程での不満を書く必要はありません。どのケースでも共通するのは、①お詫びの一言、②理由の簡潔な説明、③今後の発展を祈る言葉、の3点です。
誓約書・入社承諾書を提出済みの場合
内定の際に「入社承諾書」や「誓約書」に署名して提出していても、内定辞退はできます。これらの書類は入社の意思を示すものであって、法律上、労働者に入社を強制する効力を持つものではありません(前述のとおり、労働契約は労働者側からいつでも解約を申し入れられる原則が優先されます)。
ただし、書類を提出している場合は、辞退の連絡と合わせて「誓約書等の取り扱いについてどうすればよいか」を一言添えると、やり取りがスムーズです。会社によっては返送や破棄の指示があります。
実体験について
私自身は2026年6月末に前職を退職した実体験がありますが、内定を辞退した経験はありません。この記事の内容は、大日本印刷事件・東京地裁判決の判旨を法律解説サイトを通じて確認し、既存記事で調査済みの民法627条1項・憲法22条1項の内容と合わせて整理したものです。
次にやること
辞退を決めたら、その日のうちに連絡してください。 電話がかけられる状況ならまず電話で伝え、そのあとメール文例を使って正式に連絡します。電話が難しければメールだけでも法律上は問題ありません。避けるべきなのは、決めているのに連絡せず放置することです。
※本記事は2026年9月時点の一般的な情報整理です。個別の事情によって扱いが変わる可能性があります。損害賠償を請求された、あるいは会社とのやり取りで困っている場合は、弁護士にご相談ください。
出典(2026年9月確認) - 大日本印刷事件 最高裁第二小法廷 昭和54年7月20日判決(民集33巻5号582頁):裁判所の判例検索システムでは判決文原文を確認できなかった。複数の弁護士・社労士事務所の解説記事(労働問題.com、弁護士法人いかり法律事務所ほか)で事件名・判決年月日・判旨は一致している - 内定辞退の損害賠償責任に関する判断枠組み:東京地裁平成24年12月28日判決(通称「X社事件」):裁判所の判例検索システムでは判決文原文を確認できなかった。複数の解説記事(労働問題.com、弁護士法人浅野総合法律事務所ほか)で事件名・判決年月日・判断枠組みは一致している - 民法627条1項(期間の定めのない雇用の解約申入れ・2週間ルール):e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 (条文原文を確認済み) - 日本国憲法22条1項(職業選択の自由):e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/321CONSTITUTION (条文を確認済み)