退職をメールや電話で伝える方法
- 1就業規則を確認
- 2伝える手段を選ぶ
- 3電話・メールで伝える
- 4退職届を郵送
- 5離職票を待つ
この記事の内容
上司の顔を見ると言葉が出ない。オフィスに行くこと自体がつらい。それでも「退職は対面で言うのが常識」という空気に押されて、動けずにいませんか。
結論から言います。退職の意思表示は、電話でもメールでも法的に有効です。 対面でなければならないという法律上の決まりはありません。
この記事では、なぜそう言えるのか、実際にどう伝えればいいかを順番に説明します。
対面じゃないと辞められない、は本当か
本当ではありません。
退職(雇用契約の解約)を定めているのは民法627条です。期間の定めのない雇用契約は、いつでも解約を申し入れることができ、申し入れから2週間で終了すると定めています。
このどこにも「対面で」「書面で」という条件はありません。伝え方の方式には、法律上の制限がないのです。
「退職は対面で伝えるのが礼儀」というのは、マナーや慣習の話であって、法律の話ではありません。守れれば良いですが、守れないなら守らなくても退職は成立します。
就業規則に「退職の申し出は対面で行うこと」と書かれている会社もあります。ですが就業規則は法令に反してはならず(労働基準法第92条)、就業規則で民法627条の解約の自由を封じるような定めは無効と判断した裁判例もあります。方式を理由に退職を拒否することは、会社側にはできません。
なぜ「対面じゃなくていい」と言えるのか、もう少し詳しく
退職の意思表示は「単独行為」と呼ばれるものです。会社の承諾を待たずに、本人が伝えた時点で効力が発生していく性質のものです(正社員などの期間の定めのない雇用の場合)。
会社に「認めてもらう」ものではなく、「伝える」ものです。ここが引き止めが効かない理由でもあります。
伝える手段について法律が定めているのは「伝わること」であって「伝え方」ではありません。だから、電話でもメールでも、内容が相手に届いていれば有効です。
- 上司の前に立つと体が固まって言葉にならない
- 出社そのものが怖くて、対面する機会自体が作れない
- 何度か切り出そうとして、そのたびに引き止められて終わっている
このどれかに当てはまるなら、無理に対面にこだわる必要はありません。
電話で伝えるときの注意点
電話は口頭なので、法的には有効でも「言った・言わない」が残りやすい手段です。
- POINT 01
「退職します」とはっきり言う
「辞めようか迷っていて」のような相談口調だと、意思表示として弱く見られることがあります。「〇月〇日をもって退職します」と、日付を添えてはっきり伝えます。
- POINT 02
退職の意思を伝えた日時をメモしておく
いつ、誰に、何を伝えたかを自分の手元に残します。あとで「そんな話は聞いていない」と言われたときの備えになります。
- POINT 03
電話のあとに、同じ内容をメールでも送る
口頭だけで終わらせず、「本日お電話でお伝えした通り、〇月〇日付で退職いたします」とメールで念押しします。これで記録が残ります。
メールで伝えるときの書き方
メールは記録が残る分、電話より確実です。件名と本文を短く、事実だけ書きます。
件名: 退職のご連絡(氏名)
本文の骨子 - 退職する意思があること - 希望する退職日 - これまでの感謝(一言でよい) - 引き継ぎに協力する意思
長い説明や謝罪は不要です。事実と日付が伝われば、意思表示としては十分です。
メールを送ったら、既読・返信の有無にかかわらず、送信履歴と本文のコピーを残しておきます。これがのちの証拠になります。
それでも「直接言ってほしい」と言われたら
会社側が電話やメールでの申し出を拒否し、「対面で言いに来い」と求めてくることがあります。
これは礼儀としての要求であって、拒否する法的な権利ではありません。意思表示は相手に到達した時点で効力を生じるため(民法第97条)、対面に応じなくても退職は成立に向かって進みます。
ただし、実務上は次のような対応が現実的です。
- すでに送った電話・メールの記録は残しておく(意思表示をした証拠になります)
- 体調や状況を理由に対面が難しいことを、簡潔に伝える(詳しい事情まで説明する義務はありません)
- どうしても押し問答になるなら、退職届を書面(郵送)で送る(内容証明郵便に配達証明を付けると、内容と届いた事実の両方を記録できます)
「直接来い」と言われても、法律上、来る義務はありません。それでも押し切られそうで不安なときは、書面(できれば配達証明付きの内容証明郵便)で退職届を送るのが一番確実です。
対面が本当に無理なケースでは
体調不良、心身の不調、ハラスメントなど、出社すること自体が難しい理由がある場合は、無理に対面を目指す必要はありません。
心身の不調がある場合の判断は、この記事では行いません。つらさが続いているなら、まず医師や産業医に相談してください。 そのうえで、退職の連絡は電話・メール・書面のいずれかで進められます。
対面はもちろん、電話やメールで自分から伝えることさえ難しいと感じる場合は、第三者に間に入ってもらう選択肢もあります。退職代行は、本人の代わりに会社へ退職の意思を伝えるサービスです。連絡そのものを外注できるので、電話もメールも自分でしなくて済みます。
対面を含めて会社と一切やり取りしたくない場合の選び方は、別記事退職代行Jobsにまとめています。
メール・電話で伝えたあとにやること
伝えて終わりではありません。次の3つを忘れずに進めます。
- 退職届を提出する(会社の様式があればそれに従う。なければ手書き・メールでも可)
- 引き継ぎ内容を書面かメールで残す(トラブル防止と、円満退職のため)
- 離職票・源泉徴収票の受け取り方法を確認する(郵送か手渡しか、退職後にどこへ届くか)
よくある質問
電話だけで退職は成立しますか
成立します。ただし口頭のみだと記録が残らないため、あとから「聞いていない」と言われるリスクがあります。電話のあとにメールか書面で同じ内容を残すことをおすすめします。
LINEやチャットツールで伝えてもいいですか
法律上、方式に制限はないので有効です。ただし会社の連絡ツールとして正式に使われているものかどうかは確認してください。個人アカウント宛のLINEなど、業務用と言いにくい手段だと「届いた」ことの証明が弱くなる場合があります。
メールを送ったのに返信がありません。退職できていますか
意思表示は相手に到達した時点で効力を持ちます(民法第97条)。返信の有無は退職の成立に影響しません。ただし、届いたかどうかを確認する意味で、送信記録は必ず残しておいてください。
「退職届は直筆でないと無効」と言われました。本当ですか
本当ではありません。法律上、退職の意思表示に書式の指定はありません。会社の就業規則で様式を定めていても、それを理由に退職そのものを拒否することはできません。
対面を拒否したら懲戒処分になりますか
退職の意思表示を電話やメールで行ったこと自体を理由に懲戒処分を行うのは、通常は認められません。ただし、業務の引き継ぎを一切放棄するなど、別の問題行動があれば話は別です。心配な場合は、引き継ぎに協力する姿勢を示した上で連絡するのが無難です。
退職代行とメール・電話での自己申告は何が違いますか
自分で電話・メールをする場合、会社とのやり取り自体は本人が行います。退職代行は、その連絡そのものを代わりに行ってもらうサービスです。会社と一切話したくない場合は退職代行、連絡自体はできるが対面だけ避けたい場合は自分でのメール・電話、というのが大まかな使い分けです。
次にやること
まず、退職の意思を伝える手段を1つ決めてください。電話なら、伝えたあとに同じ内容をメールでも送る。メールなら、送信履歴を残しておく。この「記録を残す」の一手間だけを忘れずに進めれば、対面でなくても退職は問題なく成立します。
※本記事は2026年8月時点の調査に基づきます。個別の状況で判断に迷う場合は、弁護士や労働相談窓口にご確認ください。