内定の承諾はいつまで待ってもらえるか
- 内定承諾の期限に法律上の決まりはなく、企業が任意に設定している(民法523条の「承諾期間の定めのある申込み」に相当)
- 内定自体は判例上「始期付解約権留保付労働契約」とされ、承諾で契約関係に入る重みがある(大日本印刷事件・最高裁昭和54年7月20日判決)
- 保留を申し出ること自体は失礼にあたらないが、理由を具体的に言うほど心証はよくなる
- 一般的には1週間前後を目安に期限が切られることが多いとされるが、公的な統計は無い(2026年9月4日確認)
- 保留の限度は1回の延長交渉まで、というのが実務上の目安
- 1内定通知を受ける
- 2保留を申し出る
- 3延長期限を確認
- 4返事を伝える
この記事の内容
この記事は、内定をもらったが即決できず、「返事を少し待ってほしい」と伝えたい人に向けて書いています。 結論から言うと、内定承諾の期限に法律上の決まりはありません。企業が示す「〇日までにご返事ください」という期限は、企業が任意に設定しているものです。ただし、期限を無視してよいわけではなく、伝え方次第で心証は大きく変わります。この記事では、内定の法的な位置づけと、保留を申し出るときの具体的な言い方を整理します。
- 内定はうれしいが、他の選考結果も見てから決めたい
- 「保留させてください」と言ったら、印象が悪くなるのではないかと不安
- どのくらいの期間なら待ってもらえるのか見当がつかない
結論:期限は企業が任意に決めているもの。交渉の余地はある
内定通知に「〇月〇日までにご返信ください」と書かれていても、これは法律で決まった期間ではありません。民法523条は、承諾の期間を定めて申込みをした場合、その期間内に承諾の通知が届かなければ申込みの効力が失われる、と定めています(1項・2項。条文本文で確認、2026年9月4日確認)。ただし、この期間自体を何日にするかは申込みをする側(企業)が決める事項であり、法律が日数を指定しているわけではありません。
つまり、期限は「企業が事務手続き上、区切りとして設定している日付」に過ぎず、絶対に動かせない締切ではないケースが多いということです。理由を伝えて相談すれば、数日〜1週間程度延ばしてもらえることは珍しくありません。ただし、これは企業の裁量であり、必ず応じてもらえる保証ではない点は前提として押さえておく必要があります。
つまり、「待ってもらえるかどうか」は法律ではなく企業の判断次第です。だからこそ、何も言わずに黙っているのではなく、早めに・具体的な理由とともに相談することが、待ってもらえる可能性を上げる一番の方法になります。
そもそも内定とは何か|承諾すると何が起きるのか
内定を軽く考えないほうがよい理由は、その法的な重みにあります。最高裁判所は、新卒採用の内定について「始期付解約権留保付労働契約」にあたると判断しました(大日本印刷事件・最高裁第二小法廷昭和54年7月20日判決・民集33巻5号582頁)。難しい言葉ですが、意味を分解するとこうなります。
- 「始期付」= 実際に働き始める日(入社日)がまだ先に設定されている
- 「解約権留保付」= 一定の事由があれば会社側・本人側どちらからも取り消せる権利が残っている
- 「労働契約」= それでも、契約自体はすでに成立している
つまり、内定を承諾した時点で、単なる「約束」ではなく「契約関係」に入るという判断が、この判例では示されています。この判例は新卒の新規学卒採用の事案ですが、内定という仕組みの法的な重さを理解するうえでの土台としてよく引用されます。中途採用の内定についても、契約書の取り交わし方や条件通知の有無によって位置づけが変わるため、個別の契約内容(内定通知書・労働条件通知書の記載)を確認しておくことが重要です。
「内定=まだ仮の約束」ではなく、「承諾=契約に一歩踏み込む行為」だと捉えると、保留したい気持ちも、企業側が期限を区切りたい気持ちも、両方自然なものだと分かります。どちらが悪いという話ではありません。
保留を申し出るタイミング
保留を申し出るなら、期限ぎりぎりよりも早いタイミングのほうが印象はよくなります。理由は単純で、企業側にも「他の候補者への連絡」「配属や採用計画の調整」といった事務作業があり、早く分かるほど動きやすいからです。
目安としては、内定通知を受け取った当日〜遅くとも2〜3日以内に、まず「連絡をもらったこと」への返信と「検討に時間がほしいこと」を伝えるのがよいとされています(就活情報サイト「キャリタス就活」は「内定通知から数日〜1週間以内を目安に、自分から状況を報告するのが望ましい」と案内しています。2026年9月4日確認)。期限の前日や当日になって突然「待ってほしい」と言うのは、企業側の心証を悪くしやすい典型的なパターンです。
保留の伝え方(文例)
保留を伝えるときに大事なのは、「理由を隠さないこと」と「いつまでに返事できるかの見込みを添えること」の2点です。理由を曖昧にすると、企業側は「本当に入社する気があるのか」と不安になります。
メールで伝える場合の文例
件名:内定のご連絡へのお礼とご相談(氏名)
○○株式会社 ○○様
このたびは内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございます。 つきましては大変恐縮ですが、他社の選考状況もあり、慎重に検討させていただきたく、 ご返答のお時間を◯月◯日まで頂戴できませんでしょうか。 ご迷惑をおかけし恐縮ですが、何卒よろしくお願いいたします。
電話で伝える場合の要点
- まず内定への感謝を伝える
- 保留したい理由を簡潔に伝える(他社選考中/家族と相談したい、など)
- 「いつまでに」返事できるかの具体的な日付を自分から提示する
「少し考えさせてください」だけで期限を提示しないと、企業側は次に何を待てばいいか分からず、印象がぼやけます。自分から日付を提示するほうが、誠実さが伝わりやすくなります。
他社の選考結果を待ちたい場合の伝え方
「他の会社の結果が出るまで待ってほしい」というのは、転職活動をしていれば自然に起こる状況です。ただし、これを正直に伝えるかどうかは迷うところだと思います。
実務上は、「他社の選考が進んでいる」ことまで伝えるかどうかは任意ですが、少なくとも「複数の選択肢を比較検討したい」という趣旨は伝えたほうが、後から不自然な印象を持たれにくくなります。社名まで明かす必要はありません。
現在、他にも選考が進んでいる企業がございまして、総合的に判断させていただきたく、 ◯月◯日まではご猶予をいただけますと幸いです。
企業によっては、「他社の結果が出る具体的な日付」まで聞かれることもあります。この場合、分かる範囲で伝えるほうが、あいまいにするより信頼されやすい傾向があります。
保留期間の目安を比較する
保留できる期間の長さについて、法律上の基準はありません。厚生労働省などの公的な統計は見当たらず(2026年9月4日確認)、以下は転職・就活サイトの解説記事で共通して案内されている目安です。
| ケース | 目安 | 出典・補足 |
|---|---|---|
| 新卒採用 | 1週間程度、長くても2週間程度 | マイナビ転職・キャリタス就活が案内(2026年9月4日確認) |
| 中途採用(通常選考) | 2〜3日〜1週間程度 | doda・マイナビ転職が案内(2026年9月4日確認) |
| 中途採用(急募求人) | 通常より短くなる傾向 | 急募求人ほど短くなる傾向があるとされるが、具体的な日数を明記した運営元の資料は見当たらない(2026年9月4日確認) |
| 延長を申し出た場合 | 応じるかは企業の裁量 | 「延長は難しい場合が多い」「繰り返すと信頼を損なう」との案内はあるが、追加で何日待ってもらえるかを明記した資料は見当たらない(2026年9月4日確認) |
表の数字はあくまで転職・就活サイトが案内している目安であり、企業ごとの実態を保証するものではありません。実際にどこまで待ってもらえるかは、個別に相談してみないと分かりません。
保留したまま辞退することになったら
保留の末に、結局その内定を辞退することになるケースもあります。この場合も、連絡を先延ばしにせず、決まった時点でできるだけ早く伝えることが基本です。転職エージェント経由の内定を断る場合の具体的な文例は、転職エージェントの断り方|紹介求人・選考途中・内定後にまとめています。
一方で、今の会社を辞めて転職活動をしていること自体が負担になっている場合、内定への返事どころではないという状況もあると思います。退職の進め方自体に迷っているなら、退職代行の利用も選択肢の一つです。
実体験について、正直に書きます
私自身は2026年に会社都合で退職し、離職票を受け取ってハローワークで失業保険の手続きをした実体験はありますが、転職活動で複数の内定を比較して保留・承諾の判断をした経験はありません。この記事の内容は、自分の体験ではなく、内定の法的性質に関する判例と、一般的に言われている転職活動の実務慣行を調査した範囲での整理です。
次にやること
まず、内定通知を受け取ったら、期限ぎりぎりまで黙って待たず、2〜3日以内に「検討の時間がほしい」ことと「いつまでに返事できるか」の見込みを、この記事の文例を参考に伝えてください。延長を相談すること自体は失礼にあたりません。
※本記事は2026年9月4日時点で確認できた情報の整理です。保留期間の目安は一般的に言われる範囲を紹介したものであり、公的な統計に基づくものではありません。個別の内定の取り扱いについては、内定通知書・労働条件通知書の記載内容や、採用担当者への確認を優先してください。
出典 - 民法523条(承諾の期間の定めのある申込み。条文本文で確認、2026年9月4日確認) - 大日本印刷事件・最高裁第二小法廷昭和54年7月20日判決・民集33巻5号582頁(内定=始期付解約権留保付労働契約とした判例。判決文の原文は確認できていないが、事件名・裁判年月日・結論の向きが複数の社労士・法律事務所の解説記事で一致することを確認、2026年9月4日確認) - doda「転職で内定保留はできる? 伝え方の例文や適切な期間・注意点を解説」(2026年9月4日確認) https://doda.jp/guide/naiteitaisyoku/horyu/ - マイナビ転職「内定保留できる?伝え方の5つのポイントと電話・メールの例文を解説」(2026年9月4日確認) https://tenshoku.mynavi.jp/knowhow/naitei/16/ - キャリタス就活「【新卒】内定保留はいつまで可能?メール・電話の例文や伝え方・注意点を解説」(2026年9月4日確認) https://job.career-tasu.jp/guide/howto/186/ - 転職エージェントの断り方|紹介求人・選考途中・内定後