資格を取ってから辞めるべきか
この記事の内容
「今の仕事を辞める前に、資格を取っておいたほうがいいのか」で足が止まっている人向けの記事です。
結論を先に言うと、資格を取ってから辞めるべきかどうかは、目指す職種でその資格が「必須」か「歓迎」かで答えが変わります。「資格があれば有利」という漠然とした感覚だけで数ヶ月〜1年を勉強に使う前に、まずそこを確認してください。
- 資格を取ってから辞めるべきか、今すぐ辞めて転職活動を始めるべきか決められない
- 資格があれば転職で有利と聞くが、本当にそうなのか分からない
- 資格の勉強と退職、どちらを先にすればいいか順番に迷っている
「資格取って辞める」で来た方への先の答え - 受けたい仕事の求人票で、その資格が「必須」なら、取ってから辞めて構いません - 「歓迎」や記載なしなら、辞めて勉強だけに専念する形は、収入と職歴の空白の両方が出ます。在職中に勉強しながら応募も始める形が、先に検討する形です - 心身がつらいときは、資格を待たずに辞める選択もあります。体調は医師・産業医へ - 辞める日は、試験日と勉強期間から逆算して決めます。手順は下の節にあります
結論:資格の「必須度」で判断が変わる
| 資格の位置づけ | 具体例 | 取ってから辞めるべきか |
|---|---|---|
| 業務独占資格(その資格がないと働けない) | 看護師、税理士、宅地建物取引士など | 取ってから辞める(資格が無いと応募自体できない) |
| 歓迎要件(あると有利、無くても応募できる) | 簿記、TOEIC、実務経験を補う業界資格など | どちらでもよい。在職中に取れそうなら取る、急ぐなら先に辞める |
| ほぼ評価されない資格 | 業務と関係が薄い資格、応募要件に出てこない資格 | 資格取得を待たずに辞めてよい |
「資格があれば有利」は職種によって差が大きい話です。まず自分が目指す職種の求人票を数件見て、「応募資格」の欄に自分が検討している資格が「必須」と書かれているか、「歓迎」と書かれているか、それとも書かれていないかを確認してください。ここが分かれば、次の章を読まなくても答えが出ることもあります。
なぜ「資格を取ってから辞める」と考えたくなるのか
「無資格・未経験のまま辞めるのは不安」「資格があれば書類選考で有利になるはず」という感覚は、多くの人が持つ自然な発想です。特に、今の仕事に自信を無くしているときほど、「何か武器を持ってから動きたい」という気持ちが強くなります。
ただし、この発想には見落としがちな点があります。資格の勉強には時間もお金もかかり、その間は今の職場に居続けることになるということです。資格取得に半年〜1年かけている間、今の職場のストレスや負担がそのまま続きます。資格が本当に転職の合否を左右するものなのか、先に確認しておく価値はあります。
資格は本当に転職で有利になるのか
古いデータですが、doda(パーソルキャリア)が求人15,000件を分析した調査「ホンネの転職白書」(2012年9月24日更新)では、資格の有無を問わない求人が全体の77%を占め、一方で職務経験を必須とする求人は85%にのぼるという結果が出ています(doda「転職で本当に有利な資格は?」、2012年時点の調査、2026年9月確認)。
この調査は10年以上前のものなので、現在の求人市場にそのまま当てはまるとは限りません。doda公式サイトおよびマイナビキャリアリサーチLab公式サイトで同種の直近データを探したが、職種別に「資格必須求人の割合」を定点観測した公表資料は見当たらなかった(2026年9月確認)。「資格よりも実務経験を重視する求人が多い」という傾向自体は、キャリアアドバイザーの解説記事などで繰り返し語られているが、この記事では一次資料による裏付けができていない情報として扱う。
つまり、「資格を取れば転職で有利になる」は職種を選ばない一般論としては言い切れず、資格よりも実務経験のほうが多くの求人で重視されているというのが、調べた範囲での実情です。
資格には3段階ある|必須・歓迎・ほぼ関係ない
同じ調査では、職種によって資格の重視度が大きく異なることも分かっています。医療系専門職(37%)、建築/土木系(36%)、営業系(33%)は資格を重視する求人の割合が比較的高い一方、IT/通信系(1%)、クリエイティブ系(2%)ではほとんど資格が重視されていません(doda調査、2012年時点、2026年9月確認)。
これを踏まえると、資格は次の3段階で考えると整理しやすくなります。
- 業務独占資格:看護師、税理士、宅地建物取引士、電気工事士など、法律上その資格が無いとその業務自体に就けないもの。この場合は資格取得が実質的な前提条件になるため、「取ってから辞める」以外の選択肢がありません
- 歓迎要件の資格:簿記、TOEIC、業界特有の民間資格など、無くても応募はできるが、あると書類選考や面接で評価材料になるもの。この場合は「絶対に必要」ではないため、在職中に無理なく取れそうなら取り、間に合わなければ資格を待たずに動くという柔軟な判断ができます
- ほぼ評価されない資格:目指す職種の求人票の応募要件にまったく出てこない資格。この場合、資格取得のために退職を先延ばしにする理由は薄いと考えられます
まず、自分が今検討している資格が、目指す職種の求人票でどの段階に当たるかを確認してください。それによって「取ってから辞める」べきかどうかの答えは大きく変わります。
在職中に取るか、辞めてから取るか
資格が「歓迎要件」に当たり、取るかどうかの判断がまだ決まらない場合、次に考えるのは「いつ取るか」です。
| 在職中に取る | 辞めてから取る | |
|---|---|---|
| 収入 | 途切れない | 途切れる(貯金または失業保険が頼り) |
| 勉強時間 | 仕事と両立するため確保しづらい | まとまった時間を確保しやすい |
| モチベーション | 退職の緊張感が続くぶん維持しやすい人もいる | 開放感で緩む人もいれば、追い込まれて集中できる人もいる |
| 使える制度 | 教育訓練給付制度(在職中でも対象になりうる) | 教育訓練給付制度(離職後も一定期間内なら対象になりうる) |
在職中に資格の勉強をする場合、雇用保険の教育訓練給付制度を使える可能性があります。一定の条件を満たす講座を受講し修了すると、受講費用の一部が支給される制度で、在職中・離職後どちらでも対象になりえます。根拠は雇用保険法第六十条の二(教育訓練給付金)で、対象は支給要件期間(雇用保険の被保険者期間)が3年以上ある人です。このうち一般教育訓練給付金は、受講費用の20%(上限10万円)が支給されます(雇用保険法施行規則第百一条の二の七第一号・第百一条の二の八第一号、2026年9月確認)。離職してから講座を始める場合は、原則として離職日の翌日から1年以内に受講を開始する必要があります(同施行規則第百一条の二の五第一項、2026年9月確認)。対象講座かどうかは、検討している資格の講座が「教育訓練給付制度の対象講座」に指定されているかで決まるため、申し込み前に確認してください。
辞めてから資格取得を目指す場合は、失業保険の求職活動実績との兼ね合いも出てきます。この点は別記事(「失業中の資格勉強は求職活動実績になるか」)で扱っているため、詳しくはそちらを確認してください。
時間とお金の両方が絡む判断なので、「勉強にどれくらいかかるか」を先に見積もることが重要です。半年で取れる資格と、2年かかる資格では、在職中に取り切れる可能性がまったく違います。目安の学習期間は資格の公式サイトや予備校の講座案内で確認できます。
「資格取って辞める」と決めたときの手順と計算例
資格が「必須」だった、または取ると決めたときに、実際に何を・どの順で動かすかを並べます。
分かれ目と、それぞれどうなるか
| 状況 | 動き方 | 起きやすいこと |
|---|---|---|
| 資格が応募の必須条件 | 取ってから辞める(または取得後に応募) | 応募そのものができるようになる。取得までの間は今の職場が続く |
| 資格は歓迎・記載なし | 在職中に勉強しながら、応募も始める | 求人は出て埋まるのが早いので、取得を待つと応募したい求人が終わることがある |
| 資格は歓迎・記載なしで、辞めて専念したい | 退職してから勉強する | 収入が止まり、職歴の空白が伸びる。空白は面接で理由を聞かれやすい |
| 心身が限界 | 資格を待たず先に辞める | 生活を立て直してから、資格と転職活動を決める |
手順(辞める日を決めるまで)
- 目指す職種の求人票を数件開き、その資格が「必須」「歓迎」「記載なし」のどれかを控える
- 資格の公式サイトで、次の試験日と合格発表日を調べる。年に1回しかない試験は、落ちると次まで長く空く
- 勉強に必要な時間を、公式サイトや講座案内の目安から出す。1週間にとれる時間で割り、何週間かかるかを出す
- 試験日から数えて、「受験する日」「合格発表日」を決める。この日付より前に退職日を置くかどうかが分かれ目になる
- 退職日は、会社の就業規則で退職の申し出の期限を確認して置く。期間を定めない雇用では、民法627条1項で、申入れの日から2週間で雇用は終わると定められている(2026年10月、e-Gov法令検索で確認)。ただし就業規則に別の期限がある会社も多いので、まず就業規則を見る
- 教育訓練給付制度を使うなら、講座の申し込み前に対象講座かを確認する。離職後に始める場合は、離職日の翌日から1年以内に受講を始める(本文の前の節のとおり)
計算例:仕事を続けて取る場合と、辞めて専念する場合
前提は仮置きです。必要な勉強時間300時間、月の生活費20万円、貯金だけで暮らす場合。実際の時間は資格によって大きく違うので、自分の資格の目安に置き換えてください。
| 在職中に取る | 辞めて専念する | |
|---|---|---|
| 1週間の勉強時間 | 10時間 | 35時間 |
| 必要な週数 | 300 ÷ 10 = 30週(約7か月) | 300 ÷ 35 ≒ 9週(約2か月) |
| 勉強中の収入 | 給料が続く | なし。生活費は20万円 × 2か月 = 40万円 |
| 職歴の空白 | なし | 勉強の2か月分に、転職活動の期間が上乗せされる |
つまり、早く取りたいなら辞める形が速く、お金と空白を避けたいなら在職中の形が向いています。どちらが合うかは、貯金が何か月分あるかと、今の職場に何か月耐えられるかで決まります。
次に詰まりやすい点:落ちたら、あるいは合格発表の前に辞めてよいか
ここで多くの人が止まります。分かれ目は次のとおりです。
- 退職日を合格発表より前に置く場合: 不合格のとき、再受験まで空白が伸びます。次の試験日までの月数と、その間の生活費を、先に出しておきます
- 退職日を合格発表より後に置く場合: 不合格でも収入は続きます。ただし今の職場にいる期間は伸びます
- 資格が「歓迎」のとき: 合格を待たずに応募を始め、履歴書の資格欄に受験予定や勉強中と書く方法もあります。評価は会社によって違うので、応募先ごとに確かめます
おすすめは、受験日ではなく「応募を始める日」から逆算して退職日を置くことです。落ちた場合の動き方(再受験するか、資格なしで応募するか)を、退職を申し出る前に1つ決めておくと、迷って止まる時間が減ります。
それでも迷うとき
資格の必須度を確認しても、在職中・退職後どちらで取るかを比べても、それでも決められないことはあります。そのときは、「資格を取ること」と「今の職場を辞めること」を、いったん別の問題として切り離して考えてみてください。
資格の有無にかかわらず、今の職場に居続けることが心身の負担になっているなら、資格取得を待たずに動く選択肢もあります。逆に、資格取得の道筋さえ決まれば今の職場でもう少し頑張れそうなら、無理に急ぐ必要はありません。どちらが正解ということはなく、自分にとって「待てる負担かどうか」が判断の軸になります。
体調に不調がある場合は、資格取得の計画より先に、医師や産業医に相談することを優先してください。
次にやること
まず、目指す職種の求人票を数件確認し、検討している資格が「必須」「歓迎」「記載なし」のどれに当たるかを見てください。「必須」なら取得が前提になります。「歓迎」または「記載なし」なら、この記事の在職中・退職後の比較表を使って、勉強にかかる期間と今の職場で耐えられる期間を比べて決めてください。
※本記事は2026年9月時点の調査に基づく一般的な情報整理です。doda調査は2012年時点のデータであり、現在の求人市場をそのまま反映しているとは限りません。教育訓練給付制度の条文番号・給付率・受給条件は、雇用保険法および同施行規則の原文で2026年9月に確認済みです。「資格より実務経験が重視される」という傾向が直近も続いているかは、doda・マイナビキャリアリサーチLabの公式サイトを確認したが同種の一次データが見当たらず(2026年9月確認)、この記事では裏付けができていない情報として扱っています。心身の不調がある場合は、資格取得や退職の計画より先に医師・産業医にご相談ください。
出典 - doda(パーソルキャリア)「転職で本当に有利な資格は?」(「ホンネの転職白書」2012年9月24日更新の求人15,000件分析、2026年9月確認)https://doda.jp/guide/ranking/062.html - 民法第六百二十七条第1項(期間の定めのない雇用の解約申入れ。申入れから2週間で終了、e-Gov法令検索で2026年10月確認)https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 - 教育訓練給付制度(一般教育訓練給付金)の根拠は雇用保険法第六十条の二(教育訓練給付金)。給付率20%・上限10万円は雇用保険法施行規則第百一条の二の七第一号・第百一条の二の八第一号、離職後の受講開始期限(原則1年以内)は同施行規則第百一条の二の五第一項(いずれも法令原文で2026年9月確認)