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出向中に退職したいとき

この記事の結論
  • 出向にはおもに「在籍出向」と「転籍出向」の2種類があり、退職の意思表示をどちらの会社に行うべきかは、この区分によって変わる
  • 在籍出向(出向元・出向先の両方と契約関係を持つ形)では、就労に関わる権利義務は出向先に、解雇権や復帰命令権など労働契約関係の存否・変更に関わる権利義務は出向元に残るのが基本とされ(出向専門の法律事務所による解説)、退職の申し出も出向元に対して行うのが原則になる
  • 転籍出向(出向元との雇用契約を解消し出向先と新たに契約する形)の場合は、雇用契約の当事者が出向先に変わっているため、退職の申し出先も出向先になる
  • 自分がどちらの出向にあたるかは、出向命令書・出向契約書・出向規程を確認しないと分からない場合がある
  • 出向先の上司にだけ伝えて終わらせると、労働契約関係の終了について権限を持つ出向元に意思表示が届かず、退職の効力が発生しないおそれがある
ぜんたいの流れ
  1. 1出向契約書を確認
  2. 2出向元に意思表示
  3. 3出向先と調整
  4. 4引き継ぎ
  5. 5退職日確定
この記事の内容
  1. 結論:退職の権限を持つ相手に伝えるのが原則。まず自分の出向の種類を確認する
  2. 在籍出向なら、退職に関する権利義務は出向元に残る
  3. 転籍出向なら話が逆になる。自分がどちらか確認する方法
  4. 出向先の上司にだけ伝えて終わらせてはいけない理由
  5. 出向契約書・出向規程で確認しておきたい3点
  6. 退職代行を使う場合、連絡するのはどちらの会社か
  7. 実体験について、正直に書きます
  8. 出向元に退職の意思を伝えるときの文例
  9. 次にやること

出向中に退職を考えていて、退職の意思を「出向元(もともと所属していた会社)」と「出向先(いま実際に働いている会社)」のどちらに伝えればいいのか分からず困っている人向けの記事です。 結論から言うと、多くの在籍出向のケースでは、退職の申し出先は、解雇権や復帰命令権など労働契約関係の存否・変更に関する権利義務を持つ出向元になります。ただし出向の形態によって答えが変わるため、自分がどちらのタイプの出向にあたるかを先に確認する必要があります。この記事では、その見分け方と、実際にどう動けばいいかを順番に整理します。

こんな状態ではありませんか
  • 毎日顔を合わせているのは出向先の上司なのに、退職も出向先に言えばいいのか分からない
  • 出向元の人事とはほとんど接点がなく、どう連絡を取ればいいのか見当がつかない
  • 出向元と出向先、両方に気を遣う必要がありそうで、誰にどう切り出せばいいのか身動きが取れない

結論:退職の権限を持つ相手に伝えるのが原則。まず自分の出向の種類を確認する

出向の種類 雇用契約の当事者 退職の申し出先
在籍出向(出向元・出向先の両方と契約関係を持ちながら出向先で働く) 出向元・出向先の両方(ただし解雇権や復帰命令権など労働契約関係の存否・変更に関わる権利義務は出向元に残るのが基本) 出向元が原則(出向専門の法律事務所による解説をもとにした整理)
転籍出向(出向元との雇用契約を解消し、出向先と新たに契約を結ぶ) 出向先 出向先

出向には大きく分けて「在籍出向」と「転籍出向」の2種類があります。在籍出向は出向元企業と出向先企業の両方と雇用契約を結ぶ形態で(厚生労働省「在籍型出向『基本がわかる』ハンドブック」、2026年9月確認)、転籍出向は出向元との雇用契約を解消し出向先とだけ雇用契約を結ぶ形態です(複数の弁護士解説で共通する整理。厚生労働省のこのハンドブックは在籍出向を対象にした資料で、転籍出向についての記載はありません)。日本の企業で単に「出向」と呼ばれているものの多くは在籍出向にあたりますが、契約書に「転籍出向」「移籍出向」と明記されているケースもあるため、まずは自分がどちらにあたるかを確認する必要があります。

ここが要点

この記事で一番伝えたいのは、「退職の申し出先は、毎日会っている相手ではなく、労働契約関係の存否・変更に関する権利義務を持つ相手」だということです。出向中は出向先の上司と接する時間のほうが長いため、つい出向先にだけ話してしまいがちですが、それでは退職の権限を持つ相手に意思表示が届かないおそれがあります。

在籍出向なら、退職に関する権利義務は出向元に残る

在籍出向とは、出向元企業と出向先企業がともに出向者と雇用契約を結び、出向先企業の指揮命令のもとで一定期間継続して働く形態です(厚生労働省「在籍型出向『基本がわかる』ハンドブック」、2026年9月確認)。つまり在籍出向では、出向元だけでなく出向先とも契約関係が生じます。

ただし、出向専門の法律事務所による解説では、出向中の権利義務は次のように整理されています。出向者は出向先の指揮命令のもとで働くため、勤務管理や服務規律など「就労に関わる権利義務」は出向先との間に生じる一方、解雇権や復帰命令権など「労働契約関係の存否・変更に関わる権利義務」は出向元との間に残るのが基本とされています(梅田総合法律事務所ニュースレター「出向(在籍出向)の基礎知識」、2024年7月31日、弁護士 古賀健介・弁護士 沖山直之)。給与の支払い元や社会保険の加入先が出向元のままになっているケースが多いのも、この整理と符合します(ただし出向先が給与相当額を負担する取り決めもあり、支払い元だけで一律に判断はできません)。

退職とは、法的には「労働者から雇用契約の解約を申し入れること」です。期間の定めのない雇用契約であれば、各当事者はいつでも解約の申入れができ、申入れの日から2週間が経過すると雇用契約は終了します(民法第627条第1項、2026年9月に条文を確認)。この「解約の申入れ」は、雇用契約そのものを終わらせる行為であり、上記の整理でいう「労働契約関係の存否・変更」にあたります。

在籍出向の場合、この「労働契約関係の存否・変更に関わる権利義務」は出向元に残るのが基本です。そのため、退職の意思表示(退職届の提出や退職の申し出)も、出向元に対して行うのが原則になる、というのが法律専門家による整理です。

厚生労働省の一次資料そのものには、「出向中の退職の申し出先」を直接明記した記述は見当たりませんでした(2026年9月確認)。この点は、上記の法律事務所による解説を出典として書いています。

転籍出向なら話が逆になる。自分がどちらか確認する方法

一方、転籍出向(移籍出向)は、出向元との雇用契約を解消し、出向先と新たに雇用契約を結ぶ形態です。この場合、労働者への指揮命令権も雇用契約自体も出向先にあるため、退職の申し出先は出向先になります。転籍については、就業規則等の規定があるだけでは足りず労働者本人の個別の同意が必要とされ、会社が一方的に命じることはできないとされています(愛知県雇用労働相談センター〈厚生労働省委託〉、東京地裁平成4年1月31日判決を踏まえた解説、2026年9月確認)。

自分がどちらのタイプかを確認する方法は次のとおりです。

  • 出向命令書・辞令: 「出向」「在籍出向」と書かれているか、「転籍」「移籍出向」と書かれているかを確認する
  • 出向契約書・出向同意書: 出向元・出向先・本人の三者間で取り交わした書類があれば、雇用契約がどちらにあるかが明記されていることが多い
  • 給与明細・社会保険料の控除元: 在籍出向では出向元から給与が支払われるケースが多いが、出向先が全額または一部を負担する取り決めもあり、これだけで断定はできない
ここが要点

給与の支払い元だけで判断するのは危険です。在籍出向でも、出向先が給与相当額を出向元へ支払う形を取っていることがあり、実際の振込元だけを見ると誤解しやすくなります。一番確実なのは、出向命令書か出向契約書の文言そのものを確認することです。

出向先の上司にだけ伝えて終わらせてはいけない理由

在籍出向の場合、解雇権や復帰命令権など、労働契約関係の存否・変更に関わる権利義務は出向元に残るのが基本です。そのため、出向先の上司にだけ「辞めます」と伝えて終わらせてしまうと、労働契約関係の終了について権限を持つ出向元に退職の意思が正式に届いていない状態が続くおそれがあります。出向先の上司が善意で出向元に取り次いでくれる場合もありますが、それに頼るのはリスクがあります。

実務上は、次の順番で動くのが無難だと考えられます。

  1. 労働契約関係の存否・変更に関する権利義務を持つ出向元の人事・上長に、退職の意思を正式に伝える(書面またはメールなど、記録に残る形が望ましい)
  2. 出向先にも、業務の引き継ぎのために早い段階で退職の意向を伝える(出向先での業務が滞ると、出向元との関係にも影響しうるため)
  3. 出向元と出向先の間で、退職日・引き継ぎ期間について調整してもらう
ここが要点

出向先だけに伝えて満足してしまうと、「退職の意思表示はしたつもりだったが、労働契約関係の終了について権限を持つ出向元には届いていなかった」という状態になりかねません。迷ったら、出向元と出向先の両方に伝える、という考え方のほうが安全です。

出向契約書・出向規程で確認しておきたい3点

会社によっては、退職の届出先や手続きの流れを、出向契約書や社内の出向規程で個別に定めている場合があります。本記事の整理はあくまで一般的な原則であり、自社の規程がこれと異なる定めをしていないかを、行動する前に必ず確認してください。

確認すべき項目 確認する理由
退職届・退職願の提出先が指定されているか 出向規程で「退職に関する手続きは出向元人事部を通じて行う」等と明記している会社がある
退職の意思表示から退職日までの期間 就業規則で「退職の1か月前までに申し出ること」等、民法よりも長い期間を定めている会社が多い(民法上は2週間だが、就業規則の定めとの関係は職場ごとに扱いが分かれる)
出向解除の手続きが必要かどうか 退職に先立って、いったん出向を解除して出向元に復帰する手続きを踏む会社もある
ここが要点

就業規則に「退職は1か月前までに申し出ること」と書かれていても、民法上は2週間の予告で雇用契約を終了させられるという考え方があります。ただし、これは職場や状況によって扱いが分かれる部分でもあるため、円満に進めたい場合は、まず就業規則・出向規程に沿って動き、疑問があれば労働基準監督署や弁護士に確認することをおすすめします。

退職代行を使う場合、連絡するのはどちらの会社か

出向元・出向先のどちらに連絡すればいいか分からず、直接やり取りするのが難しいと感じる場合は、退職代行サービスを利用するという選択肢もあります。この場合も基本的な考え方は同じで、労働契約関係の存否・変更に関する権利義務を持つ出向元に連絡してもらうのが原則になります(転籍出向の場合は出向先)。

ただし、出向という働き方自体が一般的な退職より事情が複雑なため、依頼する際には「自分がいま在籍出向か転籍出向か」「出向契約書に退職手続きの定めがあるか」を、分かる範囲で業者に伝えておくと、対応がスムーズになると考えられます。

実体験について、正直に書きます

私の場合

正直に書きます。私自身は2026年6月末に前職を会社都合で退職し、離職後にハローワークで求職者給付(失業保険)の手続きを行った経験がありますが、出向を経験したことはありません。そのため、この記事に書いた「出向元・出向先どちらに退職を伝えるべきか」という内容は、自分が実際に出向中に退職した実感ではなく、公開されている制度解説や条文を調べて整理したものです。

出向という働き方特有の悩み(誰に本音を話せるか、どちらの会社に義理立てするべきか、といった人間関係の難しさ)については、実体験として語れる立場にないため、断定的なことは書いていません。実際に出向中で退職を悩んでいる場合は、この記事を出発点にしつつ、必ず自分の出向契約書・就業規則を確認し、必要であれば労働基準監督署や弁護士、退職代行サービスに相談してください。

出向元に退職の意思を伝えるときの文例

在籍出向で、労働契約関係の存否・変更に関する権利義務を持つ出向元の人事に、退職の意思を書面(メールでも可)で伝える場合の文例です。転籍出向にあたる場合は、宛先を出向先に読み替えてください。件名から結びまで、そのままコピーして使えます。

件名: 退職のご相談(現在、貴社より出向中です)

〇〇株式会社
人事部 ご担当者様

お世話になっております。
現在、貴社より〇〇株式会社(出向先)へ出向しております、〇〇部の〇〇です。

私事で恐縮ですが、一身上の都合により退職を希望しており、
本メールにてご連絡いたします。

・退職希望日: 〇年〇月〇日
・現在の出向先: 〇〇株式会社(出向期間: 〇年〇月〜)
・出向契約書等での退職手続きの定めの有無: 現在確認中です

出向元・出向先のどちらにどこまでご連絡すればよいか分からない部分があるため、
まずは貴社人事部にご相談させてください。今後のお手続きの流れについて、
折り返しご教示いただけますと幸いです。

出向先(〇〇株式会社)へも、業務の引き継ぎのため別途ご連絡する予定です。

お忙しいところ恐縮ですが、何卒よろしくお願いいたします。

〇〇(氏名)
連絡先: 〇〇

退職届・退職の申し出そのものについて、記載事項を定めた法令や公式の様式はありません(民法第627条第1項は解約の申入れの効力について定めているのみです)。上記はあくまで一般的な書き方の一例なので、自社の出向規程・就業規則に指定の様式がある場合はそちらを優先してください。

次にやること

まずは自分の出向命令書・出向契約書を確認し、「在籍出向」か「転籍出向」かを確かめてください。 そのうえで、労働契約関係の存否・変更に関する権利義務を持つ会社(在籍出向なら出向元、転籍出向なら出向先)に対して、正式な形で退職の意思を伝えることが最初の一歩です。出向先の上司にだけ伝えて終わらせず、記録に残る形でその会社にも意思表示を届けることを意識してください。

自分だけで両方の会社とやり取りするのが難しいと感じる場合は、退職代行サービスに相談するのも一つの方法です。


※本記事は2026年9月時点で確認できた条文・公的資料と、筆者個人の体験に基づく一般的な情報整理です。出向の形態や社内規程によって手続きは変わるため、この記事だけで判断せず、必ず自分の出向契約書・就業規則を確認し、不明な点は労働基準監督署や弁護士にご確認ください。心身の不調がある場合は、医師・産業医にご相談ください。

出典 - 民法第627条第1項(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)。2026年9月に条文を確認 - 労働契約法第14条(出向命令権の濫用法理)。2026年9月に厚生労働省の労働契約法解説資料で条文を確認 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001238380.pdf - 在籍出向の定義(出向元・出向先の両方と雇用契約を結ぶ): 厚生労働省「在籍型出向『基本がわかる』ハンドブック」(2026年9月確認) https://www.mhlw.go.jp/content/000739527.pdf - 出向中の権利義務の整理(就労に関する権利義務は出向先、労働契約関係の存否・変更に関する権利義務は出向元に残るのが基本): 梅田総合法律事務所ニュースレター「出向(在籍出向)の基礎知識」(2024年7月31日、弁護士 古賀健介・弁護士 沖山直之、2026年9月確認) https://www.umedasogo-law.jp/wordpress/wp-content/uploads/2024/08/newsletter74.pdf - 転籍には労働者本人の個別の同意が必要で会社が一方的に命じることはできないという整理: 愛知県雇用労働相談センター(厚生労働省委託)、東京地裁平成4年1月31日判決を踏まえた解説(2026年9月確認) https://aichi-elcc.mhlw.go.jp/roudou_hourei/4602/ - 「出向中の退職の申し出先」そのものを直接明記した厚生労働省の一次資料は、確認した範囲では見当たらなかった(2026年9月確認)。本記事ではこの点を上記の法律事務所による解説を出典として書いている

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退職届を受け取る側に長くいて、そのあと自分が出す側になりました

人を採用し、辞めていく人を見送る立場に長くいました。退職代行から電話を受けたこともあります。そして自分が辞める番になり、失業保険の申請・ハローワークでの手続き・健康保険の切り替え・住民税の直接納付・保育園の継続手続きまで、すべて自分で通りました。両側を見た人間が書いています。「代行を使ったら会社はどう思うのか」に答えられるのは、受け取ったことがあるからです。

この記事の作り方: 下書きにAIを使い、法令の条文と官公庁の公式ページに照らして事実確認したうえで公開しています。確認の取れない記述が残る記事は公開せず、一次資料が見つからない箇所は本文にそう書いています。確認の手順を見る →

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