転職先への源泉徴収票の提出
- 年内(1月〜12月)に前職を辞めて別の会社に入社した場合、前職の源泉徴収票を転職先に提出する必要がある(国税庁タックスアンサーNo.2674、根拠は所得税法190条1項2号・194条、所得税法施行令311条、所基通190-2)
- 前職には退職者へ源泉徴収票を交付する義務があり、退職の日から1か月以内が交付期限(所得税法226条)
- 提出できないと転職先は前職分を含めた年末調整ができず、自分で確定申告をして精算することになる
- 前職からもらえない・年末調整に間に合わない場合の対処を整理した
- 1退職
- 2前職から源泉徴収票受取
- 3転職先へ提出
- 4年末調整で精算
この記事の内容
同じ年のうちに前の会社を辞めて、もう転職先に入社している人向けの記事です。 転職先の人事や総務から「前の会社の源泉徴収票を出してください」と言われて、何のことか分からず困っていませんか。結論から言うと、これは転職先で年末調整をするために必要な書類で、出さないと年末調整ができず、自分で確定申告をすることになります。この記事では、なぜ必要なのか、誰からいつもらうのか、間に合わないときどうするかを整理します。
- 転職先から「前職の源泉徴収票を提出してください」と言われたが、何のためか分からない
- 前の会社が源泉徴収票をなかなか出してくれない
- 年末調整までに間に合わなかったらどうなるのか不安
「4月入社」で検索してきた方へ。 前の会社を3月までに辞めて4月に入社した場合も、前職の源泉徴収票は転職先に出します。年内の転職なので、年末調整で前職分(1〜3月の給与)も合算するためです。前職の源泉徴収票は、退職の日から1か月以内(3月末退職なら4月末ごろ)に前職から届くのが本来の流れで、転職先に出すのは年末調整の書類を集める11月頃が目安です。入社の日に持っていく必要はありません。手順は下の「転職で4月入社した場合の源泉徴収票の出し方」にまとめています。
結論:年内に再就職した場合は前職の源泉徴収票が必要
| 論点 | 結論 |
|---|---|
| 年内に転職した場合、前職の源泉徴収票は必要か | 必要。転職先で年末調整をするために使う |
| 誰が発行するか | 前職(退職した会社)。退職者から請求しなくても発行義務がある |
| 発行の期限 | 退職の日から1か月以内(所得税法226条) |
| 提出しないとどうなるか | 転職先は前職分を含めた年末調整ができない。自分で確定申告が必要になる |
| 前職が出してくれないときは | まず前職に催促。応じないときは所轄の税務署に相談する方法がある |
ポイントは「年末調整は1年分の給与をまとめて計算する仕組み」だということです。転職先は、あなたが前職でいくら給与をもらい、いくら所得税を天引きされていたかを知りません。それを伝える唯一の公式な書類が、前職の源泉徴収票です。
なぜ必要なのか:年末調整は1年分をまとめて計算する
年末調整は、その年の1月から12月までに支払われた給与の合計額をもとに、1年分の所得税を精算する手続きです。年の途中で会社を辞めて別の会社に再就職した場合、転職先はあなたが「その年に入社してから」の給与しか把握できません。しかし年末調整で計算しなければならないのは、前職分も含めた1年分の給与です。
国税庁のタックスアンサー(No.2674「中途就職者の年末調整」)には、次のように説明されています。
次に、ほかの会社などから支払を受けた給与の金額やその給与から徴収された所得税や社会保険料の額を確認します。この確認は、その人がほかの会社などから交付を受けた「給与所得の源泉徴収票」などで行います。この確認ができないときには、年末調整を行うことはできず、その人が確定申告により所得税及び復興特別所得税の精算を行うことになります。
(出典:国税庁タックスアンサーNo.2674、根拠条文は所得税法190条・194条、所得税法施行令311条、所得税基本通達190-2)
つまり、前職分の給与と天引き済みの所得税の額を確認できる書類、それが源泉徴収票です。これが無いと、転職先はあなたの1年分の所得税を正しく計算できず、年末調整そのものを行うことができません。
前職の源泉徴収票はいつ・誰からもらうのか
前職の源泉徴収票は、前職(退職した会社)が発行するものです。自分で作る書類ではありません。
給与を支払う会社には、退職者に対して源泉徴収票を交付する義務があります。所得税法226条により、通常は翌年1月31日までですが、年の中途で退職した場合は退職の日から1か月以内に交付しなければならないと定められています(税研の法令データベースで条文の該当箇所を確認)。
つまり、こちらから強く催促しなくても、退職してから1か月ほどで前職から郵送されてくるのが本来の流れです。退職時の書類(離職票・雇用保険の被保険者証など)と別便で届くことが多く、封筒を見落としやすいので注意してください。
転職先へはいつ・どうやって提出するのか
転職先の年末調整は、多くの会社で11月〜12月上旬に書類を回収します。前職の源泉徴収票は、この年末調整の書類(給与所得者の扶養控除等申告書など)と一緒に、転職先の人事・総務に提出するのが一般的です。
提出のタイミングを整理すると、次のようになります。
| タイミング | やること |
|---|---|
| 入社時 | 前職の源泉徴収票をまだ持っていなくても、通常は問題ない(前職からの発行を待つ) |
| 退職から1か月前後 | 前職から源泉徴収票が届く。届いたら大切に保管しておく |
| 年末調整の案内が来たとき(11月頃が目安) | 転職先が指定する書類と一緒に、前職の源泉徴収票の原本を提出する |
会社によっては入社時にまとめて提出を求められることもあるため、転職先から案内があった場合はその指示に従ってください。
前職が出してくれない・間に合わないときはどうするか
前職には交付義務があるとはいえ、実務では発行が遅れる、担当者に連絡が付かないといったことも起こり得ます。その場合は次の順で対応してください。
- 前職の人事・総務に直接連絡する:発行が遅れている、または届いていないと伝え、いつまでに送付できるか確認する
- 書面での催促を検討する:電話やメールで反応がない場合、内容証明郵便などの書面で請求すると記録が残る
- 所轄の税務署に相談する:前職が交付に応じない場合、税務署に相談できる方法がある(源泉徴収票が交付されないことについての相談窓口が税務署にはある)。前職の会社名・退職日など分かる範囲の情報を用意して相談するとよい
前職の会社が倒産していた、担当者が退職して連絡が取れないといった特殊な事情がある場合も、まずは税務署に相談してください。一人で抱え込む必要はありません。
提出できないまま年を越すとどうなるか
年末調整の期限までに前職の源泉徴収票が用意できなかった場合、転職先はあなたの年末調整を行うことができません。この場合、あなた自身が確定申告をして、1年分の所得税を精算することになります(国税庁タックスアンサーNo.2674)。
確定申告自体は、年末調整ができなかった人が行う通常の手続きであり、罰則があるようなものではありません。ただし、前職分と転職先分、両方の源泉徴収票が必要になる点、申告の時期(原則として翌年2月16日〜3月15日)を自分で管理しなければならない点は負担になります。可能な限り、年末調整の期限までに前職の源泉徴収票を用意しておくほうが手間は少なくて済みます。
転職で4月入社した場合の源泉徴収票の出し方(手順とチェックリスト)
4月入社だと、その年の1月から3月までが前職、4月から12月までが転職先になります。年末調整は、この2つを足した1年分で計算します。流れは次のとおりです。
- 前職の退職日を確認する。 3月末退職なら、前職の交付期限は4月末ごろです(所得税法226条、退職の日から1か月以内)
- 届いた封筒を開けて、退職日と支払金額が入っているか見る。 1〜3月分だけの金額になっているのが普通です
- コピーを1部とってから、原本を転職先の人事・総務に出す。 提出先と締め切りは、転職先の年末調整の案内に書かれています(多くは11月頃)
- 年末調整の他の書類は、転職先の指示どおりに書く。 前職分の欄がある書類は、源泉徴収票を見ながら書きます
- 年末調整が終わったら、12月の給与明細か年明けに受け取る源泉徴収票を確かめる。 前職分が合算されていれば、確定申告は不要になる場合があります
確定申告に回るのは、源泉徴収票が間に合わず転職先が年末調整をできなかった場合です(国税庁タックスアンサーNo.2674)。このときは、前職と転職先の源泉徴収票の2枚を手元にそろえて、翌年の確定申告に使います。
提出前チェックリスト
- □ 前職の退職日を確認した(3月末なら、4月末ごろまでに届くはず)
- □ 前職から届いた源泉徴収票に、退職日の記載がある
- □ 原本を出す前に、自分用のコピーをとった
- □ 転職先の年末調整の案内で、提出先と締め切り日を確かめた
- □ 4月入社より前に、無職の期間があったかどうかを転職先に伝えた(あっても源泉徴収票の出し方は同じです)
次に詰まりやすいこと:前職から1か月たっても届かないとき
3月末退職で4月末を過ぎても届かない場合は、次の順で動きます。
- 前職の人事・総務に、退職日と氏名を伝えて、発送状況を聞く
- 転職先にも「前職の源泉徴収票が遅れている」と先に伝えておく(年末調整の締め切りは11月〜12月上旬なので、まだ間に合います)
- それでも出ないときは、前の「前職が出してくれない・間に合わないときはどうするか」の手順(書面での催促、税務署への相談)に進む
なくしてしまった場合も、前職に再発行を頼みます。給与明細で代わりになるかどうかは転職先の判断になるので、先に転職先へ聞いてください。
実体験について
私自身は2026年6月末に前職を退職しましたが、失業保険を受給する形で求職活動を進めており、同じ年のうちに別の会社へ再就職した経験はありません。この記事の内容は、国税庁のタックスアンサーと所得税法の条文をもとに、年内に転職した場合の一般的な手続きとして整理したものです。
次にやること
まず、前職から源泉徴収票が届いているかどうかを確認してください。 退職から1か月以上経っても届いていない場合は、前職の人事・総務に直接問い合わせるところから始めてください。すでに手元にある場合は、転職先の年末調整の案内(11月頃が目安)を待ち、指定された書類と一緒に提出すれば手続きは完了します。
※本記事は2026年9月時点の一般的な情報整理です。年末調整・確定申告の具体的な扱いは個人の状況によって異なります。判断に迷う場合は、所轄の税務署または税理士にご確認ください。
出典(2026年9月確認) - 国税庁タックスアンサーNo.2674「中途就職者の年末調整」:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2674.htm(根拠条文:所得税法190条・194条、所得税法施行令311条、所得税基本通達190-2) - 所得税法226条(源泉徴収票の交付義務・退職の場合は退職日から1月以内):税研法令データベース https://www.zeiken.co.jp/hourei/HHTOK000000/226.html - 所得税法190条1項2号関係の法令解釈通達:国税庁 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/32/01.htm