退職後の確定申告
- 1源泉徴収票を確認
- 2発行を依頼
- 3転職有無を確認
- 4書類をそろえる
- 5還付申告する
この記事の内容
年の途中で会社を辞め、年内に再就職しなかった人向けの記事です。結論を先に言うと、年の途中で退職して年末までに次の会社で年末調整を受けなかった場合、自分で確定申告をする必要があります。
多くの場合、払いすぎていた税金が戻ってきます。
離職票や失業保険の手続きに気を取られて後回しにされがちですが、放置すると得られるはずのお金を受け取れないまま終わる手続きです。
結論:まず何をするか
| 状況 | やること | 時期 |
|---|---|---|
| 年内に転職し、次の会社に源泉徴収票を提出した | 次の会社が年末調整してくれる。原則、自分で確定申告は不要 | 年末(次の会社の指示に従う) |
| 年内に転職しなかった・退職後そのまま年を越した | 自分で確定申告をする(還付申告) | 還付申告は翌年1月1日から5年間、いつでも可能(国税庁タックスアンサーNo.2030) |
| 転職先に源泉徴収票を出しそびれた | 転職先で年末調整してもらえなかった分を、自分で確定申告する | 同上 |
| 退職金を受け取った(前記事022) | 「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出していれば、通常は源泉徴収で完結し確定申告は基本不要(国税庁「退職金と税」) | 受け取り時 |
会社員のときは、毎月の給与から天引きされる所得税を、年末に会社が「年末調整」でぴったり合わせてくれていました。辞めた瞬間、この年末の帳尻合わせ役がいなくなるという点は、他の退職手続きと同じ構造です。
なぜ確定申告が必要になるのか
毎月の給与から天引きされる所得税は、「1年間その給料で働き続ける」前提の概算額です。年末調整は、実際の年収・控除(社会保険料・生命保険料・扶養家族など)をもとに、天引きしすぎた分・不足していた分を精算する仕組みです。
年の途中で退職すると、この年末調整を受けられないまま年を越すことがあります。
- 退職後、年内に転職しなかった
- 転職はしたが、前の会社の源泉徴収票を新しい会社に出しそびれた
このどちらかに当てはまると、年末調整が行われないまま天引きされすぎた税金が精算されずに残っている状態になります。これを取り戻す手続きが、確定申告です。
なぜ「取り戻せる」ことが多いのかというと、毎月の源泉徴収は「その月の給料が1年間続く」という前提で多めに計算されているためです。年の途中で収入が止まれば、実際の年収は想定より低くなり、結果として税金を払いすぎている状態になりやすいとされています(国税庁タックスアンサーNo.1910「中途退職で年末調整を受けていないとき」)。
いつまでにやればいいか
会社は退職後、源泉徴収票を発行する義務があります。所得税法226条により、退職者に対しては退職の日以後1か月以内に交付することとされています。まずこれが手元に届かないと確定申告ができないため、この期限を過ぎても届かない場合は、前の会社の総務・人事に確認する必要があります(離職票が届かないときと同じ対応です。詳しくは記事014)。
確定申告そのものの時期は、通常「税金を追加で払う」申告と「還付を受ける」申告で扱いが違います。
| 申告の種類 | 時期 |
|---|---|
| 通常の確定申告(納税がある場合) | 原則、翌年2月16日〜3月15日(3月15日が土日祝の場合は翌平日まで。国税庁「確定申告の手引き」) |
| 還付申告(払いすぎた分を返してもらう場合) | 翌年1月1日から5年間、いつでも申告できる(国税庁タックスアンサーNo.2030) |
年の途中で辞めた人の多くは、還付を受ける側です。急ぐ必要はありません。
ただし、先延ばしにするほど書類(源泉徴収票、控除証明書など)を紛失しやすくなります。実務上は年明けの早いタイミングで済ませてしまうのがおすすめです。
何を準備すればいいか
| 書類 | 用途 | 入手先 |
|---|---|---|
| 源泉徴収票(退職した会社の分) | 年間の給与額・天引き済み税額の確認 | 前の会社(退職後に発行) |
| 源泉徴収票(年内に他社で働いた分があれば) | 同上 | その会社 |
| 本人確認書類・マイナンバーが分かるもの | 申告時の本人確認 | 自分で用意 |
| 国民健康保険・国民年金の納付額が分かるもの | 社会保険料控除に使う(退職後に自分で払った分) | 納付書の控え・証明書 |
| 生命保険・地震保険等の控除証明書(加入していれば) | 各種控除に使う | 保険会社から送付 |
| 還付金を受け取る口座情報 | 還付金の振込先 | 自分の口座 |
退職後に自分で払った国民健康保険料・国民年金保険料(記事015・017参照)は、いずれも確定申告の社会保険料控除の対象です(国税庁タックスアンサーNo.1130)。控除として使えるため、払いすぎた税金がさらに戻ってくる方向に働くことがあります。
納付書の控えは捨てないでください。
どうやって申告するか
| 方法 | 特徴 |
|---|---|
| e-Tax(国税庁のオンライン申告) | 自宅から完結。マイナンバーカード方式ならマイナンバーカード+対応スマートフォン(またはICカードリーダライタ)が必要。マイナンバーカードがなくても、税務署で発行を受けるID・パスワード方式でも申告できる(e-Tax公式サイト) |
| 税務署の窓口・確定申告会場 | 分からない点をその場で聞ける。時期によって混雑する |
| 郵送 | 書類一式を作成して税務署に郵送 |
初めての確定申告で不安が大きい場合は、税務署の相談窓口のほか、全国の税理士会が確定申告時期(税理士記念日である2月23日前後を中心とすることが多い)に開く無料相談会を使う選択肢もあります。開催日・予約方法は税理士会・地域ごとに異なるため、利用したい場合は最寄りの税理士会のサイトで確認してください(日本税理士会連合会)。
実際によく起きること
- 「離職票やハローワークの手続きに気を取られて、確定申告のことを完全に忘れていた」
- 「源泉徴収票をどこにしまったか分からなくなった」
- 「還付されると知らず、そもそも確定申告をしていなかった」
還付申告は翌年1月1日から5年間できるため(国税庁タックスアンサーNo.2030)、今年動けなかったとしても、後から気づいて手続きすること自体は可能です。
ただし、書類は時間が経つほど探しにくくなります。心当たりがある人は、早めに源泉徴収票の所在だけでも確認しておいてください。
感情の面で:「税金の話は難しそう」で止まらなくていい
退職直後は、次の仕事、目の前の生活費、離職票や健康保険の手続きで手一杯になります。そこに「確定申告」という言葉が加わると、それだけで後回しにしたくなる気持ちはよく分かります。
ですが、年の途中で辞めた人の確定申告は、多くの場合「払いすぎた税金を返してもらうための手続き」です。
義務ではなく、権利の方です。
難しそうという理由だけで放置して、戻ってくるはずのお金を受け取り損ねるのはもったいないことです。
実体験について
私自身は2026年6月末に退職していますが、確定申告は通常翌年に行う手続きのため、この記事を書いている時点(2026年8月)ではまだ自分の確定申告を経験していません。調査した範囲での制度説明にとどめ、体験として書くことはしません。実際に申告した際の記録は、整理でき次第この記事に反映します。
印刷して書き込める版が欲しい人へ:「退職の手続きチェックリスト」(PDF・A4・4枚・500円)
次にやること
まず、退職した会社から源泉徴収票が届いているかを確認することです。届いていなければ、前の会社の総務・人事に発行を依頼してください。届いている場合は、年内に再就職して年末調整を受けたかどうかを確認し、受けていなければ、翌年に自分で確定申告(還付申告)をする前提で、源泉徴収票と控除証明書をひとまとめにして保管しておいてください。
※本記事は2026年8月時点の一般的な情報整理です(下記出典を2026年8月26日に確認)。個別の税額・控除の適用可否は、税理士または最寄りの税務署にご確認ください。確定申告の受付期間は年によって数日前後することがあります。
出典 - 所得税法226条(源泉徴収票の交付義務。退職者は退職の日以後1か月以内に交付) - 国税庁タックスアンサー No.1910「中途退職で年末調整を受けていないとき」 - 国税庁タックスアンサー No.2030「還付申告」(還付申告は翌年1月1日から5年間可能) - 国税庁タックスアンサー No.1130「社会保険料控除」(国民健康保険料・国民年金保険料は対象) - 国税庁「令和7年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き」(通常の確定申告は原則2月16日〜3月15日、曜日により前後) - 国税庁「退職金と税」(退職所得の受給に関する申告書を提出していれば確定申告は原則不要) - e-Tax公式サイト(マイナンバーカード方式・ID/パスワード方式の必要なもの) - 日本税理士会連合会(確定申告時期の無料相談会)