国民健康保険料の計算方法
- 国保料は「所得割+均等割(+平等割・資産割)」の合計で決まり、所得割の元になるのは前年の総所得から基礎控除43万円を引いた「旧ただし書き所得」
- 料率・均等割額は自治体ごとに違うため金額は必ず居住地の料率表で確認する必要がある
- 倒産・解雇・雇止め等で辞めた人は前年給与所得を30/100として計算する軽減があり、退職理由で保険料が大きく変わる
- 保険料には毎年見直される上限額(賦課限度額)がある
- 1前年所得を確認
- 2旧ただし書き所得を出す
- 3所得割を計算
- 4均等割・平等割を足す
- 5軽減の有無を確認
この記事の内容
退職して国民健康保険に切り替えることになったが、いくら請求されるのか見当がつかない。そんな人向けの記事です。 結論から言うと、国保料は「前年の所得」をもとに市区町村が計算し、所得に応じて自動的にかかる「所得割」と、加入者数に応じてかかる「均等割」を中心に組み立てられています。この記事では、前年所得から実際の保険料が決まるまでの計算の流れと、料率・軽減制度に関する注意点を整理します。
- 前の職場の給料をもとに保険料が決まると聞いたが、具体的にどう計算されるのか分からない
- 納付書の金額が想像より高くて、計算が合っているのか不安
- 収入が減ったのに保険料が下がる仕組みがあるのか知りたい
結論:国保料は「所得割+均等割」の合計
国民健康保険料(国保料)は、大きく分けて次の要素の合計で決まります。
| 区分 | 決まり方 |
|---|---|
| 所得割 | 前年の所得に応じてかかる(所得が高いほど増える) |
| 均等割 | 加入者(世帯員)1人あたり定額でかかる |
| 平等割 | 1世帯あたり定額でかかる(採用していない自治体もある) |
| 資産割 | 固定資産税額に応じてかかる(採用していない自治体が増えている) |
この4つを、医療分・後期高齢者支援金分・介護分(40〜64歳が対象)に分けて計算し、合算したものが実際の請求額になります。どの要素をいくらの料率・金額で採用するかは市区町村ごとに異なるため、同じ前年所得でも住んでいる自治体によって金額は変わります。
「前年所得」がベースになるという設計上、退職して収入が減った直後の1年間は、前職の給料をもとにした保険料を無収入(または低収入)の状態で払うことになりやすい期間です。この構造自体は変わりませんが、後述する軽減制度で下げられる場合があります。
前年所得から計算される仕組み
所得割の元になるのは、前年の総所得金額等から基礎控除を引いた「旧ただし書き所得」と呼ばれる金額です。地方税法第703条の4第6項は、国保の所得割算定にあたり同法第314条の2第2項(市町村民税の基礎控除)の控除を適用すると定めており、同項の基礎控除額は前年の合計所得金額が2,400万円以下の場合は43万円です(住民税の基礎控除と同じ仕組みが使われています。2018年度の税制改正で33万円から43万円に引き上げられた経緯があります。合計所得が2,400万円を超えると段階的に減額・消滅しますが、退職直後の所得水準では通常影響しません)。
給与所得者の場合、前年の給与収入からまず給与所得控除を引いて「給与所得」を出し、そこから基礎控除43万円をさらに引いたものが旧ただし書き所得になります。退職前が会社員だった場合は、この給与所得控除の計算が入る点が個人事業主の場合と異なります。
計算の5ステップ
実際の計算は、次の順番で進みます。
- 前年所得を確認する:前年の源泉徴収票・確定申告書で総所得金額等を確認する
- 旧ただし書き所得を出す:総所得金額等から基礎控除43万円を引く
- 所得割を計算する:旧ただし書き所得に、居住する自治体の所得割料率をかける
- 均等割・平等割を足す:加入者数に応じた均等割、世帯単位の平等割を所得割に足す
- 軽減の有無を確認する:世帯の所得が一定以下なら、均等割・平等割が自動的に減額される
このうち3〜4の料率・定額は自治体ごとにまったく異なります。次の章では、計算の流れをつかむために仮の料率でモデルケースを試算します。
仮の料率でモデルケースを試算する
以下は計算の流れを示すための仮の料率を使った試算です。実在の自治体の料率ではないため、必ず自分の自治体の料率表で置き換えて確認してください。
前提:前年の給与収入400万円、単身、40歳未満(介護分は対象外)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 給与所得(給与収入400万円の場合の速算) | 約276万円 |
| 旧ただし書き所得(276万円-基礎控除43万円) | 約233万円 |
| 所得割(仮に料率8%) | 約18.6万円 |
| 均等割(仮に1人5万円) | 5万円 |
| 平等割(仮に1世帯4万円) | 4万円 |
| 年間保険料(合計) | 約27.6万円 |
この例では月あたり2万3千円程度になります。所得割料率・均等割額・平等割額はすべて仮の数値なので、実際の金額はこれより高いことも低いこともあります。
所得が低い世帯の軽減(7割・5割・2割)
世帯の所得が一定の基準以下だと、均等割・平等割が自動的に7割・5割・2割のいずれかで減額されます。前年の所得が少ない退職直後の世帯では、この軽減が適用されるケースがあります。
| 軽減割合 | 基準の考え方 |
|---|---|
| 7割軽減 | 世帯の所得合計が「43万円+(給与所得者等の数-1)×10万円」以下 |
| 5割軽減 | 上記に「31万円×被保険者数(特定同一世帯所属者を含む)」を加えた額以下 |
| 2割軽減 | 上記に「57万円×被保険者数(特定同一世帯所属者を含む)」を加えた額以下 |
31万円・57万円という金額は、北九州市・大津市など複数の自治体公式ページで共通して確認できました(北九州市「国民健康保険料の軽減および減免」、大津市「国民健康保険料の軽減について」、いずれも2026年9月確認)。この基準額は地方税法施行令にもとづき全国一律で定められているため、自治体ごとの差はありません。ただし基準額自体は年度によって見直されることがあるため、実際の判定は自分の自治体の最新の公表資料で確認してください。
軽減は申請しなくても、前年の所得が市区町村に(確定申告・年末調整を通じて)把握されていれば自動的に判定されます。ただし所得を申告していないと軽減の判定自体ができないため、収入が無かった年でも住民税の申告は済ませておく必要があります。
退職理由で変わる軽減制度
倒産・解雇・雇止めなどの「非自発的な理由」で離職した人には、これとは別に「非自発的失業者の軽減」という制度があります(地方税法第703条の5の2)。対象になれば、前年の給与所得を実際の30%として保険料を計算し直してもらえます(給与所得以外の所得は軽減の対象外です)。
対象になる条件は次のとおりです(出典は末尾)。
- 離職時の年齢が65歳未満であること
- 雇用保険受給資格者証または雇用保険受給資格通知を持っていること
- 離職理由コードが11・12・21・22・31・32(特定受給資格者)、または23・33・34(特定理由離職者)のいずれかであること
軽減される期間は、離職日の翌日から翌年度末まで(最大2年間)です。国保の資格を途中で喪失した場合は、その前月分までが対象になります。
この軽減は自己都合退職では基本的に対象外です(離職理由コードが対象コードに含まれる場合を除く)。同じ「退職して国保に入る」でも、離職理由によって保険料が数倍違う結果になり得ます。自分の離職票に書かれた離職理由コードを確認しておくと、申請すべきかどうかの判断がつきます。
申請には雇用保険受給資格者証(または受給資格通知)のコピーが必要で、住所地の市区町村役場の国民健康保険担当窓口に提出します。多くの自治体でオンライン申請にも対応しています。
保険料には上限がある
国保料には、所得がいくら高くても超えない上限額(賦課限度額)が設定されています。2024年度(令和6年度)は、医療分(計)89万円(基礎賦課額65万円+後期高齢者支援金賦課額24万円)+介護分17万円で、合計106万円でした。2025年度(令和7年度)は医療分(計)92万円(基礎賦課額66万円+後期高齢者支援金賦課額26万円)+介護分17万円で、合計109万円に引き上げられています(厚生労働省保険局・第184回社会保障審議会医療保険部会資料による)。2026年度(令和8年度)はさらに基礎賦課額が67万円に1万円引き上げられ、医療分(計)93万円+介護分17万円で合計110万円になりました(厚生労働省保険局・第205回社会保障審議会医療保険部会資料(令和7年11月27日)で引き上げ方針が示され、令和8年1月15日公布の改正政令(令和8年政令第2号)で確定、令和8年4月1日施行)。なお令和8年度からは「子ども・子育て支援金分」が国保料に新設されており、その賦課限度額は上記の110万円とは別枠で定められるため、支援金分を含めた実際の上限は住んでいる市区町村の最新の案内で確認してください。
料率は自治体ごとに違う
ここまでの計算式・軽減の考え方は全国共通の枠組みですが、実際に何%・何円が請求されるかは市区町村ごとにまったく異なります。同じ前年所得でも、隣の市に引っ越すだけで保険料が変わることは珍しくありません。
正確な金額を知りたい場合は、自分が住民票を置く市区町村の「国民健康保険料(税)の料率表」を確認するか、市区町村の国保窓口に前年の所得を伝えて試算を依頼するのが確実です。多くの自治体が、公式サイトに保険料の自動計算シミュレーターを用意しています。
実体験について
私自身は2026年6月30日に会社都合で前職を退職し、国民健康保険に加入しました。実際に非自発的失業者の軽減措置が使え、任意継続健康保険より保険料を抑えられました(金額そのものは本記事では公開していません)。一方で、国保は世帯の加入者が増えるほど保険料が上がる仕組みのため、子どもは妻の健康保険の扶養に移しています。この軽減は会社都合退職だからこそ使えたものです。 自己都合退職の場合は対象外になることが多いため、自分の離職票に書かれた離職理由コードを必ず確認してください。上記以外の計算・料率の細部については、複数の市区町村・厚生労働省の公式情報にもとづいて整理したものです。
次にやること
まず、前年の源泉徴収票か確定申告書を手元に用意し、住所地の市区町村の国保窓口(または公式サイトの保険料シミュレーター)で試算してもらってください。 倒産・解雇・雇止めなどの理由で離職した場合は、離職票の離職理由コードも一緒に持参すると、軽減の対象になるかその場で確認できます。
※本記事は2026年9月時点で確認できた公的情報にもとづく一般的な情報整理です。所得割料率・均等割額・平等割額・軽減基準額・賦課限度額は自治体・年度によって異なります。実際の保険料は、居住する市区町村の窓口または公式サイトで必ず確認してください。
出典(2026年9月確認) - 地方税法第703条の4、第314条の2、第703条の5の2(国民健康保険税の課税・軽減の枠組み。全文照合済み) - 北九州市「国民健康保険料の軽減および減免」:https://www.city.kitakyushu.lg.jp/contents/924_10096.html - 大津市「国民健康保険料の軽減について」:https://www.city.otsu.lg.jp/soshiki/020/1403/g/kokuho/hokenryo/1388990414144.html - 渋谷区「非自発的失業者の国民健康保険料の軽減」:https://www.city.shibuya.tokyo.jp/kurashi/kokuho/kenkohokenryo/hokenryo_hijihatsu.html - 中野区「非自発的失業者の方は国民健康保険料の軽減が受けられます」:https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/kurashi/hoken/hokenryo/hijihatsuteki.html - 厚生労働省 保険局「国民健康保険の保険料(税)の賦課(課税)限度額について」(第184回社会保障審議会医療保険部会資料、令和6年10月31日):https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001323477.pdf - 厚生労働省 保険局「国民健康保険の保険料(税)の賦課(課税)限度額について」(第205回社会保障審議会医療保険部会資料3、令和7年11月27日。令和7年度109万円の内訳と令和8年度の基礎賦課額+1万円(67万円)・合計110万円への引き上げ、子ども・子育て支援金分の新設方針):https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001599957.pdf