転職先の条件確認
転職先が決まりそう、あるいは内定が出た人へ。年収の数字だけ見て決めると、入ってから「聞いていた話と違う」が一番多く出るのは、実は年収以外の条件です。ここでは、内定通知書・労働条件通知書のどこを見るべきか、何をいつ質問すればいいかを具体的に答えます。
なぜ年収だけ見て決めると後悔するのか
求人票やオファー面談では、年収の数字が一番目立つ位置に置かれます。ですが実際の働きやすさや手取り額を左右するのは、年収以外の条件の方が多いのが実情です。
- 残業代が年収に「見込み」で含まれているか
- 転勤・異動の範囲が入社後に広がらないか
- 試用期間中の条件が本採用と違わないか
- 退職金・賞与が年収の提示額に入っているか
これらは求人票の1行では分からず、内定通知書や労働条件通知書を実際に読んで初めて分かります。
確認すべき項目チェックリスト
内定が出たら、返事をする前に次を1つずつ確かめてください。□にチェックが付かない項目は、そのまま入社せず質問してから決めます。
- □ 提示された年収に残業代(みなし残業・固定残業代)が含まれているか、含まれる場合は何時間分か
- □ 基本給と諸手当(住宅手当・役職手当など)の内訳が分かるか。手当は業績や規程変更でなくなることがある
- □ 賞与・退職金は提示年収に含まれているか、別枠か
- □ 就業場所は「入社時の勤務地」だけか、将来の転勤範囲まで明示されているか
- □ 業務内容に「変更の範囲」の記載があるか(入社後に職種が大きく変わる可能性の有無)
- □ 試用期間の有無・期間・試用期間中の給与や待遇に差があるか
- □ 社会保険(健康保険・厚生年金・雇用保険)への加入時期
- □ 有給休暇の付与日数と、入社何ヶ月目から使えるか
- □ 退職金制度の有無と、勤続何年から対象になるか
このうち「就業場所」「業務内容の変更範囲」は、2024年4月1日施行の労働基準法施行規則改正(同規則第5条)で、すべての労働者を対象に労働条件通知書への明示が義務化された項目です(厚生労働省「2024年4月からの労働条件明示ルール変更」2026年9月確認)。この改正より前の古いフォーマットの通知書を使っている会社では、記載が抜けている場合があるので、無ければ自分から質問します。
労働条件通知書は必ず書面でもらう
会社は労働契約を結ぶ際、賃金・労働時間・就業場所・業務内容などの主要な労働条件を書面(本人が希望すれば電子メール等でも可。労働基準法施行規則第5条4項、2019年4月施行)で明示する義務があります(労働基準法第15条)。「あとで送ります」「口頭で説明した通りです」と言われて通知書が出てこない場合は、そのこと自体が注意信号です。
内定の返事をする前に必ず通知書の交付を求め、届いてから返事をしても遅くはありません。交付までにどれくらい待てるかについての公的な統計は見当たらない(2026年9月確認)ため、返事の期限を延ばせるかどうかは会社に直接確認してください。
質問しにくいことを聞く文例
年収の内訳や転勤範囲は、面と向かって聞きにくいと感じる人が多いですが、入社前の質問は一般的なやり取りです。メールで聞く場合の文例です。
件名: 労働条件についてのご確認
〇〇株式会社
採用ご担当者様
お世話になっております。〇〇(氏名)です。
このたびは内定のご連絡をいただき、ありがとうございます。
入社を前向きに検討しており、下記の点について確認させてください。
・提示いただいた年収に、固定残業代(みなし残業代)は含まれていますでしょうか。
含まれる場合、何時間分の残業代として計算されているかご教示ください。
・就業場所について、将来的な転勤の可能性がある範囲を教えていただけますか。
・試用期間中の給与・待遇に、本採用時との差はございますか。
お手数をおかけしますが、労働条件通知書と併せてご回答いただけますと幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。
〇〇(氏名)
このまま件名と自分の名前だけ変えて使えます。内定取消しには客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要とされており(最高裁昭和54年7月20日・大日本印刷事件判決)、労働条件を確認したこと自体がその理由になることは通常ありません。
現職を辞めるタイミングは条件確認の後にする
内定が出た時点で現職に退職の意思を伝えたくなる気持ちは自然ですが、労働条件通知書の内容を確認し、疑問点への回答をもらってから退職の手続きに進む方が安全です。条件が食い違っていた場合、現職への退職の申し出を取り消すのは現実的に難しくなります。
次にやること
内定が出たら、まず上のチェックリストを印刷するかメモに書き写し、労働条件通知書と1項目ずつ照らし合わせてください。不明な点が1つでもあれば、上の文例を使って書面で質問し、回答が来てから返事をします。