塾講師の退職
- 1退職を決める
- 2就業規則を確認
- 3引き継ぎ計画
- 4塾長へ伝える
- 5引き継ぎ実行
- 6退職日
この記事の内容
受験直前や年度の途中で塾を辞めたいが、担当する生徒や保護者への影響が気になって言い出せない塾講師向けの記事です。法律上はいつ辞めても問題ありませんが、円満に抜けるための時期の選び方と、塾長への伝え方の文例をここにまとめます。
塾講師はいつ辞めても法律上は問題ない
雇用期間の定めがない契約(正社員・無期のパート講師など)であれば、民法627条1項により、いつでも退職を申し入れることができます。申し入れた日から2週間が経てば契約は終了します。塾側の就業規則に「1ヶ月前までに申し出ること」といった規定があっても、法律上の最低ラインはこの2週間です(ただし、就業規則を無視すると引き継ぎ不足や関係悪化のトラブルにつながるとする解説が転職支援各社に共通して見られる。公的機関による統一見解は見当たらない。2026年9月確認)。
一方、有期雇用契約(1年契約など)の場合は話が少し変わります。契約期間の途中で辞めるには、原則として「やむを得ない事由」が必要です(民法628条)。ただし労働基準法137条により、契約期間が1年を超える有期契約であれば、契約初日から1年が経過した時点でいつでも退職を申し出ることができます。逆に、契約期間がちょうど1年以内の場合はこの特例の対象外で、原則どおり「やむを得ない事由」が必要になります【各自確認:自分の雇用契約書に書かれた契約期間が1年を超えるかどうか】。
つまり「法律上できるかどうか」と「現場で気まずいかどうか」は別の問題です。この記事で扱うのは主に後者、つまり時期の選び方と伝え方です。
受験直前・年度途中に辞めると何が問題になるのか
塾講師の退職が他の職種と違うのは、辞めるタイミングが生徒の学習スケジュールに直結する点です。具体的には次のような影響が想定されます。
- 受験直前(1〜2月)に担当講師が変わることによる、生徒本人の不安や学習リズムの乱れ
- 保護者への説明が必要になり、場合によってはクレームに発展するリスク
- 引き継ぎ資料(進捗記録・弱点分析・使用教材)の整備にかかる手間
- 特に個人塾や地方の塾では、代替講師の確保自体が難しいケースがある
不安になりすぎる必要はありません。これらは「避けた方がよい」という配慮の話であって、「辞めてはいけない」という禁止の話ではありません。
辞める時期はいつがベストか
同じ「辞める」でも、時期によって周囲への負担はかなり変わります。目安を表にまとめます。
| 時期 | 塾側・生徒側への負担 | 備考 |
|---|---|---|
| 年度末(3月) | 小さい | 新学年への切り替わりと重なるため、引き継ぎがしやすい |
| 夏期講習の前後 | 中程度 | 繁忙期そのものは避けられるが、夏期講習をすでに契約している生徒がいると調整が要る |
| 受験直前(1〜2月) | 大きい | 生徒・保護者への影響が最も大きく、できる限り避けたい時期 |
| 契約更新のタイミング | 小さい | 更新しないという形にできれば、退職の申し出自体がスムーズになる |
目安として、年度末か契約更新のタイミングに合わせられるなら、それが一番角が立ちません。ただし、これは「その時期まで無理に我慢するべき」という意味ではありません。心身がすでにつらい場合は、時期を選んでいる余裕自体がないこともあります。
受験直前でもどうしても辞めたい場合はどうするか
体調や家庭の事情など、時期を選べない理由があるのは自然なことです。無理に抱え込む必要はありません。判断の順番としては、次のように考えるとよいでしょう。
- 心身の不調が理由にある場合は、まず医師・産業医に相談したうえで判断する(体調の判断はここでは行わない)
- 次の仕事の開始日など動かせない事情がある場合は、退職日そのものより「いつまでに引き継ぎを終えられるか」を先に固める
- 担当する生徒全員を一度に手放すのが難しければ、受験学年だけでも他の講師に早めに引き継ぐ形を塾側と相談する
「今すぐ辞めたい」という気持ちと、「いつ辞めると伝えるか」は分けて考えると、話が進めやすくなります。
塾長にはどう切り出すか(文例)
伝えるタイミングは、就業規則に定めがあればそれに従い、定めがなければ1ヶ月前を目安にするという解説が一般的です(就業規則で1ヶ月前を定める企業が多いとする転職支援各社の解説に基づく目安。公的な統一基準は見当たらない。2026年9月確認)。切り出し方に迷う場合は、次の文例をそのまま使っても構いません。
口頭で切り出す場合の一言目:
お時間をいただき、ありがとうございます。
一身上の都合により、〇月末をもって退職させていただきたく、
本日はそのご相談でお時間をいただきました。
書面・メールで伝える場合:
件名:退職のご相談
〇〇塾長
お疲れ様です。〇〇(氏名)です。
一身上の都合により、〇年〇月〇日をもって
退職させていただきたく、ご相談申し上げます。
担当している生徒については、引き継ぎ資料の準備を含め、
できる限りご迷惑をおかけしない形で対応いたします。
一度お時間をいただけますと幸いです。
〇〇(氏名)
理由の部分は「一身上の都合」で十分です。詳しい事情まで説明する義務はありません。
引き継ぎで困らないためのチェックリスト
伝えたあとに揉めやすいのは、退職そのものより引き継ぎの中身です。事前に次を確認しておくと、話がスムーズです。
- □ 担当している生徒それぞれの進捗状況・弱点・使用教材を一覧にまとめてあるか
- □ 保護者への説明を塾側が行うのか、自分が同席するのか決まっているか
- □ 私物の教材・データと、塾に返却すべきものが区別できているか
- □ 退職日までに残っている授業回数と、引き継ぎに使える時間が足りているか
- □ 最終出勤日と退職日(雇用契約上の終了日)がずれていないか
退職代行を使うという選択肢
塾長に直接言い出しづらい、あるいは一度伝えたが引き止められて話が進まない場合は、退職代行という手段もあります。塾講師の場合、有期雇用契約の途中退職に関する交渉が必要になる場面もあるため、弁護士が対応できるサービスかどうかは選ぶ基準の一つになります。
料金やサービス内容は変わることがあるため、利用前に各社の公式サイトで最新の内容を確認してください(※2026年9月時点の情報をもとに紹介しています)。
次にやること
まずは自分の雇用契約書(または労働条件通知書)を開いて、契約期間の定めがあるかどうかと、就業規則上の退職の申し出期限を確認してください。ここが分かれば、辞めると伝えるべき時期が具体的に決まります。