親の介護で辞める前に
- 介護休業は対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割取得できる(育児・介護休業法第11条・第15条)
- 介護休業給付金は休業開始時賃金日額×支給日数の40%が目安(雇用保険法第61条の4。育児休業給付金の67%とは異なる)
- 家族の介護のためにやむを得ず退職した場合は「特定理由離職者」として、通常の自己都合退職より有利な扱いを受けられることがある(雇用保険法第13条)
- 該当するかどうかと必要書類は、退職前にハローワークへ確認するのが確実
- 1介護休業を検討
- 2職場に相談
- 3難しければ退職
- 4離職票を確認
- 5ハローワークへ申請
- 6特定理由離職者で受給
この記事の内容
この記事は、親(または家族)の介護が必要になり、今の仕事を辞めるべきか悩んでいる人に向けて書いています。 結論から言うと、辞める前に「介護休業」という、一定期間仕事を休んで介護に専念できる制度があります。それでも両立が難しく退職を選ぶ場合は、家族の介護が理由であれば「特定理由離職者」として、通常の自己都合退職より有利な扱いを雇用保険から受けられることがあります。この記事では、この2つの制度の内容と、どちらを選ぶかの考え方を整理します。
- 親の介護と仕事の両立が限界で、辞めるしかないと思っている
- 介護休業という言葉は聞いたことがあるが、日数や条件がよく分からない
- 辞めた場合、失業保険がすぐもらえるのか、条件が悪くならないか不安
結論:辞める前に介護休業、辞めるなら特定理由離職者の確認を
親や家族の介護が必要になったとき、いきなり退職を決める前に検討したいのが「介護休業」です。育児・介護休業法に基づく制度で、要介護状態の家族1人につき、通算93日まで、3回を上限に分割して休業を取得できます(育児・介護休業法第11条、第15条第1項・第2項)。休業中は雇用保険から「介護休業給付金」が支給される仕組みもあります。
・介護休業:対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割取得可能(育児・介護休業法第11条、第15条第1項・第2項) ・介護休業給付金:休業開始時賃金日額×支給日数の40%が目安(雇用保険法第61条の4第4項。育児休業給付金の67%とは支給率が異なるので注意) ・両立が難しく退職する場合、家族の介護が理由であれば「特定理由離職者」として扱われることがある(雇用保険法第13条)
それでも両立が難しく、退職を選ばざるを得ないケースもあります。その場合に知っておきたいのが、雇用保険上の「特定理由離職者」という区分です。家族の介護のためにやむを得ず辞めたと認められれば、通常の自己都合退職よりも早く、有利な条件で基本手当(失業保険)を受け取れることがあります。
介護休業とはどんな制度か
介護休業は、育児・介護休業法で定められた、要介護状態にある家族を介護するために仕事を休める制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象になる家族 | 配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫。同居の有無は問わない(育児・介護休業法第2条) |
| 要介護状態の目安 | 負傷・疾病・身体上または精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態とされる(育児・介護休業法第2条、第11条第1項。厚生労働省が具体的な判断基準の目安表を公表している) |
| 取得できる日数 | 対象家族1人につき通算93日まで(育児・介護休業法第11条、第15条第1項・第2項) |
| 分割の上限 | 3回を上限に分割して取得可能(同上) |
| 申出 | 書面等で事業主に申し出る。要件を満たす申出を事業主は原則拒めないが、労使協定があれば「継続雇用1年未満」「週の所定労働日数が2日以下」などの労働者は対象外にできる(育児・介護休業法第12条第1項・第2項) |
(育児・介護休業法第2条・第11条・第12条・第15条。2025年4月・10月施行の改正内容に対応。厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」で確認)
93日という日数は、介護そのものを1人で担いきるための期間というより、「今後の介護の体制(施設探し・他の家族との分担・仕事との両立方法の検討など)を整えるための期間」として設計されています。この期間の使い方を考えておくと、休業が終わったあとの見通しが立てやすくなります。
介護休業とは別に、1日単位・時間単位で取得できる「介護休暇」(年5日、対象家族が2人以上なら年10日。育児・介護休業法第16条の5・第16条の6)という制度もあります。通院の付き添いなど短時間の対応であれば、介護休業ではなく介護休暇のほうが向いている場合もあります。
介護休業給付金はいくらもらえるか
介護休業を取得した場合、一定の要件を満たせば雇用保険から「介護休業給付金」が支給されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な支給要件 | 休業開始前2年間に、賃金支払基礎日数11日以上ある月(みなし被保険者期間)が通算12か月以上あること(雇用保険法第61条の4第1項、第14条) |
| 給付率 | 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 40%が目安(雇用保険法第61条の4第4項。育児休業給付金は67%だが、介護休業給付金は40%と支給率が異なる) |
| 支給のタイミング | 介護休業終了後、休業終了日の翌日から2か月を経過する日の属する月の末日までに、会社を通じてハローワークへ申請する(雇用保険法施行規則第101条の19) |
| 対象期間 | 通算93日の範囲内で、分割取得した各休業期間ごとに計算 |
(雇用保険法第61条の4、雇用保険法施行規則第101条の19)
給付金は休業「中」に振り込まれるのではなく、休業が終わってから申請・支給という流れになります(雇用保険法施行規則第101条の19)。生活費の見通しを立てる際は、休業中に手元に入るタイミングがいつになるか、会社の担当部署に事前に確認しておくと安心です。
それでも退職を選ぶ場合の「特定理由離職者」とは
介護休業を使っても両立が難しく、退職を選ぶ場合に関わってくるのが、雇用保険上の「特定理由離職者」という区分です。
自己都合で退職した場合、通常は基本手当(失業保険)の支給が始まるまでに給付制限期間があり(雇用保険法第33条第1項。法律上は「1か月以上3か月以内」の範囲で公共職業安定所長が定める期間とされ、現在の運用では原則2か月)、受給には離職前2年間に被保険者期間が通算12か月以上必要とされています(雇用保険法第13条第1項)。しかし、家族の介護のためにやむを得ず離職したと認められる場合は「特定理由離職者」として扱われ、次のような点で通常の自己都合退職と異なる場合があります。
・給付制限期間がかからない場合がある(雇用保険法第33条第1項の給付制限は「正当な理由がなく自己の都合によつて退職した場合」が対象で、特定理由離職者はこれに当たらないため) ・受給資格の要件が緩和され、離職前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あれば足りるとされる場合がある(通常は2年間に12か月以上。雇用保険法第13条第2項・第3項) ・該当するかどうかは、雇用保険法施行規則第19条の2(第33条第1項の「正当な理由」による離職)に基づきハローワークが個別に判断する。必要な証明書類の具体的な範囲は個々の窓口案内によるため、退職前に管轄のハローワークへ確認するのが確実
「特定理由離職者」に該当するかどうかは、離職票に記載された離職理由とハローワークでの確認によって決まります。退職を決める前に、自分のケースが該当しそうかどうかを、管轄のハローワークに相談しておくことをおすすめします。
介護休業を使う場合と退職する場合の比較
| 観点 | 介護休業を使う | 退職する |
|---|---|---|
| 収入 | 介護休業給付金(休業開始時賃金日額×支給日数の40%が目安。雇用保険法第61条の4)。会社に籍は残る | 退職後、要件を満たせば基本手当。特定理由離職者なら早期受給の可能性(雇用保険法第13条・第33条) |
| 期間 | 対象家族1人につき通算93日が上限 | 期間の制約はないが、収入は失業保険のみになる |
| 社会保険 | 会社の健康保険・厚生年金への加入は継続するが、育児休業と異なり介護休業には保険料の免除制度はない(健康保険法第159条は育児休業等のみを対象としており、介護休業は対象に含まれていない) | 国民健康保険・国民年金への切り替えが必要になる場合がある |
| 復帰 | 休業後、同じ会社に復帰する前提 | 復帰の前提はなく、再就職活動が必要になる |
どちらが正しいというものではなく、介護の見通し(数か月で状況が変わりそうか、長期化しそうか)と、自分の働き方の希望によって選ぶものです。93日という上限を、体制を整えるための猶予期間として使い、その間に退職するかどうかをあらためて判断する、という順番も選択肢の一つです。
退職を決めたら、何をどこに確認すればよいか
退職を決めた場合、次の流れで進めることになります。
- 会社への申し出:就業規則に定められた期限を確認し、退職の意思を伝えます。介護が理由であることも合わせて伝えておくと、離職票の離職理由の記載に関わってきます。
- 離職票の確認:退職後、会社から離職票が届きます。離職理由の欄に、介護のためのやむを得ない離職である旨が反映されているかを確認してください。記載内容に納得できない場合は、ハローワークの確認処分に対して雇用保険審査官へ審査請求ができます(雇用保険法第69条第1項)。
- ハローワークでの申請:離職票を持ってハローワークへ行き、求職の申込みと基本手当の受給資格の確認を行います。特定理由離職者に該当するかどうかは、この時点でハローワークが判断します。
退職を伝える際、会社が引き止めてきたり、退職の話がなかなか進まなかったりする場合、退職代行を使うという選択肢もあります。ただし、離職理由の記載や特定理由離職者の判断に関わるやり取りは、最終的に本人とハローワークの間で行う必要がある点は変わりません。
実体験について、正直に書きます
私自身は2026年に会社都合で退職し、離職票を受け取ってからハローワークで失業保険の手続きをした実体験があります。会社都合退職だったこともあり、離職票は退職から3日ほどで手元に届きました。ただし、私が退職した理由は家族の介護ではなく、この記事で書いた介護休業や特定理由離職者の制度そのものを自分で使った経験はありません。そのため、この記事の制度部分は自分の体験ではなく、法律の条文と厚生労働省の資料に基づいて調べた範囲での整理です。
次にやること
まず、退職を決める前に、会社の担当部署(人事・総務)に介護休業の取得可否と手続きの流れを確認してください。そのうえで、退職も選択肢に入れる場合は、管轄のハローワークに「家族の介護が理由で辞める場合、特定理由離職者に該当するか」を事前に相談しておくと、離職票が届いたあとの手続きがスムーズになります。
会社への申し出がしにくい状況であれば、退職代行の利用も選択肢の一つです。
※本記事は2026年9月時点で確認できた情報の整理です。介護休業・介護休業給付金・特定理由離職者の要件は制度改正により変わる可能性があるため、実際の手続きにあたっては厚生労働省の公式サイトおよび最寄りのハローワークで最新の内容をご確認ください。
出典 - 育児・介護休業法第2条・第11条・第12条・第15条・第16条の5・第16条の6(介護休業・介護休暇制度:対象家族・要介護状態の定義、日数93日・分割3回、介護休暇の日数)。厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし(令和7年4月1日、10月1日施行対応)」により本文確認(2026年9月7日確認) - 雇用保険法第14条・第61条の4、雇用保険法施行規則第101条の19(介護休業給付金:支給要件・給付率40%・支給申請の時期) - 雇用保険法第13条・第33条、雇用保険法施行規則第19条の2(特定理由離職者の区分:受給資格要件の緩和・給付制限の扱い)、第69条(離職理由に関する不服申立て) - 健康保険法第159条(育児休業等の保険料免除は介護休業には適用されない点)