「退社」と「退職」の違い
- 「退社」には「会社を辞める」と「その日の勤務を終えて会社を出る」の2つの意味があり、「退職」には後者の意味がない
- 履歴書の職歴欄は「退社」「退職」のどちらでも誤りとはされていない
- 退職届・退職願という書類名が一般的
- 労働基準法などの条文では「退職」が使われており、「退社」という言葉は条文に登場しない
この記事の内容
履歴書や退職届を書くときに、「退社」と「退職」のどちらを使えばいいか迷ったことはないでしょうか。日常会話ではほぼ同じ意味で使われていますが、実は「退社」にはもう一つ別の意味があります。この記事では、2つの言葉の違いと、履歴書・退職届でどちらを使うのが一般的かを、文例つきで整理します。
- 履歴書の職歴欄に「退社」と書くべきか「退職」と書くべきか迷っている
- 退職届に「一身上の都合により退社いたします」と書いていいのか気になっている
- 「退社」と「退職」の意味そのものの違いがよく分からない
結論:使い分けの早見表
| 論点 | 結論 |
|---|---|
| 「退社」と「退職」は同じ意味か | 「会社を辞める」という意味では同じだが、「退社」にはもう一つ別の意味がある |
| 履歴書の職歴欄はどちらを書くか | 転職情報サイトのdodaとバイトルは「退職」を推奨。バイトルは「退社」でも問題ないとしている(2026年10月8日に原文確認) |
| 退職届・退職願にはどちらを書くか | 「退職届」「退職願」という書類名が一般的 |
| 法令の条文ではどちらが使われているか | 労働基準法などの条文では「退職」が使われている。「退社」という言葉は条文に登場しない |
迷ったら、書類全体で言葉を統一することが一番大事です。同じ書類の中で「退社」と「退職」を混在させると、読み手に雑な印象を与えるおそれがあります。
「退社」と「退職」、意味は何が違うか
「退社」には、実は2つの意味があります(デジタル大辞泉の語釈。コトバンク「退社」で原文を確認、2026年10月8日)。
- 会社を辞めること(=退職とほぼ同じ意味)
- その日の勤務を終えて会社を出ること(対義語は「出社」)
たとえば「今日は20時に退社した」という文は、辞めたのではなく、その日の仕事を終えて会社を出たという意味です。「退社時刻」という言葉はよく使われますが、「退職時刻」とは言いません。日々の出退勤を指すときに使えるのは「退社」だけです。
一方の「退職」には、この日次の意味がありません。「退職」は専ら「その会社に所属する身分を失うこと」だけを指す言葉です。「今日は20時に退職した」とは言わないことからも、この違いがわかります。
つまり、次のような整理になります。
| 場面 | 「退社」 | 「退職」 |
|---|---|---|
| 会社を辞めること全般 | 使える | 使える |
| その日の勤務を終えて会社を出ること | 使える | 使えない |
会社を辞めるという場面だけを見れば、どちらを使っても意味は通じます。ただし「退社」は日常の出退勤にも使われる言葉である分、「その会社を離れた」という一回限りの出来事を明確に示したい書類では、「退職」のほうが誤解されにくくなります。
履歴書にはどちらを書くか【文例】
履歴書の職歴欄では、「入社」の対句として「退社」を使う書き方もあります。法令や規格で「退社と書くこと」が指定されているかどうかは、手元の法令では確認できていません。 転職情報サイトのdodaは、「退社」は文脈によって誤解を招く可能性があるとして、履歴書・職務経歴書では「退職」の使用をすすめています(doda「履歴書・職務経歴書の「退社」と「退職」のどちらを記入する?」の節、2026年10月8日に原文を確認)。 バイトルも、転職活動用の履歴書では「退職」をすすめる一方、「退社と退職のどちらを使っても問題ない」としています(バイトル「履歴書では「退職と退社」どちらを使うべき?」、2026年10月8日に原文を確認)。
文例1:「退社」で対句にする書き方
令和6年4月 株式会社〇〇 入社
令和8年6月 株式会社〇〇 退社
文例2:「退職」で統一する書き方
令和6年4月 株式会社〇〇 入社
令和8年6月 株式会社〇〇 退職
どちらの書き方でも問題ありませんが、複数の職歴を書く場合は、書類全体でどちらかに揃えてください。ある会社は「退社」、別の会社は「退職」と書くと、統一感のない書類に見えることがあります。
退職理由まで書く場合は、「一身上の都合により退職」という言い回しが定型文として紹介されています(doda、上記ページ。会社都合なら「会社都合により退職」)。これを「一身上の都合により退社」と書き換えても意味は通じますが、後述のとおり退職届など公式な書類では「退職」で揃えるのが一般的なので、履歴書でも「退職」に揃えておくと、書類間の言葉づかいが一貫します(履歴書の退職理由欄の書き方は「履歴書の退職理由は「一身上の都合」でよいか」も参考にしてください)。
退職届・退職願にはどちらを書くか【文例】
退職届・退職願では、「退職」を使うのが一般的です。
文例:退職届
退職届
私儀
このたび一身上の都合により、
令和8年〇月〇日をもって退職いたします。
令和8年〇月〇日
〇〇部〇〇課
氏名 印
株式会社〇〇
代表取締役〇〇様
文中の「退職いたします」の部分を「退社いたします」に置き換えても、文法的な誤りにはなりません。ただし、書類の名称そのものが「退職届」である以上、本文の言葉も「退職」に揃えたほうが、書類全体の一貫性が保てます。退職届と退職願の書式・出すタイミングの違いは「退職届と退職願の違い|書き方と出すタイミング」で扱っています。
なぜ「退職届」であって「退社届」ではないのか
法令の条文を見ると、この書類名の使い分けの背景がわかります。
労働基準法第22条(退職時等の証明)は、労働者が退職の場合に使用期間・退職の事由などの証明書を請求できると定めており、条文中では「退職」という言葉が使われています。労働基準法の全文(附則・改正法の附則を含む)を確認したところ、「退職」という語は22件使われている一方、「退社」という語は一度も登場しません(手元の労働基準法全文を機械検索、2026年10月8日再確認。第22条の条文も直接読んで確認)。
また、退職届の法的な根拠となる民法第627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)は、「解約の申入れ」という言葉で雇用契約の終了を定めており、この条文にも「退職」「退社」のどちらの言葉も直接は使われていません(同じく機械検索で確認)。つまり、退職届が根拠とする条文自体には「退職」という言葉さえ出てこないのですが、それでも実務上は「退職届」という名称が広く定着しています。
労働基準法の条文は「退職」で統一されています。書類の名称が「退職届」「退職願」となっているのは、こうした条文の言葉づかいに合わせたものではないか、と考えられます(理由を示す公的資料は確認できていません)。就業規則の言葉づかいは会社ごとに違うため、【各自確認:自社の就業規則で「退職」「退社」のどちらが使われているか。就業規則の閲覧先は総務・人事】。「退社届」という名称を使っても、会社を辞める意思表示としての効力自体が変わるわけではありませんが、就業規則や条文の言葉と揃っていたほうが、提出先にとって分かりやすいでしょう。
書く前のチェックリスト
履歴書・退職届を書く前に、次の点を確認してください。
- □ 履歴書の職歴欄で、「退社」「退職」のどちらかに書類全体で統一しているか
- □ 退職理由を書く場合、「一身上の都合により退職」のように「退職」で揃えているか
- □ 退職届・退職願の本文で、「退社」と「退職」が混在していないか
- □ 会社の就業規則が指定する書式(退職届・退職願の様式)があれば、それに従っているか
実体験:私の場合について
私は2026年6月30日付で退職しました(会社都合)。
次にやること
まず、自分がこれから書く書類(履歴書・退職届・退職願)を並べて、「退社」「退職」のどちらか一つに言葉を統一してください。 特に退職届・退職願では「退職」を使うのが一般的なので、迷ったときは「退職」で揃えておけば、書類間の言葉づかいで悩む必要がなくなります。
※本記事は2026年9月時点の一般的な言葉づかいと条文の確認にもとづく整理です。会社によっては就業規則で書式や言葉づかいを指定している場合があるため、実際に提出する前に自社の規定を確認してください。
出典(2026年9月24日確認) - 労働基準法第22条(退職時等の証明)(taishoku/laws/労働基準法.txt を直接確認。附則を含む全文で「退職」22件・「退社」0件;2026年10月8日に再確認) - 民法第627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)(taishoku/laws/民法.txt を直接確認。条文中に「退職」「退社」いずれの語も登場しない) - 「退社」の語釈:デジタル大辞泉(コトバンク「退社」、2026年10月確認) - 履歴書の書き方:doda、バイトル(各ページ、2026年10月8日に原文確認) - 実体験は運営者本人の事実(退職日・会社都合)のみ