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退職後の健康保険

ぜんたいの流れ
  1. 1任意継続と国保を試算
  2. 2扶養可否を確認
  3. 320日以内に任意継続申請
  4. 42年総額で比較
この記事の内容
  1. 結論:まず何をするか
  2. 選択肢は3つある
  3. 任意継続被保険者制度とは
  4. 国民健康保険とは
  5. 任意継続と国保、何を比べればいいか
  6. 見積もりの取り方
  7. 実体験について
  8. 次にやること

会社を辞めたあと、健康保険をどうするか決めかねている人向けの記事です。結論を先に言うと、選べる道は「任意継続」「国民健康保険」「家族の扶養に入る」の3つで、多くの場合はどちらが安いか実際に見積もりを取って比べるのが一番確実です。

「なんとなく任意継続のほうが良さそう」で決めないでください。

自分の状況に当てはめた金額を先に出してから選ぶ、という順番の話をします。

結論:まず何をするか

状況 やること 出どころ
退職前後で時間がある 協会けんぽ(または加入していた健保組合)に任意継続の保険料を、居住市区町村の窓口に国保の保険料を、それぞれ試算してもらう 各保険者の窓口案内
家族に健康保険加入者がいる 自分がその家族の扶養に入れないか先に確認する(年収見込みが130万円未満〈60歳以上・一定の障害がある人は180万円未満〉などの条件を満たせば保険料の負担がなくなる) 全国健康保険協会(協会けんぽ)公式サイト「被扶養者の認定における特例について」(2026年8月確認)。130万円未満の基準は昭和52年4月6日 庁保発第9号・保発第9号(厚生労働省公式法令データで確認)。被扶養者の定義そのものは健康保険法第3条7項
会社都合退職(解雇・倒産等)に当てはまる 国保の「非自発的失業者の軽減制度」が使える可能性がある。市区町村窓口で該当するか確認する 渋谷区公式サイト「非自発的失業者の国民健康保険料の軽減」ほか自治体公式案内(2026年8月確認)。根拠政令は国民健康保険法施行令第29条の7の2(厚生労働省公式法令データで確認)
退職から時間が経っている(20日を超えている) 任意継続は原則選べない。国保か家族の扶養の二択になる(保険者が正当な理由を認めた場合は20日を超えても受理されることがある) 協会けんぽ公式サイト「加入期間について」(2026年8月確認)。根拠条文は健康保険法第37条(申出期限)・第3条4項(加入要件)。いずれも厚生労働省公式法令データで確認
ここが要点

選べるのは任意継続・国民健康保険・家族の扶養の3つ。どれが安いかは人によって逆転します。任意継続には退職から20日という締切があるので、先に両方の金額を出してもらってください。

選択肢は3つある

会社を辞めると、在職中に入っていた健康保険(協会けんぽや会社の健康保険組合)の資格を失います。そのあと入る先は、次の3つのどれかです。

  1. 任意継続被保険者制度 — 辞めた会社の健康保険に、退職後も最長2年間自分で加入し続ける制度(協会けんぽ公式サイト「加入期間について」、2026年8月確認。加入期間の上限は健康保険法第38条、厚生労働省公式法令データで確認)
  2. 国民健康保険(国保) — 居住している市区町村が運営する健康保険に切り替える
  3. 家族の健康保険の扶養に入る — 配偶者や親などがすでに加入している健康保険の扶養家族になる。条件を満たせば保険料はかからない

このうち3番目が使えるなら、多くの場合は一番負担が軽くなります。ただし年収の見込みが130万円未満(60歳以上・一定の障害がある人は180万円未満)であることなどの条件があり(協会けんぽ公式サイト「被扶養者の認定における特例について」、2026年8月確認。130万円未満という数字の運用根拠は昭和52年4月6日 庁保発第9号・保発第9号、被扶養者の定義自体は健康保険法第3条7項。いずれも厚生労働省公式法令データで確認)、誰でも使えるわけではありません。なお2026年4月からは、この年収の見込み判定に「労働契約書(雇用契約書)に書かれた条件」をもとに判断する方法が加わっています。従来どおり給与明細・課税証明書などの実収入による判定も残っており、労働契約書ベースの判定はそれと並行する扱いです(協会けんぽ・日本年金機構公式案内、2026年8月確認)。

使えない、または使わない場合に、1番目と2番目のどちらにするかを比べることになります。

任意継続被保険者制度とは

辞めた会社で入っていた健康保険に、そのまま個人として加入し続ける制度です。ポイントは次の3つです。

  • 申請期限が短い — 資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内に手続きが必要です。20日目が土日・祝日にあたる場合は翌営業日まで延びます。保険者(協会けんぽ等)が正当な理由があると認めた場合は、20日を過ぎた申出でも受理されることがあります(協会けんぽ公式サイト「任意継続の加入条件について」、2026年8月確認。根拠は健康保険法第37条。厚生労働省公式法令データで「被保険者の資格を喪失した日から二十日以内にしなければならない。ただし、保険者は、正当な理由があると認めるときは、この期間を経過した後の申出であっても、受理することができる」の条文を確認済み)。退職直後に判断を迫られる制度だと理解しておく必要があります
  • 加入していた期間の条件がある — 資格喪失日の前日までに、継続して2ヶ月以上その健康保険(協会けんぽ・健保組合)に加入していたことが条件です(健康保険法第3条4項。厚生労働省公式法令データで確認)
  • 保険料は全額自己負担になる — 在職中は会社と折半していた保険料を、退職後は自分だけで全額負担します。単純に考えると、在職中の保険料の約2倍になるイメージです。ただし保険料には上限があり、給与が高かった人ほど「全額負担でも上限で頭打ちになる」ことがあります。保険料算定の基準となる標準報酬月額の上限は、令和8年度で32万円(令和7年度から変更なし)です(協会けんぽ公式サイト「令和8年度 任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について」2025年12月10日公表、2026年8月確認)

任意継続のメリットは、在職中と同じ健康保険を使い続けられるため、給付内容や窓口の勝手が変わらない点です。デメリットは全額自己負担であることです。以前は自分の都合だけでは途中でやめられませんでしたが、2022年1月の制度改正で「本人の申出」による資格喪失が可能になりました。申出が受理された月の翌月1日付でやめられます。このほか、就職して他の健康保険(船員保険を含む)の被保険者になったとき、保険料を納付期限までに納めなかったとき、任意継続被保険者になった日から2年を経過したとき、75歳になり後期高齢者医療制度の対象になったとき、本人が亡くなったときにも資格を失います(協会けんぽ公式サイト「資格の喪失について」、2026年8月確認。根拠は健康保険法第38条。厚生労働省公式法令データで各喪失事由の条文を確認済み)。

国民健康保険とは

居住する市区町村が運営する健康保険です。任意継続のような期限や加入期間の条件はなく、他の健康保険に入っていない人は基本的にここに入ることになります。

  • 保険料は前年の所得を基準に計算される — 退職した年の保険料は、前年(在職中でまだ収入があった年)の所得をもとに計算されるため、「無職になったのに保険料が高い」と感じやすい仕組みです
  • 保険料率は市区町村ごとに違う — 同じ所得でも住んでいる市区町村によって保険料が変わります。全国一律の金額は無く、自分の市区町村の料率で計算するしかありません
  • 軽減制度がある — 離職時に65歳未満で、会社都合退職(解雇・倒産・雇い止めなど、雇用保険法第23条2項の「特定受給資格者」に該当する場合)や、正当な理由がある自己都合退職(雇用保険法第13条3項の「特定理由離職者」に該当する場合)は、保険料の計算上、前年の給与所得を実際の30%とみなして計算する軽減制度があります(給与所得以外の事業所得・不動産所得などは軽減の対象外)。軽減される期間は、離職日の翌日が属する月からその翌年度末までです。根拠は国民健康保険法施行令第29条の7の2(渋谷区公式サイト「非自発的失業者の国民健康保険料の軽減」、2026年8月確認。同様の案内は他の市区町村でも確認。条文根拠は厚生労働省公式法令データで確認済み)。単純な自己都合退職で「特定理由離職者」に該当しない場合は対象外です

国保のメリットは加入手続きの縛りが緩いことと、会社都合退職なら軽減制度が使える可能性がある点です。デメリットは、前年所得が高いと保険料も高く出やすいことです。

任意継続と国保、何を比べればいいか

比較項目 任意継続 国民健康保険
保険料の基準 退職時の標準報酬月額(上限は令和8年度32万円) 前年の所得(市区町村ごとの料率)
加入手続きの期限 資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内 特になし(未加入期間があると後から遡って請求されることがある。一般的には2年〈国民健康保険法第110条1項〉、自治体が「国民健康保険税」として賦課している場合は最長5年〈地方税法第18条1項〉。金額の請求方式は自治体で異なるため、詳しくは居住市区町村の窓口で確認)
保険料の負担者 全額自己負担(会社負担分がなくなる) 全額自己負担(もともと全額自己負担の制度)
会社都合退職の軽減 (一次情報は確認できず)協会けんぽ公式サイトの「健康保険任意継続制度についてよくあるご質問」一覧(加入条件・加入手続き・加入期間・保険料・納付方法・資格の喪失など10カテゴリ、2026年8月確認)を確認したが、会社都合退職者向けの保険料軽減・減免についての項目は無い 非自発的失業者の軽減制度がある(対象は雇用保険法上の特定受給資格者・特定理由離職者、前年給与所得を30%とみなす。国民健康保険法施行令第29条の7の2)
扶養家族の扱い 家族を扶養に入れても保険料は変わらない。協会けんぽ公式サイトの保険料計算式(退職時の標準報酬月額×居住都道府県の保険料率、2026年8月確認)に扶養家族の人数は変数として含まれていない 家族の人数分、原則として保険料が加算される
途中でやめられるか 2022年1月の制度改正後は、本人の申出でやめられる(申出受理月の翌月1日付) いつでも脱退可能(他の健康保険に入った場合など)

この表からわかるのは、「扶養家族が複数いる人」は任意継続のほうが有利になりやすく、「会社都合退職で、かつ前年所得が高くない人」は国保の軽減制度のほうが有利になりやすい、という傾向です。

ただしこれはあくまで一般的な傾向です。実際にどちらが安いかは、保険料率・標準報酬月額・前年所得の組み合わせで変わります。

両方の見積もりを取って、数字で比べてください。

見積もりの取り方

  1. 任意継続の保険料 — 加入していた協会けんぽの支部、または会社の健康保険組合に、退職時の標準報酬月額をもとにした保険料額を問い合わせます。協会けんぽは公式サイトで都道府県ごとの保険料額表を公開しています(協会けんぽ公式サイト「都道府県毎の保険料額表」、2026年8月確認)
  2. 国保の保険料 — 居住する市区町村の国民健康保険担当窓口に、前年の所得(源泉徴収票などが手元にあるとスムーズです)を伝えて試算を依頼します。会社都合退職の場合は、軽減制度の対象になるかどうかもあわせて確認します
  3. 両方の金額を並べて比べる — 1年間(または任意継続の場合は最長2年間)でどちらが総額で安くなるかを見て決めます。任意継続の保険料は加入から原則2年間、金額が据え置かれます(40歳・65歳到達で介護保険料の扱いが変わる場合、保険料率・標準報酬月額の上限が改定された場合、居住都道府県が変わった場合を除く。協会けんぽ公式サイト「保険料について」、2026年8月確認)。

一方、国保は毎年の前年所得で保険料が再計算されるため、「1年目は任意継続より高くても、2年目以降は前年所得が下がって国保のほうが安くなる」といった逆転が起こり得ます。単年ではなく2年通しの総額で比べることをおすすめします

実体験について

私の場合

私は2026年6月30日に会社都合で退職しました。実際に任意継続と国民健康保険を比べた結果、国民健康保険の非自発的失業者の軽減制度が使えたことで、国民健康保険のほうが任意継続より保険料が安くなりました(具体的な金額は、前年の年収が逆算できてしまうためこの記事には書きません)。

ただし国民健康保険は世帯の扶養家族が増えるほど保険料が上がる仕組みです。そのため、子どもは妻が加入している健康保険の扶養に入れる形にしました。

自分の場合にどちらが安いかは、年齢・扶養家族の人数・前年所得の組み合わせで変わります。上の比較表と「見積もりの取り方」を参考に、必ず自分の数字で確認してください。

印刷して書き込める版が欲しい人へ:「退職の手続きチェックリスト」(PDF・A4・4枚・500円)

次にやること

退職が決まったら、まず加入していた健康保険(協会けんぽや健保組合)に任意継続の保険料を、居住市区町村に国保の保険料を、それぞれ問い合わせて見積もりを取ることです。任意継続は資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内という期限があるため、迷っている時間はあまりありません。家族の扶養に入れる可能性がある人は、その確認を最優先で行ってください。


※本記事は2026年8月時点の情報整理です。任意継続被保険者制度の申請期限・加入期間の上限・保険料の算定基準(標準報酬月額の上限額)・資格喪失事由、国民健康保険の非自発的失業者軽減制度の対象要件と軽減率、扶養認定の年収要件は、協会けんぽ公式サイト・居住市区町村(渋谷区・姫路市ほか)公式サイトで2026年8月に確認済みです。根拠となる法令・政令の条番号(健康保険法第3条4項・第37条・第38条、国民健康保険法施行令第29条の7の2、国民健康保険法第110条1項、地方税法第18条1項、昭和52年4月6日 庁保発第9号・保発第9号)は、厚生労働省の公式法令データベースで原文を照合しています。保険料率は市区町村・年度によって異なるため、正確な金額は必ず自分の加入先の窓口に直接お問い合わせください。心身の不調がある場合は、手続きより先に医師・産業医にご相談ください。

出典(2026年8月確認) - 全国健康保険協会(協会けんぽ)公式サイト「健康保険任意継続制度(退職後の健康保険)について」よくあるご質問(加入期間・加入条件・保険料・資格の喪失について、全10カテゴリ) https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat650/ / https://www.kyoukaikenpo.or.jp/faq/voluntary_continuation/ - 全国健康保険協会(協会けんぽ)公式サイト「令和8年度 任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について」(2025年12月10日公表) https://www.kyoukaikenpo.or.jp/news/r07_dec/1259.html - 全国健康保険協会(協会けんぽ)公式サイト「被扶養者の認定における特例について」「都道府県毎の保険料額表」 - 渋谷区公式サイト「非自発的失業者の国民健康保険料の軽減」、姫路市公式サイト「未加入期間の国民健康保険料」ほか、同様の案内を出している複数市区町村の公式サイト - 健康保険法(任意継続被保険者の資格・申請期限・保険料・被扶養者の定義)第3条4項・第3条7項・第37条・第38条:厚生労働省 法令データベース https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84024000&dataType=0 で原文照合済み - 国民健康保険法施行令第29条の7の2(非自発的失業者に係る軽減制度)、国民健康保険法第110条1項(保険料の消滅時効2年):厚生労働省 法令データベースで確認 - 地方税法第18条1項(国民健康保険税として賦課する場合の消滅時効5年) - 昭和52年4月6日 庁保発第9号・保発第9号「収入がある者についての被扶養者の認定について」:厚生労働省 法令データベース https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb0189&dataType=1

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退職届を受け取る側に長くいて、そのあと自分が出す側になりました

人を採用し、辞めていく人を見送る立場に長くいました。退職代行から電話を受けたこともあります。そして自分が辞める番になり、失業保険の申請・ハローワークでの手続き・健康保険の切り替え・住民税の直接納付・保育園の継続手続きまで、すべて自分で通りました。両側を見た人間が書いています。「代行を使ったら会社はどう思うのか」に答えられるのは、受け取ったことがあるからです。

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