転職先の入社日まで
- 1退職日翌日に喪失
- 2選択肢を比較
- 3期限内に申請
- 4入社日に切替
退職日の翌日、会社の健康保険証は使えなくなる。次の会社の入社日まで1週間でも1ヶ月でも、その間は「無保険」ではなく、いずれかの保険に入り直す必要がある(国民皆保険制度のため)。この記事は、その空白期間をどう埋めるか、3つの選択肢の比較と、実際にいくらかかるかの計算例を出す。
退職日の翌日から保険証は使えなくなる
会社を辞めると、健康保険の被保険者資格は退職日の翌日に失う(健康保険法第36条)。「有給消化中だから」「離職票が届くまでは」といった猶予は無い。保険証は資格喪失日以降は使えず、うっかり病院で出すと、あとで会社や健保組合から医療費の返還を求められることがある。
だから、次の3つのどれかに、資格喪失日までに切り替える必要がある。
- 家族の健康保険の扶養に入る
- 今の会社の健康保険を任意継続する
- 住んでいる市区町村の国民健康保険に入る
3つの選択肢、何で選ぶか
条件に当てはまるなら扶養が一番安い。当てはまらない人は、任意継続と国保の保険料を比べて決めることになる。
| 選択肢 | 主な条件 | 保険料の目安 | 手続き期限 |
|---|---|---|---|
| 家族の扶養 | 年収見込み130万円未満(60歳以上または一定の障害がある場合は180万円未満、19歳以上23歳未満は150万円未満)・同居等の条件あり(協会けんぽの認定基準。健康保険組合ごとに独自の上乗せ基準がある場合も) | 0円(扶養する家族の保険料に含まれる) | 扶養する家族の会社を通じて随時 |
| 任意継続 | 退職前に継続して2ヶ月以上の被保険者期間があること(健康保険法第3条第4項) | 在職中の約2倍(会社負担分が無くなるため) | 退職日の翌日から20日以内(健康保険法第37条) |
| 国民健康保険 | 上記2つに当てはまらない全員が対象 | 前年の所得に応じて市区町村ごとに算定 | 退職日の翌日から14日以内(国民健康保険法施行規則第2条。全国共通のルールで自治体差は無い) |
家族の扶養に入れる人はここで検討終了でよい。扶養に入れない、または扶養より安くしたい人だけ、次の計算例を見てほしい。
空白期間の保険料はいくらになる?【計算例】
前提を1つ置く。9月30日付で退職、次の会社の入社日が10月16日、退職前の月収(標準報酬月額に近い額面)が30万円だったケースで考える。
任意継続を選んだ場合
- 在職中の健康保険料率はおおむね月収の約10%(労使折半)。協会けんぽの全国平均は令和7年度10.00%、令和8年度9.90%で、都道府県・年度によって変わる(全国健康保険協会公表資料、2026年9月確認)
- 在職中は会社と折半なので本人負担は月額約1万5,000円
- 任意継続になると会社負担が無くなり、全額自己負担になる。同じ標準報酬月額なら月額は約2倍の3万円前後
- 任意継続は月単位の制度で、日割りにはならない。10月分の資格を取れば、10月16日に新しい会社の保険に切り替わっても10月分の保険料はまるごと発生する
- このケースでの負担額の目安: 約3万円(10月分の1ヶ月分)
国民健康保険を選んだ場合
- 保険料は前年の所得と、住んでいる市区町村の料率で決まる。全国一律の計算式は無いため、正確な額は住民票のある市区町村の窓口かWebの試算ツールでしか出せない
- 前年の年収にもよるが、任意継続より高くなる人も安くなる人もいる。「前職の給与が高かった年に辞めた場合は任意継続の方が安いことが多い」という傾向を紹介する解説記事は多いが、これを裏付ける厚生労働省・協会けんぽの統一見解は見当たらない(2026年9月確認)。個人の所得や住んでいる市区町村の料率で結果は変わるため、傾向を鵜呑みにせず次の方法で自分の場合を確認する必要がある
計算の考え方としては、「任意継続の見込み額」と「市区町村の国保試算」を両方出してから比べるのが唯一の確実な方法になる。任意継続は今の健保組合か協会けんぽの窓口に電話すれば、在職中の標準報酬月額から即日回答してもらえる。
手続き前チェックリスト
空白期間を埋める手続きは、どれを選んでも「退職後すぐ」が期限になる。動く前に以下を確認する。
- □ 退職日と、次の会社の入社日(保険の資格取得日)を書類やメールで確認した
- □ 家族の扶養に入れる年収条件(原則130万円未満。健保組合によって独自の基準を上乗せする場合あり)に当てはまるか、扶養家族側の会社に確認した
- □ 任意継続を選ぶ場合、在職中の健康保険証の記号番号か、健保組合・協会けんぽの支部の連絡先を控えた
- □ 国民健康保険を選ぶ場合、退職日の翌日以降に住民票のある市区町村の窓口へ行く日程を決めた(郵送や電子申請に対応している自治体もあるため、先に自治体のサイトで確認する)
- □ 会社から「健康保険資格喪失証明書」(国保の加入手続きに必要)をいつ受け取れるか、退職前に総務・人事へ確認した
最後のチェックが一番見落とされやすい。国保の窓口では、資格喪失証明書か離職票が無いと手続きが進まないことが多い。退職前に「いつ、どうやって受け取れるか」を聞いておくとよい。
実際の体験から
自分は2026年6月30日付で会社都合により退職した(雇用保険受給資格者証に離職理由コードの記載あり)。会社都合退職の場合、国民健康保険には前年の給与所得を100分の30とみなして保険料を計算する軽減措置があり(国民健康保険法施行令第29条の7の2)、実際にこの軽減が使えたため、自分のケースでは国民健康保険の方が任意継続より保険料が安くなった。ただし国民健康保険は世帯の扶養家族が増えるほど保険料が上がる仕組みのため、子どもは配偶者(妻)の健康保険の扶養に移した。この軽減措置は会社都合・雇い止めなどの非自発的な離職者向けで、自己都合退職では使えないので、自分がどちらに当たるかを離職票や雇用保険受給資格者証で先に確認しておくとよい。
次にやること
退職日と入社日が両方分かっている人は、今すぐ任意継続の保険料(今の健保組合・協会けんぽへ電話1本)と、国民健康保険の試算(市区町村の窓口かWeb試算)の両方を出して比べる。まだ入社日が決まっていない人は、空白が伸びる前提で、まず市区町村の国民健康保険の手続きだけ先に済ませておく。
出典(2026年9月14日調査)
- 健康保険法(資格喪失日は退職日の翌日=第36条、任意継続の申出期限20日以内=第37条) https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC0000000070(e-Gov法令検索で条文を確認)
- 令和8年度保険料率のお知らせ|全国健康保険協会 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/lp/2026hokenryou/(協会けんぽの全国平均保険料率が令和7年度10.00%→令和8年度9.90%であることを確認。本文の数字と一致)
- 国民健康保険法施行令(非自発的失業者の軽減、前年給与所得を100分の30とみなす=第29条の7の2) https://laws.e-gov.go.jp/law/333CO0000000362(e-Gov法令検索で条文を確認)
- 国民健康保険法施行規則(資格取得の届出は14日以内=第2条) https://laws.e-gov.go.jp/law/333M50000100053(e-Gov法令検索で条文を確認)