休職中に有給休暇は使えるか
- 1有給の残日数を確認
- 2会社に扱いを確認
- 3休職を申請
- 4傷病手当金を申請
- 5毎月の収支を組む
この記事の内容
休職に入る(または入っている)けれど、給料が止まるのが不安で「残っている有給を使えないか」と考えている人に向けた記事です。 結論から言うと、休職中に有給を使うのは原則できません。ただし、休職に入る「前」の使い方と、給料が出ない期間を埋める別の手段はあります。 この記事では、有給が使えない理由、使える場面、使ったときの金額の差、給料が出ない期間の埋め方を順に整理します。
休職中の有給は原則使えない。理由は「休みの日に休みは取れない」から
有給休暇(年次有給休暇)は、本来働く義務がある日に、給料をもらったまま休める制度です(労働基準法39条)。
休職は、会社が「この期間は働かなくていい」と決めた状態です。働く義務がもともと無い日には、有給で「休む」対象がありません。だから休職中は、有給を使う余地がないと考えます。法令に直接の条文はありませんが、行政の通達(昭和31年2月13日基収第489号)が「休職により労働の義務が免除された人には、年休を請求する余地がない」という趣旨を示しています。(通達の原文は厚生労働省のサイトで見つけられず、事件名・番号・結論は複数の社労士の解説で一致していることを確認しました。2026年9月確認)
| 状況 | 有給を使えるか | 理由 |
|---|---|---|
| 休職に入る前の出勤予定日 | 使える | 働く義務がある日だから |
| 休職期間中 | 原則使えない | 働く義務が免除されている |
| 休職から復職した後 | 使える | 働く義務が戻るから |
| 会社と合意して休職中に「充てる」 | 会社次第 | 法律上の権利ではなく、会社の運用による |
「有給が残っているのに使えない」と聞くと、悔しく感じると思います。ただ、使えないだけで、消えるわけではありません。
有給は消えない。ただし2年で時効になる
休職中に使わなかった有給は、復職後にそのまま使えます。有給の請求権は、付与された日から2年で時効になります(労働基準法115条。厚生労働省の「確かめよう労働条件」も、年休の消滅時効は2年のままと説明しています。2026年9月確認)。
注意したいのは次の2点です。
- 休職が長引くと、古い分から2年の期限が来て消えていく
- 休職中に退職すると、残っている有給は退職日をもって消える。労働基準法39条には、未消化分を会社が買い取る決まりはありません(手元の条文全文で確認)。法定日数を超える分の買い上げは違法ではないとされ(和歌山労働局の案内)、買い取る会社もあります【各自確認:就業規則や人事への問い合わせで、未消化分の買い取りの有無を確認】
休職期間が長くなりそうなら、残日数と付与日を先に確認しておくと、あとで慌てません。
有給を使える場面は3つある
調査した範囲で、実際に有給を使える場面は次の3つです。
| 場面 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| ① 休職に入る前 | 体調が悪い日から休職開始日までの出勤予定日に使う | 医師の診断と会社の休職の決定が出るまでの「つなぎ」になる |
| ② 会社が認めた場合 | 就業規則や会社の判断で、休職期間の一部を有給扱いにする | 権利ではない。会社が「できる」と言った場合だけ |
| ③ 復職後 | 通院や、復職直後の体慣らしに使う | 使い切っていると、復職後に休める手段が減る |
①が、いちばん現実的です。休職の手続き(診断書の提出、会社の承認)にかかる日数は会社ごとに違います。その間を有給でつなぐ人がいます【各自確認:就業規則の休職の項と、人事への問い合わせ(下の文例の2・3)で確認】。
有給を使うと傷病手当金は出ない。どちらが得かを計算例で見る
休職中の収入の柱は、健康保険の「傷病手当金」です(健康保険法99条)。仕事を休んで給料が出ないとき、支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均を30で割った額の、3分の2が1日分として支給されます(健康保険法99条2項。協会けんぽの案内も同じ)。
ただし、有給を使った日は給料が出ているので、その日の傷病手当金は出ません。給料が出る日は手当金を支給せず、給料が手当金の額より少ないときだけ差額が支給されます(健康保険法108条1項。手元の条文全文と協会けんぽの案内で確認)。なお、手当金が出るための「待期」(連続する3日間)には、有給休暇の日も数えられます(協会けんぽ)。
計算例:有給を10日使う場合と使わない場合
月給30万円の人が、10日間休むとします。
| 項目 | 有給を使う日 | 使わない日(傷病手当金) |
|---|---|---|
| 1日あたりの入金 | 15,000円 | 6,667円 |
| 10日分 | 150,000円 | 66,670円 |
差額は 150,000円 − 66,670円 = 83,330円です。
前提(この金額は仮置きです): - 月給30万円、1か月の所定労働日20日 → 有給1日 = 300,000 ÷ 20 = 15,000円 - 直近12か月の標準報酬月額の平均が30万円 → 日額 300,000 ÷ 30 × 2/3 ≒ 6,667円(50銭以上は1円に切り上げ。健康保険法99条2項) - 待期期間(最初の連続3日)、土日、社会保険料、税金は入れていない - 有給1日の金額の出し方は、就業規則などで、平均賃金・所定労働時間働いた場合の通常の賃金・(労使協定があれば)標準報酬日額のいずれかに決めることになっている(労働基準法39条9項)。この例は通常の賃金で計算した
つまり、有給を使うと、その日は手当金よりも手元に入るお金が多くなります。ただ、これは総額の比較です。給料からは社会保険料や税金が引かれます。一方、傷病手当金は「保険給付として受けた金品には租税その他の公課をかけられない」と決められているので(健康保険法62条。手元の条文全文で確認)、手取りの差は83,330円より小さくなります。
使い切ってよいかは別の話
金額だけ見れば、有給を先に使うほうが手元に入るお金は増えます。一方で、次の点は数字に出てきません。
- 復職後に通院や不調の日に休める手段がなくなる
- 会社によっては、有給を先に使った分だけ休職の開始日があとになることがある【各自確認:就業規則の休職の項で、開始日が診断日・申請日・承認日のどれで決まるかを確認】
- 傷病手当金の申請書には会社の記入欄があり、休んだ日の給料の有無を会社が書く(給料が出た日は手当金が出ない、という上の仕組みのため)【各自確認:申請書の入手先(協会けんぽ・健保組合のサイト)で書式を見て、会社の記入にかかる日数を人事に聞く】
「全部使う」でも「全部残す」でもなく、間の数日を使う人もいます。どれが正解というものはありません。
給料が出ない期間の埋め方は5つある
休職中の収入を埋める手段を、調査した範囲で整理します。
| 手段 | 対象・条件 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 傷病手当金 | 会社の健康保険(協会けんぽ・健保組合)に入っている人。国民健康保険は原則対象外(国保の傷病手当金は、市町村などが条例・規約で決める任意の給付。国民健康保険法58条2項、政府の答弁書) | 直近12か月の標準報酬月額の平均÷30の約3分の2。支給は通算1年6か月まで(健康保険法99条4項) |
| 会社独自の休職給・見舞金 | 就業規則に定めがある会社 | 会社による |
| 休職前の有給消化 | 休職に入る前の出勤予定日 | 通常の賃金1日分 |
| 医療費の軽減(自立支援医療の精神通院医療) | 通院による精神医療を続ける必要がある人(対象の病気や手続きは、お住まいの自治体の窓口で確認) | 自己負担は1割。所得に応じて月ごとの上限あり(厚生労働省の資料。2026年9月確認) |
| 公的な貸付(社会福祉協議会の生活福祉資金など) | 低所得世帯(おおむね住民税非課税程度)・障害者世帯・高齢者世帯(厚生労働省) | 世帯の状況による【各自確認:お住まいの市区町村の社会福祉協議会で、自分の世帯が対象か、失業や休職で使える資金(総合支援資金など)があるかを確認】 |
もし仕事が原因のけがや病気なら、傷病手当金ではなく労災保険の「休業補償給付」の対象になる場合があります(厚生労働省の案内。仕事が原因の傷病で、療養のため働けず賃金を受けない日の4日目から。2026年9月確認)。この場合は会社の担当者か労働基準監督署に、労災かどうかを先に聞いてください。
休職中も出ていくお金を先に書き出す
給料が止まっても、次の支払いは続きます。
- 健康保険料・厚生年金保険料(会社を通して本人負担分を払うことが多い。払い方は会社による)
- 住民税(前の年の収入にかかるので、休職に入っても請求が来る)
- 家賃・光熱費・通信費
傷病手当金は、協会けんぽの場合、申請書を受け付けてから、審査の結果支払える場合は10営業日以内に支払うとされています(協会けんぽの案内。2026年9月確認)。ただし、この日数は申請書が協会けんぽに届いてからの数え方です。医師と会社の記入を待つ間は含まれず、健保組合は組合ごとに違います【各自確認:自分の健康保険の窓口で、申請から入金までの日数を確認】。最初の1〜2か月分の生活費は、入金がない前提で、貯金や有給でつなぐ前提で組むと安全です(この月数は当サイトの目安で、公的な基準ではありません)。
会社に聞くときの文例とチェックリスト
有給と休職の扱いは会社によって違います。人事や上司に、書面(メール)で聞いておくと、あとで言った言わないになりません。
文例:人事への問い合わせメール
件名:休職と有給休暇の取り扱いについてのご確認(氏名)
人事ご担当者様
お世話になっております。○○部の○○です。
このたび、医師から休職が必要との診断を受けました。
休職の手続きを進めるにあたり、次の点を教えてください。
1. 現在の私の有給休暇の残日数と、それぞれの付与日
2. 休職に入る前に、残りの有給を使うことは可能か
3. 休職期間中に有給を充てる運用の有無
4. 傷病手当金の申請書類の入手方法と、会社側の記入にかかる日数
5. 休職期間中の社会保険料の支払い方法
お忙しいところ恐れ入りますが、ご回答をお願いいたします。
体調がつらいときは、この文をそのまま貼って送るだけで構いません。電話や面談が負担なら、メールで済ませることを伝えて大丈夫です。
チェックリスト:休職に入る前に確かめること
□ 有給の残日数と、それぞれの付与日を確認した □ 就業規則で休職制度(期間・手続き・休職中の給与)を確認した □ 自分が入っている健康保険が、協会けんぽ・健保組合・国民健康保険のどれか確認した □ 傷病手当金の申請書類の入手方法を確認した □ 休職中の社会保険料の払い方を確認した □ 最初の2か月分の生活費の見通しを書き出した
全部そろっていなくても、休職に入れないわけではありません。分かるところから1つずつで大丈夫です。
「休んでいいのか」と迷うあなたへ
有給を使えるかを調べている人は、たいてい、お金の心配と「休んでいいのか」という気持ちの両方を抱えています。
休職は、ずるでも甘えでもありません。医師が必要と判断した休みは、制度として用意されている手段です。給料が止まる不安があるのは当たり前で、その不安を抱えたまま調べているだけで、十分に向き合っています。
心身の不調については、この記事では判断しません。休むかどうか、どのくらい休むかは、主治医や産業医に相談してください。
もし休職中に「このまま会社に戻るのは難しい」と感じたときは、退職という選択肢もあります。その場合も、傷病手当金の扱いや残っている有給が消える点を先に確認しておくと、損を減らせます。
次にやること:今日、有給の残日数を確認する
今日やることは1つだけです。給与明細か勤怠システムで、有給の残日数と、それぞれの付与日を確認してください。
残日数が分かれば、休職前につなぎに使うのか、復職後のために残すのかを決められます。分からなければ、上の文例の1番だけを人事に送れば足ります。