失業保険受給中に入院したら
- 疾病・負傷のため継続して14日以内働けない場合は、退院後の次の認定日に医師の証明書を提出すれば通常どおり基本手当の認定を受けられる(雇用保険法第15条第4項第1号・同法施行規則第25条)
- 15日以上になると「傷病手当」(基本手当と同日額)に切り替わり、所定給付日数の範囲内で支給される(同法第37条・同法施行規則第63条・第64条)
- 30日以上働けない場合は、受給期間の延長を申し出て、治ってから基本手当の残り日数を受け取ることも選べる(同法第20条第1項・同法施行規則第31条。加算後の受給期間は最大4年)
- 傷病手当支給申請書は代理人提出・郵送が認められている(ハローワークインターネットサービスで確認)受給期間延長の申請も郵送・代理人(委任状が必要)で可能(厚生労働省Q&A)
- 1入院が分かる
- 2日数を見立てる
- 3短期は証明書
- 4長期は延長申請
- 5退院後に再開
この記事の内容
失業保険(基本手当)を受け取っている最中に、病気やケガで入院してしまった。次の認定日にハローワークへ行けないけれど、手当はどうなるのか——。この記事では、働けない日数によって変わる3つの対応(証明書による通常の認定・傷病手当・受給期間の延長)を、雇用保険法の条文にそって整理します。
- 認定日に入院していてハローワークに行けない。手当を打ち切られるのではと不安
- 「傷病手当」と「受給期間の延長」、何がどう違うのか分からない
- 家族が代わりに手続きできるのか、退院してからでは間に合わないのか知りたい
結論:入院日数で対応が3パターンに分かれる
| 働けない日数 | 対応 | 根拠 |
|---|---|---|
| 14日以内 | 通常の基本手当のまま。退院後の次の認定日に医師の証明書を提出してまとめて認定 | 雇用保険法第15条第4項第1号 |
| 15日以上 | 傷病手当(基本手当と同額)に切り替わり、所定給付日数の範囲内で支給 | 雇用保険法第37条第1項 |
| 30日以上 | 受給期間の延長を申し出て、治ってから残り日数を受け取る道も選べる(最大4年) | 雇用保険法第20条第1項 |
入院したからといって、その場で給付が打ち切られるわけではありません。どの対応になるかは「働けない期間が何日続くか」で決まる仕組みです。まずは主治医に「あとどれくらい働けなさそうか」の見立てを聞くところから始めてください。
14日以内の入院:証明書で通常どおり認定を受けられる(第15条第4項第1号)
雇用保険法第15条第4項は、次のように定めています。
受給資格者は、次の各号のいずれかに該当するときは、前二項の規定にかかわらず、厚生労働省令で定めるところにより、公共職業安定所に出頭することができなかつた理由を記載した証明書を提出することによつて、失業の認定を受けることができる。 一 疾病又は負傷のために公共職業安定所に出頭することができなかつた場合において、その期間が継続して十五日未満であるとき。
入院や自宅療養が14日以内で終わりそうなら、無理に認定日に出頭する必要はありません。退院して動けるようになってから次の認定日に医師の証明書を持って行けば、行けなかった日の分もまとめて認定してもらえます。
手続きの詳細は雇用保険法施行規則第25条に定められています。証明書に必要な記載事項は次の4つです。
- 受給資格者の氏名及び年齢
- 傷病の状態又は名称及びその程度
- 初診の年月日
- 治ゆの年月日
この4項目が入った様式が求められるため、退院が近づいたら主治医またはハローワーク窓口に事前確認しておくと、手続きがスムーズです。
15日以上の入院:傷病手当に切り替わる(第37条)
働けない期間が継続して15日以上になると、通常の基本手当ではなく「傷病手当」という別の給付に切り替わります(ハローワークインターネットサービス「基本手当について」2026年9月25日確認)。雇用保険法第37条第1項は次のように定めています。
傷病手当は、受給資格者が、離職後公共職業安定所に出頭し、求職の申込みをした後において、疾病又は負傷のために職業に就くことができない場合に、(略)期間内の当該疾病又は負傷のために基本手当の支給を受けることができない日(略)について、(略)日数に相当する日数分を限度として支給する。
ポイントは次の3つです。
- 日額は基本手当と同じ(第37条第3項)。もらえる1日あたりの金額そのものは変わりません
- 支給される日数の上限は「所定給付日数からすでに基本手当を受け取った日数を差し引いた日数」(第37条第4項)。傷病手当を受け取った日数分だけ、残りの基本手当日数は減っていきます
- 受け取った日数は、基本手当を受け取ったものとして数えられます(第37条第6項)
- 健康保険の傷病手当金や労災の休業補償などを受けられる日は、傷病手当は支給されません(第37条第8項)。給付制限の期間中も支給されません(同条第5項)
- 認定を受けるタイミングは、働けない理由がやんだ後における最初の支給日まで(口座振込を選んでいる場合は、その支給日の直前の認定日まで)。雇用保険法施行規則第63条
申請は「傷病手当支給申請書」(様式第二十二号)に受給資格者証を添えて行います(同規則第63条第2項)。この申請書は本人以外の代理人による提出、または郵送でも提出できます(同ページ確認)。本人が動けなくても、家族が窓口に持って行く手段があります。
なお、働けない期間が1ヶ月を超える場合は、退院を待たずに期間中にハローワーク所長が定める日に受け取れる扱いもあります(同規則第64条)。長期入院になりそうなときはこの点も確認してください。
30日以上の入院:受給期間延長という選択肢(第20条第1項)
働けない期間が30日以上に及びそうなときは、傷病手当をそのまま受け取り続ける以外に、「受給期間の延長」を申し出るという選択肢があります。
雇用保険法第20条第1項は、受給期間(基本手当を受け取れる期間。原則は離職日の翌日から1年間)について、次のように定めています。
(略)当該期間内に妊娠、出産、育児その他厚生労働省令で定める理由により引き続き三十日以上職業に就くことができない者が、厚生労働省令で定めるところにより公共職業安定所長にその旨を申し出た場合には、当該理由により職業に就くことができない日数を加算するものとし、その加算された期間が四年を超えるときは、四年とする。
「その他厚生労働省令で定める理由」には疾病・負傷も含まれます(同ページ確認)。申し出れば、働けなかった日数分だけ受給期間そのものが後ろにずれ、合計は最大4年まで延びます。条文は「加算された期間が4年を超えるときは4年とする」と定めており、厚生労働省のQ&Aでは「受給期間(1年)に加えることができる期間は最大3年間」と説明されています(1年+3年=4年。2026年10月確認)。
傷病手当と受給期間延長、どちらを選ぶか
同じ「30日以上働けない」状況でも、次のように仕組みが違います。
| 傷病手当を受け取る | 受給期間の延長を申し出る | |
|---|---|---|
| 入院中のお金 | 基本手当と同額を受け取れる | その期間は受け取らない |
| 所定給付日数への影響 | 受け取った日数分だけ消費する | 消費せずに温存できる |
| 退院後 | 残りの所定給付日数だけ基本手当を受け取れる | 治ってから、所定給付日数をまるごと使って基本手当を受け取れる |
入院中の生活費がどうしても要るなら傷病手当、退院後の求職活動にできるだけ長く基本手当を残しておきたいなら受給期間の延長、という考え方で選ぶことになります。厚生労働省のQ&Aにも、病気やけがの期間が30日以上になると思われる場合は「傷病手当ではなく、受給期間の延長申請をしていただくことも可能」とあります(2026年10月確認)。ただし、延長したあとに同じ理由で傷病手当を申請した場合、支給日数は「延長がなかったとした場合の日数」が上限とされています(ハローワークインターネットサービス「基本手当について」)。入院の見込み期間と手元の資金状況をあわせて、主治医とハローワークの双方に相談してから決めてください。
受給期間延長の申請手順
受給期間の延長を申し出る場合の手順です(雇用保険法施行規則第31条)。
- 主治医に証明書を書いてもらう:「30日以上、引き続き働くことができない」ことを証明できる書類(医師の証明書)を用意する
- 受給期間延長等申請書(様式第十六号)を用意する:ハローワーク窓口またはハローワークインターネットサービスで入手する
- 受給資格者証を添える:受給資格者証の交付を受けていない場合は離職票を添える
- 管轄のハローワークに提出する:提出できるのは、働けない状態が30日続いた日の翌日からです。条文上の期限は「その翌日から、基準日の翌日起算で4年を経過する日まで」(加算された期間が4年に満たないときは、その期間の最後の日まで。施行規則第31条第3項)とかなり長めですが、ハローワークの案内(北海道労働局)では「30日継続した日の翌日から1か月以内」の提出を求めています。遅れると所定給付日数を使い切れなくなるおそれがあるため、退院を待たず、30日を超えた時点で早めに動いてください
- 受給期間延長等通知書を受け取る:提出後、ハローワークから通知書が交付される
提出方法は、窓口持参のほか、郵送または代理人(委任状が必要)でも可能です(厚生労働省「Q&A」Q16、2026年10月確認)。傷病手当支給申請書も代理人提出・郵送が認められています。委任状の様式や必要書類は管轄ハローワークで異なることがあるため、事前に電話で確認してください。
入院が分かったらすぐ確認すること(チェックリスト)
入院・自宅療養が決まったら、次の項目を早めに確認してください。
- □ 主治医に、あとどれくらい働けなさそうか見立てを聞く(14日以内/15日以上/30日以上のどこか)
- □ 次の認定日がいつかを受給資格者証またはハローワークの通知で確認する
- □ 管轄のハローワークに電話し、入院で認定日に行けない旨を伝え、必要書類を確認する
- □ 家族に、受給資格者証・離職票・本人確認書類の保管場所を伝えておく
- □ 30日以上かかりそうなら、傷病手当と受給期間延長のどちらにするか早めに決める
家族が代理で書類を提出するときの文例
本人が入院中で動けず、家族がハローワークの窓口へ書類を持って行く場合に、申請書へ添える一筆の文例です。そのまま書き写して使えます。
公共職業安定所 ご担当者様
私は、貴所において雇用保険の基本手当を受給しております
〇〇 〇〇(受給資格者氏名)の家族(続柄:〇〇)、△△ △△です。
本人は現在、入院中のため窓口に出頭することができません。
そのため、本人に代わり必要書類を提出いたします。
本人の状況および必要な手続きにつきましては、
下記の連絡先までご確認いただけますと幸いです。
連絡先:〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇(代理提出者本人)
よろしくお願いいたします。
窓口で何が必要かは書類の種類(証明書による認定・傷病手当支給申請書・受給期間延長等申請書)によって変わります。持って行く前に管轄ハローワークへ電話し、必要な持ち物を確認してから向かうと二度手間になりません。
次にやること
主治医に「あとどれくらい働けなさそうか」の見立てを聞いたら、その日数を持って管轄のハローワークに電話してください。14日以内なら証明書の準備だけで済み、30日以上かかりそうなら、傷病手当と受給期間延長のどちらにするかをその電話で一緒に相談してしまうのが一番早い道です。
※本記事は2026年9月時点の雇用保険法・雇用保険法施行規則の条文、およびハローワークインターネットサービスの公開情報にもとづく一般的な整理です。個別の状況によって必要書類や手続きは異なります。詳細は管轄のハローワークに直接ご確認ください。医療的な判断は主治医にご相談ください。
出典(2026年9月25日調査) - 雇用保険法第15条第4項第1号、第20条第1項、第37条第1項・第3項・第4項(taishoku/laws/雇用保険法.txt を直接確認) - 雇用保険法施行規則第25条、第31条、第46条、第63条、第64条(taishoku/laws/雇用保険法施行規則.txt を直接確認) - ハローワークインターネットサービス「基本手当について」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html (傷病手当の15日要件、受給期間延長の30日・4年要件、傷病手当支給申請書の代理人提出・郵送可を確認) - 厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139508.html (受給期間延長の加算上限3年・郵送/代理人申請可・傷病手当ではなく延長を選べる旨を確認、2026年10月) - ハローワーク札幌(北海道労働局)「受給期間を延長することができる場合は」 https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-hellowork/list/sapporo/kyusyokusya/hokenzyukyu/ippan/3-1.html (30日継続した日の翌日から1か月以内の提出案内を確認)