契約社員が自己都合で辞めたとき
- 待期期間(7日)は契約社員でも正社員でも同じで、辞め方による違いはない(雇用保険法第21条)
- 契約期間の途中で自己都合退職した場合、または契約満了時に自分から更新を希望しなかった場合は「正当な理由のない自己都合退職」として扱われ、待期後に原則1ヶ月の給付制限がかかる(同法第33条1項)
- 契約更新を希望したのに会社が応じなかった(雇止め)場合は、原則「特定理由離職者」に当たり給付制限はかからない(同法第13条3項)。3年以上更新してきた場合や更新が明示されていた場合は、さらに重い扱いの「特定受給資格者」(雇用保険法施行規則第36条7号・7号の2)
- 受給資格そのものは離職前2年間に被保険者期間通算12ヶ月以上が必要で、契約社員でも週20時間以上・31日以上雇用見込みで雇用保険に加入していれば同じ基準が適用される(同法第13条1項、第6条)
- 1求職の申込み
- 2待期7日
- 3給付制限1ヶ月
- 4認定日
- 5初回振込
この記事の内容
この記事は、契約社員として働いていて、自分の意思で契約を終える人(契約期間の途中で辞める人、または契約満了のタイミングで自分から更新を希望しない人)に向けて書いています。「契約社員だから待期期間や給付制限の扱いが正社員と違うのでは」「契約を更新しなかったのは自己都合になるのか、それとも会社都合に近い扱いになるのか」という疑問に、条文にそって答えます。
- 契約社員だから、失業保険の待期期間や給付制限が正社員と違うのではないかと不安
- 契約を更新しなかったのが「自己都合」なのか「特定理由離職者」なのか、自分では判断できない
- そもそも契約社員でも失業保険をもらえる資格があるのか分からない
結論:待期は同じ7日、給付制限は辞め方で分かれる
| 論点 | 整理 |
|---|---|
| 待期期間 | 契約社員でも正社員でも同じ7日間。求職の申込みをした日が起点で、離職理由を問わない(雇用保険法第21条) |
| 契約期間の途中で自己都合退職した場合 | 「正当な理由のない自己都合退職」として扱われ、待期後に給付制限がかかる(同法第33条1項。法律上は1ヶ月以上3ヶ月以内で所長が定め、2025年4月1日以降の退職は原則1ヶ月と厚生労働省が案内) |
| 契約満了で自分から更新を希望しなかった場合 | 「特定理由離職者」の定義(同法第13条3項)には当たらず、自己都合退職として給付制限の対象になりうる |
| 契約満了で更新を希望したのに会社が応じなかった場合(雇止め) | 原則、特定理由離職者に該当し、給付制限はかからない。ただし3年以上更新してきた場合や、更新すると明示されていた場合は「特定受給資格者」(雇用保険法施行規則第36条7号・7号の2)になる |
| 受給資格そのもの | 離職前2年間に被保険者期間通算12ヶ月以上が必要。契約社員でも週20時間以上・31日以上の雇用見込みで雇用保険に加入していれば、正社員と同じ基準が適用される(同法第13条1項、第6条) |
契約社員という雇用形態そのものは、待期期間にも給付制限にも直接影響しません。影響するのは「自己都合か、そうでないか」という退職理由の区分であり、これは契約期間の途中で辞めたか、契約満了時に自分の意思で更新を希望しなかったかで決まります。まずこの区分を確認してください。
契約期間の途中で自己都合退職した場合
有期雇用契約(契約社員の多くがこれに当たります)は、契約期間の途中で辞めるには「やむを得ない事由」が要るのが原則です(民法628条)。ただし、1年を超える契約を結んでいる場合は、契約開始から1年を過ぎれば、会社に申し出ていつでも退職できるとする暫定の定めがあります(労働基準法第137条。手元の全文で確認)。この「そもそも途中で辞められるか」という論点は、別記事「契約社員は契約期間の途中で辞められるか」で詳しく扱っています。
この記事のテーマは、その先にある失業保険の扱いです。会社の合意を得て契約期間の途中で辞めた場合や、やむを得ない事由が認められないまま辞めて事実上契約が終わった場合、失業保険の手続き上は次のように扱われます。
- 会社側が倒産・解雇に当たる事情で契約を終えたのでない限り、「正当な理由のない自己都合退職」として扱われる
- 待期7日(全員共通)のあと、給付制限がかかる(雇用保険法第33条1項。法律の文言は「1箇月以上3箇月以内の間で公共職業安定所長の定める期間」)
- 給付制限の長さは、退職日が2025年4月1日以降なら原則1ヶ月(それ以前は原則2ヶ月)。厚生労働省の案内(令和7年4月以降の給付制限の案内、2026年10月確認)による。ただし、退職日から遡って5年間に、正当な理由のない自己都合退職で受給資格決定を2回以上受けている場合(今回を含めて通算3回目以降)は3ヶ月
- 2025年4月以降に再就職のための教育訓練などを受ける(受けた)場合は、給付制限が解除される(同じく厚生労働省の案内。対象になる訓練はハローワークで確認)
「契約期間の途中で辞めた」という事実自体が失業保険の給付制限を重くするわけではありません。給付制限の長さを決めるのは、あくまで「正当な理由のない自己都合かどうか」という区分です。途中退職か契約満了かは、この区分の入り口が違うだけで、給付制限のルール自体は共通です。
契約を更新しなかった場合は自己都合か特定理由離職者か
契約社員の失業保険で、実務上いちばん判断が分かれるのがここです。契約期間が満了し、更新されずに退職した場合、扱いは「更新を希望したのが誰か」で変わります。
雇用保険法第13条3項は、特定理由離職者の定義の中で次のように定めています。
期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないこと(その者が当該更新を希望したにもかかわらず、当該更新についての合意が成立するに至らなかつた場合に限る)その他のやむを得ない理由により離職したものとして厚生労働省令で定める者(雇用保険法第13条3項)
条文の括弧書きがポイントです。契約満了を理由に特定理由離職者(給付制限なし)に当たるのは、本人が更新を希望したのに、会社側が応じなかった場合(いわゆる雇止め)に限られます。 本人が自分の意思で「更新を希望しない」と伝えて契約を終えた場合は、この条文の対象外です。
さらに、雇止めのうち次の2つは、特定理由離職者ではなく「特定受給資格者」(会社都合に近い扱い)になります。厚生労働省ハローワークの「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」(2026年10月確認)にも、同じ区分が載っています。
- 契約を更新して通算3年以上働き、そのうえで更新されなかった場合(雇用保険法施行規則第36条7号)
- 契約を結ぶときに「更新する」と明示されていたのに、更新されなかった場合(同条7号の2)
この2つは、施行規則の条文(手元の全文で確認)にも、ハローワークの判断基準にも「本人が更新を希望したこと」という条件は書かれていません。ただし、3年以上働いた人が自分から更新を断った場合に同じ扱いになるかは、条文からは読み取れません。【各自確認:自分が3年以上更新してきた場合は、更新を断った経緯を求職の申込みの際に窓口へ伝え、どちらの区分になるか確認する】また、契約書に「更新する場合がある」と書かれているだけで更新の確約がない場合は、特定受給資格者ではなく特定理由離職者の側の基準に当たると、同じ判断基準のページに書かれています(2026年10月確認)。
| ケース | 扱い | 給付制限 |
|---|---|---|
| 本人が更新を希望したが、会社が応じなかった(雇止め。通算3年未満で、更新の明示もなし) | 特定理由離職者 | なし |
| 通算3年以上更新した、または更新が明示されていたのに更新されなかった | 特定受給資格者 | なし |
| 本人が自分から更新を希望せず、契約満了で退職した | 自己都合退職 | あり(原則1ヶ月) |
| 会社が倒産・大量整理解雇などの事情で契約を終えた | 特定受給資格者(会社都合に相当) | なし |
「契約が更新されなかった」という結果だけを見て、自動的に給付制限なしになるわけではありません。誰が更新を希望していたかが分かれ目です。会社とのやり取り(更新の意向確認のメール・面談記録など)が残っていれば、離職票を受け取った時点で保存しておいてください。
自分がどちらに当たるかは、離職票に会社が記載した離職理由の欄を確認し、ハローワークで求職の申込みをする際に窓口で伝えてください。会社が記載した理由と自分の認識が違う場合は、その場で自分の主張を伝え、裏づけになる書類(更新の意向確認のメールなど)を出せます。最終的な離職理由は、ハローワークが本人と会社の主張や書類を確認して決めます(厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」、2026年10月確認)。
契約社員でも受給資格の要件は同じか
給付制限の有無を考える前に、そもそも失業保険(基本手当)を受け取る資格があるかどうかを確認する必要があります。
- 原則:離職前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12ヶ月以上あること(雇用保険法第13条1項)
- 特定理由離職者に当たる場合:離職前1年間に、被保険者期間が通算して6ヶ月以上あれば足りる(同法第13条2項)
契約社員でも、この要件自体は正社員と変わりません。ただし、そもそも雇用保険の被保険者になっていない契約社員もいます。雇用保険法第6条は、次のいずれかに当たる者を被保険者から除外しています。
- 1週間の所定労働時間が20時間未満である者(第6条1号)
- 同一の事業主に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者(第6条2号。前2か月の各月で18日以上雇用された場合などは除かれる)
短時間勤務・単発契約に近い契約社員は、この適用除外に当たり、そもそも雇用保険に加入していない可能性があります。離職票が発行されるということは雇用保険に加入していた証拠になりますが、加入期間が離職前2年間(または1年間)のうち何ヶ月分に相当するかは、離職票に記載された被保険者期間で確認してください。被保険者期間の数え方は雇用保険法第14条(手元の全文で確認)にあり、被保険者でなくなった日から1ヶ月ずつさかのぼり、賃金支払の基礎になった日数が11日以上ある期間を1ヶ月と数えます。契約更新をはさんだ分がどう通算されているかは、離職票の被保険者期間の欄で確認してください。
申請前に確認することチェックリスト
契約社員が自己都合で契約を終える(または終わった)場合、ハローワークへ行く前に次の点を確認してください。
- □ 契約期間の途中で辞めたのか、契約満了のタイミングで辞めたのかを整理したか
- □ 契約満了の場合、更新を希望したのは自分か会社か、当時のやり取り(メール・面談記録)が残っているか
- □ 離職票の離職理由欄に、会社がどう記載しているかを確認したか
- □ 直近2年間(特定理由離職者に該当する可能性があるなら1年間)の被保険者期間が、離職票の記載で足りているか
- □ 自分の契約が週20時間以上・31日以上の雇用見込みに当たり、そもそも雇用保険に加入していたか
このうち、離職理由欄の記載内容が自分の認識と違う場合は、求職の申込みの際にその場で窓口に伝えてください。あとから覆すよりも、申請の最初の段階で伝えるほうが手続きがスムーズです。
計算例:契約満了で更新を希望しなかったEさんのケース
数字を仮置きして、契約社員が自己都合で契約を終えた場合の待期・給付制限のタイムラインを見てみます(以下はすべて仮の設定で、実在の事案ではありません)。
前提 - Eさん(仮の設定)、契約社員として6ヶ月契約を3回更新し、通算2年間勤務(3年未満なので、更新の「3年以上」の扱いには当たらない。契約時に更新の明示もなかったとする) - 契約満了のタイミングで、Eさん自身が次の更新を希望せず退職(会社側は更新の意向があった) - 過去5年以内に自己都合退職の履歴はなし(初回の自己都合退職) - 離職前2年間の被保険者期間は24ヶ月分あり、受給資格の要件(12ヶ月以上)は満たしている
タイムラインの計算
| 段階 | 日数の目安 | 起算点 |
|---|---|---|
| 待期期間 | 7日 | ハローワークで求職の申込みをした日から |
| 給付制限期間 | 原則1ヶ月(暦の1か月。ここでは約30日で計算。初回の自己都合退職のため3ヶ月にはならない) | 待期満了の翌日から |
| 給付制限が明けるまでの合計 | 7日 + 約30日 = 約37日 | 求職の申込み日から起算 |
| 最初の認定日・初回振込 | 給付制限明け後、最初の失業認定日を経て振込 | - |
給付制限が明けるまでの目安は約37日ですが、実際の初回振込は、これに最初の失業認定日までの調整期間と振込事務の日数が加わります。
私の場合は会社都合で、給付制限はありませんでした。2026年7月6日に初回の手続きをして、7月15日の雇用保険説明会に出て、初回の振込は8月5日です(説明会から21日、退職日の6月30日から36日)。自己都合の方は、ここに給付制限の約1ヶ月が加わると考えてください。
もしEさんが「更新を希望したのに会社が応じなかった」(雇止め)というケースだった場合、通算3年未満で更新の明示もないなら特定理由離職者に当たるため、上の表の「給付制限期間」がまるごとなくなり、待期7日のあとすぐに認定・振込のプロセスに進みます。
実体験について、正直に書きます
私自身は2026年6月末に正社員として会社都合で退職し、失業保険の受給手続きを一通り経験しました。ただし、契約社員として働いた経験、契約期間の途中で辞めた経験、契約更新を希望しなかった経験のいずれもありません【本人の実体験の範囲外】。
そのため、この記事で挙げた「途中退職の場合」「更新しなかった場合」の給付制限の扱いは、雇用保険法の条文と、厚生労働省・ハローワークの公式ページにもとづく整理であり、私自身が契約社員として申請した経験にもとづく記述ではありません。実際に契約社員として申請する場合は、自分の離職票の記載を確認し、ハローワークの窓口で直接確認してください。
会社との間で契約更新の意向がすれ違い、直接連絡を取りづらい状況になっている場合は、退職代行Jobs のようなサービスで退職の意思表示だけを代行してもらう方法もあります(あくまで意思表示の代行であり、離職理由の判定や失業保険の給付制限の有無は、退職代行を使っても使わなくても、ハローワークが同じ基準で判断します)。
次にやること
まず、自分の契約満了(または途中退職)にあたって「更新を希望したのは自分か、会社か」を整理し、離職票の離職理由欄に何と書かれているかを確認してください。 ここが「自己都合(給付制限あり)」か「特定理由離職者(給付制限なし)」かの分かれ目です。認識と離職票の記載が食い違う場合は、ハローワークで求職の申込みをする際にその場で窓口に伝えてください。
※本記事は2026年9月時点の一般的な情報整理です。給付制限の期間や受給資格の判定は個別の状況によって異なるため、実際の申告・判定については、ハローワークの窓口でご確認ください。
出典 - 雇用保険法第6条(適用除外)・第13条1項〜3項(基本手当の受給資格、特定理由離職者の定義)・第21条(待期)・第33条1項(給付制限) — 本セッション(2026-09-25)に taishoku/laws/雇用保険法.txt の条文原文を直接確認 - 雇用保険法施行規則第36条7号・7号の2(3年以上更新後の雇止め、更新明示後の雇止めは特定受給資格者) — 手元の全文で確認(2026-10-08)。ハローワーク「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」(https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_range.html)でも同じ内容を確認 - 2025年4月1日以降の退職の給付制限(原則1ヶ月、5年間に2回以上の受給資格決定を受けていれば3ヶ月、教育訓練による解除) — 厚生労働省「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000160564_00045.html)で確認(2026-10-08) - 離職理由の最終判断 — 厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139508.html) - 雇用保険法第14条(被保険者期間の数え方) — 手元の全文で確認(2026-10-09) - 民法第628条・労働基準法第137条(有期雇用契約の途中退職) — 手元の全文で確認(2026-10-09)