時短勤務中に辞めたら
この記事の内容
育児や介護で時短勤務をしている人へ。「このタイミングで辞めたら、失業保険はフルタイムの頃の給料で計算されるのか、それとも今の下がった給料で計算されるのか」——結論は後者です。この記事では、時短勤務中に離職した場合に失業保険(基本手当)がどう計算されるか、実際の数字を使って説明します。
失業保険(基本手当)はそもそも何を基準に決まるか
失業保険で毎日もらえるお金は「基本手当日額」と呼ばれ、次の式で決まります(賃金日額は雇用保険法第17条、基本手当日額は同法第16条で確認)。
- 賃金日額 = 離職前6か月の賃金総額 ÷ 180
- 基本手当日額 = 賃金日額 × 給付率(50%〜80%。60歳以上65歳未満は45%〜80%。賃金日額が低いほど給付率は高くなる仕組み。雇用保険法第16条)
ポイントは「離職前6か月」という期間の切り取り方です。賞与など3か月を超える期間ごとに支払われる賃金や、結婚祝金のような臨時に支払われる賃金は含まれませんが、毎月支払われる残業代(時間外手当)は基本給と同じく算定の対象に含まれます(雇用保険法第17条1項)。
時短勤務中の給料が、そのまま計算のベースになる
ここが本題です。時短勤務(勤務時間を短くして働いている状態)で離職した場合、原則としてその時短勤務中に実際に支払われた賃金が離職前6か月の賃金として使われます。フルタイムだった頃の給料を遡って使う仕組みはありません。
つまり、時短勤務で給料が下がっている状態のまま退職すると、基本手当もその下がった給料をもとに計算され、フルタイム時代より低い金額になります。
「休業」と「時短勤務」は別扱いになりうる
雇用保険には、病気・けが、事業所の休業、出産などの理由で引き続き30日以上賃金の支払いを受けられなかった場合に、その日数分だけ賃金日額の計算対象期間(通常は離職前2年間)を後ろへ延長できる仕組みがあります(雇用保険法第13条1項、同法施行規則第18条)。これにより、実際に賃金が支払われていた期間まで遡って「最後の6か月」を切り取れるため、結果的に賃金が支払われなかった期間を除いて計算した形になります。
施行規則第18条が挙げる理由は「事業所の休業」「出産」「事業主の命による外国における勤務」「国と民間企業の人事交流」と、それらに準ずる理由としてハローワーク所長がやむを得ないと認めるものです。育児休業・介護休業はこの列挙に名指しでは入っておらず、「準ずる理由」としてハローワークが個別に認めるかどうかの判断になります。また、この仕組みは「休業して賃金を受け取っていない期間」を対象にしたものなので、時短勤務のように実際に出勤して短い時間分の給料を受け取っているケースにそのまま当てはまるかは別問題です。同じ「給料が下がる」状況でも、休業と時短勤務では扱いが違う可能性があるため、ハローワークの窓口で自分のケースが対象になるかを個別に確認してください。
計算例|時短勤務6か月で辞めた場合
条件を1つ仮に置いて、最後の金額まで出します。
| 項目 | フルタイム時 | 時短勤務時(仮) |
|---|---|---|
| 月給 | 30万円 | 22万円 |
| 6か月の賃金総額 | ― | 132万円 |
- 賃金日額 = 132万円 ÷ 180 = 約7,333円
- 給付率を仮に60%とすると、基本手当日額 = 7,333円 × 0.6 = 約4,399円(給付率は賃金日額の水準ごとに50%〜80%の範囲で区分されており、一律60%ではありません。雇用保険法第16条)
- 1か月(30日)分に換算すると、約13.2万円
前提:この数字は説明用の仮の設定です。実際の給付率の区分額・賃金日額の上限額は年齢区分ごとに毎年8月1日に見直されるため(雇用保険法第18条1項)、ハローワークで自分の離職票の数字を使って確認してください。
これだけは確認しておきたいチェックリスト
□ 離職票に書かれた「賃金の額」が、時短勤務期間も含めて正しく記載されているか □ 離職理由が「時短勤務」なのか「育児休業」なのか、離職票の記載と実態が一致しているか □ 算定対象期間の延長(雇用保険法第13条1項・施行規則第18条)が自分のケースに使えるか、ハローワークで個別に聞いたか □ 給付制限(自己都合退職は2025年4月1日の制度改正後、原則1か月の支給なし。5年以内に3回以上の自己都合退職は3か月。会社都合退職には無い)がどちらに該当するか確認したか(待期期間7日間は理由を問わず共通。雇用保険法第21条・第33条1項)
給料が下がった状態で辞めることに、引け目を感じなくていい
時短勤務中に辞めると決めた人の中には、「フルタイムの頃より少ない金額しかもらえないなら、辞めるタイミングを間違えたのでは」と自分を責めてしまう人もいます。ですが、時短勤務を選んだこと自体は育児や介護、体調など、そのときの事情に応じた必要な選択です。基本手当の金額は制度上の計算結果であって、あなたの頑張りの評価ではありません。
もし今の職場に退職の意思を伝えづらい、引き止められそうで言い出せないという事情があるなら、退職代行という手段もあります(退職代行Jobs)。
(実体験)筆者は会社都合で退職しましたが、退職日から3日後には離職票が手元に届きました。マイナンバーと雇用保険の情報が紐づいていたことが早かった理由でした。事業主には、雇用保険の資格を喪失した日(離職日の翌日)の翌日から10日以内に手続き書類をハローワークへ提出する義務があります(雇用保険法施行規則第7条1項)が、会社の事務処理や郵送の都合でもっと時間がかかることもあります。賃金日額の計算は離職票の記載内容がベースになるため、退職を決めたら早めに会社へ離職票の発行を依頼しておくと、その後の手続きがスムーズです。
次にやること
ハローワークの窓口で、自分の離職票に記載された「離職前6か月の賃金」の内訳を見せてもらい、時短勤務期間がどう反映されているかを確認してください。
出典(2026年9月16日調査)
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」(賃金日額・基本手当日額の計算式、給付率50〜80%〈60歳以上65歳未満は45〜80%〉、算定対象期間の延長の考え方を確認)
- 厚生労働省「令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)について」(自己都合退職の給付制限期間を確認。本文は当初「原則1〜3か月」としていたが、2025年4月1日の制度改正で原則2か月から1か月に短縮され、5年以内に3回以上の自己都合退職の場合のみ3か月になると分かったため、チェックリストの記載を修正した)
- ハローワーク飯田橋「事業主の方 雇用保険手続きについて」(離職証明書の提出期限の起算日を確認。「被保険者でなくなった日(離職日の翌日)の翌日から10日以内」が正しく、本文の「離職の翌日から10日以内」という記載を修正した)