年末調整をしないまま辞めたら
- 年末に別の会社に在籍していればその会社が年末調整してくれる
- 年末にどこにも属していなければ自分で確定申告が必要(所得税法190条・120条)
- 申告しないと損をするだけで追徴されることは少ない。まず源泉徴収票を確認する
- 1退職
- 2源泉徴収票受取
- 3年内再就職なら提出
- 4未就職なら確定申告
- 5還付か納付
この記事の内容
「会社を辞めたら年末調整はどうなるのか、何もしなくていいのか」——この記事は、年の途中で退職して、年末調整を受けないまま年を越しそうな人向けです。
結論から言うと、年末に別の会社に在籍していればその会社が代わりにやってくれます。年末にどこにも属していなければ、自分で確定申告をする必要があります。何もしなくても罰則があるわけではありませんが、多くの場合は払いすぎた税金が戻ってこないまま終わります。
結論:年末に「どこに在籍しているか」で分かれる
年末調整は、その年の12月末時点で在籍している会社が、1年分の所得税をまとめて精算する手続きです(所得税法190条・194条・198条。国税庁タックスアンサーNo.2665「年末調整の対象となる人」で確認)。年の途中で退職すると、辞めた会社ではこの精算をしてもらえません。ここから先は2パターンに分かれます。
| 状況 | やること | 誰がやるか |
|---|---|---|
| 年末までに別の会社に再就職している | 前職の源泉徴収票を新しい会社に提出する | 新しい会社が年末調整してくれる |
| 年末時点でどこにも在籍していない(無職・個人事業主・フリーランス等) | 自分で確定申告をする | 自分(税務署・e-Tax) |
「年末調整をしないまま辞めた」こと自体は珍しくありません。問題になるのは、その後どちらのパターンかを確認せず、何もしないまま放置した場合です。
年内に転職した場合にやること
年末までに新しい会社で働き始めているなら、話は単純です。前職からもらった源泉徴収票を、新しい会社の年末調整の担当者(総務・経理)に提出するだけで、前職分と現職分の給与を合算して年末調整してもらえます。
源泉徴収票は、退職後おおむね1か月以内に会社が交付する義務があります(所得税法226条。年の中途で退職した場合、退職の日以後1か月以内に税務署への提出と本人への交付が必要と規定されている)。年末調整の時期(多くの会社は11月〜12月上旬に書類を集める)までに手元に届いていない場合は、前職の総務担当に催促してよいものです。
件名:源泉徴収票の発行について
お世話になっております。◯月末に退職いたしました◯◯です。
転職先で年末調整の手続きが必要なため、退職時分の源泉徴収票を
発行いただけますでしょうか。お手数をおかけしますが、
郵送先は以前ご登録の住所で問題ございません。
よろしくお願いいたします。
請求してから実際に届くまでの日数についての公的な統計は見当たらない(2026年9月確認)。実務解説記事に共通して挙がる目安は数日〜2週間程度で、発送にかかる日数は会社によって差がある。
年末に無職・個人事業主の場合にやること
年末時点でどの会社にも所属していない場合、年末調整をしてくれる相手がいません。この場合は自分で確定申告をすることになります。申告の期間は、原則として翌年2月16日から3月15日ごろです(土日で前後することがある。所得税法120条。国税庁タックスアンサーNo.2020「確定申告」で確認)。
還付を受けるだけの申告(払いすぎた税金を取り戻すための申告)であれば、この期間を待たずに翌年1月1日から提出でき、5年以内であれば遡って申告できます(所得税法122条・国税通則法74条。国税庁タックスアンサーNo.2030「還付申告」で確認)。急いで2〜3月に出さなくても間に合う、という点は覚えておいてよいところです。国税庁の同じページでも「年の途中で退職し、年末調整を受けずに源泉徴収税額が納め過ぎとなっているとき」を還付申告の具体例として挙げており、この記事で想定しているケースそのものです。
申告先は、自宅を管轄する税務署の窓口・郵送、または国税庁の「確定申告書等作成コーナー」でオンライン作成のうえ提出(e-Tax、またはマイナンバーカードなしでも印刷して郵送可)のいずれかです。
「確定申告をしないと罰せられるのでは」と心配する人がいますが、給与収入だけで年の途中に退職し、その後無収入だった人の場合、多くは還付(戻ってくる側)のケースです。申告しなければ単に戻ってこないだけで、ペナルティが発生することは通常ありません。ただし副業収入や退職金の扱いによっては申告義務が生じる場合があるため、迷う場合は税務署か税理士に確認してください(個別の税務判断はこの記事では行いません)。
計算例:確定申告をした場合としなかった場合の差
年の途中で退職すると、在職中の給与から天引きされていた源泉徴収額は「1年間働き続ける前提」で計算されています。実際には年の後半が無収入になるため、天引きされすぎている状態になりやすい、というのが基本の構造です。
前提(仮の数字) - 退職までの給与収入(1〜6月分):240万円 - 源泉徴収された所得税額:説明のための仮の数字として9万円(月々の給与から天引きされた額の合計と仮定) - 退職後、年末まで無収入 - 社会保険料控除(国民健康保険・国民年金の自己負担分)は本人の実際の支払額により変わるため、この例では金額を置かない - 基礎控除など、通常受けられる所得控除を適用
計算(あくまで概算の考え方)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 年間の給与収入 | 240万円(退職後は無収入のためこれが年間合計) |
| 給与所得控除 | 80万円(240万円×30%+8万円。所得税法28条、令和8年分の速算表〔給与収入220万円超360万円以下の区分〕。国税庁タックスアンサーNo.1410で確認) |
| 給与所得控除後の所得 | 160万円(240万円-80万円) |
| 基礎控除 | 62万円(合計所得160万円は「132万円超336万円以下」の区分にあたる。令和8年分の基礎控除額。国税庁タックスアンサーNo.1199で確認) |
| 社会保険料控除 | 本人が実際に支払った国民健康保険料・国民年金保険料の額(個人差が大きいためこの例では金額を置かない) |
| 源泉徴収された税額 | 9万円(仮の数字) |
| 確定申告後の本来の税額 | 上記の所得控除を反映すると9万円より少なくなるケースが多い |
| 還付される差額 | 数万円単位になることが多い(個人差が大きいため断定不可) |
正確な金額は、収入・控除の内容によって大きく変わるため、この記事の数字はあくまで「天引きされすぎる構造がある」ことを示す目安です。実際の金額は国税庁の確定申告書等作成コーナーに数字を入力すれば自動で計算されます。
チェックリスト:確定申告前に揃えるもの
自分で確定申告をすることになった場合、次のものを手元に集めてから作成に取りかかると迷いません。
- □ 退職した会社からの源泉徴収票(給与所得の源泉徴収票)
- □ 本人確認書類(マイナンバーカード、または通知カード+運転免許証等)
- □ 国民健康保険料・国民年金保険料の控除証明書(自分で支払った分がある場合)
- □ 生命保険料・地震保険料の控除証明書(加入している場合)
- □ 医療費の領収書またはまとめの明細(医療費控除を使う場合。控除の対象になるのは「支払った医療費の合計額-保険金等」が総所得金額の5%か10万円のいずれか低い方を超える部分。給与所得者の多くは10万円が基準になる。所得税法73条で確認)
- □ 振込先の銀行口座情報(還付金の受け取り用)
- □ 失業保険(基本手当)を受給していた場合の受給資格者証(基本手当自体は非課税だが、他の申告内容との整合性確認のため手元に置く)
この7点が揃っていれば、国税庁の確定申告書等作成コーナーで、画面の指示に沿って数字を入力するだけで申告書が作成できます。
次にやること
まず、退職した会社から源泉徴収票が届いているかを確認してください。届いていなければ、前職の総務担当に発行を依頼する一通を送ることが最初の一歩です。年末に再就職しているなら新しい会社に提出、していないなら翌年1月以降に確定申告書等作成コーナーで還付申告を進めてください。
出典(2026年9月14日調査)
- 国税庁タックスアンサーNo.2665「年末調整の対象となる人」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2665.htm (年末調整の根拠条文が所得税法190条・194条・198条であることを確認)
- 国税庁「給与所得の源泉徴収票等の交付義務」 https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hotei/1/04.htm (年の中途で退職した場合、退職の日以後1か月以内に交付する義務〔所得税法226条〕があることを確認)
- 国税庁タックスアンサーNo.2020「確定申告」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2020.htm (申告等の期間が原則その年の翌年2月16日から3月15日までであることを確認)
- 国税庁タックスアンサーNo.2030「還付申告」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2030.htm (還付申告書はその年の翌年1月1日から5年間提出できること、「年の途中で退職し、年末調整を受けずに源泉徴収税額が納め過ぎとなっているとき」が具体例に挙がっていることを確認)
- 国税庁タックスアンサーNo.1199「基礎控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1199.htm (合計所得132万円超336万円以下の基礎控除額を年分別に確認。本文にあった「88万円」は令和7年分の金額だったため、令和8年分の正しい額「62万円」に修正した)
- 国税庁タックスアンサーNo.1410「給与所得控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm (令和8年分の給与所得控除の速算表を確認。本文の区分表記「190万円超360万円以下」は令和7年分以前のものだったため、令和8年分の正しい区分「220万円超360万円以下」に修正した。控除額80万円自体は変更なし)