失業保険受給中に海外旅行はできるか
- 1旅行の日程を決める
- 2認定日を日付で確認
- 3ハローワークに相談
- 4認定日の間に収める
- 5帰国して認定日に出頭
この記事の内容
失業保険をもらっている間に、海外旅行へ行っても大丈夫なのか。行けるとしたら、四週間ごとの認定日とどう合わせればいいのか。この記事は、退職後にそんな計画を立てている人に向けて、条文とハローワークの公式ページで確認できたことだけを順番に書きます。先に結論を言うと、旅行そのものを禁じる条文は見当たりません。ただし、認定日に出頭できないと、その回の分が受け取れなくなるおそれがあります。
失業保険をもらいながら海外旅行に行っていいのか
旅行そのものを止める決まりは、調べた範囲では見当たりません。手元の雇用保険法と同施行規則の条文(2026年9月19日確認)に、海外へ出ることを制限する規定は見つかりませんでした。ハローワークインターネットサービスの「基本手当について」のページにも、旅行・海外の記載はありません(2026年9月19日確認。公式に記載なし)。
ただし、「禁止されていない」と「何も気にせず行ける」は別の話です。理由は、失業保険(基本手当)が「失業していることを認定された日」にだけ出る仕組みだからです。雇用保険法第15条1項は、基本手当を「失業している日(失業していることについての認定を受けた日に限る)」について支給すると定めています。
つまり見るべきなのは、行き先ではなく、旅行の日程が「認定日」と「認定される日」にどう重なるかです。
認定日とは何か、なぜ旅行と相性が悪いのか
認定日は、ハローワークが「今は失業の状態にある」と確認する日です。雇用保険法第15条3項により、認定は原則として四週間に一回、直前の28日分について行います。ハローワークインターネットサービス「雇用保険手続きのご案内」も「原則として、4週間に1度、失業の認定(失業状態にあることの確認)を行います。」と案内しています(2026年9月22日確認)。
認定日には、次のことをします。
- ハローワークに出頭し、受給資格者証を添えて失業認定申告書を出す(雇用保険法施行規則第22条1項。受給資格通知を受け取っている人は、受給資格者証の代わりにマイナンバーカードを見せる。手元の条文で確認)
- 求職活動の内容が確認される(同規則第28条の2第1項。手元の条文で確認)
- 求職活動の実績が、原則2回以上あること(初回の認定は1回でよい。ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」で確認。同ページには、給付制限期間が3か月の場合は原則3回以上とも書かれています)
筆者は会社都合で退職しました。初回の認定は、7月15日の雇用保険説明会に出たことそのものが求職活動の実績として数えられ、ほかの活動は要りませんでした。行ったハローワークは1か所だけなので、窓口ごとの運用の違いは分かりません。
海外旅行と相性が悪い点は2つあります。
- 認定日に窓口へ行けなくなる。 認定日をまたいで日本にいないと、出頭できません
- 旅行中の日は「すぐ働ける状態」とは言いにくい。 ハローワークは失業の状態を「求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない状態」と説明しています(ハローワークインターネットサービス「基本手当について」、2026年9月21日確認)。失業認定申告書にも「今、公共職業安定所又は地方運輸局から自分に適した仕事が紹介されれば、すぐに応じられますか」という欄があります(様式第14号、2026年9月22日確認)。東京ハローワークの記入例の注意書きは、「応じられない」に〇を付けるのは「長期的に活動が困難な状態(一時的や短期的なものは除く)」のときと説明しています(2026年9月22日確認)。数日の旅行をこの欄でどう申告するのか、旅行中の日を認定の対象から外す扱いが取扱要領のどこに書かれているかは、東京ハローワーク府中・ハローワーク神奈川・大阪東ハローワークのQ&Aなど公式ページを確認しましたが、明記が見当たりませんでした(2026年9月23日確認。公式に記載なし)。この点は窓口で個別に確認するのが確実です。
旅行に行きたい気持ちは、おかしなものではありません。退職して気持ちを切り替えたい、家族に会いに行きたい、という理由は自然なものです。だから「行ってはいけない」と決めつけずに、日程の組み方で損を小さくする方向で考えます。
認定日はずらせるのか
ずらせる理由は、法律で決まっています。雇用保険法第15条4項は、次のどれかに当たるとき、出頭できなかった理由を書いた証明書を出せば認定を受けられるとしています。
| 号 | 理由 |
|---|---|
| 一 | 病気・けがで出頭できない(継続して15日未満のとき) |
| 二 | ハローワークの紹介で求人者に面接するとき |
| 三 | ハローワーク長が指示した公共職業訓練等を受けるとき |
| 四 | 天災その他のやむを得ない理由 |
旅行は、一〜三号には当たりません。四号の「やむを得ない理由」に当たるかどうかはハローワークが判断しますが、旅行が当たるとした公的な資料は、調べた範囲では見つかりませんでした。
条文にはもう1本あります。雇用保険法施行規則第23条1項1号は、「職業に就くためその他やむを得ない理由」で認定日に出頭できない人が、その旨を管轄のハローワークの長に申し出れば、認定日を変えられる道を定めています(雇用保険法第15条3項ただし書きの別段の定めの対象。同項2号は、行政機関の休日や労働市場の状況などを見て所長が変更を適当と認める人。手元の条文で確認)。ここでも、何がやむを得ない理由かは、各ハローワークの案内を見ることになります。
- 東京ハローワーク府中の公式ページ「認定日の変更ができる場合について」(2026年9月21日確認): 就職したとき、就職のために採用試験・面接・資格試験を受けたとき、本人の病気・けが・結婚、親族の看護・危篤・死亡。旅行・海外の記載はありません(公式に記載なし)。
- ハローワーク神奈川の「認定日に来所できない場合Q&A」(令和5年8月版、2026年9月21日確認)の代表例一覧: 病気・けが、求人者との面接、本人または親族の婚姻の儀式への出席(新婚旅行も認められる場合がある)、親族の看護、子の入園式・入学式・卒園式・卒業式、親族の葬儀、親族の命日の法事、国家試験・検定等の受験。この一覧にも、ふつうの旅行はありません。 一方で「これらに準ずる理由と認められるものや天災その他やむを得ない事故等」は認められる場合があるとも書かれ、必ず事前に相談するよう案内されています
つまり、旅行を理由にした変更は、公式ページの例には載っていません。ただ、最終的な扱いは管轄のハローワークの判断なので、決めつけずに事前に聞くのが確実です。
だから、旅行の予約より先に、認定日の日付を確認するのが安全です。認定日は受給資格者証などに書かれています。
認定日をまたぐと、いくら変わるのか(計算例)
日程で金額がどう変わるかを、仮の数字で確かめます。実際の金額は人によって違います。ここでは考え方をつかむための例です。
前提(すべて仮置き)
- 基本手当日額: 5,000円
- 認定日: 10月13日(火)と11月10日(火)
- 対象期間: 10月13日〜11月9日の28日
- 旅行以外の日は、毎日すぐ働ける状態で、求職活動の回数も満たしている
- 旅行中の日は認定されず、その日の分は出ない、という前提を置く(ハローワークの公式ページには明記が見当たらない。2026年9月23日確認。公式に記載なし)
| 旅行の入れ方 | 旅行日数 | この期間の支給額 | 旅行なし(140,000円)との差 |
|---|---|---|---|
| 旅行なし | 0日 | 28日 × 5,000円 = 140,000円 | ― |
| A: 認定日の間に収める(10/20〜10/27) | 8日 | 20日 × 5,000円 = 100,000円 | −40,000円 |
| B: 認定日をまたぐ(11/5〜11/15) | 11日 | 11/10に出頭できず、前回認定日(10/13)から11/10当日までが不認定になるのが原則。ここでは認定対象の28日分(10/13〜11/9、140,000円)が出ないと数える | −140,000円(帰国後の旅行日の分は別) |
| C: 認定日の翌日に出発(11/11〜11/21) | 11日 | 11/10に出頭。次の期間(11/10〜12/7)で、28日 − 11日 = 17日 × 5,000円 = 85,000円 | −55,000円 |
この表から分かること
- Aは、旅行した日数分だけ減ります。減るのは旅行の8日分(40,000円)で済みます
- Bは、旅行日数以上に大きく減ります。ハローワーク上野のQ&Aは、認定日に来所できないと「原則として、前回認定日(初回の方は資格決定日)~来所できなかった認定日当日までの期間について不認定となります。」と書いています(2026年9月22日確認)。この例なら10/13〜11/10の期間です(表では、11/10当日は旅行中のため、認定対象の28日分=10/13〜11/9で数えています)。ハローワーク神奈川の案内(令和5年8月版)も、不認定処分になった期間は基本手当が受けられないと書いています(2026年9月22日確認)
- Bでも、帰国後に取り戻せる分があります。神奈川の案内では、やむを得ない理由と認められず不認定になった場合でも、来所できなかった認定日の次の認定日(この例では12/8)の前日までに窓口へ行けば、来所できなかった認定日の翌日(11/11)以降の期間は認定を受けられます。前日までに行かないと、次に来所する日までの全期間が不認定になります。また同じ案内には、一度でも不認定処分を受けた場合は個別延長給付にも該当しない、とあります(2026年9月22日確認)
- 帰国後の旅行日(11/11〜11/15)が認定の対象になるかどうかも、同じ理由(公式ページに明記が見当たらない。2026年9月23日確認)でこの表では金額に入れていません。窓口で確認するのが確実です
- Cは、認定日に出頭してから出発する形です。旅行日数の分だけ減りますが、認定日を落とす心配はありません
支給額の差は、日程の組み方で大きく変わります。旅行の日数を減らせなくても、認定日をまたがないだけで損を小さくできる可能性があります。
旅行を黙って行くとどうなるか
旅行があったのに「毎日すぐ働ける状態だった」と申告すると、不正受給になるおそれがあります。ハローワークの公式ページには、こう書かれています。「偽りその他不正の行為で基本手当等を受けたり、又は受けようとした場合には、以後これらの基本手当等を受けることができなくなるほか、その返還を命ぜられます。更に、原則として、返還を命じた不正受給金額とは別に、直接不正の行為により支給を受けた額の2倍に相当する額以下の金額の納付を命ぜられることとなります」(ハローワークインターネットサービス「基本手当について」、2026年9月21日確認)。
条文では、雇用保険法第10条の4第1項(返還命令と、不正に受けた額の2倍以下の納付命令)と、第34条1項(不正の日以後は基本手当を支給しない。やむを得ない理由があるときは例外あり)に当たります(手元の条文で確認)。東京ハローワークの失業認定申告書の記入例の注意書きには、「ありのままの正しい情報、事実を申告してください。(日付や金額などに曖昧な申告は絶対にしないでください。内容によっては不正受給と判断されてしまいます。)」とあります(様式第14号の記入例、2026年9月22日確認)。様式第14号の記入例(東京ハローワーク立川、2026年9月23日確認)を確認したところ、詐欺罪など刑罰への言及はありませんでした(公式に記載なし)
返す額と納付の額を合わせると、最大で不正に受けた額の3倍になる計算です(雇用保険法第10条の4第1項。返還を命じられる額と、その2倍以下の納付額の合計。手元の条文で確認)。
出入国の記録がハローワークに照合されるのかどうかは、ハローワークインターネットサービス「基本手当について」を確認しましたが、出入国・旅行・海外の記載が見当たりませんでした(2026年9月22日確認。公式に記載なし)。ただ、「バレるかどうか」を考えなくても、正直に申告すれば足ります。旅行の日程を隠さず、先に相談するのが一番安全で、いちばん安く済みます。
旅行前に確かめるチェックリスト
□ 受給資格者証で、次の認定日と、その次の認定日の日付を書き出した □ 旅行の出発日と帰国日が、認定日をまたいでいない □ 出発前日までに、ハローワークへ日程を伝えて相談した □ 旅行中の日の申告のしかたを、窓口で聞いた □ 旅行の日数を除いても、認定対象期間の求職活動の回数(原則2回以上)を満たせるか、窓口で聞いた □ 帰国後の最初の認定日に、必要な書類(受給資格者証、失業認定申告書。受給資格通知の人はマイナンバーカード)を持って行く日程になっている □ 万一、認定日に行けなかったときは、次の認定日の前日までに窓口へ行く日付を書き出した □ 就職の面接や試験が旅行の日程に入りそうなときは、先にハローワークに伝えた
ハローワークに聞くときの言い方(文例)
電話でも窓口でも、次のように聞けば伝わります。日付は自分のものに書き換えて使ってください。
お世話になっております。雇用保険受給中の〇〇(氏名)です。
次の認定日は〇月〇日と理解しています。
〇月〇日から〇月〇日まで、海外旅行を考えています。
認定日はまたがない予定です。
1. この日程で、旅行中の日はどう扱われますか。
2. 旅行の日数を除くと、求職活動の回数はどう数えますか。
3. 帰国後、最初の認定日に何を持っていけばよいですか。
予約前なので、問題があれば日程を調整します。
「予約前です」と添えるのがコツです。予約をしてから相談すると、断られたときにキャンセル料が出ることがあります。
次にやること
航空券や宿を予約する前に、受給資格者証を出して、次の認定日とその次の認定日を、手帳かカレンダーに書き込んでください。 旅行の候補日をその2つの認定日の間に置くことから、日程づくりを始めます。