失業保険をもらっても税金と保険料で消える不安
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失業保険(基本手当)は非課税――そう聞いて安心した矢先に、住民税や国民健康保険料の納付書が届いて青くなる人がいる。この記事は「失業保険はもらえるのに、なぜお金が出ていくのか」がわからず不安な人に向けて、受給中に実際に払うものを一覧で答える。
在職中は給与から自動で天引きされていたので、税金や保険料を自分で「払う」という感覚が馴染みない人は多いだろう。それが急に、納付書という紙の形で自分の手元に届く。金額の大小より前に、その仕組みの変化にとまどうのは自然な反応で、恥じることではない。まずは「何が・いつ・なぜ来るのか」を知ることが、不安を減らす一番の近道になる。
失業保険そのものには税金がかからない
まず結論から。雇用保険の基本手当(いわゆる失業保険)は非課税だ。雇用保険法第12条(公課の禁止)は「租税その他の公課は、失業等給付として支給を受けた金銭を標準として課することができない」と定めている(条文の全文で確認)。つまり所得税も住民税も、失業保険の受給額そのものにはかからない。
ここまでは安心材料だ。ただし問題は「失業保険にはかからない」のであって、「退職後の生活全体にお金がかからない」わけではないという点にある。次から挙げる3つは、失業保険の有無に関係なく、退職した人全員にのしかかってくる。
住民税――「去年の所得」に課税される仕組みが罠になる
住民税は前年(1月〜12月)の所得に対して、翌年度に課税される「前年所得課税方式」を取っている(地方税法第318条で賦課期日は1月1日、同法第313条で所得割は前年の所得を基に計算すると定められている)。在職中は毎月の給与から天引き(特別徴収)されていたため意識しにくいが、退職するとこの仕組みが牙をむく。
- 在職中に天引きされていたのは「前年分」の住民税
- 退職すると天引きの主体(会社)がいなくなるため、残りの税額は自治体から直接請求される「普通徴収」に切り替わる
- 退職した翌年の6月ごろには、退職した年の所得に対する住民税の納付書がさらに届く
つまり、収入が失業保険しかない時期に、無収入だった年の分ではなく「働いていた年」の税金の請求が重なって来る。これが「失業保険をもらっているのに税金で消える」感覚の正体だ。特に退職して最初の1〜2年は、この「過去の自分の稼ぎに対する請求」と「今の失業保険しかない収入」がずれたまま進むため、家計の感覚が一番狂いやすい時期になる。
退職のタイミングによっても届き方が変わる。1〜4月に退職すると、5月末までに支払われる給与や退職手当等からその年度の残りの住民税をまとめて天引きされる(給与等が残りの額を超える場合。地方税法第321条の5第2項。条文の全文で確認)。6〜12月に退職すると、本人の申出があれば特別徴収(天引き)でまとめて徴収できるが、申出がなければ残りは普通徴収に回り、納付書という形で自宅に届く。どちらのパターンだったかは、退職時に会社から渡される源泉徴収票や退職時の説明資料で確認できる。
私自身は2026年6月末に会社都合で退職した。退職後、住民税は1期分(3ヶ月分)ずつ、年4回の分割で自分で払う形に切り替わった。給与天引きだったものが、ある日を境に「自分で払うもの」に変わる。金額そのものより、その切り替わりに心の準備がいる、という感覚は経験してみないとわかりにくい。
払えないときの相談先: 一括では厳しい場合は、市区町村の税務課(住民税担当)に相談する。滞納する前に連絡しておきたい。納期限を過ぎると督促状が出る(地方税法第329条。条文の全文で確認)。分割納付の可否や条件は自治体ごとに違う。【各自確認:お住まいの市区町村の税務課で、分割納付の条件と必要書類を確認】
国民健康保険料――「非自発的離職」なら軽減できる場合がある
会社の健康保険は退職と同時に資格を失う。その後は主に次の2択になる。
| 選択肢 | 特徴 |
|---|---|
| 国民健康保険(国保)に加入 | 前年所得を基準に保険料算定。市区町村が窓口 |
| 健康保険の任意継続(任意継続被保険者) | 退職前の健保を最長2年継続可(健康保険法第38条)。保険料は原則全額自己負担。協会けんぽの案内では、退職前に控除されていた保険料の2倍が目安(上限あり) |
どちらが安いかは前年所得と自治体の保険料率次第なので一概には言えない【各自確認:国保の保険料見込み額は市区町村の国保窓口、任意継続の見込み額は加入していた健保組合・協会けんぽ支部で試算を依頼】。国保は前年所得を基に計算するため、退職直後は在職中の収入が反映されて高く感じられることがある。任意継続は標準報酬月額に上限があり、協会けんぽでは上限を超える分は保険料に反映されない。どちらを選ぶかは「任意継続の保険料見込み額」を健保組合に、「国保の保険料見込み額」を市区町村に、両方問い合わせて比較するのが確実だ。任意継続は健康保険法第37条により、資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内に申出をし、初回の保険料も納付期日までに納めないと任意継続にならない(同条第1項・第2項。条文の全文で確認)という短い期限があるため、迷っている間に選択肢が消えないよう先に見積もりだけでも取っておきたい。
見落とされがちなのが、倒産や解雇など「非自発的離職」に該当する場合の国民健康保険料の軽減制度だ。雇用保険の受給資格者証に記載される離職理由コードが「特定受給資格者」(コード11・12・21・22・31・32)または「特定理由離職者」(コード23・33・34)に該当すると、前年の給与所得を30/100とみなして保険料を計算してもらえる(多くの自治体の国民健康保険条例に基づく制度。コードと軽減期間は新宿区の案内で確認、2026年10月)。軽減の対象は給与所得のみで、離職時に65歳未満であることが条件とされている自治体が多い。届出が必要で、手続きは自治体ごとに違う。軽減が適用される期間は、離職日の翌日が属する月からその月が属する年度の翌年度末までだ。自己都合退職でも、会社都合に近い事情(ハラスメント等)があれば離職理由コードが該当することがあるので、ハローワークで発行される受給資格者証のコードを確認しておく価値がある。
私自身は会社都合で退職し、受給資格者証に離職理由コードの記載があった。国保の軽減措置が使えて、任意継続より安かった。ただし子どもは妻の健康保険の扶養に移した。国保は扶養に当たる家族が増えると保険料が上がるためだ。
国民年金保険料――第1号被保険者への切り替えと免除制度
会社員の間は厚生年金(第2号被保険者)だったが、退職すると自分で国民年金保険料を納める「第1号被保険者」への切り替え手続きが必要になる。手続き先は住所地の市区町村役場だ。
月額の保険料は年度ごとに改定される。2026年度(令和8年度・2026年4月〜2027年3月)の月額保険料は17,920円(日本年金機構の案内で確認、2026年10月)。前年度(令和7年度)の17,510円から410円上がった。失業を理由にした「失業等による特例の免除」がある点も覚えておきたい(国民年金法第90条と同法施行規則の定め。条文の全文で確認)。通常の免除審査は前年所得を基準にするが、失業等の場合は申請者本人の前年所得を除いて審査される。ただし世帯主・配偶者の所得も審査の対象になる(同法第90条第1項ただし書)。離職票や雇用保険受給資格者証などの書類を添えて申請する。
免除を受けた期間は将来の年金受給資格期間には算入されるが、受給額は満額より少なくなる点は理解しておく必要がある。国民年金法第94条(保険料の追納。条文の全文で確認)に基づく追納制度を使えば、あとから収入が戻った時点で免除分を払い直して満額に近づけることもできる。追納できるのは承認の日の属する月の前10年以内の期間に限られるため、先延ばしにしすぎると対象期間から外れてしまう。
家族の扶養に入れば保険料が浮くこともある
配偶者や親が社会保険(健康保険・厚生年金)に加入していれば、その扶養に入るという選択肢もある。一般的な目安として、扶養に入る本人の年収が130万円未満(かつ扶養者の年収の半分未満)であれば、健康保険の被扶養者として認定される(同居の場合。詳細は協会けんぽなどの認定基準で確認)。本人が会社員・公務員の配偶者(20歳以上60歳未満)であれば、国民年金も第3号被保険者になり、保険料の納付が不要になる(国民年金法第94条の6)。
ただし、失業保険を受給していると、この130万円のラインを1日あたりに換算した「基本手当日額3,612円の壁」に引っかかりやすい。130万円を360日で割ると3,611.11円になるため、基本手当日額が3,612円以上だと年収換算で130万円を超えるとみなされ、被扶養者になれない(協会けんぽの認定基準で確認。60歳以上・障害年金を受けられる程度の障害者は基準が異なり、年収180万円未満・日額5,000円未満)。扶養に入れるかどうかは、失業保険の受給が終わったあと、もしくは受給を延長・辞退した場合に検討する選択肢と考えておくのが実務的だ。判定基準は加入している健保組合によって細部が異なる。【各自確認:家族の勤務先の健保組合(協会けんぽなら各都道府県支部)に、失業給付受給中の扶養認定の基準を確認】
【計算例】受給中に払う金額をシミュレーションしてみる
条件をひとつ仮に置いて計算してみる。
前提: 退職前の年収400万円・独身・扶養なし・失業保険の基本手当日額6,000円(30日分で約18万円)を受給中で、2026年度(令和8年度)に国民年金保険料の特例免除を申請していないケース
| 項目 | 目安の考え方 | 金額 |
|---|---|---|
| 失業保険(基本手当) | 非課税なのでここから天引きなし | +約18万円/月 |
| 国民年金保険料 | 2026年度の月額は全国一律17,920円。特例免除を申請すれば全額〜4分の1に軽減できる | -17,920円/月(固定) |
| 住民税 | 前年(年収400万円時)の所得に基づく年額を、原則年4回(6月・8月・10月・1月が標準。地方税法第320条、納期は条例で定める)に分割納付。税率は全国共通だが、所得控除や均等割額は自治体でわずかに差があるため一律の金額は出せない | 【各自確認:お住まいの自治体の窓口で自分の前年所得を基に試算を依頼】 |
| 国民健康保険料 | 非自発的離職なら前年給与所得の30/100とみなして算定するが、保険料率(所得割・均等割)は自治体ごとに異なる | 【各自確認:お住まいの自治体の窓口で自分の前年所得を基に試算を依頼】 |
この表でまず断定できるのは、国民年金保険料の17,920円/月は、特例免除を申請しない限り全国どこに住んでいても同じ金額でかかるということだ。一方、住民税と国民健康保険料は自治体ごとに税率・料率が違うため、正確な金額は自治体の窓口で自分の前年所得を基に試算してもらう必要がある。だからこそ、次にやるべきことは1つに絞れる。
次にやること
お住まいの市区町村役場(税務課・国保年金課)に行き、「非自発的離職者の軽減が使えるか」「国民年金の特例免除の対象か」の2点を、雇用保険受給資格者証を持って確認する。この2つの制度は自分から申請しないと適用されない。黙っていても自動では安くならない。