残業が続いて辞めるとき
- 1残業の記録を残す
- 2退職・離職票を受取る
- 3離職理由を確認
- 4異議があれば申立て
- 5会社都合が認定される
この記事の内容
残業が終わらなくて辞めようとしている人向けの記事です。
結論を先に言うと、離職前6か月のうちに「連続する3か月で毎月45時間超」「いずれか1か月で100時間超」「連続する2か月以上の平均で月80時間超」のどれか1つでも当てはまれば、自己都合ではなく会社都合(特定受給資格者)として扱われる可能性があります。そのためには、辞める前から自分で残業時間の記録を残しておくことが必須です。
基準の中身、自分の残業時間を当てはめる計算例、今日からできる記録の残し方、会社が認めなかったときの手続きを順番に説明します。
結論:残業何時間で会社都合になるか
基準そのものはシンプルです。難しいのは「基準を超えていたことを、辞めたあとに証明できるか」の方です。ここで多くの人がつまずきます。
| 質問 | 答え | 出どころ |
|---|---|---|
| 残業何時間で会社都合になる? | 離職前6か月のうち、①連続する3か月で各月45時間超、②いずれか1か月で100時間超、③連続する2か月以上の平均で月80時間超、のいずれか1つに当てはまれば「特定受給資格者」(会社都合扱い)に該当しうる | ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_range.html(2026年9月確認) |
| 何を根拠として残せばいい? | タイムカードや勤怠システムの打刻記録、給与明細の残業代欄、業務メールの送受信時刻など、退職前の在職中に手元へ残せるもの | 一般的な実務解説に基づく整理(個別のハローワークがどこまで確認するかは事案により異なる) |
| 会社が「自己都合」で処理してきたら? | 離職票-2の「離職者記載欄」に具体的な事情を書き、証拠となる資料を添えてハローワークの窓口で異議を申し出る | ハローワークインターネットサービス「雇用保険の手続きについて」(離職理由に異議がある場合の対応) |
会社都合(特定受給資格者)になると、自己都合退職にはある給付制限(令和7年4月1日施行の雇用保険法改正により、正当な理由のない自己都合退職の場合は原則1か月。過去5年間に2回以上自己都合退職をしている場合は3か月)がつかず、待期7日間が終わればすぐに基本手当の支給対象になります(雇用保険法第21条・第33条第1項。会社都合=特定受給資格者には給付制限が適用されないことを確認)。所定給付日数も、自己都合の90〜150日に対して会社都合は年齢・被保険者期間に応じて90〜330日と幅が広くなります(雇用保険法第22条・第23条、ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」2026年9月確認)。この差は、辞めたあとの生活の余裕に直結します。
会社都合になる残業時間の3つの基準
ハローワークインターネットサービスの公式ページ「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」には、長時間労働を理由とする離職について、次のように記載されています。
離職の直前6か月間のうちに、①いずれか連続する3か月で45時間、②いずれか1か月で100時間、又は③いずれか連続する2か月以上の期間を平均して1か月で80時間を超える時間外労働が行われたため離職した者
これを言い換えると、次の3パターンのどれか1つに当てはまれば足ります。3つ全部を満たす必要はありません。
| パターン | 条件 |
|---|---|
| ① 連続3か月型 | 離職前6か月のうち、連続する3か月それぞれで残業(時間外労働)が45時間を超えている |
| ② 単月型 | 離職前6か月のうち、いずれか1か月だけでも残業が100時間を超えている |
| ③ 平均型 | 離職前6か月のうち、連続する2か月以上の期間で、平均すると1か月あたりの残業が80時間を超えている |
ここでいう「時間外労働」は、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働いた時間を指すのが一般的な理解です。サービス残業のように会社の記録に残っていない時間も、実際に働いていた事実を証明できれば含めて考えられます。だからこそ、次の章の「記録を残す」作業が重要になります。
計算例:自分の残業時間を当てはめる
言葉だけだとピンとこないので、仮の数字で計算してみます。
前提:離職前6か月の残業時間(自己申告・打刻記録などから本人が把握している時間)が、次のように推移していたとします。
| 月 | 6か月前 | 5か月前 | 4か月前 | 3か月前 | 2か月前 | 1か月前(離職月) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 残業時間 | 30時間 | 38時間 | 50時間 | 55時間 | 48時間 | 60時間 |
この例で3つの基準を当てはめると、次のようになります。
- ①連続3か月型(各月45時間超):4か月前(50)・3か月前(55)・2か月前(48)・1か月前(60)の4か月が連続して45時間を超えている → 連続する3か月で45時間超を満たす
- ②単月型(100時間超):どの月も100時間を超えていない → 満たさない
- ③平均型(連続2か月以上で平均80時間超):直近2か月の平均は(48+60)÷2=54時間、直近3か月でも(55+48+60)÷3=54.3時間 → いずれも80時間に届かず、満たさない
この例では①のパターンだけを満たしているため、①だけで会社都合になる可能性がある、という計算になります。3つのうち1つでも当てはまれば足りるので、「平均は80時間もいっていないから無理だ」と自己判断で諦める必要はありません。
注意:この計算例はあくまで基準の当てはめ方を示すための仮の数字です。実際の判定は、離職理由の調査を経てハローワークが行います。自分の数字が基準に近い・超えていると思う場合も、この記事の計算だけで結論を出さず、次の章の記録を残したうえでハローワークの窓口で相談してください。
チェックリスト:今日からできる記録の残し方
残業時間の基準を満たしていても、辞めたあとに証明できなければ判定には使えません。在職中の今日からできることを並べます。
- □ 勤怠システムやタイムカードの打刻記録を、月ごとにスクリーンショットまたは印刷して手元に保存する(会社のシステムは退職後にアクセスできなくなることが多いため、在職中に確保する)
- □ 給与明細を毎月保管する(残業代・時間外労働時間数の記載がある場合は特に重要)
- □ 業務用メールやチャットツールの送受信時刻を、定期的にスクリーンショットで残す(始業前・終業後に業務のやり取りをしている記録は、実際の労働時間を裏づける材料になる)
- □ 会社が発行するタイムカードと実際の労働時間にズレがある場合は、自分で日々の始業・終業時刻をメモに記録しておく(手帳・スマホのメモアプリ・カレンダーアプリなど、何でもよいので毎日つける)
- □ 家族や同居人に「何時に帰宅したか」を伝えている場合、LINEなどのやり取りも補助的な記録になりうる
これらは「必ず証拠として認められる」という保証があるものではありません。ハローワークが最終的にどの資料をどこまで重視するかは、個別の調査によって決まります。ただし、何も残していなければ「本人の申告」以外に材料がなくなってしまうため、在職中に残しておくこと自体に意味があります。
手順:会社が「自己都合」で処理してきたとき
会社から発行された離職票の離職理由欄に「一身上の都合」など自己都合の記載があり、実態と違うと感じた場合は、次の手順で異議を申し出ることができます。
- 離職票-2の「離職者記載欄」を確認する — 離職者本人が離職理由について記入する欄と、異議の有無を記載する欄があります
- 具体的な事情を記載欄に書く — 「いつからいつまで、月何時間程度の残業があったか」を、できるだけ具体的に書きます
- 証拠となる資料を用意する — 前章で残した打刻記録・給与明細・メールの記録などを持参します
- ハローワークの窓口で申し出る — 求職の申込みや受給資格の決定の手続きの際に、窓口で「離職理由に異議がある」と伝えます
ハローワークインターネットサービスの公式案内でも「離職理由に異議がある場合はハローワークにご相談ください」としており、申し出を受けて事実関係が調査されたうえで離職理由が判定されるとされています。
記載欄に書く文例(そのままコピーして自分の数字に置き換えて使えます)
離職前、時間外労働が慢性的に発生していました。
〇〇年〇月から〇月にかけて、月の残業時間はおおむね
〇〇時間〜〇〇時間で推移し、特に〇月・〇月・〇月は
連続して45時間を超えていました(勤怠記録・給与明細
のとおり)。この状況が続いたため、心身の負担が大きく
なり退職に至りました。会社都合として認定いただくよう
お願いいたします。
数字の部分は、必ず自分が実際に確認できた記録に基づいて書いてください。記憶だけで大きい数字を書くと、あとで記録と食い違い、かえって信用性を下げてしまいます。
もし残業が理由で心身の負担が大きく、退職の意思を自分から会社に伝える余力がない場合は、退職代行を使って辞めるという選択肢もあります(退職代行Jobs、弁護士法人ガイアなど。※2026年9月時点の調査)。ただし、退職代行を使ったこと自体は、離職理由が会社都合になるかどうかの判定には影響しません。判定の対象になるのは、あくまで退職前の残業の実態と、それを裏づける記録です。
体調がすでに崩れている場合は、記録を残す作業より先に、医師や産業医に相談してください。
次にやること
今日、在職中のうちに、直近6か月分の勤怠記録・給与明細をスクリーンショットまたは印刷で手元に確保することです。基準(連続3か月45時間超・単月100時間超・連続2か月以上平均80時間超)のどれか1つに当てはまっていれば、会社都合として扱われる可能性があります。離職票が届いたら離職理由欄をまず確認し、実態と違っていれば、確保した記録を持ってハローワークの窓口で異議を申し出てください。
※本記事は2026年9月時点の情報整理です。残業時間の3基準はハローワークインターネットサービスの公式ページで確認済みです。証拠の残し方に関する記載は一般的な実務解説に基づく整理であり、個別のハローワークの判定運用まで裏取りしたものではありません。心身の不調がある場合は、記録の準備より先に医師・産業医にご相談ください。
出典(2026年9月確認) - ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_range.html(時間外労働に関する3基準の記載を確認) - ハローワークインターネットサービス「雇用保険の手続きについて」https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_procedure.html(離職理由に異議がある場合の対応を確認) - ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_benefitdays.html(会社都合・自己都合の所定給付日数の違いを確認) - 雇用保険法第21条(待期)・第22条・第23条(所定給付日数)・第33条第1項(給付制限。会社都合=特定受給資格者には適用されないことを確認) - 都道府県労働局(群馬労働局・鳥取労働局等)の公式案内「正当な理由がない自己都合により退職した場合、給付制限期間が原則1か月となります」(令和7年4月1日施行の雇用保険法改正。過去5年間に2回以上自己都合退職がある場合は3か月。2026年9月確認)