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失業中の確定申告

この記事の結論
  • 年の途中で退職し年内に再就職しなかった場合、年末調整を受けられていないため所得税を払いすぎたままになっていることが多い
  • 確定申告(還付申告)をすれば払いすぎた分が戻る。還付申告は翌年1月1日から5年間できる(国税庁No.2030)
  • 還付額は「給与所得控除→基礎控除・社会保険料控除を引いた課税所得×税率」と「すでに天引きされた源泉徴収税額」の差で決まる
  • 失業保険(基本手当)は非課税(所得税法9条・雇用保険法12条)なので確定申告書に書かなくてよい
  • 必要書類は源泉徴収票・本人確認書類・マイナンバー・還付先口座・社会保険料の控除証明書
ぜんたいの流れ
  1. 1源泉徴収票を用意
  2. 2必要書類をそろえる
  3. 3申告書を作成
  4. 4e-Taxか郵送で提出
  5. 5還付を受け取る
この記事の内容
  1. 結論:年の途中で退職し年内に再就職しなかった人は確定申告で税金が戻ることが多い
  2. なぜ戻るのか|年末調整を受けていないと所得税を払いすぎたままになる
  3. 対象になるか確かめるチェックリスト
  4. 還付額の計算例|退職後に半年間無収入だった場合
  5. 申告の手順|必要書類から提出・還付までの流れ
  6. 申告するときに迷いやすい点
  7. 次にやること

年の途中で会社を辞めて、その年のうちに再就職しなかった場合、確定申告をすると天引きされていた所得税の一部が戻ってくることがあります。この記事は、なぜ戻るのか、いくらぐらい戻るのか、どう手続きすればいいのかを、具体的な計算例とあわせて説明します。失業保険(基本手当)は、雇用保険法第12条で税金をかけてはならないと決められているので、確定申告書に書く必要はありません。

こんな状態ではありませんか
  • 今年退職して、年内は再就職していない。確定申告をしたほうがいいのか分からない
  • 「還付」と聞くけれど、自分の場合いくら戻るのか見当がつかない
  • 何をどこに出せばいいのか、手順が分からない

結論:年の途中で退職し年内に再就職しなかった人は確定申告で税金が戻ることが多い

会社員は毎月の給与から所得税が天引き(源泉徴収)され、通常は12月の年末調整でその年の所得税額が確定し、払いすぎがあれば会社が調整して返します。ところが年の途中で退職し、その年のうちに次の会社に勤めなかった場合、この年末調整を受ける機会がありません。天引きされた所得税は「1年間ずっと今の給料が続く」という前提で多めに計算されていることが多いため、実際の年間所得で計算し直すと税金を払いすぎている、というケースがよく起きます。

この払いすぎを取り戻す手続きが確定申告(還付申告)です。国税庁「No.2030 還付申告」によれば、還付申告は還付を受ける年分の翌年1月1日から5年間できます。同ページは、年の途中で退職して年末調整を受けず、源泉徴収された税額が多すぎる場合を、還付申告の例のひとつに挙げています。通常の確定申告のように2月16日〜3月15日に限られているわけではないため、退職した年の翌年になれば、時間をかけて準備しても間に合います。

ここが要点

還付申告は義務ではありません。申告しなければ税金は戻ってきませんが、罰則もありません。「損をしない」ための任意の手続きです。

なぜ戻るのか|年末調整を受けていないと所得税を払いすぎたままになる

給与から天引きされる所得税は、その月の給与額をもとにした概算です。年間を通じて同じ調子で働き続ける前提で多めに引かれる仕組みになっているため、年の途中で収入がゼロになった月がある人は、実際の年間所得に対して税金を払いすぎている状態のまま放置されがちです。

さらに、退職後に自分で支払った国民健康保険料・国民年金保険料は、年末調整済みの給与明細には反映されていません。これらは「社会保険料控除」として所得から差し引ける項目ですが、確定申告をしなければ控除に使われないままになります。

つまり、次の2つが理由で税金が戻ってきます。

  • 年の後半の収入がない(または少ない)分、実際の年間所得は源泉徴収時の想定より少ない
  • 退職後に自分で払った社会保険料が、まだどこにも反映されていない

対象になるか確かめるチェックリスト

  • □ 年の途中で退職し、その年のうちに他社で働いていない(年末調整を受けていない)
  • □ 退職した年の源泉徴収票を会社から受け取っている(なければ会社に発行を依頼する)
  • □ 退職後、自分で国民健康保険・国民年金の保険料を支払った、または家族の扶養に入った
  • □ 医療費控除・生命保険料控除・ふるさと納税(寄附金控除)など、ほかにも申告したい控除がある
  • □ 退職金を受け取っていて、その源泉徴収のされ方に心当たりがない(退職金は給与とは別に扱われます)

上から3つに当てはまる人は、還付を受けられる可能性があります。

還付額の計算例|退職後に半年間無収入だった場合

実際にいくら戻るかは人によって大きく変わりますが、仕組みを理解するために、次の前提を仮に置いて計算してみます。

前提(仮の設定) 数値
退職時期 6月末
1〜6月の給与収入(額面合計) 210万円
7〜12月の状況 再就職せず、失業保険(基本手当)のみ受給
退職後に自分で払った国民年金保険料(6か月分、令和8年度月額17,920円で試算) 約10.8万円
退職後に自分で払った国民健康保険料(6か月分、仮に月1.5万円と設定) 約9万円
1〜6月に給与から天引きされた所得税(仮に月8,000円と設定) 約4.8万円

国民健康保険料は自治体と前年の所得で大きく変わるため、ここでの月1.5万円はあくまで仮の数字です。【各自確認:自分の国民健康保険料の実額。お住まいの市区町村の国保窓口の通知書か納付書で確認】 天引きされた所得税も、実際は源泉徴収票の「源泉徴収税額」欄の金額を使います。【各自確認:自分の源泉徴収税額。退職した会社の源泉徴収票の「源泉徴収税額」欄で確認】

  1. 給与所得控除を引く:給与収入210万円は220万円以下なので、令和8年分の最低保障額74万円が使えます(国税庁No.1410。令和8年分・9年分に適用される金額で、令和7年分とは異なります)。 給与所得 = 210万円 − 74万円 = 136万円
  2. 社会保険料控除を引く:国民年金約10.8万円+国民健康保険約9万円 = 約19.8万円
  3. 基礎控除を引く:合計所得136万円は「132万円超336万円以下」の階層にあたり、基礎控除は88万円です(令和7・8年分。国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」)。令和9年分からは、この階層の基礎控除は58万円になると同ページに示されています。 課税所得 = 136万円 − 19.8万円 − 88万円 = 約28.2万円
  4. 税率をかける:課税所得195万円以下の部分の税率は5%なので(国税庁No.2260)、所得税額は 28.2万円 × 5% ≈ 14,100円。復興特別所得税(基準所得税額の2.1%。令和19年分まで)を加えると、税額はおよそ14,400円になります。
  5. 源泉徴収された税額と比べる:1〜6月に天引きされた所得税(仮に4.8万円)から、本来の税額14,400円を引くと、 還付額 ≈ 48,000円 − 14,400円 = 約33,600円

この前提でのシミュレーションでは、約3.4万円が戻る計算になります。ただし国民健康保険料の実額、給与からの源泉徴収税額、扶養の有無などで結果は大きく変わります。正確な金額は、確定申告書等作成コーナー(国税庁)に源泉徴収票の数字と実際に支払った社会保険料の額を入力すれば自動で計算されます。

申告の手順|必要書類から提出・還付までの流れ

  1. 源泉徴収票を用意する:退職した会社から受け取ります。届いていない場合は会社の給与担当に発行を依頼してください。
  2. 必要書類をそろえる:マイナンバーと本人確認の書類(マイナンバーカードがあれば、その表裏の写し。ない場合は、住民票の写し(マイナンバー入り)などの番号確認書類と、運転免許証などの身元確認書類を1つずつ。通知カードは廃止されていますが、記載内容が今の住民票と一致していれば番号確認書類として使えます。国税庁の案内)、還付金の振込先口座、社会保険料(国民健康保険・国民年金)の支払いを確認できる書類、生命保険料控除証明書やふるさと納税の受領証明書など、ほかに使いたい控除の証明書。
  3. 申告書を作成する:国税庁の「確定申告書等作成コーナー」に源泉徴収票や控除証明書の数字を入力すると、税額と還付額が自動計算されます。マイナンバーカードがあれば、マイナポータル連携で源泉徴収票や控除証明書のデータを取り込める場合もあります。
  4. e-Taxか郵送で提出する:マイナンバーカードとスマホ(またはICカードリーダー)があればe-Taxでそのまま送信できます。難しい場合は印刷して税務署に郵送するか、窓口に持参します。
  5. 還付を受け取る:提出後、指定した口座に還付金が振り込まれます。国税庁の案内では、自宅などからe-Taxで出した還付申告は3週間程度で処理されます。確定申告の期間中(混み合う時期)は、還付金の支払いにおおむね1か月から1か月半かかるとされています。書面で出す場合の日数は国税庁の案内に個別の記載が見当たらないため、混雑する時期を避けるのが無難です(2026年10月確認)。
ここが要点

提出は還付申告の対象年の翌年1月1日から可能です。通常の確定申告のように3月15日を過ぎたら間に合わない、ということはありません(還付申告は翌年から5年間できます)。

申告するときに迷いやすい点

失業保険(基本手当)は書かなくてよい:雇用保険の基本手当や、教育訓練給付金などの雇用保険からの給付は、雇用保険法第12条(公課の禁止)により税金がかからないため、確定申告書に収入として記載する必要はありません(同条の全文を確認しました)。「失業保険をもらったから申告しないといけないのでは」と心配する必要はない、ということです。

住民税は別途申告しなくてよい:所得税の確定申告をすると、その内容が税務署から住んでいる市区町村に連携されるため、住民税の申告を別に行う必要は基本的にありません。地方税法第317条の3は、前年分の確定申告書を出した場合、その提出日に住民税の申告書が出されたものとみなすと定めています(政令で定める場合を除く。全文を確認しました)。

ふるさと納税のワンストップ特例は無効になる:退職前にふるさと納税をしていて「ワンストップ特例」の申請をしていた場合、確定申告をするとワンストップ特例は無効になります(地方税法附則第7条第6項第1号・第2号。所得税の確定申告の扱いを受けないことになった場合などに、特例の求めはなかったものとみなされます)。ふるさと納税をした分は、確定申告書の中で寄附金控除として改めて記載する必要があります。

退職金は給与とは別扱い:退職金には別の源泉徴収の仕組み(退職所得の受給に関する申告書を会社に提出しているかどうか)があります。この記事で扱っているのは、あくまで退職までの給与部分の還付申告です。

調査した範囲では、退職後の確定申告についての制度上の注意点は以上のとおりですが、実際にどの控除が使えるか、いくら戻るかは、確定申告書等作成コーナーで自分の数字を入力して確認するのが最も確実です。

次にやること

退職した会社から源泉徴収票を受け取り、国税庁の確定申告書等作成コーナーに数字を入力してみてください。還付があるかどうかと金額が、その場で分かります。


※本記事は2026年9月時点で確認できた情報にもとづく整理です。給与所得控除・基礎控除の金額は年分ごとに改正されるため、実際に申告する年の最新の数字は国税庁の案内でご確認ください。

出典(2026年10月4日確認) - 国税庁「No.1410 給与所得控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm - 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」 https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025kiso/index.htm - 国税庁「No.2030 還付申告」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2030.htm - 国税庁「No.2260 所得税の税率」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm - 国税庁「【税金の還付】」(還付金の支払期間) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/qa/11.htm - 国税庁「本人確認に関するFAQ」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/mynumberinfo/FAQ/honninkakunin_qa.htm - 日本年金機構「国民年金保険料」(令和8年度 月額17,920円) https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/hokenryo/hokenryo.html - 雇用保険法第12条、地方税法第317条の3、同法附則第7条(条文全文を確認)

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退職届を受け取る側に長くいて、そのあと自分が出す側になりました

人を採用し、辞めていく人を見送る立場に長くいました。退職代行から電話を受けたこともあります。そして自分が辞める番になり、失業保険の申請・ハローワークでの手続き・健康保険の切り替え・住民税の直接納付・保育園の継続手続きまで、すべて自分で通りました。両側を見た人間が書いています。「代行を使ったら会社はどう思うのか」に答えられるのは、受け取ったことがあるからです。

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